晴れた昼間、ハンモックに身を沈め休んでいた。
窓から入る乾いた風がとても心地よく、前髪をさらりと撫でる感触がこそばゆい。瞼を閉じても感じる日の光をぼんやりと眺めていた時、ふと雲が太陽を隠し影を差したように薄暗くなった。
「……?」
風の匂いが変わった。アスファルト、それに草と土を混ぜた香りを乗せた風に人の体臭が交ざる。
目を開くと視線の先で窓枠に足を掛けた人影が見える。逆光を背に少女が前のめりに屈んで……跳んだ。
「――がっ!?」
向かって来た彼女に足を振り上げた。
俺の右足が呻き声と共に顎を打ち上げ長い金髪が翻る。そのまま動きを止めた少女は空中で勢いを失い、ハンモックの上……俺のへと覆いかぶさるように倒れこんだ。
ぎしりと音を立てながら左右にハンモックが揺れ動く。彼女を体の上に乗せたまま揺れが収まるのを待つ間、耳元に呼吸音は聞こえるが起き上がる気配がない。
綺麗に顎に入ったからな、すぐに帰ってくるだろうが意識が飛んでしまったのだろう。
「……重い」
肩を押し退けてハンモックから追い出す。ひっくり返って落ちる最中浮遊感で意識が戻ったのか、床へ衝突して小さな悲鳴が聞こえた。
むくりと起き上がり、すぐに立ち上がった
「おはようございます」
凛と佇まいを直してかっこつけているが、顎が赤くなっていて台無しだ。
「これで7連敗か?」
「……うるさいです」
トキがアジトに来てこれで6回目の襲撃。
ドアを開けた瞬間に横から襲ってきたり、飯を食ってる時に襲ってくるなど色々工夫しているのだが、基本的全て奇襲は失敗に終わってる。
俺が彼女を此処に誘った手前、襲うのを止めろとも言えない。
こうして日々ちょっかい掛けられる羽目になったのだが、一度あしらえば大人しくなるので今は放ったらかしだ。
「どうして寝てないのですか」
「お前だって寝てないだろ」
「私は慣れているので1週間ぐらい寝なくても大丈夫です」
そう言って近くにあった段ボールの上を手で払い腰を下ろす。そういえば、モエとコユキも数日程度なら寝なくても支障がないって言っていたな。
支障がないとしても毎日しっかり睡眠を取れた方が体の調子は良いらしいが。
「私、リーダーが寝ているところ見た事ないのですが」
「……お前みたいな奴が居るからな。眠りが短いし浅いんだよ」
爽やかな昼間に何故睡眠を取っている前提なのかは、俺たち烏合の衆が夜を基準に活動しているからだ。
トキの口ぶり的に、ここ数日の間俺の寝込みを狙っていたのだろう。やけに昼間に部屋へと来る気がしてたが、そういう事だったのかと一人納得する。
満足した俺はゆっくりと瞼を下ろそうとした。今日は天気がいい、雲ひとつない快晴と言うわけではないが、こんなにも風が心地いいんだ昼寝にするにはうってつけだろう。
まぁ、寝る事はないのだが、こうやって静かに骨を休めるだけ楽になる。俺の隣に人が居なければもっと気を落ち着ける事ができるのだがな。
「……何してんだ?」
「寝るまで待ってみようかと」
「帰れ」
「暇です」
彼女に顔を向けてみれば、部屋に落ちていた空のペットボトルを指で押して遊んでいた。手持ち無沙汰なのか、無表情で手遊びを続ける姿を見るに確かに暇そうである。
「どっか遊んでくればいいだろ」
「……と言われましても」
寝ているのか出かけているのか知らないが、コユキなら偶に賭博場を求めて出かけるし、モエは引きこもってパソコンと睨めっこでもしている事だろう。
お前だって別に好きな事やってれば良いじゃないかと、そう話すのだが彼女は要領を得ない様子で返事する。
「……私、趣味と言いますか、好きなものが無いです。元々無趣味ってのもありますが」
趣味嗜好がないか……俺も似たようなものだが、彼女と違う所があるとすれば暇を認知すると耐えられないところか。
