〝アリウス〟潰すゾ!!!   作:あば茶

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パパになった酒泉とママになったイオリ─経緯─

 

 

 

交差点の信号が切り替わると同時に足を進める

 

 

 

「だっ!だーぶ!」

 

────だーぶだーぶ

 

「何て言ってるのか分かるのか?」

 

────いや全然

 

「適当じゃん……」

 

 

 

赤ちゃんのセリフに合わせて適当に返事をしていると横から呆れた様な表情の銀鏡さんにツッコまれた

 

……あの後、この子にパパとママ認定された俺達は空崎さんに命じられて警察署へ向かう事になった

 

この問題は俺達子供の手だけで解決する訳にはいかないと判断し、今回は大人達を頼ろうとこの子を引き渡す事になった

 

 

 

「うあ!ぱっ!ぱあっ」

 

────はーい、パパですよー

 

「ぱあぱ!ぱぁぱ!」

 

 

 

子供らしく覚えたての言葉を連呼するその姿に癒されながらも、さっきからずっと頭の中で渦巻いている疑問を解決しようと思考を巡らせる

 

この子はどうして俺のことをパパと呼んだのだろうか、出会う以前の父親は?今、風紀委員会で取り調べを受けているあの武器商人との関係は?

 

……もし本当に捨て子だったらこの子は警察に届けられた後は……

 

 

 

「……この子、両親とか居るのかな」

 

「うっ?」

 

 

 

銀鏡さんも同じ様な事を考えていてのか、心配そうに赤ちゃんを見つめている

 

一方の赤ちゃんはそんな事など微塵も気にしている様子など見せず、今尚楽しそうに笑顔で俺の胸を掴んで痛い痛い痛い痛い痛い

 

 

────残念だったな、俺は男だ……乳なんて出んぞ

 

「だうー!」

 

────いや本当に痛いんで勘弁してくださいマジで

 

「赤ちゃんに負けてる……」

 

 

キヴォトス人の赤ちゃんってちゃんと力強いんだなぁ……こりゃお父さんもお母さんも子育て大変だな

 

 

────……ところで銀鏡さん、撮れました?

 

「……ううん、ハッキリ写ったのはまだ……」

 

────じゃあここからは交代って事で……銀鏡さんが代わりに抱っこしてくれません?

 

「うん、わかった」

 

「ぅう?」

 

 

抱っこしている赤ちゃんを銀鏡さんに渡したことによって今度は俺の両手がフリーになる

 

そのままある程度進んで通行人の邪魔にならなそうな場所で立ち止まると、自身のポケットからスマホを取り出してカメラを起動する

 

 

 

────銀鏡さーん、準備はいいかー?

 

「……いつでも」

 

────はい、チーズ

 

「だーう!」

 

 

 

カメラをインカメモードに切り替え、俺達3人全員が画面内に収まる様にピッタリとくっつく

 

それからパシャリと1枚の写真を撮り、それを銀鏡さんと2人で確認する

 

 

 

「へぇ……よく撮れてるな

 

────ええ……上手く撮れましたね

 

「それにしても本当にあのイタズラやるのか?……この写真を知り合い達に送って〝結婚しました報告〟するなんて……」

 

────折角の機会なんですから……勿体ないでしょう?

 

「まあ、それもそうだね……それで?いつ送るの?

 

────今すぐ

 

「……了解」

 

 

 

互いに顔を合わせてからニヤリと笑みを浮かべてから再び歩みを進め出す、このまま警察署へ────は、向かわない

 

途中から工事中の現場や人通りの少ない脇道を利用してわざわざ遠回りしながらのんびりと歩く

 

 

 

「この子を届けた後はどうする?」

 

「う?」

 

────空崎さんに連絡して直帰するか……もしくは風紀委員会に帰還せずそのままパトロールでも開始しますか?

 

「そっちの方が効率良さそうだね」

 

 

 

そこら辺の建物を眺めて適当にぶらぶらしながら今後の予定を話し合う

 

そうこうしている内に辿り着いたのは個人が経営する居酒屋等が並んでいる住宅街、少々古い雰囲気を醸し出しているその道を互いに気を引き締めてから進んでいく

 

 

 

「……どう思う?」

 

────……あの辺りとか丁度良いんじゃないですか?

