僕には二人の姉さんがいる。二人共、とても大人っぽい人たちで刺激的過ぎる。でも、そんな姉さんたちの暮らしを生まれた時からしている僕からすれば自然と慣れて来る。
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そして今日も姉さんたちは料理を作ってくれている。姉さんたちの料理の腕は本当にすごくて、美味しい。このまま姉さんたちの料理を口にしているといずれ一人暮らしをし始めた時に自分の手料理に満足できなくなってしまいそうで怖い。そんな心配をしてしまうほどに姉さんたちの料理は美味しいんだ。
「姉さんたちってなんでそんなに料理が上手いんですか?」
「う~ん、それは弟くんへの愛情があるからかな」
「からかわないでくださいよ」
「ううん。ちょこはからかっているつもりはないよ」
確かに姉さんの目を見る感じだと…嘘を言っているようには見えない。それが逆に怖い。
「…で、でも、それ以外にも何かありますよね?」
さすがに愛情だけでここまで料理が作れるんだとしたら皆作れちゃうよ。
「まぁ…ちょこ的には弟くんへの愛情が一番だと思うけどなぁ~~ルイ様は?」
「私もちょこ先と同じような考えになっちゃうけど、やっぱり食べる相手のことを考えることかな」
「食べる人のこと?」
「うん。やっぱり食べてくれる人には『美味しい』と思って欲しいじゃん。だからその人が美味しそうに食べているところを思い浮かべながら料理をすると美味しくなるかな」
「そうなんですか」
どっちも技術的なことではなくて、感情論的なもの。僕が料理を上手くなるのには役に立たないかもしれない。
「そう言えば、弟くんはなんでそんなことを聞いてきたの?」
「僕もいずれは一人暮らしをすることになると思いますし。その時のためにも姉さんたちの料理の上手さの秘訣を少しでも知れればと思って」
そう話すとなぜか、さっきまで穏やかそうな顔だった姉さんたちの顔がどんどん険しいものになっていく。そして僕との距離を詰めて来るので僕は少し後ずさってしまった。
「も、もう一度言って」
「え…なに、どういうことですか?」
「いいからもう一度言って」
「い、いずれは一人暮らしをしようと思っているので」
「がち?」
「はい」
「私たちのことが嫌いになったの?」
「そんなことはないです」
「じゃあ、なんでちょこたちから離れようとするの?」
「え…大学が実家から通える距離とは限りませんし」
絶対に実家から出たいと思っているわけではないが、うちから通える範囲の大学に行くとは限らない。そう思うと今のうちから少しでも自炊を出来るようにしておきたいと思う気持ちはやっぱりある。
「一人暮らし、始めたいの?」
「そういうわけではないですよ。始めなくちゃいけない可能性もあるかなと思っているだけです」
「私たちはついて行くよ、ねぇちょこ先」
「うん。もちろん、ついて行くに決まってるじゃん」
「え…どういうことですか?」
僕の聞き間違いでなければ姉さんたちは…一人暮らしをした時に付いて来ると言っているのかな。
「私とちょこ先は弟くんが一人暮らしを始めたら絶対について行くと思うよ」
「なんでですか?」
「心配だから」
「心配ですか?」
「うん、人暮らしだと栄養が偏ったりするし、色々と大変だと思うよ」
ルイ姉さんが言うようにそういうことはあると思う。大学生としてサークル活動や勉強やアルバイト、それ以外のことなどで自炊とかができない時もあるだろう。でも、だからといって姉さんたちが付いて来ることには…繋がらない気が。
「そうですね。そういうことがないようになるべく気を付けるつもりです」
「ううん。大丈夫だよ。ちょこたちが弟くんのご飯は作ってあげるし、洗濯とか掃除も含めてやってあげるから」
「…姉さんたちは付いてこなくて大丈夫ですよ」
「ついて行くよ」
「行かないわけない」
今まで姉さんたちに対して抱いたことがない感情が沸き上がって来る。
その感情の名前は『恐怖』。ここで姉さんたちを拒否しても、それを素直に受け入れてくれるとは思わない。それにもっと酷いことになってしまうかも。
「そ、そうですか…」
「私たちはどんな時でも弟くんと一緒にいるよ」
「ちょこもはなれない」
僕はこれからも姉さんたちと一緒に過ごさなくちゃいけないかな。
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