『君たちぐらいの年齢ならそんな物ではないか?』先生がそう呟く、別に俺は暇を持て余す事を苦だと思ったことがないのだが、確かに少女とも呼べる彼女たちぐらいの年齢なら退屈なのかもしれない。
『私は君にも言っているのだぞ』
「……そうか、だが此処に居てもする事なんてないぞ」
仰向けから横向きになってトキの方を覗く。彼女はもう飽きてしまったのか、ペットボトルを指先だけで振りかぶって投げ捨てた。
綺麗な放物線を描きながら俺の上を飛び越え、綺麗にゴミ箱の中へと入っていった。
「リーダーが居るじゃないですか」
「俺を玩具にでもしたいのか?」
「……リーダーって、小さいからお人形さんみたいですね」
「勘弁してくれ」
身体を伸ばして腕を天井に向ける、開いた手の白く指先は爪までも綺麗に整っている。もう、二ヶ月経つかどうかって所だろうか、生理現象が起きない時点で少し思っていたが、爪も髪も初期から変わった様子がまるでない。
スラムに居た頃は爪なんて少し削ってから、指で伸びた所を剥がしていたものだ。伸びなくなって手入れする必要が無くなったのは楽になって良いと思うだが、この感じからすると身長も伸びる事がない様な気がする。
高身長とまではいかなくともあと拳3つぐらいは背が伸びる事を祈りたい。どこに行くも、誰に会っても見下ろされてしまうはかなり不快なのだ。
「リーダーも寝ないなら出かけませんか?」
「断る」
特筆して外出する用事がないのであれば、部屋に居る方が良い。モエの事を引きこもりだと笑ってはいるが、俺も似たようなものかもしれん。
「……暇なら掃除でもしてくれ」
最近、夜に活動する事が増えた事もあってコユキが部屋を掃除する機会が減った。
実際にコユキが掃除するわけではなく、業者を呼びあるゴミ全てを持って行ってもらうだけなのだが、真夜中に営業してる所なんてないため部屋にゴミがたまり続ける一方なのだ。
本来なら俺自身が掃除するべきなのだろうが、掃除なんてした事もないし、しようと思ったこともない。
そもそも、ゴミが散乱し足の踏み場も選ぶような空間ではあるが、俺からしてみればまだ綺麗な部屋だと感じている。
「ご自分で掃除はしないのですか?」
「どう見たって綺麗だろ」
ため息交じりに「出来ないのですね」何てとても心外である。本当に汚くなれば、手をかざしてあの空間に仕舞い込めば一瞬で綺麗にすることだって出来るのだ。
『勘弁してくれ』
先生の嫌そうな声が聞こえる。だが無限に続くかと思えるほど広く、既に地面にはとっ散らかった武器が多数あるのだ。
あれ比べればこの部屋で生まれるゴミ何て少なし、糞尿がそこらに無い時点でマシだろう。
目を閉じれば簡単にあの町の光景が思い描ける。
奥へと進むほどきつくなる酸っぱい臭いと、気が遠くなる葉の煙が鼻を詰まらせ、嘔吐いてしまいそうになる不快感が常に纏わりつくあの道。
息をしているかどうかも怪しい痩せ干せた老若男女達が、路の隅で佇み死ぬ事も選ばず怠惰に蹲くまり何かを待っている。
生きようと藻掛けば暴力に押しつぶされ、嘲笑と共に糧を得る物乞い達が利行だなんて言える世界。
俺は、あの町以上に汚い世界を知らない。
「……気に障りましたか?」
「何が」
「いえ、顔がこわばっていましたので」
「……そうか」
顔に出てしまったか、思い出さなければ良かったと一人反省する。
思い出して心和むような場所ではなかった。帰りたいと帰郷心が湧くような所ではない。
何をどう考えても、あの町と比べればキヴォトスは何百倍も綺麗で眩しい。
顔を隠すように寝返りを打った。体を包むようなハンモックが心地良い、そんな俺の背中にトキは声をかけた。
