僕には二人の姉さんがいる。こんなに優しくて聖人な人がいるのかと自分の姉ながら思ってしまう。それほどに姉さんたちは本当に優しい。
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今から僕と姉さんたちでホラーゲームをする。これは別に珍しいことではない。僕はホラーというジャンルが好きな方なのでよく1人でやったりしますし。
でもこの場にはホラーが得意な人だけがいるわけではない。
それは僕の腕にしがみ付いている、アズキ姉さん。
「苦手なら無理にいなくてもいいんですよ」
「み、みるもん!」
アズキ姉さんがホラーを苦手にしていることは分かっていたこと。でも、逆に僕とそら姉さんはホラーが好きなのでよく一緒にゲームをすることがある。大抵の場合は僕とそら姉さんだけでゲームをして、アズキ姉さんは一回のリビングにいるという感じだった。
なのに今回はアズキ姉さんが「私もやる!」と言って僕たちに付いて来た。
でも、今のアズキ姉さんの状態を見る感じだとホラーに耐えられそうにない。
「本当に無理はしない方がいいですよ」
あんまりホラーが得意じゃない人がやると怖くて眠れなくなるかもしれない。それに今回のゲームは特に怖い。僕はホラーが好きなのでいくら怖くても全然問題ないけど、アズキ姉さんに関しては全然違う。下手したら気を失うかも。
「む、むりなんかしてないもん!それより弟くんの方こそ、私のことを甘く見過ぎだよ…」
「いや、甘く見ているつもりはないですよ」
そんなことを放していると、そら姉さんが入ってきた。
そら姉さんが部屋に入ってきたのと同時に僕とアズキ姉さんの姿をみて、首を傾げていた。
「あれ…アズキち、どうしたの?」
「あ、そら姉さん。アズキ姉さんはホラーが得意じゃないので」
「そっか。そうだったよね」
「だ、だから…べつにだいじょうぶだよ」
明らかに大丈夫そうな感じじゃないんですよ。
「そら姉さんからもアズキ姉さんに無理をしないように言ってくださいよ」
「う~ん。それは難しいかも」
「なんでですか?」
「だって今のアズキちはどんなことを言っても弟くんから離れる気はないと思うしさ。それにアズキちはたぶん、仲間外れにされるのが嫌なんだと思うよ」
「仲間外れ?」
「うん。私と弟くんはよくホラー系の映画にしてもゲームにしても一緒にやったりするけど、アズキちはそういう時いつも一人だよね。それなのに二階で私と弟くんの声が聞こえて来ると寂しいんだと思うよ」
もちろん、アズキ姉さんのことを仲間外れにしている気はしなかったけど、姉さんの方からすればそう思っちゃったのかもしれない。
「そうだったんですね、アズキ姉さん、いつも一人にさせてしまってすいません」
「そ、そうだよ。ちゃんとそらちゃんだけじゃなくて私にも構ってよ!」
アズキ姉さんが僕の腕を抱きしめる力はどんどん強くなっていってる。予想以上に力が強くてさすがに腕が痛い。
「あ、あの…力を弱めてくれませんか?」
「だめ。弟くんがどこかに行っちゃったらいやだもん」
「いや、いきませんって。これからゲームをするのに」
「それでもいや!」
僕はまたそら姉さんの方をみて助けを求めるが、そら姉さんは苦笑いを浮かべるだけだった。
「アズキは絶対にキミの手を離さない。ゲームをする時も寝る時、明日の朝食をする時もずっと抱きしめ続けるよ」
「いや、さすがに朝食は止めてもらいたいんですけど」
「だめ。ずっと離さない」
そしてそんな僕とアズキ姉さんの様子をそら姉さんはじっと眺めていた。
「ちょっと嫉妬しちゃうな」
「そ、そら姉さんまで何を言っているんですか?」
「だって、アズキちだけそんなに弟くんとくっ付いてさ、嫉妬しちゃうよ」
「嫉妬なんかしないでアズキ姉さんを引きはがす方法を考えてくださいよ」
まぁ…このホラーゲーム中は操作はしにくいけど、仕方ないとしても寝る時や朝食は絶対に離れて欲しい。でも、一度ホラーゲームを見てしまったアズキ姉さんが恐怖に耐えられる可能性はほぼゼロで僕から離れてくれる可能性も限りなくゼロに近くなる。
「たぶん、アズキちを力づくで離しても無駄かな」
「…で、でも…」
「今回は諦めてお姉ちゃんたちの好きにされなさい」
「え…」
そら姉さんはなぜかアズキ姉さんが抱きしめている腕とは反対の腕を抱きしめて来る。
「な、なんでそら姉さんまで…」
「アズキちを見ていたら私もやってみたくなっちゃってさ」
「いやいや…これじゃゲームできませんって」
「え~いいじゃん。今日は私たちに抱きしめられる日でさ」
「そ、そんな…」
結局、その日はホラーゲームをすることができなかったのだ。
感想があれば