次、その次、そのまた次   作:画鶴

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最大の理解者って、己自身では無いのでしょうか。



#3 写し身、親しみ。

 右の手の甲に迸った熱はやがて赤く形を成し、3つに別れた入墨を残して薄く消えていった。

 

……これは? 

 

「それは令呪と言って、私と貴方を繋ぐ鎖、それ以上の接近、離縁も許さない仮初の絆、そんなもの、私達には不必要。ですよね?」

 

 それは……まぁ、まぁ……好きにすればいいんじゃないかな

 

「なら、さぁ──手を出して」

 

 薄く笑みを浮かべる彼女の顔には、悪意が見える、けど、彼は私を守ると約束してくれた、それだけでも充分に手を伸ばす理由にはなる……よね? 

 

 3つの紋様を差し出すように、吸い込まれるように彼の手のひらへ私の手を重ねる。

 

「えへへ……もう、後戻りは出来ませんよ?」

 

 はは、後ろは真っ白だ、戻ることなんかできないよ。

 

「では、私と共に…先を、2人で紡いで行きましょう」

 

 うん、ありがとう。

 

「えへへ……では、深く息を吸って、目を閉ざして、考えないで、委ねて」

 

 深く息を吸って、

 

 瞼をおろして

 

 思考を止めて

 

 全て君に……委ねる

 

 

 

「無駄を省き、余分を削ぎ、深境で心を溶かし混ぜ、より深い所で、分かち合いましょう……」

 

「────星月夜(デ ステーレン ナフト)。」

 

 

 光が──見える、寂しい白い光。

 目を瞑っているのに燦々と、私を包む太陽の如く強く差している。

 どこまでも真白で、広大、地平線も、水平線も、上も、下も空もない、ただ私だけの世界。

 いつも通り無感情で蒙昧な心象。

 だが不思議と孤独では無い、満ち足りている。

 

 それは……こんなところに君が来たからだろう。

 

「えへ、真っ白ですね 、流石に綺麗です、ピカピカで目が疲れますけど」

 

 

 綺麗……とは思ったことが無かった、作家の感性は素晴らしいね。

 

「心とはキャンバスのようなもの、当人の意志とは無関係に汚れ色付けられる不可視の芸術。貴方が凄いんですよ」

 

 そこまで褒めないでくれ、望んでこうなってる訳でもないし。

 

「では、……染めてしまいますが、これが最後です」

 

彼は一層真面目な声で、ただこちらの瞳を真剣に覗いている。

 

 

 どうやらここからは本格的に私が私では無くなるらしい

 

 じゃあ最後に、溶けると言っていたけど私は消えるのか? 

 

「おおよそは、ええ、けど、私にも分かりません、だって、初めてですし……不安になるような事、あまり言わないでください。手元が狂いますよ」

 

 それは怖いね、じゃ、もう見納めた。はじめよっか。

 

「わかりました、目が覚めると、もう貴方は退屈しないでしょうね、それが恋しくなる事もあるでしょうが、そこは2人、乗り越えて行きましょう……」

 

 彼の身体が黒く泥の様に溶け、ただ白かっただけの世界を、太陽の只中のような熱い無色を黒くひんやりと、星空の様に染め広がっていく。

 

 指先、足 、声、身体、全て彼の思い通り。

 

 無感傷で醜い「私」はもうここにはいない。

 

 あるのは彼が必要とする形、あり方の唯一無二の

「僕」だ。

 

 ただ委ねて、新しい目覚めを待った。

 

「……心象への侵食過程、完了及びに不具合等見受けられず、書き換えは完璧です……さぁ、目を開けて、私を見て」

 

 ぱちっと目を開けると、少し大きくなった彼が私を抱き寄せた。

 あ、おばあちゃん家みたいな匂い……

 

「えへ、お疲れ様です、新しい身体、……誰かに必要とされる貴方自身の感覚はいかがでしょうか?」

 

 彼が私を押し付けているせいで何も見えないが、様々な変化が起きているのだろう。

 

「えへっ……へへ……」

 

 ……あの 、苦しいしなんも見えないからわかんないんだけど、というか随分と大きくなったね。

 

「ゴッホですか? ……貴方と混じったから霊基こそ変わりましたが、スケールは変わってません……」

 

 ……どういう事? 

「ですので……見た目こそ変わりましたが私自身の身長とかは……」

 

 いや、そうじゃなくて、互いに性別変わってるし、なに、私が縮んだの? 

 

「あぁ、えぇ、まぁ……はい、その、ついでなので見た目もゴッホの好みに……ダメでしたか?」

 

 

 あぁ、好みの異性……て君、こんな若い子が好みなの? 

 

「えへ、ゴッホがそっち側になっても良かったんですけど、ゴッホ的には……その 、美少年を養うようなシチュの方が好きで、あの! そのうちお姉ちゃんって……!」

 

あぁ、もうわかったから、はいはい。

 

「そんなぁー……」

 

 姿見を通して今の外見を確認するが、姿カタチは全く今の彼……彼女と変わらない、なんならペアルックだ。

 

私の外見は彼女の好みらしいが…もともと彼女の姿は理想の己を投影した、その、なんだろう…盛り、というやつなんだろう。

 

 ……天才を理解できるのは天才のみ、なら好みが己を肯定できる自分自身になるのは必然。

 

 なるほど、私の役割は、うん、彼女の希望に沿って慰めることなんだろう。

 

 ではお姉ちゃん、これからどうすればいいのかな? 

