〝アリウス〟潰すゾ!!!   作:あば茶

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酒泉「は?俺がピアノを?」マコト「ああ」 その6

 

 

 

弾く、弾く、弾く

 

また弾く

 

……指が止まらない

 

空崎さんに打ち明けたあの日からずっと調子が良い

 

どうしよう、自分でも驚くほど上手く弾ける

 

………もっと早く誰かに相談するべきだったか

 

まあ、とにかくまた練習に集中できるようになってよかった

 

 

 

 

そういえば、あの日の会話を得て一つ思ったことがある

 

もしかして俺って自分で思っている以上に空崎さんに大切に思われてるんじゃね?……みたいな?

 

いや、別に〝空崎さんって俺に惚れてるんじゃね?〟とまでは思ってないよ?そんな勘違い野郎みたいな思考には流石に至らないさ

 

でも、もしかしたら俺って空崎さんと友達……いや、親友……いや、それよりちょっとだけ上ぐらいには大切にされてるんじゃないか?

 

親友と家族の間ぐらいには好印象なのでは……?

 

自惚れ……じゃないよな?これで勘違いだったら一生立ち直れないが?

 

……こんな事を直接聞くのは流石に恥ずかしいし、心の中にしまっておくか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────

 

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──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ピアノの調子はどう?酒泉君」

 

────完璧っす、それに食事面は愛清さんが健康を考えて作ってくれてるお陰で存分に休めてます……本当にありがとうございます

 

「ふふっ……いいのよ、いつものお礼なんだから」

 

 

一般生徒達に出されるのとは違うメニューが俺の前に運ばれる

 

ああー……生姜焼き美味い、サラダも美味い、味噌汁が身体に染みる

 

 

「……美味しい?」

 

────めっちゃ美味いっす、一生食ってられます

 

「……そ、そう?それなら頑張って作った甲斐があったわ」

 

 

もう全部美味い、偶然にも全て俺好みの味付けなのもあって箸が全く止まらない

 

でも………

 

 

 

────本当にいいんですか?こんな美味しいご飯をお金も払わず作ってもらっちゃうなんて……

 

「さっきも言ったでしょ?お礼だって……もう数え切れないぐらい助けられちゃってるんだから」

 

────……じゃあ、ここは甘えさせてもらいましょうかね?パーティーが終わるまでの間、よろしくお願いします

 

 

 

 

 

 

と言っても────パーティーは明日なんだけどな

 

 

 

「……別に終わった後でもいいからね?」

 

 

 

そう言ってもらえると嬉しいのだが、流石にパーティーが終わった後まで迷惑は掛けられない

 

……これだけ世話になったんだ、必ず最高の演奏にしてみせる

 

俺の全てを音楽に乗せて────全ての人に〝想い〟を届ける

 

 

 

「……酒泉君、少し変わった?」

 

────……え?俺が?

 

「うん、なんていうか……さっぱりした感じ?」

 

 

 

ああー……多分……いや、間違いなく空崎さんとの一件が原因だろうな

 

そっか……他の人から見ても分かるほど精神的にも疲れてたのか、俺って

 

 

 

「最近良いことでもあったの?」

 

────良いこと……ありましたね、とびっきりの良いことが

 

「へぇー……ねえ、よかったら聞かせてもらってもいい?」

 

────別にいいですよ?最近あった良いこと、それは………こうして愛清さんのご飯が食べられること!!!

 

 

 

指をビシッ!と差して決めポーズを取る

 

決まった……完璧に決まった……!マジで最近の俺って絶好調だな……!

 

……いや、別に〝大声で泣き叫んで空崎さんに甘えた〟って素直に答えるのが恥ずかしかった訳じゃないですよ?

 

ていうか実際に愛清さんのご飯を食べられるってめちゃくちゃ幸せな事だし

 

 

 

「……はいはい、冗談はいいから」

 

 

 

スンッとテンションが下がった状態で一瞬でそっぽを向かれてしまった

 

……え?選択ミスった?バッドコミュニケーション?じゃすわいびーコミュニケーション?

