〝アリウス〟潰すゾ!!!   作:あば茶

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if世界~アビドスルート~その後2

 

 

 

 

「ふふっ……酒泉君、ここ弱いんだ?」

 

んっ……そんな、こと……っ!

 

「もう、強がっちゃって……えい」

 

ふ……っ……ちょっと……待っ……!

 

「声も抑えなくて良いのよ?」

 

それ、はぁ……ぅ……恥ずか、し……っ!

 

「そんな声を出されると……もっとイジワルしたくなっちゃうなぁ……」

 

やっ……いきな、り……カリカリするの……やだっ……!

 

「……ふー♡」

 

ひっ!?いきっ……やめてくだ、さい……!

 

「……ごめん酒泉君、もう我慢できない♡」

 

……ぇ……?

 

「今から〝やめて〟って言われても止めるつもりないから………覚悟してね♡」

 

や、やだっ……まって……ユメせんぱい、やだ……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんな昼間っから何してるんですかっ!!!ユメ先輩っ!!!」

 

 

 

「じゃあ、今度はこっちの耳を───あれ?ホシノちゃん?」

 

────ちょっ……くすぐったいんでもうちょっと待って……!

 

「……え?耳かき?」

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────

 

────────

 

──────

 

 

 

 

 

「とんでもなく大きな声が聞こえたから駆けつけてみれば………ユメ先輩が酒泉に耳かきしてただけじゃない」

 

「いや、そうなんだけどさ……」

 

 

〝何がおかしいのか〟とキョトンとしているセリカ

 

それに対して〝いやらしい事を考えていました〟などと答える訳にもいかず、ホシノはゴニョゴニョと口を濁す

 

 

「……で?どうして酒泉がユメ先輩に耳かきされてるのよ、それぐらい自分で出来るでしょ?」

「うぇっ!?そ、それはー……」

 

────俺が恋愛漫画読んでる時に〝もし恋人が出来たらどんな事したい?〟ってユメ先輩に聞かれたんですけど、そっから何故か実際に恋人が出来た時の為の予行練習をしようって言われて─────モゴオ!?

 

「しゅ、酒泉君が〝耳がかゆいなー〟って言ってたから!そうだよね!?酒泉君!?」

 

 

何故かムスッとしながらセリカが酒泉にジト目を向けると、酒泉が理由を喋っている途中でユメが口を塞ぐ

 

何かを察したホシノは〝抜け駆け〟しようとした自らの先輩を冷ややかな目で見つめるが、当の本人は下手くそな口笛を吹いて誤魔化す

 

 

「……ユメ先輩?」

 

「ほ、ホシノちゃん?なんだか雰囲気が怖いわよ?いつもの〝おじさんモード〟はどうしちゃったの?」

 

「尊敬する先輩の前だから昔の様に素を出して話してるだけです、決して怒っているからではありません………ええ、怒っていませんよ」

 

 

酒泉やユメの前ではちょくちょく見かけるものの、酒泉以外の後輩達の前ではあまり姿を現さない〝暁のホルスモード〟に一同が驚く

 

無言で威圧を放つホシノにユメがたじろいでいる中、セリカが〝何とかしろ〟と酒泉に目配せする

 

 

「酒泉のせいでこんな空気になったんだから自分で何とかしなさいよ」

 

────ええ……俺のせいなの……?

 

「だいたい、先輩を〝恋人ごっこ〟なんかに付き合わせるなんて失礼よ………こ、こういうのは……その……距離感の近い同年代の人にお願いするとか……」

 

………いや、ユメ先輩の方から言ってきたんですけど……

 

「………あっそ」

 

 

どこか不機嫌そうに返事をし、視線を逸らすセリカ

 

何か選択を間違えたかと悩む酒泉にノノミが耳かきを持って近づく

 

 

 

「……そういえば、酒泉君は耳かきの途中だったんですよね?」

 

はい、そうですけど……

 

「ふむふむ、なるほど………ちょっとこちらのソファに座ってもらってもよろしいでしょうか?」

 

え?あ、はい………よっこいしょういち────

 

「えい♪」

 

────フトモモッ!!?