 

「あ! 、なら当分ぎゅって……あぁ、今後の話ですか。そんな引かないで下さい、本当に、冗談ですって、真面目にします」

 

 ……態度には出さなかったんだけど、心が読めるの? 

 

「まぁ、はい、私と貴方を区別する令呪は消えたので、根元から互いに接続されてる私達は、一心同体といいますか……」

 

 なんだかお姉ちゃんを傍に感じるのは感じるけど、感情とかは全くだよ? 

 

「それは……まぁ感覚というか、感受性の差ですね」

 

 そういうものか

 

「ちなみに……ゴッホ頑張ってこの部屋も2人のマイルームにしちゃいましたよ!!!」

 

 見回すと、先程の保健室からは打って代わり、肖像画や彼女の作品が飾られているホテルの様な部屋の改装されていた。

 

 やけに便利だね……

 

「創作は芸術家のたしなみですからね、リソースは結構食べられましたけど、満足の出来……ゴッホ嬉しい!」

 

 わかったから、話を戻そっか。

 

「もっと驚いてくれていいのに!!! ……」

 

 はいはいすごいすごい、面倒くさいな。

 

「面倒くさいとか思わないでください、ハイ」

 

 ……

「……んぅ! (咳払い)正直な話、戦いなんかしたくなくて 、その、マスター(テオ)と爛れた向日葵ライフを送りたいところなんですが……ちゃんと参加しないと消去されちゃうんですよねぇ……」

 

 なんかゾクッとしたけど、まぁ君のしたいことを僕は否定しないよ。

 

「では……このマイルームより外、願望、野望渦巻く監獄を紹介しましょう……て言うかご存知だと思うんですけど……」

 

 眼前にふわっと浮き出たドアを開き通ると、既視感漂う場所に行き着いた。

 

 艶やかな木目の廊下、規則正しく並べられた机、黒板。

 

 私はここを知っている……月海原だ。

 

「えぇ、貴方が予選に参加している時に在籍していた高校と同一です、少し差異はありますが、ほとんどは一緒です」

 

 人が結構な量、居るようだけど……

 

「彼らは全て聖杯戦争の参加者、もしかすると、御知り合いの方がいらっしゃるかも知れませんが、探してみますか?」

 

 いいの? 

 

「もちろん、ですが、ここでは私の真名は弱点となりますのでお姉ちゃんかキャスター、でお願いします」

 

 あぁ、うん。

 

 新田やシンジはここに来れているだろうか。

 

 とりあえず、話しかけやすい人を探してみることにした

 

「あそこの大人しそうな……茶髪の子なんかどうです?」

 

 ようし、華麗なるコミュニケーションをご覧に見せよう! 

 

「えへ、頑張ってきてください……」

 

 なにおう!? キャスター、お前も来るんだよ! 

 

 

 

 

 

「……あの。す、すいません.」

 

 ──子供に話しかけられた。

 短い麦色の茶髪に、整った顔。

 つなぎに爛々とした笑み。

 虫取り網が似合いそうな少女だ。とてもイマドキって感じの子には見えないな。

 

 どうかしたのかな? 

 

「ぬ、マスター(奏者)よ、気が抜けて居らぬか? そこな子供も、立派な参加者であるぞ?」

 

 ……セイバー、でも彼女は子供だし……怖がっちゃうんじゃないかな。

 

「その考えが少しお主はズレておるのだ……余から見れば美しいには美しいが、少女、と言うよりかは少年にも見える」

 

 セイバー……セイバーも少しズレてると思うよ

 

「なんと! ……まぁ余のことはもう良い、そ奴に構ってやるが良い、その後に余にいっぱい構え!」

 

 ごめんね、ちょっと隣がうるさくて。

 

「あぁいえ、大丈夫です、その、用件とかはないんですけど、その、えーと……」

 

 ただ話がしたかっただけ……ってこと? 

 

「まぁ、はい……良ければ友達……とか」

 

 あー、うんいいよ。私の名前はね。

 

 フランシスコ・ザビ……

 

「嘘をつくな嘘を、隠すものでもないであろうが」

 

 岸波白野です……




貴方の身体にはかなりの魔術回路、上等な魔眼がありましたが、貴方がその事実を知る前にゴッホによって全て魔力作成のリソースとされました為、コードキャストや魔術の類は一切合切使用ができない状況になっています。
ただ生存することが目的のあなたにとって自己防衛方法の消失はほとんど致命傷なのですが、これはあなたのサーヴァントが自分に頼り切るように、共依存の沼へと沈める為のほとんどわがままです。
便宜上はマスターだけど、力関係は下。
彼女(現在は彼)に応じたサーヴァントの癖に 、支配権を所持する。
どっちが上位なのか分かりませんね。
けど俺はこういうのが好きです
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