 

 

 

「今、生姜焼きのおかわり作ってるところだけど……食べる?」

 

 

 

あっ、よかった……怒っている訳じゃなさそうだ

 

 

 

────じゃ、じゃあ、ありがたく頂きます……あの、本当に怒ってる訳じゃ……ないですよね?

 

「……別に怒ってないわよ」

 

────そ、それならいいんですけど……

 

「……怒ってない、けど……」

 

────……?

 

「今は……顔は見ないでほしいかな」

 

 

 

そう言い残すと愛清さんは調理場の奥まで移動してしまった

 

……大丈夫、だよな?本人が怒ってないって言ってるし……問題ないよな?

 

………とりあえず折角作ってもらった料理が冷めちゃう前に美味しくいただくとしますか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「………どうしました?お世辞の一つも言えないんですか?」

 

 

委員長室に繋がる廊下を歩いているとドレスを着た天雨さんに出会った

 

……え?なんで?

 

 

 

「……何か一言ぐらい喋ったらどうです?」

 

────えっと……綺麗、です。俺の頭じゃ普通の言葉しか出てきませんけど、本当はもっとちゃんと褒めたいくらい綺麗です

 

「………まあ、貴方にしては及第点ですね」

 

 

 

溜め息を吐かれた、なんでや

 

〝めっちゃ可愛い〟とか〝スッゲー綺麗〟とかじゃ雑すぎると思ったから自分なりに言葉を選んだのに………その結果がこれだよ

 

じゃあなんだ?シンプルに〝ふつくしい……〟とでも呟けばよかったのか?

 

 

 

「元より大して期待はしていませんでしたが……想定していたよりはマシな言葉だったので良しとしましょう」

 

────……いや、そもそもなんでドレスで廊下を歩いてたんですか?

 

「軽く歩いて着心地を確かめていただけですよ、パーティー当日に動きにくい格好で参加して無様を晒す訳にはいきませんから」

 

────あっ……ちゃんと理由あったんですね……

 

「当然でしょう……貴方に見せる為だけに着てると思ったら大間違いですよ」

 

 

 

よかった……俺はてっきり変な趣味に目覚めた天雨さんが胸元がトチ狂っている格好で散歩しようとしたのかと

 

………いや、変な趣味は元々だったか

 

 

 

「……今、何か失礼な事を考えませんでした?」

 

────い、いえ?別に?………それより!当日はそのドレスで決まりなんですか?

 

「いえ、あと何着か候補はありますが………気になるんですか?」

 

────いや、特には……

 

「……はぁ……」

 

 

 

本日二度目の溜め息、なんでや

 

 

 

 

「……まあ、貴方ではそれが限界でしょうね……でも、委員長のドレスを見た時は今以上に言葉選びには気をつけてくださいね?今回のようなクソボケ対応をしないように」

 

────クソボケ!?俺が!?

 

「では、私は他にも何着か試してきますのでこれで………委員長の隣に立つのに相応しい格好を選ばなければならないので」

 

 

 

そう言い残すと天雨さんはどこか不機嫌そうに去っていこうとする

 

……あっ、そうだ

 

 

 

 

 

 

────天雨さん……俺はそのドレス、良いと思いますよ。イメージカラー的にもピッタリですし、空崎さんの隣でも十分に魅力を発揮できると思います

 

「……遅すぎますよ」

 

 

 

言葉選びチャレンジ失敗、うーんこれはボキャ貧

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「委員長のデストロイヤーは広範囲への攻撃に優れている!なるべく固まらないようにするんだ!」

「だ、駄目です!攻撃が速すぎて────きゃあっ!?」

 

 

自分達の上司に攻撃し、自分達の上司に攻撃される

 

空崎さんの紫の瞳が強く光ると、デストロイヤーから放たれた弾が風紀委員達を一掃する

 

 

「連携が甘い、ただ同時に撃つだけじゃ意味がない。ちゃんと一点を狙って」

 