 

「……じゃあ、そろそろ……」

 

────……はい

 

 

 

そして住宅街を抜けた俺達は角を曲がり………直後、すぐに来た道を引き返した

 

その際、俺達の真横を黒い毛並みをした犬の獣人の通行人が通りすぎようとし────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────動くな、少しでも怪しい行動を見せたらこの腕を折るぞ

 

「────っ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

直後、曲がり角で鉢合わせた獣人の裏に周ってその腕を強めに捻りあげた

 

 

 

 

「痛っ……い、いきなり何をするんだ!?」

 

「それはこっちの台詞だ!さっきからうろちょろと私達の周りを嗅ぎ回って……何のつもりだ!」

 

「か、嗅ぎ回る?何の話だ!?」

 

 

 

相手はただの通行人を装っているが……俺と銀鏡さんは気付かれないように互いに目配せして何度も後ろの尾行人の姿を確認していたんだ

 

洋服店の展示服を保護しているガラスケースの反射を利用したり、自販機に寄るフリをしてどっちかが少し離れた場所に向かってカーブミラーをチラ見したりと、その度にこの獣人がコソコソと動き回っているのが確認できた

 

 

「誤魔化そうとしても無駄だぞ!お前の姿は何度も確認してるんだからな!」

 

────目的はなんだ?風紀委員への恨みか?それとも恨みを持つ者からの依頼か?

 

「だ、だから俺は何も知らん!下らない被害妄想はやめてくれないか!?大体、俺がお前達をつけてたって証拠でもあるのか!?」

 

────あるぞ、ほら

 

「……え?」

 

 

 

再びポケットからスマホを取り出して先程インカメで撮影した写真を見せる

 

絶妙にギリギリ画面内に入り込んでいる目の前の獣人の写真……それを何枚か見せる

 

 

 

────ほら、これに写ってるのアンタだろ?これも、これも……まあ、最後の1枚以外は大体ボヤけてるけど

 

「うっ……と、撮るのが下手で悪かったな!」

 

────別に責めてるつもりは……まあいいや、とにかくアンタにはこの場で詳しく事情を説明してもらうぞ

 

 

 

語気を強めてから問い詰めると、獣人は歯を食い縛りながら顔を歪める

 

その様子から恐らく何かを企んでいたであろう事が窺えるが……それはこれからじっくりと教えてもらえばいい

 

……ん?さっきの結婚報告云々の下り?あれは俺達の行動を追手に怪しまれないように適当に会話してただけだけど?

 

 

────さーて、こっからは質問タイムに……

 

「んぅ……ぅー……」

 

────移らせて……ん?

 

「……あ、寝ちゃった」

 

 

 

早速目的を聞き出そうとした矢先、銀鏡さんの方から幼くてか細い声が聞こえてきた

 

そちらの方に視線を向けてみると赤ちゃんが気持ち良さそうにすーすーと眠っていた

 

 

 

「……どうする?」

 

────……えっと……起こさないように静かに問い詰めましょうか

 

 

 

本当はちょっと強めに詰め寄ろうとしたんだが……流石に赤ちゃんを起こしてまでやるのはな……

 

時間は掛かるかもしれないけどここは穏便に行くとしよう、赤ちゃん届けたり風紀委員会に戻って仕事を始めたりとやらないといけない事が沢山残ってるけど……仕方ないよな

 

 

 

「……ふっ……」

 

────……何を笑ってんだよ

 

「いや、悪い……お嬢様の寝顔は相変わらず場の空気を癒すなと思ってな……」

 

────まあ、赤ちゃんの寝顔って気持ち良さそうだし……ん?お嬢様?

 

「……捕まってしまったからには観念するしかなさそうだしな……いいだろう、お望み通り全てを吐いてやる」

 

 

 

獣人はどこか諦めたような笑みを浮かべ、一息吐いてから口を開いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺の目的はお前達への復讐でもお前達の尾行でもない……その赤ん坊を連れ戻す事だ」

 

────……はぁ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────

 

────────

 

──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その子の名はカイナ、俺達のボスの娘だ……あ、因みに俺はそのボスの側近を務めさせてもらっている者だ」

 

 

赤ちゃんの寝顔を微笑ましそうに見つめながら、ボスの側近を名乗る獣人はその子の名前を教えてくれた

 

 

 

────……ボス?アンタ、どっかの組織の人間なのか?

