「あっ!野生の………いえ、アリスの酒泉が現れました!」
電車から降りた俺は若干早歩きしながら移動していると、道中で勇者様に出会った
はい、こんばんは………こんな所でどうした?冒険か?
「はい!アリス、本日も真の勇者を目指してレベリング中です!」
そうか……でも、なんでここで?ミレニアム付近じゃ駄目なのか?
「今日はヒマリ先輩やリオ会長、そして先生の四人で今後の〝作戦〟についてシャーレで話し合っていましたので、ミレニアムに帰還するついでにここでレベル上げする事にしました!」
そっか………色彩に備えて色々やっておかないといけないもんな
「でも、途中で何かアクシデントが起きたらしく、作戦会議は中断されてしまいました………一体何があったのでしょう?」
アクシデント?もしかして……俺が呼び出された事に関係してんのか?
まあ、それは会ってから直接聞いてみればいいか……じゃあ、気をつけてな
「はい!一緒に帰りましょう!」
はいよー……え?一緒に?
「このまま二人でレベリングの旅です!」
いや、俺は────って、痛い!腕引っ張らないで!?
「~~~♪」
俺の言葉など聞こえていないかのように上機嫌にスキップする天童さん
何とか止めようとするが、伝説のスーパー普通人である俺にはどうする事もできない
止めろ天童さん!落ち着けぇ!
「嫌です!酒泉と離れたくないです!」
気持ちは嬉しいけど、俺には行くべき所が────
「分かってます!酒泉の行くべき場所はミレニアムですよね!」
何も分かってない!お願いだから一旦止まって!?
「………嫌なんですか?」
俺の言葉を聞いてピタリと止まった……かと思いきや、天童さんは此方を振り向くことなくそのまま喋り始めた
………少々声を震わせながら
「酒泉は……アリスと一緒に居たくないんですか?」
……え?
「アリスはずっと一緒に居たいのに………酒泉はアリスを拒むんですか?」
真っ直ぐ此方を見つめてくる天童さん
その目は一見、いつもと同じ純粋な目に見えるが………俺にはどこか恐ろしく感じた
「………酒泉はアリスのパーティーメンバーですよね?」
あ、ああ………
「でしたら、ずっと一緒に居てくれますよね?」
飛躍しすぎでは!?いきなり1=2を話すんじゃない!1+1=2を話してくれ!
「アリス、これまで様々なゲームをプレイしてきて学んだことがあります!それは………パーティーメンバーは一蓮托生だということです!」
まあ、大体のRPGはそうだろうけど………でもほら、途中でパーティーメンバーの入れ替えができるゲームだってあるだろ?
いや、むしろ最近のゲームはそっちのパターンの方が多いだろ?つまり、時には仲間と別れて自分自身の力だけで進まないといけない事も────
「はい!ですから、酒泉をずっとアリスの隣に縛り付けておくことにしました!」
すげえ、1+1=100ぐらい飛躍しちゃったよ………
「どんな離脱イベントが起きようとも、どんな解散イベントが起きようとも、ずっと二人で一緒に居れば絶対に離れることはありません!」
解決法が強引すぎない?そんなバグみたいな挙動されたらプログラマーさんが可哀想だろ
「説明は以上です!酒泉が納得してくれたなら今すぐアリス達の部室に向かいましょう!」
納得してないのに引っ張らないで!?仕方無い、ここは先生に助けを────あっ!?
「そうはさせません!」
スマホを取り出して先生に連絡しようとしたが、それを奪われてしまう
ここまで強引な手を使うような人だっけ!?や、やっぱりあの時盛られた薬のせいだろ絶対!
「抵抗しないでください!酒泉は力では絶対にアリスに勝てませんから!」
突然持ち上げられたかと思えば、そのまま肩に担がれる
抜け出そうとしても全く動かない、改めて天童さんの怪力っぷりを思い知らされる
「では!行きます!」
………もう、なるようになれ
──────────
────────
──────
「わぁ……凄いです、酒泉!またノーダメで勝利しました!」
オンライン対戦ゲームで相手を負かすと、天童さんは俺の膝の上で脚をバタバタとさせながらはしゃぐ
この姿だけ見ると無邪気な子供って感じなんだけど……
「もう一度見てみたいです!」
……天童さん、そろそろ下ろしても────
「駄目ですよ、酒泉」
……少しでも離れようとするとすぐに真顔になるんだよな
「酒泉はアリス達の物なんですから、勝手に離れてはいけませんよ?」
限度って知ってます?