 

たった一人の少女によって無惨にも散っていく仲間達

 

……まあ、何度も見てきた光景だ

 

今日は定期訓練、空崎さん直々に指導してくれる

 

「あ、危なかった……!」

 

「このまま反撃の機会を────」

 

「あれを避けたのは褒めるけど、でも………複数人で同じ場所に逃げ込んでも纏めて蜂の巣にされるだけ」

 

 

紫の弾丸が遮蔽物ごと破壊して風紀委員を吹き飛ばす

 

それをできるのは貴女だけです────なんていうのは通用しない

 

俺達は風紀の番人、日常を護る為には相手がどれほど格上だろうと食らいつかなければならない

 

「やっぱり格が違うって!」

 

「こ、これ勝てるんですか……?」

 

 

一年の中には既に諦めムードの人達が現れ始める

 

おーい、まだ早いぞー、同じ一年だろうと俺はまだ諦めてないぞー

 

……しゃーない、ここはちょっと意地でも見せにいきますか

 

空崎さんに一発食らわせる、そうだろう?

 

 

 

 

「勝負だ!委員長っ!」

 

 

銀鏡さんが大声を出しながら真正面から突撃する

 

空崎さんはスナイパーライフルによる一撃を片手でパシッと払うと、そのまま銀鏡さんと近接戦闘を開始する

 

回避を一切考えずにひたすら攻撃に徹する、空崎さんはそんな銀鏡さんの猛攻を冷静に捌くとデストロイヤーの銃口を上げようとし────俺はその手に一発の弾丸をぶち当てる

 

 

「っ────」

 

「チャンスっ!」

 

 

一瞬だけ気を逸らした空崎さんに対して銀鏡さんは回し蹴りを放つが、空崎さんは僅かに後ろに下がるだけで軽く回避してしまう

 

じゃあ……機動力を奪うか

 

狙いは脚、近くで銀鏡さんが暴れているが……誤射の心配はない、俺は外さないからな

 

狙い通り、空崎さんの脚にスナイパーライフルの弾が命中する

 

「……そこね」

 

 

……いや、ちげーわ。俺の位置を探る為にわざと食らっただけだわこれ

 

背後から飛んでくる銀鏡さんの弾丸、それに気を取られることすらなく空崎さんが一直線に俺が隠れている遮蔽物まで近づいてくる

 

遮蔽物はもはや壁としての役割すら果たせず空崎さんの蹴り一発で破壊される………その身体にどれ程のパワーを秘めているんだか

 

ただ、まあ、こうして接近されたからには仕方無い

 

 

 

 

────盛大に歓迎してあげてください、皆さん

 

「………これは……」

 

 

 

俺と一緒に隠れていた風紀委員達全員が遮蔽物の向こうから現れた空崎さんを取り囲む

 

俺は制服を羽織りながら偉そうに仲間達に指示を出す

 

なるべく重装備の面子を選んだが……念には念を、中心で立ち尽くす空崎さんにグレネードを投げつける

 

その小さな身体を爆炎が包むが、この程度で倒せるような相手じゃない

 

周りの仲間達と一緒にひたすら弾を撃ち続ける

 

 

 

 

「……や……やったか?」

 

────すいませんフラグ建てないでくれません?

 

「へ、へへ……いくら委員長でもこれぐらい撃ち込めば……!」

 

────だからそれ止めろって!?

 

「はははっ!ざまあないぜ!」

 

────皆さんわざとやってますよねぇ!?