 

「……〝盗銃組〟って聞いたことねえか?」

 

────ないっすね

 

「まあ、それも無理はねえか……活動拠点は退廃地区の隅っこだし組織の規模もそこまでだしな……」

 

「退廃地区?」

 

「スラム街だよ、聞こえをほんの少し良くしただけの呼び方だ」

 

────盗銃組……なんか物騒な名前してますけど、もしかして窃盗団か何かですか?

 

「名前は代々継がれてるのをそのまま使ってるだけだ、今は裏ルートで仕入れた武器の販売を主に取り扱ってるだけのショボい組織さ」

 

 

当たり前のように言ってるけど〝だけ〟ではないと思う、裏ルート通してるなら普通にアウトじゃね?

 

出所の分からない武器を犯罪に使われると証拠品を集めるのとか面倒だからなぁ……大小関係なく悪いことは悪いと思う

 

 

「……で?その……〝盗銃組〟?とやらの娘がどうして捨てられてたんだ?」

 

「それはこっちの台詞だ、なんでお前らみたいなガキンチョがカイナお嬢様と一緒に歩いてたんだよ」

 

────この子は偶然拾っただけだ……仕事中にな

 

「ああ?仕事?」

 

────とある武器商人を取っ捕まえに行った時、その現場にあったドラム缶の中から出てきたところを偶然保護しただけだ

 

「武器商人……なあ、お前の言う武器商人ってのはもしかして……コイツの事じゃないか?」

 

 

 

側近さんは訝しげに顔を歪ませたかと思えば、自身の胸ポケットから1枚の写真を取り出してそれを手渡してきた

 

その写真に写っていたのは俺と銀鏡さんが捕らえたのと全く同じ顔をした獣人の姿だった

 

 

────なんで……

 

「やっぱ当たりか、そいつは数週間前に組織を裏切ってカイナお嬢様を連れ去った張本人だ」

 

「……裏切った?どういう事だ?」

 

「名前から大体察せると思うが、盗銃組は昔は結構物騒な方法で金品や武器を他者から奪い取っていた組織なんだ。だが、度重なる法の改正や時代の変化に伴って少しずつ武力を削られていき、今となっては汚い大人達が集まる退廃地区の隅に追いやられてそこでコソコソと商売するしかなくなっちまった………そして、そんな現状に不満がある奴は組織内に一定数はいたんだ」

 

────……まさか、人質?

 

「そうだ……連中は不満を持つ者同士で徒党を組んでお嬢様を誘拐し、そのままお嬢様を交渉を有利に進める為の道具として利用するつもりだったんだ」

 

────交渉……何を得るつもりだったんだ?

 

「自分達が会社を立ち上げる為の資金だったりその会社への事業譲渡だったり、盗銃組という名前そのものだったりと…………数え出したらキリがないな。まあ、簡単に言えば〝時代の流れに負けた老害共を追い出して俺達で昔の物騒な盗銃組を取り戻そうぜ!〟ってことだな」

 

「うーん……でもさ?カイナを利用しての組織との交渉が終わってもいないのにそのまま武器商人としての仕事を始めるもんなのかな?」

 

「……ん?」

 

「いやさ、私達がその裏切り者を捕まえに行ったのは〝裏の武器商人が生徒と取引をしてる〟っていう情報が入ったからなんだ。そういう仕事って普通は〝人質交渉〟っていう大きな仕事を終えてから始めるもんじゃないのか?……なんか、上手く例えられないな」

 

────大企業との取引が待ってるのにそれと並行してショボい個人店との取引も同時に行うものなのか?……みたいな?

 

「そう!それだ!」

 

 

確かに銀鏡さんの言う通り、まだ完全に取引が終わってもいないのに他の仕事に手をつけるなんて可笑しな話だ

 

拐ったカイナを連れながら他の仕事を始めるなんて……そんなダブルワークをする理由が分からない、普通に盗銃組との取引が終わってから武器商人としての仕事を始めればいいだろうに

 

 

「なんだ、そんな事か……理由は至って単純、俺達が裏切り者の大半を捕まえて資金の元まで押さえたからだろうな」

 

 

なんて考えていたら意外にも一瞬で答えが判明した

 

 

「協力者を捕らえられてそこから連鎖的に逃亡資金の元を断たれ、複数あった寝床も全部制圧されて残るは手持ちの資金と武器のみ……そんな状況で俺達から逃げ切れる筈もねえ。働いて逃亡資金を稼ごうにも裏の世界には俺達の目がある、表の世界で働こうにもそっちの仕事は戸籍や身分証明書が必要なものが大半だ、ずっと裏の世界で生きてきた奴が真っ白な身分証明書なんて用意できるはずがねぇ」

 

────だから残された手段として手持ちの武器を売ることにしたと?