「掃除したら、勿論対価があるのですよね。まさかタダ働きなんて……」
「……出かけたけりゃ付き合ってやるよ」
「まあ、いいでしょう。……私、掃除は得意なんです」
ふふんと自慢げに鼻息をならすと、彼女は何処からか袋を引っ張り出した。
掃除は慣れているのかトキは手際よくあたりを片付け始める。
そういえば、あの男の部屋も散らかっていたな。掃除などの雑用に慣れているのだろうか。
「俺は寝る」
「はい、終わりましたらお声がけします」
ハンモックに身を沈ませ目を閉じればまた、日の光が瞼を超えて眩しさを感じた。
白く輪郭のない光景の遠く一点をぼんやりと見つめる。息を吐くのと同時に体から力を抜いていき、意識を残したまま脱力していく。
段々と体の節々から軽くなり楽になっていく。それでも寝に落ちることは無く、意識という細い糸を三本を握りしめて放さない。
物を片付ける音を耳にしながら、呼吸で浮き沈みする自分の胸の動きと鼓動を感じた。
やがてしばらくすると、部屋に物音が止みドアを行きかうような素振りもしなくなった。日差しも時間が経つにつれて傾いてしまい、今はもう腰から下だけしか照らしてくれない。
流石に奴も飽きて帰ったのだと思ったのだが風切り音が聞こえ、予感がして起き上がり飛んできた物を片手で瞬時に受け止める。
飛んできたのは白い手のひら程の球体だった。弾性がありつつもかなり硬く、新品同然の真新しいボールだ。
ぐにぐにと手ごたえのある感触を確かめながら、これを放った奴を見ると投げ終わった姿のまま固まって俺を見ていた。
「…………お目覚めですか?」
「ああ、そうだな」
ハンモックから足だけを下ろして向き合うと、悪びれる様子もなくトキは窓の方を指差して外へ行こうと誘われる。
見れば部屋は綺麗さっぱりに片付けられていた。物が減って床が見えるようになり、圧縮されたゴミが詰められていた段ボールは一個もなくなっている。
軽く磨いたのかテーブルや洗面台の上に居座っていた埃が消えており、全体的に見ても俺がこの部屋に来た時よりも清潔になったように見える。
本当に掃除が得意だったようだ。
「遊びに付き合ってくれるって言ってましたよね」
「言ったが……、何をするんだ」
「これを見て分からないんですか?」
目を丸めて分からないんですかとばかりに不思議そうな顔をすると、その左手を持ち上げて見せつける様に振った。
その手には彼女の手より幾分か大きい皮のグローブを着けている。
「キャッチボールですよ」
◯
◯
・
●
●
キャッチボールをするならと、ゴーストタウンから出てすぐの河川敷にやって来た。
聞けばこの地区もゴーストタウン同様に誰も管理してないらしく無法地帯らしいのだが、来た所見てみれば管理してない割には綺麗に整られた芝生が川の形に添って広がっていた。
どうやら時折ここで不良やチンピラが草野球をやっていたり、組同士の抗争をしてたりと色んな用途で使われているらしい。
「あの馬鹿たち芝生を刈るようなマメさがあったのか」
「いえ、抗争の度に芝生が燃えてはまた生えるので勝手に綺麗になるんです」
何度燃えても燃え失せないって事か?生命力強すぎるうえに生えてくるの早すぎだろ。
川辺の茂みをよく見てみれば色んな雑草が生えている。
その中に見た事ある植物が交ざっており、キヴォトスにきて雑草を食べる機会はとても減ったが大体どんな味か覚えていた。
当たり前の事だが、その中に知らない植物が交ざっている。いや、見た目が同じなあの植物もキヴォトスであれば違うものかもしれない。
人が頑丈であれば同じ場所で自生している植物も頑丈なのだろうか。琢磨し過ぎて頑丈で済ましていいのかは分からないが。