 

 

 

 

……と、大声で言ってみるものの、この人達は全員三年生

 

実戦や訓練の経験においては俺達一年以上、状況把握能力だって鍛え抜かれている

 

わざとらしくフラグを建てているのではない────大したダメージになっていない事が分かっているからこそふざけているのだ

 

 

「……私に居場所を特定された時の対策をしていたところまではよかった」

 

 

羽が広がると同時に煙が晴れる

 

ほれみろ、効いてない

 

 

 

「でも────火力が足りていない」

 

 

 

キヴォトスの最強格は全員頑丈すぎる

 

剣先さんの場合は再生力が高かったり、聖園さんの場合はダメージ自体は普通に通るけど痛みを無視して襲ってきたりと、それぞれ形は違うものの耐久に関してはそこらの重戦車以上だ

 

 

 

「そして……今度はこっちの番」

 

 

 

デストロイヤーが此方に向けられ、そして────シールドを構えた先輩達が俺の前に立つ

 

俺自身もシールドを構えて衝撃に備える

 

一秒、二秒、五秒、十秒、攻撃が続く

 

衝撃が止まる頃には案の定、俺を護ってくれた先輩達と多くのシールドがボロボロになっていた

 

ちなみに一番後ろにいた俺のシールドも崩壊寸前です、どうして届くんですか?(現場アルコール)

 

 

 

「……そう、この中で一番高い戦闘能力を持つ酒泉を護って少しでも勝機を残そうってことね。でも────」

 

 

 

 

 

 

「私を忘れないでよっ!委員長っ!」

 

「勿論忘れてないよ」

 

 

 

空崎さんは背後から飛びかかる銀鏡さんの攻撃をデストロイヤーを後ろに振り回すことで牽制する

 

 

 

「酒泉っ!」

 

 

 

名前を呼ばれる、銀鏡さんと目を合わせるだけで理解できた

 

〝合わせろ〟……そういう事でしょう?

 

 

 

「……息ピッタリなんだね」

 

「ずっと一緒に戦ってきたから……ねっ!」

 

 

 

空崎さんは何故か目を細めながらも、俺と銀鏡さんの挟撃をいなしてくる

 

けど、俺達のコンビネーションはこんなものではない………まずは手数を奪う

 

空崎さんの額に向けてスナイパーライフルの弾を放つ………首を動かされて回避される

 

銀鏡さんが空崎さんの脚を狙う………これも一歩下がられただけで簡単に避けられてしまう

 

今度は俺がアサルトライフルを取り出して腹部を狙う────黒い羽に阻まれる

 

即座に右手のデストロイヤーで反撃しようとする空崎さん………銀鏡さんがその腕に組み付いて行動を封じる

 

 

 

 

………計算通り、かんぺき~

 

 

空崎さんがどう対応するのか、どう回避するのか、全部最初から分かっていた

俺の〝眼〟でも分からない範囲は長年の付き合いからくる予測でカバー、そうして作り出したチャンス……無駄にはしない

 

 

 

「───っ……これ、は……」

 

 

 

あえて袖に腕を通さず、いつでも脱げるようにしていた俺の制服を空崎さんに覆い被せるように投げる

 

ここからはスピード勝負、空崎さんに体勢を立て直させる時間を与えてはならない

 

まずは空崎さんの頭部があるであろう位置に向かって蹴りを────え?外した?

 

俺の蹴りは制服を汚すのみ、人に当たった感触がない

 

何が起きた、そう思いながら視線をずらせば唖然とした表情で尻餅をついている銀鏡さんの姿

 

……銀鏡さんを制圧しながら回避した?この一瞬で?

 

そして俺は────真後ろの気配に向かってスナイパーライフルそのものを振る

 

いつの間にか後ろに回っていた空崎さんはそのささやかな抵抗すら身を屈めて回避し、俺の腹部より下からデストロイヤーを向けてくる

 

咄嗟に左手のアサルトライフルを捨て、空崎さんのデストロイヤーの銃口を掴み、此方に引き寄せる………そして、銃口は俺の肩より少し上に逸らす

 

自ら射程距離を近づけたことに驚いたのか、空崎さんはあっさりと力負けする

 

弾は俺の肩を掠める────関係無い、すぐに反撃しろ

 

 

空崎さんが距離を離すのと俺がスナイパーライフルの弾を装填するのは同時

 

そして……スナイパーライフルの弾を放つのと空崎さんがデストロイヤーを構えるのも同時だった

 

 