 

「ノノミちゃん!?」

 

 

 

何の疑問も持たずにのこのこと捕食者の隣に座った獲物酒泉は、一瞬で身体を倒される

 

ノノミは自身の膝の上にポスッと酒泉の頭を乗せる………この際、何故か酒泉の顔が自身の身体の方に向くように倒したせいで非常にマズイ状態になっている

 

 

 

 

「せっかくですので、残りも終わらせちゃいましょう♪」

 

────あっ……あっ……せめて向き変えさせて……あっ……

 

「勝手に動いちゃ駄目ですよー?」

 

「……ノ、ノノミちゃーん?ノノミちゃんみたいなナイススタイルの娘がむやみに身体に触れさせるなんて………おじさん、そういうの良くないと思うなぁ………」

 

「大丈夫ですよ?私、酒泉君のことは大好きですので☆」

 

 

頬をヒクつかせながらノノミの身を案じて(決して嫉妬ではない)離れさせようとするホシノ

 

だが、ノノミは笑顔で酒泉の頬を撫でるばかりで一向に離そうとしない

 

……そして、この戦場に乱入者が更に一人追加される

 

 

 

「……えい」

 

────頭がっ!!?

 

「あっ……もう、強引すぎですよ?シロコちゃん?」

 

「ごめん」

 

 

 

ノノミの膝の上から転がされ、床に落ちて頭を打ち付ける酒泉

 

そのままノノミとは反対側の方に座ると、自身の膝をポンポンと叩いて酒泉を見つめた

 

 

 

「……酒泉、こっちも空いてる」

 

────はい?

 

「こっちも空いてる」

 

………は、はぁ……

 

「………ん」

 

………?

 

「んっ!!!」

 

────痛いっ!?

 

 

 

首を傾げたまま動こうとしない酒泉に業を煮やし、酒泉の頭を無理やり自身の膝の上に乗せるシロコ

 

キヴォトス人のパワーでやるのは普通に危険である

 

 

 

「……シロコちゃーん?おじさん、シロコちゃんをそんな風に育てた覚えはないよー?」

 

「……早い者勝ち」

 

「………言うようになったねぇ……」

 

「……昨日は二人でサイクリングした」

 

「………いきなりどうしたの?」

 

「一昨日は一緒にスポーツジムの見学に行ってきた」

 

「………」

 

「今日は二人で競争する予定」

 

 

無表情……に非常に近いドヤ顔で周りの者達全員にマウントを取るシロコ

 

ホシノは暫く俯いた後、覚悟を決めた表情で酒泉に近づく

 

「……酒泉、立って」

 

────え?でも、今は砂狼さんに捕まってて「いいから、早く」すいませんすぐに起き上がりますから怒らないでください

 

「あっ………むぅ」

 

 

 

一瞬でシロコの両手からスポッと抜け出し、すぐにホシノの前に立つ酒泉

 

恐る恐るホシノの顔を見るが、その目は鋭く尖っているのみだった

 

〝完全に怒らせた〟

 

理由はよく分からないが、ここは大人しくしておこう

 

そう判断した酒泉はビシッと両腕を伸ばし、顔を上に向かせてひたすら佇む

 

そして─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────ホシノはそんな酒泉に何も言わずに無言で抱きついた

 

 

「ホシノちゃん!?」

 

「………」

 

 

普段のホシノからは想像もつかないような大胆すぎる行動に思わず全員が驚愕する

 

のほほんとしながら自分のことを〝おじさん〟と自称していても、女の子扱いされると何だかんだで恥じらうあのホシノが

 

酒泉の身体にピッタリとくっついているせいで表情は見えないが、横からでも顔を真っ赤にしているのがよく分かる

 

子供のような体型しか持たず、男の好みなど分からず、自分から女の子らしいことなどした事がなかった小鳥遊ホシノが必死に考えて絞り出したアピール作戦

 

それは真っ向勝負、正面から己の身体で折川酒泉を捕らえる─────単純だがクソボケに対しては最も有効な手

 