もしかしたら味も違うのかもしれない。久しぶりに食べてみようかと葉の裏側が白く、産毛が生えている草に手を伸ばすとヘルメットが川上から流れてきた。
抗争が起きたばかりなのかと思ったが、なぜ今頃流れ着いたのだろうか。
「……人が居なくて丁度良かったな」
「いえ居ましたが、ここも掃除しました」
「気合入りすぎだろ」
軽く川の水で草を浚ってから口の中に放り込み歯で磨り潰す。独特だが気にならない匂いと全く収まらない苦味が、そういえばそうだったなと記憶の味と一致した。
「何でヨモギを食べてるのですか」
「何となく」
今口にしたのはヨモギと言う草らしい。くちゃくちゃといつ飲み込めばいいのかとすり潰していると、トキは固い無表情で俺を見ていた。
「……噛むときは口閉じた方が良いですよ」
「そうか」
理由は聞かない。何故なら既にコユキやモエにも言われたし、無理に直そうと思わないからだ。聞かせてたくて口を開けてるわけじゃない、閉じると少し呼吸がし難くて嫌なだけだ。
「それでキャッチボールって何するんだ?」
「……そうですね。言ってもこうやって誰かとやるのは初めてなのですが」
トキは俺に皮のグローブを渡すと、一言おいて離れるように距離を取った。何度が左手のグローブにボールを鳴らすように戻し やがて手に添えたまま彼女は振りかぶった。
「ハッ!」
手から放たれたボールが一直線に俺へ向かって飛んでくる。何事も無ければ胸へと直撃するボールを、半歩ズレて半身で避けた。
「……何で避けるんですか」
「お前が急に投げたからだろ」
「そのグローブでキャッチして下さい」
「なら着ける時間ぐらい寄こせよ」
トキが呆れたような顔でため息を吐く。……俺が悪いのか?
彼女は気だるげな足取りから歩き始め、ゆったりと小走りへと変えて遠くへと転がったボールを追いかけていった。
先ほどよりも距離が遠くなってしまい、流石に投げないと思ったのだが、先ほどと同じようにトキが構えをとり始め、急いで左手にグローブを着けた。
振りかぶった手から再びボールが放たれる。直線をなぞるような軌道ではなく、僅かに山なりを描いて飛んでくるが力が、足りなかったのか俺へ届く前に地面へと落ちてバウンドした。
球速が落ちたボールをグローブで受け止める。掴み取るって感じより受けて勢いを止めた感触に近かった。
「次ーー!リーダーが投げてくださーーい!」
「……まあ、やる事は分かった」
つまるところ、このボールを互いに投げ合えばそれでいいらしい。とても単純な遊びだ。
物を投げるのはそこそこ得意だ。狙った場所に物を落として気を引いたり、力なくとも当たりどころが良ければ昏睡させることも出来るからな。
ボールを右手に持ち替えて、二歩、三歩とステップしてから腕を振る。トキの投げ方とは違い直線に近い軌道ではなく、角度をつけて大きい山を描くようにボールが放物線を描く。
落下地点であるトキの頭上へと向かって落ちていき、彼女もグローブを掲げてキャッチした。一歩もその場から動くことない正確な投球だと思う。
「……」
俺から受けたボールを右手に何かを確かめるとまた投げる。またバウンドしてそれを受け取り投げ返す。
晴れた昼過ぎの空で太陽の前を雲が通り過ぎ、緩やかに時間が過ぎ去っていく。
ボールを投げて受け渡すそんなやり取りを何回か繰り返した後、突然トキは投げ返さずに手を止めて俺のもとへと駆けよって来た。
「今度は何だ、キャッチボールってこういうもんじゃないのか?」
「いえ、概ね私が思っていたキャッチボールです」
「じゃあ何だ」
「リーダーの球が正確過ぎてつまらないです。何なら怖いまであります」
パタパタとグローブを開け閉めしながら不満をこぼす。ボディランゲージはふざけているのに顔だけが真顔だ。きっと彼女の中では今。軽い冗談を言っているつもりなのだろう。
