流星の燃滓
「―――!」
扉をくぐったその先に広がる光景は先程の校舎の無機質なスタルジーなものから、水色のデータの海、無機質な足場がランダムに連なるダンジョンのようなものになっていた。
「これは…かなり広いね。どうする?、セイバー。」
「うむ、ここには敵性のNPCのようなものも見られる、ここは……」
岸波とセイバーは方針を定めているようだし、キャスター、僕らも動こう。
彼女らとはそう離れなければあの薔薇の王女は癇癪を起こさないと思うし。
「えぇ、えぇ、気の向くままに散策と致しましょう…安心を、こうやって手を繋げば安全です…えへへ…」
彼女が私の手に触れる。
彼女と接して理解したことだが、彼女のコニュニケーションは基本的に肉体の接触を発として居ることが多い。
それはこの姿であるが故の愛情表現なのか、単に彼女がそう言った性質なのかは定かでは無いが、彼女と触れ合っている間の彼女は夢中になっていて無防備で、非常に弱い。
だからこそ狙われる。
─ぶぁっ...!
背部に痛みが走る、その痛みと共に私は危険を悟る
ねっとりと嫌な悪寒がこの身を包んだんだ
刹那の間に視界は延び、身体は引かれる様に跳ね飛んでいく。
状況が理解出来ないが、恐らくは奇襲。
死角からの完全な一撃を背中に受けたハズ、だが致命傷を受けた感じはしない。
「ご注意を、敵性サーヴァントの奇襲です。」
恐ろしい程に強い衝撃ではあったが、それが身を粉にするよりも早くキャスターが私の身体を引いて助けてくれたようだ。
「呵々、どういう絡繰かは知らぬが、天地合一、我が圏境を見破るとはな、」
血で染めたような髪に、頑強な肉体。
「拳は確かに打ち込んだ筈が、生きておる。」
構えは鋭く、顔貌は獣。見据えた視線は飢えた野犬の様な恐ろしさを感じさせる
「残念なのはただ殺せと命じられておる事のみだが……
奮...!」
爆発音と同時に身体の指揮権を失った。
彼の気に充てられたのか、危険だが、キャスターがいる、あの拳の速度は恐ろしいが、キャスターはそれを退けている。客観的に見てキャスターの方が───
「─!」
視界が黒ずむ、
肺がひっくり返されたように息が出来ない、
キャスターが何か言おうとしているが、耳鳴りが酷くてよく聞こえない。
指先が冷たいのに腹部は湯に浸かったように暖かい。
「─なんだ、この程度か。」
気持ちが悪い…死にそうだ。
キャスターは虚ろな目で壁に凭れている。
「こっぴどくやられましたね、マスター。
まさか彼があそこまで…私の落ち度です。」
キャスターも僕も、どうやら彼一人に打ち倒されてしまったようだ。
「まぁ、でも。恐らくは勝ちました。」
どういう…こと?
「お互いに即死は間逃れています、ので、修復することが可能です。」
へ、へぇ…なるほど?
「
……こちらへ手を伸ばして、実際にお見せします」
僕から行かないとダメ?、正直動けないんだけど
「私の方が重症ですので、そこは……頑張ってください」
なんだよ…─も ぅっ……ぐ……
血で濡れた指先を、穴の空いた腹部を唸りながら引きずる。
うぁぷッ……
お互いの手の届く距離へ近づいた途端、キャスターに抱き込まれる。
「あぁ、痛いでしょう辛いでしょう、元に戻して差し上げましょう。」
彼女の声を聞いていると途端に睡魔が襲ってきた。
「抗わないで、そのままの感情に委ねて下さい」
……ぅ、ん。
「では、おやすみなさい─」
─また、目が覚めた。
心地が良い夢を見ていた気がするが…辺りや服が血まみれなのだ、きっと気の利いた悪夢だったのだろう。
ぐっすり眠った、日も登ってる、なら歩くしかないな。
……歩くのも難しいときた。
キャスターは元にと言っていたハズ、ならこの身体の以上は私の問題か。
立ち往生だわ、うん。
誰も居ないし血で臭いし動けないしの三重苦か!
彼女を感覚的には感じるが、なんか曖昧だ。
足りないというか、休憩中というか
今は彼女をあてに出来ない。
なぁ、誰でもいいから助けてくれよう。
「君!大丈夫かー?」
いいタイミングで…なるほど、お前か。
「怪我は?、この…血─じゃなくてここで何かあったのか?」
……
「ていうか、立てる?、無理そう?」
無理だ。おぶってけ。
「な、お前。名前はなんて言うんだ?」
…はは、君にソレを言われるのは2度目だ。
「……なぁ。」
そうだな、チビよ…名前は分からない、が、うん。
意味はあったんだ、テオと、そう呼んでくれ
「やっぱか……お前、シンジ見なかったか?」
済まない、ここに来てからよく分からないの連発で、さっきまで死んでいたからなにも知らない。
「…死んでいた?」
新田は怪訝な顔を私に向ける。
あれは、多分キャスターと同じ感じ、うん 。
赤い髪の拳法家だった。
「そんなことはどうでもいいんだ、"死者"の完全な蘇生はそう簡単に出来るもんじゃない。」
まぁ、良いから。
「言えないのか?」
彼女と私だけの、大切な秘密さ
「なら……うん、しょうがない。で、これからどうすんだ?」
これからか…キャスターが帰ってくるまで好きにする。
「自分らしさは取り戻せたようだな…じゃあ、頼み事をしてもいいか?」
少しだけ目を細め、迷うフリ。
君には色々と借りがあったね、うん、恩返しだ。何でもする。
「…俺とさ、共に戦ってくれよ。」
小さな少年の双眸は、拓けた海の様にまっすぐ私を突き刺していた。
初戦、敗北