 

「………どう?耳かきや膝枕なんかよりこっちの方が気持ちいいでしょ?」

 

 

己の身体に酒泉を射止められるほどの魅力があるのか分からない、そもそも興味を持たれているのかも分からない

 

答えが一切見つからない中、彼女は決死の覚悟で特攻した

 

 

「ねえ……何か……言ってよ」

 

 

林檎の様に真っ赤な顔で上目遣いするホシノ、酒泉は何一つ反応を示さない

 

……だが、それは興味が無いからではない

 

 

「……酒泉?」

 

 

〝例の事件〟が起きるまで小鳥遊ホシノは己の感情を晒すのが苦手……まあ、つまり〝素直になれない子供〟だった

 

 

「……な、なんで……何も言ってくれないの……?」

 

 

 

その原因はカイザー絡みの借金問題だったりカイザーからの依頼でアビドスを襲撃してくる不良共だったりのせいで常に張り詰めていたからだ

 

 

「……もしかして……嫌……だった……?」

 

 

 

そんなホシノが当時のツンツンしていた頃と〝同じ姿〟と〝同じ態度〟でデレた場合、はたして何が発生するのか

 

 

 

「……そ、そうだよね……私なんかに抱きつかれても嬉しくともなんともないよね……」

 

 

 

ショートカットの髪をいじいじと触りながら顔を青ざめるホシノ

 

目の前の少年は自身の全力を懸けても何一つ返してくれない

 

〝私は何をしているのだろう〟という思いと共に少しずつ涙が溢れる

 

 

 

 

「……ごめんね、もう二度とこんな事しないから………だ、だから……嫌いに─────」

─────それ可愛すぎない?

 

「───え?」

 

 

 

その一言を残し、折川酒泉は倒れた

 

〝過去おじのデレ〟という特大の爆弾を脳に食らった彼はそのあまりの破壊力に脳のダメージ処理が追い付かず、いつまでも完結しない情報を延々と流され続けた

 

可愛さが天上天下唯我独尊

 

あっぱれだ小鳥遊ホシノ、酒泉はお前の事を生涯忘れないだろう────

 

 

「……ねえ、もしかして気絶してる?」

 

「……多分?」

 

「どうしましょう……」

 

「とりあえず保健室に運びましょっか…………それにしてもホシノちゃん、随分と大胆に攻めたわね……」

 

「………」

 

「……ホシノちゃん?」

 

「……か、かわいい?今、私に言ったの……?そうだよね?……え?勘違い?気のせいじゃない?……私だよね?私で良いんだよ……ね?」

 

「……いいなぁ、ホシノちゃん」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

「……えっと、これが私が帰って来た時の話です……」

奥空さん……それ本当?

 

「はい、聞いた話によればですけど……」

 

……嘘でしょ?

 

「さ、さあ……?」

 

だって、それじゃあまるで─────女の子に抱きつかれて気絶した変態野郎みたいじゃねーか

 

「…………」

 

……何か言ってくれ……せめて罵って……

 

「えっと……その……が、頑張ってください……?」

 

………

 

「………」

 

……ごめん、無茶振りした俺が悪かった

 

「い、いえ……」

 

………はぁ……耳かきしてもらっただけでこんな事になるなんて……

 

何が切っ掛けで人生終わるか分からねえな……

 

「……あっ、そういえば………耳かきの途中だったんですよね?」

 

ああ、片耳だけスッキリしてて違和感があるんだよな………

 

「あ……あの!で、でしたら……その……残りはわたすぎゃっ!」

 

思いっきり噛んだ……

 

「も、もう片方の耳は私が担当しましょうか!!?」

 

言い直した………えっ?待って?今なんと?

 

「で、ですから……その……酒泉さんよろしければ……私が……」

 

………マジで?

 

「う……うぅ……」

 

……じゃあ、お願いしよっかな

 

「……あ、ありがとうございます!全身全霊を懸けて頑張ります!」

 

いや、礼を言うのは耳かきしてもらう俺の方じゃ………

 

 

 

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