だが、俺だって文句を言いたい。この数回で分かったがキャッチボールってのは面白くないのだ。何せ、ただボールを受け止めては投げるだけなのだから。
「もとより面白いと思ってやるものなのか?」
「確かに思ってたよりは面白くないですけど、リーダーのせいで更に拍車がかかってます」
お前も思ってるのかよ。
「じゃあどうしろって言うんだ」
「……こう、アレですね。山なりじゃなくて真っすぐに、もっと早く、私に向かって取るのが難しい球を投げてください」
はあ、と長い溜息が自然と口から漏れる。「いいですか!私に!強い球を投げてくださいね!」爛々とした声で言い残しまた離れて行く。
彼女の背中を見つめながら、出会った頃の印象と本来の性格が随分と違い過ぎるなと思った。
見た目雰囲気から感じる真面目な硬い雰囲気のせいもあるが、実際に根がちゃんと誠実な奴だと感じるとこもある。
しかし、それに付随して真面目にふざける事もあり、そんな茶目っ気が割とコユキと気が合うようで、行く先々で急に梯子を外したかの様にちょける。
繊細なのにずぶとく、真面目に不真面目とでもいえば良いのだろうか。
遠くで彼女が手を振る。投げて来いとの合図だろう。
「……そこまで言うなら、しっかり取れよ」
ボールを五本指で鷲掴みにし強く握り込む。
正直、正確さを抜きにして全力で投げてしまうと、コントロールを失った球が何処に向かってもおかしくないのだが、彼女が言い出したのだから大丈夫だろう。
「――らぁっ!!」
「っ!?」
軽く助走をつけて吸った息を吐き出すとのと同時に、腕を全力で振り抜いて手から球を解放した。
風を束ねたかの様な音と共に吹き荒れて、手から離れたボールはトキの方へと向かうが僅かにズレている。
彼女は一瞬たじろいだが直ぐに表情を変えた。角度を変えない直線の如く真っ直ぐな球の軌道を読み、そこにグローブを向かわせるかと思ったが取った行動は別のものだった。
トキは大袈裟かと思える程その場から退けてボールを回避した。
避けられたボールはトキを追い抜き芝の生えた土手へと突き刺さって跳ねる。緩い土手の角度に球は高く跳ね上がり、目を細めなければ日差しの明るさに飲まれてしまうほど高く昇って行った。
「……ハっ!?」
声を上げたトキがボール追って駆けだした。どうやらアレをキャッチするらしい。
真っ直ぐ落ちてくるわけではないのでかなり取りづらそうだが、追いかける足取りは淀みがなく顔を上げて足を止めると左手を高く挙げた。
まるで初めから決まっていたかと思える程、球は綺麗にグローブへと落とされ河川敷に皮を叩く心地よい音が響いた。
「良しっ」
持っているボールを自慢したいのか、こちらに向いて見せつける彼女の顔は少し嬉しそうだ。
「お前いま避けなかったか?」
「あんなの馬鹿真面目に取ったら指が折れますよ。次は今の奴の1/4程度で真っ直ぐ投げてください」
投げ返されたボールを左手で受け取る。少し距離が近づいたおかげかバウンドすることは無かった。
「4ぶんの1って何だよ」
「……半分の半分で投げてくださいってことです」
半分の半分。今の彼女には俺の全力は余りにも重すぎたようだった。
肩の力少し抜いて大まかな感覚でボールを投げ放つ。力に意識を向けすぎたせいか角度が付いておらず、今度は俺の弾が届く前に地面へとバウンドした。
届くと思ったのだが思ってたよりボールに勢いが乗らなかった。0か100かの力加減は出来るのだが、何というかこの身体の出る力の幅が広すぎて細かい調整が難しく思う。
「……これも慣れていくしかないか」
全部を出してしまえば誰も寄せ付ける事がない。であれば加減を覚える必要はあるだろう。
俺は、俺自身の半分の半分も分かっていないのだから。