もし、〇〇〇が姉だったら   作:主義

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もし、あずいろが姉だったら

僕には二人の姉がいる。

 

 

 

その日は体を起こした時点でいつもと違うのは分かった。明らかに体が重いし、寒気もする。誰が感じても風の前兆。もしくは風邪。一応熱を測ってみると37.8度。

 

「ちょっと微熱があるって感じかな」

 

今日はちょっと休めないような日なんだよね。班活動だって僕が資料を全部持っているし。これがないと何も活動が出来ないと思うし。

 

 

僕は体に鞭を打って立ち上がって準備を始める。制服に着替えたり、顔を洗ったり、歯を磨いたりと身支度が整うとリビングへと行った。

 

 

するとそこには…いろは姉さんが作ってくれた料理が置かれていた。

 

「…おはよう」

 

 

「おはよ……って大丈夫でござるか!!」

 

なぜかいろは姉さんは僕のところにまで駆け寄ってきた。

 

 

「だいじょうぶだよ」

 

 

「どう見ても大丈夫に見えないでござるよ!」

 

今のいろは姉さんの感じを見ると余程顔色が悪いのかな。顔を洗いに行った時はあくまでも普通だった気がする。

 

 

「大丈夫ですよ。ちょっと体が重くて、寒気がするだけですから」

 

 

「それは大丈夫じゃないでござる!」

 

 

「いや…大丈夫ですって」

 

 

「だめでござる!なにかあったら風真たちがいやだから!今日は大人しく寝ているでござる!!」

 

僕は必至に抵抗しようとしたけど、体に力が入らなかった。気が付いた時には自室に戻されて、ベッドに寝かされていた。

 

なんかさっきよりも症状が悪化しているように感じるのはたぶん、気の所為だと思う。

 

 

 

もし、このまま僕が休んじゃったら班のメンバーに迷惑を掛けてしまう。どうにかしても行かないと……必死に起き上ろうとしてもなぜか上手く起き上がれない。普通の時だったら体を起き上らせるなんて簡単に出来るのに今の僕には…それが難しいみたい。

 

 

すると自室の扉が開いて、アズキ姉さんといろは姉さんが入ってきた。

 

 

「もうだめだよ。今日はちゃんと休んで治さないと」

 

 

「でも…」

 

 

「だめでござる。このまま学校に行っても症状が悪化するだけだし、もしかしたら他の子に移しちゃうかもしれないでござる」

 

 

「それは分かってます……でも…」

 

 

「弟くんの気持ちは分かるよ。でも今日だけはアズキたちの言うことを聞いて」

 

そう話している時のアズキ姉さんはいつもの優しい笑顔ではなくて、ちょっと強張っていた気がする。

 

 

「お願い。私たちは弟くんを邪魔したいんじゃないの。弟くんが普通に健康であればちゃんと行かせてあげたいよ。でも今の弟くんを学校に行かせちゃったら途中で倒れちゃうかもしれないし、アズキもいろはちゃんも心配してお仕事に行けないよ」

 

このまま姉さんたちを困らせると、本当に姉さんたちは仕事に行ってくれない。姉さんたちにまで影響が出ちゃう事態はどうしても避けたい。

 

 

「…はい、すみません。しっかりと今日は休もうと思います」

 

 

「ありがとう」

 

それから僕は大人しく薬を飲んで寝ることにした。

 

 

 

 

 

 

珍しくその日は悪夢を見た。たぶん熱の影響もあったんだと思うけど…。どこに行っても…誰もいずに僕はずっと走り続けていた。夢の間はずっと走っているだけで辺りは真夜中のように暗くて…。

 

 

 

 

そして悪夢から覚めても…少し荒い呼吸が続いた。

 

 

「はぁ…はぁ……も、もう…」

 

僕は荒い呼吸を整えてから…時計を見ると午後7時を示していた。普段であれば夕飯ぐらいの時間帯。

 

 

さすがに朝から何も食べていないのでお腹が減ってきた。

 

 

 

僕はベッドから起き上がって、リビングに行くことにした。

 

 

 

リビングに入るとソファーに座っていたいろは姉さんが僕のことに気付いて、すぐに駆け寄ってきた。

 

 

 

「え、大丈夫でござるか!?」

 

 

「う、うん…。歩くぐらいなら大丈夫…。ちょっとゼリーでもお腹の中にいれたくて」

 

何かお腹の入れとかないと薬を飲むにしても。だけどまだ熱もあると思うし、普通の食事をするのはたぶん無理。

 

 

「風真がゼリーは持って来るからソファーで休んでいるでござる!」

 

 

「わかりました」

 

この状態だとやっぱり姉さんたちに心配ばかりかけてしまう。僕はソファーに座っていろは姉さんの帰りは待つことにした。

 

 

それから数分していろは姉さんはたくさんのゼリーを持って帰ってきた。

 

 

「え…なんでそんなに?」

 

 

「いやぁ…弟くんがどのゼリーが好きかなぁと考えてたら全部持ってちゃえって感じで…」

 

 

「そ、そうですか。ありがとうございます」

 

いろは姉さんは持ってきたゼリーをテーブルに少しずつ並べる。

 

 

「じゃあこれにします」

 

そして僕が席を立つのと同時にゼリーを一つだけ取って…帰ろうと思っていた。でもなぜかいろは姉さんが手を引っ張ってきて…動けない。

 

 

「どうしたんですか?いろは姉さん」

 

 

「どこに行くでござる?」

 

 

「いや、姉さんたちに移しちゃうのも悪いので部屋で食べようかなって」

 

姉さんたちは仕事をしているわけだし、もし移しちゃったりしたら仕事に支障が出て多くの人に迷惑を掛けてしまうことになるから。

 

 

「そんなこと気にしないでござる。逆に風真に移して楽になるんだったらどんどん移してくれてもいいでござるよ」

 

 

「そんなのダメですよ」

 

 

「いいでござる。風真は弟くんのお姉ちゃんでござる。弟くんのためならどんなことでもしてあげたい。弟くんが苦しんでいるところは見たくないから」

 

 

「で、でも…」

 

そんな風なやり取りをしているとお風呂上りのアズキ姉さんがリビングに入ってきた。

 

 

「あれ、弟くんんもいろはちゃんもどうしたの?」

 

 

「あずきち、弟くんがゼリーを自分の部屋で食べるっていうでござるよ!」

 

 

「いや、本当に移したら悪いので」

 

 

「あ、そういうことね。どっちもお互いのことを想ってるんだよね。弟くんは私たちに移さないように、いろはちゃんは弟くんの苦しみを少しでも楽にしてあげたいという想い」

 

そうだ。姉さんたちが僕のことをずっと考えてくれているのは分かっている。でもそれと同じ位、僕も姉さんたちのことを考えている。

 

 

「アズキとして言うなら弟くんはもうちょっと甘えてきてもいいんだよってことかな」

 

 

「甘えるですか?」

 

 

「うん、アズキもいろはちゃんも弟くんのお姉ちゃんだからね。それに…お姉ちゃんはやっぱり弟に甘えてきて欲しいよ」

 

 

「そういうもんですか?」

 

 

「そういうもんかな。やっぱりお姉ちゃんとしては弟くんに甘えてもらえると嬉しいかな」

 

 

「そうですか」

 

ここで姉さんたちの意見を全て無視して自室で食べることも出来る。だけどそれじゃあ、姉さんたちに悲しい想いをさせるかもしれない。そんなことはしたくない。

 

それじゃあ答えはもう決まってる。

 

 

 

「じゃあ…一緒に食べてもいいですか?」

 

 

そう問いかけると二人は笑顔で「うん!」と頷いてくれた。




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