ようIf ~2年生編~   作:たいたく

9 / 12
皆さんアンケートにご協力ありがとうございます。
一番多投票数の多かった5000~10000字辺りで頑張って投稿を続けて行きたいと思います。

今回早速文字数が少ないんですが、区切りが良かったので……。


無人島試験へ向けて

 一之瀬クラスへの用を済ませた後、オレは玄関へ向かっていた。

 

「よう!」

 

 突然オレに声をかけてきたのは、2年Bクラスの石崎大地だ。

 

「連絡しても携帯に反応がないから直接来たぜ!」

 

「どうしたんだ?」

 

 このタイミングでの接触など、一つしかないだろう。

 無人島特別試験。

 だが龍園の姿が見られないことから、違う可能性もあるかもしれないな。

 

「そういやお前、勉強も得意だったんだな。今度教えてくれよ!」

 

「ああ、時間があれば」

 

 今のテンションの石崎なら、オレの部屋まで押しかけてきそうだ。

 

「っと、そうだった。綾小路、ちょっとついて来て欲しいんだ」

 

 有無を言わさぬ笑みと大声で手招きして歩き出す石崎は、どんどんと進んでいく。

 下手にここで話そうとして騒がれても、注目を集めるだけだろう。

 待ち合わせまでの時間は余っているし、石崎の後を追うことにした。

 しかし、角を曲がるといきなり、あるはずのない大きな壁が目の前に現れた。

 その壁と見間違った生徒は、石崎と同じクラスメイトの山田アルベルトだ。

 

「Hey」

 

「……Hey」

 

 状況が良く分からないな。

 

「こんにちは綾小路くん」

 

 ひょっこりと、アルベルトの傍からひよりの声が聞こえてきた。

 

「嫌な予感がしてきたから、帰っていいか?」

 

「んだよ俺とお前の仲だろ?付き合えって、な?」

 

 オレの背後に回ったアルベルトが、その巨体の力を惜しげもなく使い羽交い絞めにする。

 そして更にひよりがオレの腕を自らに引き込んで2人がかりでオレを捕獲する。

 

「ごめんなさい綾小路くん。逃がすわけには行かないんです」

 

 ひよりの存在で特別試験の説が再び浮上してきたか。

 

「今からアルベルトくんの部屋に連行させてもらいますね」

 

 腕を組んでいるひよりは笑顔でそういうと、周りに見せつけるように歩き始めた。

 

 

 

 

 

 初めて訪れるアルベルトの部屋。

 国旗マニアなのか、そこには様々な国の国旗があった。

 

「本題に入ってくれ」

 

「なんだよ、この後用事があったのか?」

 

「ここまで長引きそうだとは思わなかったんだ」

 

 借りるぞ、と言ってオレはアルベルトの部屋にある充電器を借りてスマホに挿す。

 アルベルトが親指をグッと立てていたのが印象的だ。

 

「申し訳ありません、綾小路くん。先程も言いましたが今回は引けないんです」

 

「特別試験のことか」

 

「はい。この試験は早めに動くのが大事ですから」

 

 ひよりがそこまで言って、石崎が我慢できないように口を開く。

 

「綾小路、次の特別試験でグループを組もうぜ!」

 

 頭ごなしに否定するつもりは無かったのだが、疑問ばかりが浮かんでくる。

 石崎の様子を見るに、勢いで言っているのだろう。

 ひよりの方を見ると、こちらの視線に気づいたのかニコリと微笑んだ。

 ニコッ、じゃないが……。

 

「ここまで連れてきてもらってすまないが、もう決めてある」

 

「決めていても、まだ申請してないですよね?」

 

 OAAのチェックは済ませてあるのか、ひよりにそう返されてしまう。

 南雲との勝負に堀北との取引。

 これ以上の厄介事は勘弁してほしいというのが正直なところなのだが。

 しかし、ひよりには何か別の思惑があるように見えるな。

 

「オレは今回、単独グループで戦おうと思っているんだ」

 

 厳密に言えば少し異なるが、ここは正直に話しておく。

 

「それは……驚きました」

 

「だろうな」

 