「アリス、既にカンストによって限界突破済みです!」
そっかー、限度無かったかー………ところで、何がカンストしてんの?
「酒泉への想いです!」
天童さんから重い想い(激オモロギャグ)をぶつけられるがこれも薬の影響なのだろうか………
……でも、流石にこのままじゃいられないよな
「酒泉!次はこのキャラを使って………きゃっ……」
少し身体を捩らせて天童さんをコロンっと退かす
多少手荒になってしまったが、怪我しないように後頭部に手を添えておいたから許してほしい………まあ、そんな事しなくてもキヴォトス人なら何ともないだろうけどな
「……しゅ、酒泉?どうかしましたか?何故アリスから離れるんですか?」
天童さん……俺を遊びに誘ってくれたのは嬉しいけど、俺にはこの後大事な予定があるんだ
できればまた今度誘ってほしい………かな?
「そんな………」
ショックを受ける天童さん、その表情を見てると罪悪感で押し潰されそうになるが………
………いや、ここで甘やかすのはよくないな。将来に響いてしまうかもしれないし……
「…………」
許せ天童さん………また今度だ
「………………」
……じゃあ、俺もう行くから……
「…………した」
……え?なんて─────
「アリス!良いことを思いつきました!」
次の瞬間、背中と頭に痛みが走る
……っ……何を……された……?俺は今、押し倒されたのか……?
衝撃のせいで息を吐き出してしまい、軽く咳き込んでしまう
何とか起き上がろうとすると、天童さんに両腕を押さえつけられてから顔をズイッと近づけられる
「酒泉がアリスから離れようとするならば、こうして物理的に離れられなくしてしまえばいいんです!」
……は?何を……言って……
「アリスがずっと酒泉を押さえつけていれば、酒泉はアリスの許可無く勝手に行動できません!」
突然自分に向けられる異常すぎる執着心、それに危機感を感じた俺は何とか離れようとするが………駄目だ、腕が全く動かない
「逃げようとしても無駄ですよ!酒泉の身体はアリスよりも弱いんですから!」
いつも通りの笑顔でそう話しかけてくる
………だが、そのいつも通りの笑顔に恐怖を感じてしまった
「えへへ……こうして酒泉とくっついていると、アリスの人工タンパク質の皮膚が暖かくなってきます」
ピトっと倒れ込むように身体をくっつけられる、未だに腕を動かせない
「もっと……もっと酒泉とくっついたら、もっと暖かくなるのでしょうか……?」
若干息を荒くしながら、此方に這うように身体を上らせてくる
〝まずい〟
その感情だけが俺の心を支配した
具体的に何がまずいのかは分からない、だが………早く逃げなければ取り返しのつかない事になる、それだけは理解できた
「酒泉、アリスは……酒泉とずっと─────」
「そ………そこまでだー!」
絶体絶命の状況、そこに一人の救世主が現れた
モ……モモイさん!マジでナイスだっ!
「モモイ?どうしてここに?」
「いやぁ……部室の中にゲーム機忘れてきちゃって………って!それより!二人とも、これはどういうことなの!?」
ビシッ!と指を突きつけてくるモモイさん、そうだ!その調子だ!できればこの状況から助け出してくれ!
「どういうこと………とは?」
「だ、だから……何でアリスが酒泉のことを押し倒してるの!?こ、これじゃまるで……」
「まるで………?」
「……いや……その……と、とにかく!男女が簡単に身体をくっつけるのはいけない事なんだよ!」
そう言いながら天童さんを退かせようとする、マジで救世主だよ、アンタ!
「嫌です!アリスはここから動きません!」
「駄目だよアリス!酒泉だって困ってるんだから!」
「いーやーでーすー!」
「いーいーかーらー!」
幼子の喧嘩の様にわちゃわちゃする二人、先程までのジメッとした空気はすっかり晴れていた
「誰に何と言われようと、アリスは絶対に離れません!」
「こ、この……!私だって──────」
「──────私だって酒泉とくっつきたいのに!アリス達だけズルいよ!」
…………????????
