大いなる緑(GREAT GREEN)   作:矢寿紀張

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史郎の秘密がだんだんわかってきます。それに対してミユキの気持ちはどうなるのか。


史郎の行動(改訂版)

 翌日からミユキは毎日おとなしく史郎の帰ってくるまでテントで待っていることにした。史郎は相変わらずミユキより早く起き、飛行機まで出かけ夕方になると帰ってきた。日によっては何か飛行機から持ってくる時もあったが、ミユキには興味の無いものばかりだった。史郎はそれを自分のテントに持ち込んだりしていたが、何をしているか全く解らなかった。

 ミユキが退屈な一日を過ごすようになって一週間が経った。その間に救助らしいものの来る形跡はまったく無く、さすがに、史郎も先行きのことが心配になってきた様子だった。史郎はとうとう、こうミユキに切り出した。

「もう十日近くたつのに、全く救助の来る気配が無い。飛行機が墜落したことがわからないことはないから、多分墜落地点がわかっていないんだろう。炎上していないから目印になるものが無いし、近くに人が住んでいる様子もなさそうだから、見当違いの所を捜索しているのかもしれない。この分だと先に食料が尽きてしまう恐れがある。今残っている食料をもたせるために、食べる量を減らそう。」

ミユキは少し驚いたが、史郎の言うことはもっともだと思ったので、従うことにした。そして、その日から昼食なし、夕食半分で過ごすという提案を承諾した。

 ミユキは特にこれと言ったことをしているわけではないが、さすがに昼食を抜くと午後は空腹感が増してきた。そうなるといろいろ頭の中に浮かんでは消えすることがたくさんあった。

ミユキは史郎のことを考えはじめた。史郎については解らないことが多くありすぎた。

「あの人はいつ朝食を摂っているんだろう。飛行機の方へ行って一日何をしているのだろう。そういえば、今までも昼食を持って出かけていない。昼食はどうしていたのだろう。いつも食料はもう一つのテントから出しているけど、飛行機の方にもっとあるのだろうか。向うで食べているのかなあ。もしかしたら今日も自分だけ食べているのかも。」

ミユキは史郎を疑い始めた。

「今まで何も思わなかったけど、食料はどれくらいあるんだろう。ちょっとテントの中を見てみよう。」

そう言って、ミユキは食料の入っているテントの中へ入っていった。テントの中は見慣れた缶詰やレトルトが入っているとわかる箱が置いてあった。しかし箱の中には数えるほどしか残っていなかった。横にある箱はすべて空になっていた。テントの中には箱のほかには、煤けたアタッシュケースが二つと、何か外国語で書いてあるレポートのようなものの束が目に入った。ミユキはレポートらしきものを手に取った。

「あの人は学者だと言っていたから。研究レポートかしら。これは英語じゃないわ、ドイツ語みたいね。全く読めないわ。」

そう言いながらミユキは数枚をめくっていった。何かわからない記号やグラフが目に入ったが、それが何をあらわすか全くわからなかった。しばらくめくると黒っぽいが少し緑色がかったブタの写真が貼り付けてあった。

「変な色のブタ。」

そう言いながら、ミユキはレポートをこれ以上見るのは止めて、元の位置に戻しテントを出た。

「明日は飛行機のとこまで行ってみよう。頼んでも無理だろうから、出かけた後にこっそりついていこう。そうすればいい。」

 夕方になって、いつもと同じように史郎が帰ってきても、ミユキは昼間見た食料やレポートのことは何も話さなかった。言えばひどく怒るだろうと思ったし、明日飛行機までついていく計画が駄目になっても困ると思ったからだ。

 ミユキは翌朝とうとう飛行機の方へ向かって歩き始めた。史郎は思ったより早く出かけたみたいで、既に飛行機のあたりまで行っているであろうと思われた。別に追いつく必要はないため、ゆっくりと歩いていった。遠くからしか見たことの無かった飛行機の残骸は、歩くに連れてだんだん目の前に迫ってきた。

 現場の惨状は、ミユキが考えていたよりもずっと酷いものだった。大小の金属片があたりに散らばり、中には地面や岩に突き刺さっているものまであった。足元に気を付けていないと人間の手や足が落ちているような気がした。ミユキは、史郎が言っていた「バラバラになった屍体が散乱している」と言う言葉を突然思い出した。でも、ここで引き返すわけには行かないと勇気を出して前に進んだ。

 ところが、飛行機の傍まできても史郎の姿は見えなかった。しばらく岩陰に隠れてあたりを観察していたが、時折吹く風によってなびく草以外に動いているものはなかった。ミユキは史郎の言っていた後部座席の割れ目から中を覗いてみることにした。そこは酷いありさまだった。床は血の海だった様子で、どす黒いネトっとした液体が溜まっていた。座席はあたりに飛び散りぐちゃぐちゃになっていた。その隙間には無数の屍体が挟まっており、ムッとする屍臭が漂っていた。まさに地獄絵さながらだった。ミユキは気持ち悪くなり急いで外に出た。とても中に史郎がいる様子ではなかった。

「やっぱり言っていたとおりだったわ。」

ミユキはそこから小走りに走っていった。まだ、今見た光景が目から離れなかった。急いでその場から、できるだけ遠くに離れたかった。10分ほど走って、やっとミユキは落ち着きを取り戻し、あたりを見回した。さっきまでいた所にあった飛行機の尾翼ははるか後方になっていた。あたりは細かい金属片が所々にあるだけで、何も事故の痕跡らしいものはなかった。ふと見ると、100メートルほど先の岩の上に史郎のシャツが置いてあるのを見つけた。

 ミユキはその岩のもとへ駆け寄り、岩を回り込むようにして裏側を覗いた。やはりそこには史郎がいた。史郎は上半身を裸にして草の上に寝転がっていた。そして、ミユキが近づいてきたのを感じて半身を起こした。そのとたんにミユキは心臓が飛び出るほど、さっきの光景を見た時よりもずっと驚いて大きな悲鳴を上げた。

 




ミユキが見たものは何でしょうか。クライマックスに続きます。
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