 この特別試験、茶柱の言葉を信じるなら人数が多い程良いとのこと。

 退学もかかっている上、単独グループなど普通の生徒からしてみれば異様に映ってしまうのは仕方がない。

 

「なんでグループを組まないんだよ?多い方がいいんじゃないのか?」

 

 石崎から当然と言ったように疑問を持ったようだ。

 

「必ずしもグループを組んだ方がいいとは限らないからだ」

 

「どうしてだよ?」

 

「無人島試験の内容が説明されてないからですね」

 

 ひよりがそう補足してくれた。

 だが言いたいことはまだある。

 

「それに石崎、この作戦を考えたのはお前か?」

 

「あ、ああ。どうしてわかったんだよ……ってそれはいい、やっぱり龍園さんじゃなきゃ駄目なのか?」

 

「そうじゃない。別にこの立案者が龍園だろうと石崎だろうと関係ない」

 

「……?」

 

 オレの言いたいことが見えてこない様子の石崎。

 しかしひよりには伝わっているようだ。

 

「綾小路くんにとってメリットが無いのでしょう。独り占め出来るはずの上位報酬を分けないといけないですし、何よりグループを組むなら自分のクラスの生徒と組むはずですから」

 

「そこでなんだが、オレから提案がある。もしあるカードが手に入ったらオレに回して欲しい」

 

 検討が付かない、とひよりが首を傾げて訪ねてくる。

 南雲との勝負を知らなければ、オレのしていることは意味不明だろう。

 

「あるカード、ですか?」

 

「ああ。詳細は追って説明する」

 

「そのカードを綾小路くんに渡せばグループを組んでくれる、と?」

 

「悪いがグループについては諦めて欲しい」

 

 指定した生徒のサポートがオレしか出来ない以上、グループを簡単に組むことは出来ない。

 

「わかりました。ですが綾小路くん、それだとこちらが損をするだけになりませんか?」

 

「それは大丈夫だ。なぜなら――」

 

 オレの考えていたことを話した。

 ここで断られても違うところに話を持っていくだけだが、間違いなく龍園は乗って来るだろう。

 

「なるほど。これはこの場で決めることは難しいですね。ですが疑問も残ります。なぜ自分のクラスで実行しないのでしょうか?」

 

「カードを確実に手に入れるため、だな」

 

 堀北が確実に手に入れる保証はない。

 それならば莫大な餌をチラつかせてでも保険をかけておいた方がいい。

 堀北よりも、龍園の方が確実に成功するだろうからな。

 

「……カード一枚を手に入れるためだけにしては、破格で、怖ろしい提案ですね」

 

 成功すれば莫大な見返り。

 だが失敗すればかなりの出費になってしまうだろう。

 まぁもっとも、龍園が受けないと言えばそれまで。

 だがオレはこの提案を龍園が断ることは無いと思っている。

 

「グループの話は申し訳なかったが、石崎たちの思いは伝わった」

 

「なんか納得出来ねぇけど、わかった!またな綾小路!」

 

「有り難うございました、綾小路くん」

 

 終わり方は想定外だっただろうが、ひよりの目的はここにあったようだ。

 元々簡単にオレがグループを組まない、組めないことを分かっているからこそ、組みたいという意思を見せておくことが重要だと判断した。

 そんなひより達を背に、オレはアルベルトの部屋から脱出した。

 

 

 

 

 

 オレは荷物を部屋に置き携帯の電源を付けると、メールが受信されていることに気づいた。

 届いていたメールには『今から会って話がしたい』という簡素なもので、その他は場所と時間の指定がされているのみ。

 携帯の充電が切れていたため、既に指定された時間が迫ってきている。

 着替える余裕がなかったのでオレは、そのまま待ち合わせの場所へと足を運んだ。

 

「来たか。綾小路」

 

「悪いな神崎。少し遅れた」

 

 ひっそりとしたところに置いてあるベンチに腰かけている人物がいる。

 2年Cクラスの神崎隆二だ。

 南雲との勝負成立後、こちらからメールを送った人物でもある。

 

「あのメールは一体どういう事なんだ?」

 