【……今の言葉は聞き捨てなりませんね、一体どういう意味ですか?】
俺の脳が限界を迎え、ショートしていると天童さんの目の色が突然切り替わる
青色から赤色へ、表情は無表情に近くなる
「言葉通りの意味だよ!私だって酒泉と仲良くなりたいのに、いつもいつもアリスとケイばっか酒泉とベッタリしてさ!」
【当然でしょう……私達の間には、決して他者には干渉する事ができないような繋がりがあるのですから】
「そ、その繋がりってなにさ!?」
【………私達の未来に関わる事……とだけ伝えておきましょう】
「未来!?そ、それってまさか……け、けけけ結婚とか………!」
【……さあ?どうでしょう?】
にやっと小馬鹿にするような目でモモイさんを見つめる
それに腹を立てたのか、〝ぐぬぬ〟と声に出しながら腕をブンブンと振る
「わ、私だって……私だって酒泉との間に秘密があるもん!」
【………は?】
「ねっ!酒泉!二人で〝アレ〟作ったもんね!?」
必死に叫びながら同意を求めてくる
アレ……?ああ、アレか!確かに気合い入れて作ったもんなぁ……
「ほらね!?」
【……酒泉、アレとはなんですか。そんなあやふやな言葉ではなく、具体的に教えなさい】
ん?ああ、あれは二人で大会に出た時────
「言わなくていいよ!私達だけの秘密だもん!」
喋ろうとしたら口を押さえられた、なんでさ
【………貴女には聞いていません、それと今すぐ酒泉から離れなさい】
「やだ!偶には私に譲ってくれてもいいじゃん!」
【いいですか?その男は私を無理やりこの世界に引きずり込みました、つまり………その男には私と王女を幸せにする義務があるのですよ】
「んなっ!?し、幸せにって……やっぱりそういう事じゃん!」
【漸く理解できましたか………貴方も文句はありませんね?酒泉】
此方に振らないでほしい
【貴方は私達に護られ、私達を支え続け、私達を満たし、私達を幸せにすることだけを考えていればいいのです】
【一生を捧げてでも………他者との関係を全て切り捨ててでも、私達と共に歩む】
【それが貴方の取るべき〝責任〟です………まさか、逃げたりなんてしませんよね?】
「そ……そんな責任あるわけないでしょ!酒泉も騙されちゃ駄目だからね!?」
「酒泉は自由だよ!自由に恋して自由に結婚して自由な人生を歩んでいいんだよ!」
「………だ、だから……私のことを好きになるのも……自由………だよ?わ、私はそれを受け入れる準備だってできてるし………」
二人して此方を見上げてくる
なんだろう……美少女二人に見つめられてるって状況のはずなのに凄く胃がキリキリしてきた、お薬の効果ってすげー
ふしぎなくすりのーまされてー(現実逃避)
【……このままでは埒が明きませんね】
「こうなったら……ゲームで勝負だ!」
【……いえ、もっと確実な方法がありますよ】
「え?なにそれ?」
暫く睨み合っていた二人だが、ここでケイさんが一つの提案をする
【元はと言えば、この男が優柔不断なのが全ての原因………】
「確かに……」
何が〝確かに〟だよ………
【ですから、お互いに一日ずつこの男を独占しましょう】
「成る程……それで最終的に本人に判断してもらうってわけだね!」
はー待て待て、なーんにも分かってねえじゃん
結局俺だけが被害者じゃん、頼むぜガキ共
「……うん、それ良いかも!」
良くないです
【では、交渉成立ですね】
俺とも交渉してくれ
「大丈夫だよ、酒泉!悪いようにはしないから!」
この状況自体が悪いです
【我儘を言わないでください………手の掛かる人ですね】
え?なんで〝俺が悪い〟みたいな流れになってんの?