今度は俺の放った弾が空崎さんの肩を掠める……本当は直撃させるつもりだった、直前で避けられただけの話だ

 

 

「もし酒泉が回避できそうになかったら撃つのは止めるつもりだったけど………まさか反撃までされるとは思わなかった」

 

 

そう言いながら先程弾を掠めた肩を撫でる空崎さん

 

その表情は何故か愛おしそうだ

 

 

 

「……酒泉、私は嬉しい。だって酒泉は私を支える為にここまで強くなってくれたんだから」

 

 

 

……それなら先程まで以上の威圧感を放ちながら近づいてこないでほしい

 

 

 

「ここからはもっと本気でいくから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめん、酒泉……委員長の動きが速すぎて対応できなかった」

 

────仕方ないっすよ……立てます?

 

「……うん、ありがと」

 

 

 

俺の手を取って起き上がる銀鏡さん

 

その目は真っ直ぐと空崎さんに向けられている

 

 

 

「……で……状況的には……」

 

────仲間は全員ダウン、作戦は失敗

 

「そして委員長は本気モード……と」

 

────戦えるのは……

 

「私と酒泉だけ……これは……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────余裕っすね!

 

「楽勝!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

「……はい、これで完了です」

 

────いつつつっ……ありがとうございます、火宮さん

 

「チナツー……私もー……」

 

 

 

ベッドの上でぐでーっと寝転がりながら手を伸ばす銀鏡さん

 

そんな彼女の元に救急箱を持った火宮さんが駆けつける

 

 

 

「また勝てなかったかー……」

 

「でも、お二人とも凄かったですよ。これまでの訓練の中で一番委員長に迫ってましたし」

 

 

はい、皆さんお察しの通り負けました

 

気合いだけで勝てるほど最強格は甘くない、改めて知ることができたね!良かったね!

 

……いや、良くないな普通に悔しい、相手が空崎さんだろうと悔しいもんは悔しい

 

 

 

「私は別に迫ってなんか……いつもより動きがよかったのは酒泉だけだよ……」

 

────んなことないっすよ……銀鏡さんがいなきゃあそこまで持ちこたえる事はできませんでしたよ

 

「そう、かなぁー……」

 

 

 

なんだ……?今日はやけに落ち込むな……?

 

 

 

「……ほら、アコちゃんも委員長も三年生だし今年で卒業でしょ?それで次の委員長が誰になるのかは分からないけど……その……少なくともあの二人の分の穴は埋められるくらいには強くなりたくてさ」

 

「まあ、ゲヘナ最大の抑止力を持つ委員長とそんな彼女のサポートを平然とこなす行政官が同時にいなくなるのは………治安的にも組織的にも不安ではありますね」

 

「だけど、最近は成長できてる実感が湧かないし……三年になる頃に委員長と同じぐらい強くなれてる気がしなくてさ……」

 

 

 

まあ、確かに三年が卒業した瞬間に一年二年の問題児が一斉に暴れ出す可能性はある

 

 

 

「それに、私って未だに罠とかにも引っ掛かっちゃうし……実力面でも酒泉にとっくに抜かされてるし……」

 

────いや、俺の場合は〝眼〟っていうインチキがあるんで……

 

「それを含めたって肉体は私達より脆いんだからプラマイ0だろ?」

 

 

 

おおう……それを言われたら頷くしかないな……

 

……いや、でも

 

 

 

 

────銀鏡さん、逆に考えてください……銀鏡さんが罠に引っ掛かってくれるお陰で他の風紀委員達が後に続けるんだと

 

「……私のお陰?」

 

────ええ、銀鏡さんが敵の罠を先に潰してくれてるお陰………つまり銀鏡さんは仲間を護っているんですよ!

 

「確かにそうですね………イオリはいつも誰かの前で戦っていますからね、仲間の盾になっていることもあるでしょう」

 

「わ、私は別にそういうつもりじゃ……ただ突撃してるだけだし……」

 

────それで結果的に仲間が助かってるんだから素直に褒められとけばいいんですよ

 

「……そ、そう?」

 

────よっ!風紀委員会の守り神!いや!女神様!

