僕には三人の姉がいる。それぞれの個性が強すぎて、本当に血が繋がっているのかと感じてしまうほど。
スバル姉さんが「焼肉たべたい!」という発言が元で…今は焼肉店に来ている。あくあ姉さんとぺこら姉さんはあんまり乗り気じゃなかったけど。三人ともそれなりに有名人ということで個室でということになった。
僕とあくあさんが隣同士でスバル姉さんとぺこら姉さんが僕の向かい側という感じで座っている。
そしてまず最初にメニュー開いて、注文を聞いたのはスバル姉さんだった。
「それじゃあ、まずは何を頼む?」
「ぺこらはなんでもいいぺこ」
「……あ、あてぃし…も…」
二人はメニューを見ることもなく、答えた。
「ねぇ!もっと焼肉に本気で向かい合おうよ!!」
スバル姉さんはなんか変なことを叫び始めた。どうやら、最近のスバル姉さんは一人焼肉にハマっているらしくて、夜な夜な一人で焼肉をやっているのを見たこともあるんですよね。さすがにカロリーがすごいとは思ったりするけど、そんなことを姉さんに言ったら確実にぶん殴られるか、泣かれちゃう気がする。
残りの姉さんたちはこの人は何を言っているんだという感じの顔で見ている。
「じゃあ、スバル姉さんは何がオススメなんですか?」
「スバルはねぇ~~」
そこからスバル姉さんの焼肉語りのようなものが始まったので…僕とぺこら姉さんとあくあ姉さんは時間が経つのを待つことにした。ぺこら姉さんなんて携帯をいじりはじめてるし、あくあ姉さんに関してはさすがに携帯をいじるのはまずいかなぁと思っているのか、ずっと一点を見つめていた。
そして説明が終わってからメニューの改めて目を通す。
「スバル姉さんにお任せしますよ。僕はスバル姉さんのオススメを食べてみたいので」
「うん!じゃあ、スバルの最強焼肉を見せてあげるっす!」
スバル姉さんは店員さんを呼んで注文をした。
「ぺこら姉さんってゲーム得意でしたっけ?」
「そうぺこね。この中じゃ一番得意だと思うぺこよ」
そう言うとなぜか、他の二人の姉さんがぺこら姉さんの方をずっと凝視し始めた。
「な、なに…ぺこ」
ぺこら姉さんもなんで二人からこんなに見つめられているのか分からない様子だ。
「スバルだってゲーム得意だもん!」
「あ、あてぃしだって!!」
「前にゲームで勝負した時にぺこーらが勝ったのを忘れたペコか!」
「あれはまぐれか、ぺこらがずるしたんだろ!」
「そんなことしていないぺこ!」
それからちょっと言い合いが始まってしまって、僕の手には負えない状況になってしまった。だけどうちの言い合いはある程度の間、言い続ければどこかで力が尽きて言い争いは止まる。
「ここで一旦、落ち着きましょう。深呼吸してください」
姉さんたちはそれぞれ深呼吸をして気持ちを落ち着かせてくれた。
「そ、そういえば…なんでそんなことを?」
「それはスバルも気になってた」
「言われてみればそうぺこね。なんでぺこ?」
「再来週の土曜日にクラスでゲーム大会があるんです。僕ってあんまりゲームとかしないタイプなので、全然上手くないんです。でも、さすがにクラスの皆が見ている前で不甲斐ないようなプレイはしたくないので、ちょっと協力してもらおうと思ったんです」
たかがゲーム大会なんですが、それでも恥ずかしいところは見せたくない。
姉さんたちは僕の理由を聞いて呆れてしまったのか、何も喋らない。さっきまでうるさかった人たちが静かになるとちょっと怖いですね。スバル姉さんなんて喋ることを生きがいとしている感じなのに…話さない。
「呆れちゃいましたか?」
「ううん。絶対にぺこーらが強くしてやるぺこ!!」
「スバルが強くしてやる!」
「あ、あてぃしが教える!」
なんかやる気に満ち溢れてるような目をしているので、呆れているわけではなさそうですね。ちょっと教えて欲しいだけだったけど、この様子だとそれだけで終わらなそう。