此方の問いに何も返さず、ジリジリとにじり寄ってくるだけになったケイさんとモモイさん
少しずつ後ろに下がるが、とうとう壁際に追いやられてしまう
……ここいらが潮時か
【………良い心構えですね】
「わっ………これが酒泉の身体……結構鍛えてるんだね」
大人しく身体を差し出し、二人に腕を掴まれる
【では、まずは私が今日一日独占しましょう………その次は王女です】
「はい!アリス、酒泉をメロメロにさせて見せます!アリスは既に魅了状態に陥ってしまってますが………えへへ」
「なっ……!?まさか二人分の時間を取るの!?それズルくない!?」
【私と王女は別人格なのですから、当然でしょう】
言い争いながらも決して腕を離さない二人……いや、三人
無抵抗な俺はテレビの前まで連れていかれ、無理やり座らされる─────瞬間、突然二人を振り払う
【なっ……!】
「うわっ……!」
天童さんが態勢を崩した隙にポケットからスマホを奪い返し、そのまま部室の中から飛び出す
【…………一度、貴方の〝立場〟というものを分からせる必要があるみたいですね】
「そんな嫌がらなくてもいいじゃん!」
暫くして背後から足音が聞こえてきたが、後ろを振り向く余裕などない
階段を経由することなく一気に下の階に下り、なるべく色んなルートを使って逃げ続ける
「待てー!女の子から逃げるなんて……この意気地無しー!」
【ミレニアムの中で我々から逃れられるとでも?】
返事をしている暇など無い、とにかく僅かなショートカットでも利用しながら必死に走る。レースゲームのRTA気分で
そうしている内に背後から二人の気配が消える………が、足音は相変わらず聞こえる
恐らくすぐに見つかるだろう、だが………廊下の別れ道までたどり着いた!二人に見られていない今がチャンスだ!
………あれ?二手に別れられたら意味がないのでは?
い、いや……追っ手が一人減るだけマシだと思おう!うん!
さて、どっちに逃げようか─────
「酒泉、こっちよ………私についてきて」
──────────
────────
──────
「見つけっ………あっ!?曲がった!」
酒泉が左側に向かったことを視認した二人は、自分達もすぐに追いつこうと勢いよく駆け出す
〝廊下は走るな!〟と書かれているポスターの横を走り抜け、そのまま速度を加速させると………
【これは………AMAS?】
二人の前に十機程のAMASが立ちはだかった
「………あれ?酒泉は?」
【………あの女に一杯食わされましたか】
「見失っちゃったじゃん!ケイが無理やり押さえつけようとしたせいだよー!」
【貴女だって同じような事をやろうとしていたでしょうに】
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すいません、調月さん………助かりました
「気にしなくていいわ」
今、俺が身を潜めているのは会長を辞めてからの調月さんが仕事用として使っているミレニアムの一室
そこのソファで息を整えながら礼を言うと、一杯の冷たい水を渡される
喉が渇いていたのでありがたい
「……それで?今日はどうしてミレニアムに?」
いや、本当は来るつもりはなかったんですよ………でも、天童さんに無理やり引っ張られて……
「無理やり?」
はい、なんか俺と遊びたかったらしいんですけど………
「……………そう」
調月さんは暫く考え込んでから一言だけ呟く………何故か不機嫌そうに眉間に皺を寄せているが
……あ、話は変わりますけど今日も先生達と会議してたらしいですね
「ええ、〝未知のエネルギー反応〟が発生した後の対応について最終チェックを……ね」
〝色彩〟に対抗する為の作戦会議、未来の知識が必要な場合は俺もそれに参加しているのだが………
それ以外の場合は先生と明星さん、そして調月さんの三人だけで行う場合もある
当日の指揮系統の問題は先生、技術面の問題は調月さんと明星さんにしかできないだろうからな
え?俺?………せ、戦闘員……(震え声)
「とりあえず今の私達に出来る事は全てやったつもりよ、ただ………敵は文字通り規格外の存在、どれ程準備したとしても油断できないわ」
すいません、皆さんには苦労をお掛けします………
「………そう落ち込まないで、貴方は貴方にできる事を十分にやってくれているわ」
調月さんはそう励ましてくれるが………俺なんかよりも調月さん達の負担の方が圧倒的に多いのは事実
……うん、自分にできる範囲の仕事をやるだけじゃ駄目だ。自分にできる範囲を広げる努力もしなければ
………よし、調月さん!何かやってほしい事があれば言ってください!俺も力になりますから!
「……それなら、早速一つお願いしてもいいかしら」
ええ、何でも言ってください!
「じゃあ……まずはここに座って」
そう言ってソファをポンッと叩いて隣に来るように誘導される
言われるがままに席を移動し、調月さんの隣に座る
「次は膝の上から手を退かして」
はい……これでいいですか?
「ええ、もう十分よ」
調月さんは満足そうに返事をし、そのまま俺の膝に横向きで頭を乗せ………え?
