僕には四人の姉さんがいる。それぞれ個性に溢れていて、よくここまで性格が違うものだと感心してしまうほどだ。そしてそんなに個性に溢れた人たちの弟として育ってきた僕としては…早く自立したいという気持ちが人一倍強い。
姉さんたちは色々と過保護な一面が垣間見える。
それは僕の行動を制限するまでに至っているのだ。これだと僕は一人の人間としての人権すらも危ういところまで来てしまっている気がする。
だけど、姉さんたちも僕のことを考えて末に結論だからこそ強い態度を取れないのが正直なところなのだ。
今の僕はそんな難しい状況に至っている。
「あのフブキ姉さん、なんで僕の手を縛るんですか?」
「あ、ごめんね。これはただの保険だから気にしないでね」
「いや気にしますって。逆に自分の手が縛られているのにそれを受け入れていたら終わりな気がしますけど」
「大丈夫だよ。お姉ちゃんのことを信じて」
「あ、あんまり信じられないんですけど」
どうやっても信頼度はそんなに高くない。今までだってGPSを仕掛けられたり、すごい時は両手、両足を縛られてベッドに放置されて、姉さんたちに挟まれて寝たこともあった。ただの監禁と違うのは口元を布で覆われていないだけ。それ以外はほとんど誘拐犯が誘拐する時に行うことと同じだ。
そしてフブキ姉さんは僕の両手を後ろで縛り終えると立ち上がる。
「それじゃあ、いこっか」
「どこにですか?」
「リビング!」
「なぜ…」
「それは行けば分かるからね。あと白上がずっと隣で寄り添ってあげるからキッチンまでは心配しないでね」
「は、はい…」
高校生の自分が腕を縛られている、この状況を姉さんたちはどんな風に見えているのだろうか。どう考えてもおかしいとは思わないのかな。
「フブキ姉さんはなんでこういうことをするんですか?」
「そんなの弟くんのためだよ。それ以外の理由なんてないよ」
「そ、そうですか」
もう姉さんたちはちょっと壊れているのかもしれない。それにこれが何か大きな出来事があった後にこういう風になったわけじゃなくて、物心付いた頃から姉さんたちは変わっていない。
だからもう手遅れかもしれない。
そして僕はフブキ姉さんと一緒にリビングに移動する。
「姉さんたちはここにいたんですね」
リビングのソファーにはすいせい姉さんとトワ姉さんが座っており、床にあやめ姉さんがなぜか座っている。僕の状況を理解してまずはトワ姉さんが僕の近くに歩みを進めて来る。
「ど、どうしたんですか、トワ姉さん」
「弟くんのことをトワは大好きだよ」
「…はい。分かってますよ」
「それじゃあ、そこの椅子に座って」
そして指差されたのは普段全員で食卓を囲む椅子。さすがに逆らうこともできずに…座ると急にトワ姉さんが僕の膝の上に座って来た。
「…ど、どうしてこんなことになっているんですか?」
「それはトワが弟くんのことが好きだから」
「それが弟の両手を縛り付けて椅子に座らせ、膝の上に座るという行動に結びついているようには思えないですけど…」
「え、普通だよ。だってこうしておかないと弟くんがトワたちから逃げちゃうかもしれないじゃん」
「逃げませんよ。それに逃げようとするとしたら、それは姉さんたちの所為ですよ」
「トワたちはただ弟くんと触れ合いたいだけ」
「…その触れ合いたいっていう表現はちょっとやめませんか。姉弟のその言葉はちょっとまずい感じがするので」
それに目の前のトワ姉さんの目は肉食獣と同じものだ。僕がここから逃げられる可能性はゼロだ。まず両手を縛り付けられた時点で逃げたとしても捕まるのが目に見えている。
いくら姉さんたちがおかしいからといって、姉さんたちに怪我を負わせるようなことはしたくないし。
「ううん。触れ合うんだよ」
するとトワ姉さんは僕の上半身を触り始めた。それも普通に触るって感じよりも少し嫌な触り方。
「触るにしても、その触り方は止めてくれませんか?」
「むりかな。トワは弟くんの体を感じていたいの」
「なにかトワ姉さんってもっとクールな感じの人じゃなかったですか?」
「そう?」
姉さんたちは年齢は僕の一つ上で同じ高校に通っている。そして四人はそれぞれファンクラブが出来てしまうほどの人気。学校でのトワ姉さんはとてもクールな人として知られており、あんまり笑わない人という認識を持っている人が多いと聞いたことがある。
そんなトワ姉さんが今は不気味な笑みを浮かべて迫って来る。
さっきまで普通にソファーに座っていた、すいせい姉さんが立ちあがってこっちに歩いてきた。
