2年生編1巻の最後から始まります。
驚愕の結果
「ま、満点って……これ、マジで?」
授業中のため話しかけてくる事は無いが、クラスの視線が明らかこちらを向いているのがわかる。
それだけオレが注目を浴びることをしたので当然と言えばそうなのだが。
今回のテストを機に、オレは実力を出していくと決めていた。
理由は様々だが、今後のオレの動きを考えるとここら辺りで実力を出していくのがいいだろう。
しかしそんな考えも束の間、授業終了のチャイムがなる。
放課後に入ると同時に近づいて来たのは綾小路グループの啓誠だった。
「清隆、ちょっといいか」
Dクラスでトップといっても過言じゃない成績を誇る啓誠だからこそ、今回のテストの結果に驚いているだろう。
そう、オレは今回のテストで全教科で満点を取った。
「悪いけれど後にしてもらえるかしら、幸村くん。顔を貸してもらえるわよね?」
それを押しのける形で割り込んで来たのは堀北だ。
「そうだな。悪いな啓誠。話は後にしてくれ」
「あ、ああ」
その他、様々な生徒から視線を受けながら教室を後にした。
しばらく無言で進んだ堀北は周囲に人がいない事を確認し、こちらを見る。
「勝負は数学のみだったはずだけれど?」
どこか諦めたような顔で問いただしてくる堀北。
「他の教科でも手を抜かなかっただけだ」
「そう…もう確認するのも愚かのようね」
「再戦を希望しないのか?」
「嫌味のつもりかしら?最後の方の問題文なんて理解すら出来なかったわ。あんなもの今の私に解けるわけないでしょう?いつになれば解けるのか検討もつかないのだから」
「数学に関して言っているのなら、多分大学とかじゃないか?」
はぁ、とため息をついてジトっとした目でオレを見てくる。
「悔しさを感じる事すらおこがましいのかもしれないけれど、認めるわ。これ以上食って掛かると、自分がバカにしか思えなくなってしまうもの」
ここで堀北に何か言っても逆効果になりそうだな。
「ここにいたのか綾小路」
担任の茶柱がオレを探しに来たようだ。
「オレにどんな用件ですか?」
「随分と冷たい反応だな。私の助けがなければ先日は大変だったんじゃないか?」
「そうですね。その節では助かりました」
先日とは宝泉との出来事だろう。
茶柱が来なければナイフを刺した状態で寮に帰らなければならなかったからな。
「本題に入って下さい」
啓誠たちを待たせている手前、余り時間を掛けない方が良いだろう。
一方で茶柱は堀北の方を一瞥し、何かを考えているようだった。
「茶柱先生。その話、私も聞いても良いでしょうか?」
「ああ構わない。クラスの未来に関わるかもしれないしな」
茶柱はそういいながらこちらを見てきた。
「綾小路、お前に一体何があった」
「…と言いますと?」
「とぼけるな。これまで散々手を抜いてきたのに突然実力を見せた理由はなんだ」
「気持ちの変化ってやつですね」
本当のことを言っても理解されるとは思わないので、適当に言葉を並べて置く。
「そうか。ではその変化した気持ちは今後も続いていくと思っていていいのか?」
「そうですね。今後は隠すつもりは無いですよ」
「……」
予想外の返答に面食らったのか、言葉が出てこない茶柱。
「綾小路くん。今回のあなたの成績には本当に驚かされたわ。だけれど、茶柱先生に言ったことは本当なのかしら?」
「本当だ。今回他の教科で手を抜かなかったのに何か違う理由があると?」
「……わかったわ。取り敢えずは信じることにする」
信用されてないのが伝わって来る。
これからの行動で示していくしかないようだ。
「まずは皆になんて言うか、だな」
実力を発揮するにあたって、まず一番の課題はオレの違和感を無くすことだろう。
今まで目立ってなかった生徒が、いきなりこんな馬鹿げた点数を取るのはどう考えても不自然だ。
「それについても考えてはいたのに、誰かさんの想定外の行動で考え直しよ」
「堀北がどうフォローしようが、オレ自身の発言が大事になるだろうな」
そうは言ったものの、伝え方はもう決めてある。
誤魔化すつもりはない。
「綾小路、二人で話したい事がある」
堀北の嫌味をスルーしていると、少しの間沈黙を貫いていた茶柱から邪魔が入る。
「また教室で。早めに帰って来なさい」
「ああ」
堀北の姿が見えなくなった所で、茶柱が口を開く。
「堀北の手前はっきりと言えなかったが、少しだけ納得がいった」
やはり二人きりの話とはホワイトルームに関してか。
「特殊な家庭環境、坂柳からの執着、異常な能力。謎ばかりのお前だが、少しは片鱗が見えたと思っている。今回の結果を機に真嶋先生も改めて気を配ってくれることだろう」
「そうですか。それは良かったです」
「お前が言うとどうしても薄っぺらく感じてしまうな」
思ったより直球の言葉に少なくないショックを受ける。
「今後、強硬手段に出てくる可能性は?」
「と、いいますと?」
「ナイフで刺されるなんでただ事ではないからな。父親が動いているんじゃないのか?」
「それとは無関係ですよ」
先日の夜の件は茶柱に具体的には報告していない。
オレの父親絡みと疑うのも仕方ないだろうが、事はそう単純じゃない。
あの試験では何人もの1年生にチャンスが与えられているはずだ。
実際に2000万プライベートポイントの試験はホワイトルーム生ではないと結論づけている宝泉が動いていたしな。
「ですが、先日の件に理事長が絡んでいるのは間違いないと思っていますよ」
茶柱の月城への警戒度を上げつつ、敢えて明言しないことで茶柱の行動を制限する。
「そうか、こちらとしても一層気を配ろう。今回のテストで、お前が私の想像も付かないほどの能力を持っていることが遅かれながら理解させられたしな」
そういうと茶柱はオレの前から去っていった。
デメリットの多かった満点だが、少なからず副産物もあったようだ。
理事長からのお呼び出しは……ありません!
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