「全て事実だ。オレは次の特別試験、一之瀬を勝たせる」

 

 オレが送った内容とは、一之瀬の手助けをするというもの。

 内容を詳しくは書いていなかったため、その深堀りがしたいのだろう。

 

「……話を聞こう」

 

「実は次の特別試験で南雲生徒会長と勝負をすることになってな。手助けを受けないよう内容は言えないが、オレは一之瀬に賭けることにした」

 

 そういうと理解が追い付かなかったのか、神崎が動揺をあらわにした。

 いつも冷静沈着な神崎のこのような顔は珍しい。

 

「生徒会長と勝負するだと?それに一之瀬に賭ける?……にわかには信じがたい話だな」

 

「一之瀬を勝たせるだけだ。Cクラスにはプラスな部分が多いだろう。だが条件がある。それは一之瀬に単独グループになってもらうことだ」

 

「単独グループだと?言っている意味が分かっているのか」

 

「それについては安心してくれ。オレは増員カードを使って試験開始直後に一之瀬と同じグループになるつもりだ」

 

 堀北とひよりに頼む予定である増員カード。

 このカードは男女の割合を無視するため、男子と女子が一対一でペアになることが可能となる。

 トレードのタイミングさえ調整できれば、南雲に後出しをさせる心配はないだろう。

 メリットの多い提案。

 もちろん上位に入った時のクラスポイントは分散されてしまうが、AクラスやBクラスに取られるよりはマシなはず。

 ただオレの読み通りなら、神崎という男はこの話を簡単に了承しない。

 

「聞きたいことがある」

 

「いいだろう」

 

「一之瀬は優秀な生徒だ。お前と組むことで上の順位を狙うことも出来るだろう。だが確実に上に入れる保証は無い」

 

 やはり神崎は仲間意識の強いCクラスの中でも、攻めに転じる必要があると考えている数少ない生徒。

 そしてそれは、オレの提案を受ける可能性が高いということでもある。

 

「オレを信用してもらうしかないな。だがそうだな……上位3グループに入れなければプライベートポイントを支払ってもいい」

 

「その必要は無い。あまり舐めてもらっては困る」

 

 どうやら神崎はオレを試していたようだ。

 自分の観察眼に自身を持っている、あるいは今この場で見極めるために呼び出したのか。

 

「他にもお前自身の動機やクラスの意向など、聞きたいことは山ほどある」

 

「答えられないものばかりだな」

 

「ならいい。重要な点では無いしな」

 

 話は終わりだ、とでも言うように神崎はベンチを立つとこちらへ体を向ける。

 その瞳には迷いが見えた。

 どうやら神崎が本当に聞きたかったことは、メールの件では無いようだ。

 

「綾小路……お前の目にはどう映った?」

 

 間違いなく俺を教室へ呼び出した理由だろう。

 神崎はCクラスの現状をオレに見て欲しかったのか。

 

「Cクラスへ来させた理由だな」

 

「ああ」

 

「一之瀬の発言に対して懐疑的な目すら向けない、同調圧力の強いクラス」

 

 Cクラスでは一之瀬こそ絶対。

 一之瀬が白と言えば黒も白になる。

 

「俺は今のクラスではAクラスに上がることは不可能だと思っている」

 

「そうだな。今の一之瀬のクラスではAクラスになることは出来ないだろう」

 

「どうすればいい?俺は……」

 

 神崎はずっと苦悩していたようだ。

 周りが一之瀬の考えに疑問を持たない中、自分一人だけがそのような考えを持つのは辛かったはずだ。

 だがオレが簡単に答えを口にすることは出来ない。

 

「悩んで、失敗を繰り返しながら行動するしかないんじゃないのか?」

 

「……ああ、そうだな」

 

 そう返した神崎は、どこかに心を置いてきているようだった。

神崎には成長してもらわなければないらない。

その結果、どういった判断を下すのか。

破壊か、改革か。

それはこれから分かっていくことだろう。




アクティブな綾小路くん。

文字数について。(今までは2000~3000)

  • 2000~3000
  • 3000~4000
  • 5000~10000
  • 10000以上
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。