「だめだよ、トワ。弟くんはすいちゃんのものでもあるんだから」
「トワのものでもあるよ」
「それはそうだけどさ、トワだけで独占するのはだめ」
「それならすいちゃんだって弟くんのことを触ればいいじゃん」
「ならトワ、そこどいてよ」
「嫌に決まってるじゃん。弟くんの膝はしばらくトワの椅子なの」
いや、トワ姉さんの椅子ではないですけどねと内心呟くが、それを口に出せない。
「白上だって弟くんのことを触りたいよ。それにここまで連れてきたのは白上だよ~」
「余も触りたい!」
さっきまで動かなかった、フブキ姉さんとあやめ姉さんも急に動き出した。
最終的に膝に座っているトワ姉さんと僕を囲む形で三人の姉さんたちが立っている。
「姉さんたちは一体なにをしようとしているんですか?」
「すいちゃんは弟くんの体をしっかりと触りたいだけ。少しでも弟くんを身近に感じさせてよ。そうすれば、すいちゃんは満足だよ」
「白上も弟くんの全てを知りたいかな。体のどんなところがどんな感じなのかも白上は知りたい…」
「余は弟くんのことを抱きしめたい。そしたら次は弟くんに抱きしめられたい」
「トワはこのまま弟くんの肌に触れられるだけで幸せかな」
やっぱり姉さんたちは少しおかしい。学校での姉さんたちだけのイメージの人が今の状況を見たら脳がバグってしまうんじゃないかと思う。それぐらいに今の四人は…本当にやばい。
急に髪を触られたと感じたのと同時にあやめ姉さんの声が聞こえてきた。
「ねぇ…余と一緒に抱きしめ合おう余」
「それはいいですけど…」
「え、いいの!?」
「別に抱きしめ合うぐらいなら」
他の人たちの要望に比べればまだ全然大丈夫。姉弟の関係で抱きしめ合うのはちょっと不純な気もするが、別に体を触られるよりはいい。
「じゃあ今すぐに余が抱きしめてあげる」
あやめ姉さんはもう抱きしめたいという感じでうずうずしている。。
その様子を見て、僕はトワ姉さんに対して「少し退いてもらってもいいですか?」と言うと少し不満そうにしていたものの、退いてはくれた。
なので立ち上がって大人しく待っているとあやめ姉さんが勢いよく抱きしめてきた。
「弟くんの匂いっていいね。余はおちつく~」
「自分では分かりませんけどね」
「余はおとうとくんがずっと側に居てくれればそれだけいい余」
「…ずっと居られるかは分かりませんけど」
僕も学生のうちはお世話になると思う。でも、就職が決まったらこの家からは出て行くつもりでいる。こんなことを姉さんたちには絶対にいえないけど。
「余は弟くんのことを離さない」
「離してくださいね」
それから少しするとあやめ姉さんは他の姉さんたちに引き剥がされた。
次はすいせい姉さんに両肩を掴まれて壁に前で追いやられた。
「な、なんですか?」
「お姉ちゃんは弟くんのことをよく見てるんだけどさ」
「…はい」
「昨日、学校でさ女の子たちに囲まれてたよね?」
「あ、それはただ「言い訳は聞きたくないなぁ」
「べ、べつに言い訳っていう感じじゃ…」
「弟くんが女の子に囲まれてたっていうのは事実だしさ。お姉ちゃん以外が弟くんに近付いてたよね」
「…それはそうですけど…」
「すいちゃんはあんまり我慢が出来るような感じじゃないの。キミが女の子との距離が近いんだったら強行手段取っちゃうよ」
「き、きょうこうしゅだん?」
「うん、ずっとすいちゃんが学校でも弟くんの側から離れないよ」
そんなことをされたら僕はもう…学校でやっていけない。ただでさえ、姉さんたちと関わるのは最低限の生活をしているのにそんなことをされたら今までの学校生活が…。
「それは勘弁してくれませんか?」
「だったらさ…」
するとすいせい姉さんの目がさっきのトワ姉さんと同じ野獣のようになり、勢いよく壁ドンをしてきた。
「あんまり心配させないでくれるかな」
距離も近いし、目も直視できないぐらい怖いし。
しらばくして解放されると今度はフブキ姉さんがやってくる。
「フブキ姉さんも…」
「うん!じゃあ、いこうか!」
するとフブキ姉さんに連れられて、リビングを出て、二階へと足を進めた。そしてフブキ姉さんの部屋に入れられて、ベッドに押し倒されて体の色んなところを触られた。
後に彼は「あのことだけは絶対に思いだしたくない」と語るぐらいのものだったらしい。
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