僕の姉さんたちは学校でも人気。そしてそれぞれにファンクラブがあるほど。本当にかなり他人事だけど…かなりすごいこと。
「ねぇ…そらさんと手を繋いだりするの止めてくれない」
それぐらいの人気の姉を持つとこういうことは少なくない。いくら身内と言ってもファンの人からしたら男と手を繋いでいるように見える訳だし。だから最近、学校では特に姉さんたちとかかわりを持たないようにしている。家の中とかならさすがに監視されていないから大丈夫だと思うけど。
「はい。ごめんなさい」
――――――――――
そして学校から家に帰ると…暇なときは漫画は読んだりするんだけど今日はどうにもそんな気分にならなかった。
そんなときに廊下から大きな声が聞こえてきた。
「たのもう~」
大きな掛け声と共に…僕の部屋の扉を開けられた。
「入って来るならもっと静かにしてくださいよ」
「え~いいじゃん~~」
入って来たのは…すい姉さんとそら姉さん。まあ、すい姉さんが変なことをしないか、そら姉さんは監視に来たんだろう。
「ねぇねぇ、なにかあった?」
「な、なんにもないですよ!」
「ほんとにぃ~」
「本当ですよ。何も変わったことなんかなかったですよ」
「そっか。それならいいけど…」
そして部屋を出る最後にそら姉さんが少し心配そうな顔でこちらを見ていた。
「でも、何かあったら私たちにすぐ相談してね」
「はい」
やっぱり顔に出てたのかなぁ。うちの姉さんたちはすごく勘が良いんだよね。まあ、もう生まれてからずっと一緒に暮らしているし、お互いの事を知り尽くしている。だから少しの変化だけでも分かっちゃうんでしょうね。話さなくてもお互いの事を分かってしまうのは良いことでもあるけど、こういう時はかなり面倒ですね。
そして次の日からなるべく怪しまれないように…いつもと同じように姉さんたちと登校する。逆に一人で登校とかしちゃうとかなり怪しまれちゃうし。
「なんでお前が…すいせいさんの弟なんだよ」
「そらさんたちと一緒にいるな」
そんな時に僕の背後から聞き覚えのある声が聞こえてきた。後ろを向くとそこには…すい姉さんとアズキ姉さんが少しずつ歩みを進めてきていた。
「ねぇ…ちょっといいかなぁ」
目の前のファンの人たちの顔は…驚き過ぎて顎が取れそうなほど口を開けている。
「すいちゃんの弟に何を言っていたのか教えてくれないかな?」
「…え、えっと……」
「ねぇ、教えてよ。すいちゃんの大切な弟に何を言ったのか教えてよ」
「うん、教えて。アズキの弟くんに何を言ったの?」
笑顔で聞いているけど、すい姉さんもアズキ姉さんの目も笑っていない。近くに居るだけの僕もちょっと鳥肌が立っちゃうぐらい。
「な、なにも…言ってないです…」
「そうなの~?すいちゃんの耳には「そらさんたちと一緒にいるな」って聞こえたんだけどな」
それを聞いて…先輩たちは明らかに怯えていた。でも、その気持ちは分かる。だって家族の僕も怯えちゃっているし。
するとまたすい姉さんやアズキ姉さんの後ろから…また二人の姉さんがきた。
「聞こえたねぇ…。みこの弟をいじめるなぁ…」
「ロボ子の弟はとっても可愛いの…その弟を泣かせたらロボ子も何やるか分からないよ」
「お、おれたちはべつに……」
そして…最後の姉さんがついてきた。
「ねぇ…どうしたの?」
「そ、そら…さん」
「私たちってかなり弟のことを溺愛しているの。それはとっても…キミたちには理解できないほどに。だからさ、弟くんに何かあるとキレちゃうの。張りつめていた糸がプツンと切れちゃうんだ。ねぇ…キミたちは…私たちに喧嘩を売ったってことでいいんだよね?」
先輩たちは必至に首を横に振っていた。でも、僕は初めて見たかもしれない。そら姉さんがここまで怒っているところなんて今まで見たことがない。姉さんたちの中でも一番冷静な判断が出来て、皆をまとめるような役割を担っている人ですし。
「ごめんなさい!そらさん!」
「私に謝られても…ね」
すると…先輩は僕に向かって頭を下げてきた。
「すまなかった!」
「い、いや…大丈夫なので頭なんて下げないでくださいよ!」
僕の後ろの人たちが怖いけど…僕としてはそこまで謝られると逆に困る。それに僕にも非がないわけでもないですしね。やっぱり家ではいいとしても手を繋いでの登校とかはさすがにまずいですよね。いや、家でもそろそろ手を繋いでくるのを止めて欲しんですが。
「……本当にすまない!」
「大丈夫ですから!!本当に頭を上げてください!」
そしてそれから先輩たちには何度も謝られたが、その度に僕がずっと「もういいので」と言っていた。僕も後ろの姉さんたちが怖くて…早くこの場から立ち去りたかった。