「次は頭を撫でて」
あっはい………あの────
「そのまま撫で続けて」
え?わ、分かりました………ところで────
「手を止めないで」
あ、すいません………いや、それよりも……一つ聞いてもよろしいでしょうか?
「なに?」
…………これ、膝枕では?
「……?ええ、そうよ?」
見れば分かるでしょう?とキョトンとしながら言ってくる調月さん
いや、何をしてるのかは分かるけど、どうしてこうなったのかが分からないんですけど………
「そうね……次は私のことを褒めてくれる?」
キャラ崩壊しすぎでは……?
「そんな事ないわ、それよりも………私は〝色彩〟対策の為に今日も頑張ったわ」
えっと……偉い……ですね?
「駄目、もっと甘やかすように」
……調月さんは未来の為に必死に頑張ってて偉いですね
「まだ堅苦しいわ」
これ以上喋り方を崩すと普通に恥ずかしさで死ぬんですけど……
ええ……しょうがないなぁ……
………お仕事お疲れ様です、今日もよく頑張りましたね
「……そう、そんな感じよ」
あまり一人で抱え込みすぎちゃ駄目ですよ?偶にはこうして休まないと
「………うん」
よしよし、偉い偉い
「んっ………」
……どうしよう、もう恥ずかしくなってきたんだけど
俺のASMRってなんだよ、全国の先生ぶちギレ不可避だろこんなん
ていうか腹に顔を埋めるのは止めてほしい、服越しでもくすぐったい………待って嗅がないで
「………また手が止まってるわ」
ごめんなさい────って……なんか様子おかしくないですか?
「気のせいよ」
いや、でも……
「…………自分の考えを誰にも理解してもらえず、ずっと一人で抱え込む事しかできなかった………そんな者の前に、自分の考えを頭ごなしに否定したりせずに共に歩もうとしてくれる者が現れた。そんな相手に甘えるのはいけない事なの?」
調月さんは顔を此方の腹にくっつけたまま、視線を上げてくる
「貴方は私の行動を止めようとするだけでなく、私の考えに理解を示してくれた上で一緒に罪まで背負おうとしてくれたわ」
「それどころか〝自分一人で罪を背負う〟なんて覚悟までして………私は、ずっと付き添ってきてくれたトキにすら汚れ仕事を手伝わせてしまったというのに……本来なら無関係だったはずの貴方まで巻き込んでしまった」
「………でも、貴方はそれすらも〝自らの意思だ〟と受け入れてくれた。全てを敵に回す覚悟をしてまで、私の隣に立つことを選んでくれた」
「貴方は私にとって唯一無二の理解者………唯一、心の内を明かせる相手なの」
……そこまで信頼してくれていたのか、俺のことを
「………だから、暫くこうさせてちょうだい」
調月さんはゆっくり起き上がると俺と向かい合うように膝の上に座り、そのまま背中に手を回してくる
ギュッと強めに抱きしめられ、若干の息苦しさを感じる
……そう、感じるのは息苦しさだけだ。それ以外の感触なんて何も感じない
二つの柔らかさなんて感じていない、誰がなんと言おうと絶対に感じてなんかいない
煩悩滅却煩悩滅却煩悩滅却………
「……寒いわ、貴方も抱きしめ返して」
さ、流石にそれはやりすぎでは……?
「駄目よ、言うことを聞いてくれるまで離さないから」
なんだこの甘えん坊は………分かりましたよ、はい
「………ありがとう」
礼を言いながらも、抱きしめる力をより強くされる
ヤバい、ムギュッてした、オレ、ケモノ、ナリタクナイ
落ち着け、俺………ここは冷静に対処するんだ!
まずは一番気に入らない奴の姿を思い浮かべろ!そうすれば俺の感情も萎えるはずだ!
嫌いな奴嫌いな奴………ベアトリーチェか……
…………しまった!?アイツ、容姿だけは普通に美人だった!!!
「んっ………」
そんなモゾモゾ動かないで!?死んじゃうから!?
そ、そうだ!カイザーPMC理事のヌードだっ!!!それを思い浮かべろ!
カイザーPMC理事のヌード………デカルトのマイクロビキニ………無名の司祭のミニスカ………!
よし!良い感じに吐き気が─────
「全ての脅威が去った後も………こうして貴方の体温にずっと包まれていたいわ」
─────あ、お山が………