「ありがとうございます」
「それにしても弟はぺこーらが一番上手いと思ってるってことぺこな」
「いや、違うだろ。ただぺこらがずっと弟に「ぺこーらが一番上手い!」っていつも言ってるからだろ。普通に勝負したら絶対にスバルが勝つ!」
「いやいや、ぺこーらの強さを知らないぺこか。絶対にぺこーらが一番上手いに決まってるぺこ!」
「あ、あてぃしがつよいもん。ぺこらにもスバルにも負けないし…」
この人たちは争わずにはいられない性格なのかな。もう行くところで必ず言い争いが起きている気がするし、止めてもまた数分もすれば言い合いが始まっているというループ。
「じゃあ、帰ったら勝負しよ!スバルが強いってところを見せてやる!」
「ぺこーらの強さを見せつけてやるから安心するぺこ」
「あ、あてぃしが勝つもん」
それからは来た肉をどんどん焼いていき、食べていく。ぺこら姉さんとスバル姉さんは獣のようにどんどん食べていくのに比べて、あくあ姉さんは少しずつ口に運んでいく。それぞれの食べ方にも個性が出ていて、面白いなぁと思っていると自分の食べる肉が無くなっていることに気付く。
「あ、あの…僕のお肉は?」
「食べたぺこ!」
「いや、食べたぺこじゃありませんよ。僕のぐらいは残して置いたりしませんか。姉さんなら」
「何を言ってるぺこ!!うちの家族は弱肉強食ぺこ!早く食べない方が悪い!」
ぺこら姉さんはもうちょっと優しくなってくれませんかね。人の分のお肉にまで手を伸ばす癖を。
「はぁ…ぺこら姉さん…」
「な、なにぺこ…?」
こういう時にぺこら姉さんへの対処法を知っている。
「ぺこら姉さんのこと…嫌いになっちゃうかも」
これを言うと、ぺこら姉さんはフリーズ状態になる。今も魂が抜けた人みたいに口を天井に向かって開けた状態のまんま固まってしまっている。
そしてそれが数秒続いた後にぺこら姉さんは自分の皿のお肉を僕に渡してきた。
「あげるぺこ!だ、だから…きらいにならないでほしい……ぺこ」
「大丈夫ですよ。ぺこら姉さんのことは大好きですからね」
「ほ、ほんとぺこか!?」
「はい」
これで自分のお肉を確保できる。
ぺこら姉さんから分けてもらったお肉を砲張りながら隣に視線を移すとそこにはお肉を少しずつ食べていく、あくあ姉さんの姿。
「あくあ姉さんってあんまりお肉食べないんですね」
元々だけど、他の二人の姉さんに比べると小食の部類に入る。
「た、たべてるよ!」
「そうですか、それは良かった」
焼肉のタレが口元に付いているのが分かっていないだろうけど、そういうところもあくあ姉さんらしい。なんか小動物な感じなんですよね。
「本当にあくあ姉さんって女子ですよね」
「そ、そうかな?」
「はい、僕はそう思いますよ」
本当に他の二人と比べるとあくあ姉さんの女子っぽさが際立つんですよね。その言葉にスバル姉さんがすごく反応した。
「おいおい、それはスバルが女の子ぽくないってことを遠回しに言ってる!?」
「ち、ちがいますよ。スバル姉さんも女の子っぽいと思いますよ。特に仕草とか。普段は男勝りなところもありますし、下手したら男子よりも男子っぽいですけどたまに見せる仕草は本当に乙女だと思い出させてくれますしね」
「それ何のフォローにもなってないぺこ」
「そ、そうですか?まあ、僕の姉さんたちはとても乙女で可愛いってことですよ」
「なんか取ってつけたように~」
「そんなことないですよ。可愛いと思ってますよ」
僕はこれで乗り切った。このままだともっと地雷を踏み抜いちゃいそうな気がしますし。
それからはアルコールを頼んだりして、姉さんたちがヤバい状態になったりと色々大変だった。
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