 

「……あ、ありがと」

 

────不憫系褐色尻尾付きツンデレツインテエルフ耳!属性モリモリ!

 

「それはからかってるだろ!?」

 

 

 

ちょっとふざけてみただけなのに……

 

まあ、これで元気出してくれたらそれでいいや

 

 

 

────てか、空崎さんも天雨さんも卒業までまだ時間はあるんですから、そんな今すぐ解決しなきゃいけない問題って訳でもないでしょう?

 

「まあ、そうだな………ちょっと深く考えすぎちゃったかな?」

 

────そうっすよ……今すぐ強くなる必要はありませんよ、何かあれば俺も手伝いますし

 

「……それ、本当だな?」

 

 

 

銀鏡さんがジーっと俺の目を正面から見つめてくる

 

……別に疑う要素無くないか?

 

 

 

「今、酒泉が自分で〝手伝う〟って言ったんだからな?」

 

────はぁ……そうですけど……?

 

「言質は取ったぞ………じゃ、じゃあ!私が三年生になったら委員長みたいに色々と支えっ……手伝ってもらうからな!」

 

────構いませんけど……

 

「よし!や……約束だからな!?」

 

 

そんな大声で言わなくても……

 

シュセン、ウソ、ツカナイ

 

 

 

「……ていうか、ここまで色々愚痴ったけど〝三年生になったらヤバい〟っていうのは酒泉やチナツだって同じだったな……」

 

────……あー……まあ、そうですね

 

「その時には委員長も行政官も……イオリも居なくなってますからね……」

 

 

他にも一年二年は居るんだけど、例えば少しでも実力のある問題児が暴れたとしてそれにタイマンで対抗できる生徒が残っているかというと……

 

別にタイマンに拘る必要は無いし何かあれば皆で協力すればいいだけなんだが………空崎さんを見れば分かる通り〝圧倒的な実力を持つ個人〟というのは存在するだけで抑止力となる

 

それに最強クラスとはいかなくとも、一定以上の実力を持っているだけでも十分な脅威と見なされる

 

……でも、そんな人達が次々と抜けていくと……

 

 

 

「……まあ、酒泉が委員長になれば心配はないかな。一年の時点でこれだけ強いんだし」

 

────え?俺が委員長?………なんで?

 

「実力的には妥当ではないでしょうか?」

 

 

ああ、そういうことか……

 

実力を評価してくれてるのは嬉しいけど……

 

 

 

 

────んー……正直、自分って組織のリーダーには向いてないような……空崎さんみたいに上手く指示を飛ばせる自信もありませんし

 

「……そうか?戦闘中の判断とかいつも感心してるけど……」

 

────自分でやるのと他人にやらせるのじゃ……ねえ?俺が委員長になったとしても、精々戦闘ぐらいしかこなせないんじゃないっすかね?そりゃ書類仕事だってそれなりには出来ますけど……

 

「委員長はその上、様々な問題児からのクレームや万魔殿からの嫌がらせにも対応してますからね……」

 

────まあ、羽沼さんが卒業したらそういうのも無くなる………のかな?

 

「だと良いですけどね……」

 

 

 

流石にあのスカポンタヌキと同レベルの人間は居ないと思いたいけど………

 

もし万魔殿からの風紀委員に対する態度がいつまで経っても変わらなかったら………止めよう、想像するのも面倒だ

 

 

 

 

────とにかく、自分でも誰かの上に立っている姿があんま想像つかないっていうか……

 

「……まあ、確かに酒泉って何か起きた時とか部下を頼るより勝手に一人で解決しようとしそうだよね」

 

「いつもそれで委員長に怒られて……私達も心配して……」

 

 

 

半分は当たっている、耳が痛い

 

 

「……毎回どこかしらに傷を負って帰ってくる上司………か」

 

「しかもいつの間にか事件は解決していて」

 

「自分達の事は頼ってくれない……と」

 

「………確かに誰かの上に立つのは向いていないかもしれませんね」

 

 

 

色々と流れ弾が直撃したような気もするが……まあ、そういうのが理由であまり乗り気ではなかったりする

 

……そりゃ、空崎さんの跡を継ぐって考え方をすれば良いことなのかもしれないけどさ

 

 

「……でも、安心してください。もし酒泉君が無茶をしようとしたら私が止めますから」

 

「チナツが?」

 

「はい、私も酒泉君も同じ一年………皆さんが卒業してしまった後も勝手な行動を取らないようにずっと目を光らせてますからね?」

 

 

 

圧を感じる笑顔を向けられて身体が硬直する

い、今の俺はそう簡単に一人で抱え込まないから……メイビー

 

 

 

「それに……もし酒泉君が委員長になるというのなら、私が近くに居れば互いに足りない物を補い合えると思いますよ?」

 

────足りない物?

 

「酒泉君が傷だらけで帰ってきたとしても私ならすぐに手当てできますし、もし指揮に関する事が心配なら私が代わりにその役割を果たします。その分、戦闘に関しては酒泉君に頼ることになってしまいますが……」

 

 

 

なるほど……それぞれ役割は違うけど、空崎さんや天雨さんのような関係か

 

なんて事を考えていると突如手に暖かさを感じ、視線を下ろしてみる

 

すると、火宮さんが何故か俺の片手を両手で包んでいた

 

 

 

「酒泉君がヒナ委員長やイオリを支えるというのなら……酒泉君のことは私が支えますね?」

 

「……チナツ……手を握る必要はある?」

 

「…………すみません、忘れてください」

 

 

 

……支える、か

 

そうだ、別に俺も銀鏡さんも火宮さんも一人で全てをこなそうとしなくてもいいんだ

 

一人一人に足りないものがあっても、それを全員で補えばいい

 

空崎さんとの件でなんでも抱え込むのはよくないって思い知ったからな………遠慮なく色んな人に頼ってしまおう

 

……でも、それはそれとして一人でも頑張ろう

 

皆が助けてくれるからといって努力を怠っていい理由にはならない

銀鏡さんは強くなろうとしてるし、火宮さんは俺を支えようとしてくれたし、タカキも頑張ってたし、俺も頑張らないと!

 

………それにしても〝支える〟で思い出したけど、この前空崎さんが言ってた〝隣で酒泉を支え続ける〟とか〝私が一生隣に居てあげる〟とかって……なんか……

 

まるでプロポーz

 

 

 

 

「そ、それよりも!明日のパーティー、酒泉君はスーツを着ていくようにとマコト議長から指示を受けたと聞いたんですけど………本当ですか?」

 

「チナツ……誤魔化し方が露骨すぎるよ」

 

「ご、誤魔化している訳ではありません!少々気になって質問してみただけです!」

 

 

 

火宮さんの大声にビックリして視線を移動させれば、銀鏡さんと何やら言い合っている

 

 

 

「それにしても酒泉のスーツ姿か……なんか想像できないな」

 

────……先に言っておきますけどマジで似合いませんからね、俺

 

「だけど、もう着ていくスーツは決まっているんですよね?」

 

────まあ、自分で決めた訳じゃないですけどね……

 

「……と、いう事は……」

 

「……誰に決めてもらったんだ?」

 

────先生です

 

「……先生?どうして?」

 

────俺と同性だし大人だからスーツを着る機会は俺よりあったのかなって……そんでちょっと頼る事にしました、丁度パーティーにも呼ばれてるみたいだったし

 

「ああ……そういえば万魔殿の連中が呼び出してたな……今度は何を企んでいるんだか……」

 

「単純にシャーレと繋がりを作ろうとしているだけでは?」

 

 

 

……あいつ、先生にまで迷惑掛けてないよな?

 

 

 

「なんか催眠術を掛けようとしたとか……」

「逆に催眠術に掛かったとか……」

 

 

………?????

 

 

 

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