 

「裏切る際にウチの倉庫から幾つかお高い武器を拝借したらしくてな、奪われたのは一丁売るだけでも数ヶ月分の生活費にはなるような代物ばかりだったぜ……逃亡資金を失ったら取引どころの話じゃなくなるからな」

 

────だからカイナを連れながらでも武器商人として商売するしかなくなった……って事か

 

「理解が早くて助かるぜ、ドラム缶の中にカイナお嬢様を隠してたのも恐らく武器商人としての取引中は出来る限り人目につかない場所に隠しておきたかったからだと思うぜ?」

 

 

……そうか、あの武器商人は自分達の目的の為だけにこんな小さい子をあんな狭い空間に閉じ込めていたのか

 

真相を知れば知るほど胸糞悪くなってくるな

 

 

「奴は闇サイトを利用して武器を売ろうとしてたらしいが……奴の行動は俺達も予測していた、だから俺達もそこにアクセスして客を装って現在地の特定を進めたりと徹底的に追い込んでやったんだ。そうしてずっと俺達に追われ続けてる内に金銭的にも体力的にも精神的にも限界がきた、だからやむを得ずゲヘナの生徒と取引するっていう危険な橋を渡るしかなかったんだろうよ」

 

「そいつはホテルとかを借りる余裕もなかったのか……」

 

「俺達も必死にお嬢様を探し回ってたからな、追っ手から逃れる為に手持ちの金しかない状態で毎日宿を転々としてたら交通費やら宿泊費やらもすぐに尽きるだろうよ」

 

……俺達がカイナを保護した廃工場はもしかしたら裏の武器商人が一時的に仮拠点として利用していた場所なのかもしれない

 

爆弾が巻かれていたあのロボット犬も事前に用意してあったトラップみたいだったし、本来はカイナを取り返しに来た追手に対して使う予定だったのかもな

 

 

「さて、これで一通りの説明は済んだしそろそろカイナお嬢様を……」

 

────駄目だ、まだ返さない

 

「……おいおい、まさかまだ俺の事を警戒してるのか?」

 

────当然だ、もしアンタの語った事が全て嘘だったらカイナを危険な目に遭わせることになる……だからそう簡単には返せない

 

「はぁ………分かった、とことん付き合うよ……次は何が知りたい?」

 

「……じゃあ、今度は私から……組織の裏切り者達はカイナを利用して逃亡資金を得ようとはしなかったのか?例えば〝今すぐ指定した口座にお金を振り込まないとカイナの命はないぞ!〟って脅したりとか……」

 

────それは無理ですよ……だってカイナは取引に必要な存在なのにそのカイナを殺すなんて本末転倒じゃないですか

 

「あ、それもそっか」

 

「そうだ、だからその脅しは最初から実行する気のない〝虚言〟にしかならない……殺すつもりがあったとしてもそれは本命の方の取引を断られた時の手段だ」

 

盗銃組にとっても裏切り者達にとってもそれは分かっていた、だから互いに無駄な労力と時間を使うことを避けたのだろう

 

……さて、大体の事情は理解したけど……あと1つだけ聞きたいことが残ってる

 

 

────……最後に1つだけ聞いてもいいか?

 

「おう、ここまで来たら何でも聞け」

 

────じゃあ遠慮なく……〝裏の武器商人がゲヘナ生と取引してる〟って通報したの、アンタか?

「……は!?」

 

「……どうしてそう思うんだ?」

 

────だってアンタ、さっき〝自分達の組織はあんま有名じゃない〟みたいな言い方しただろ

 

「……そうだったか?」

 

 

 

〝まあ、それも無理はねえか……活動拠点は退廃地区の隅っこだし組織の規模もそこまでだしな〟

 

これが先程側近さんが吐いた言葉だ、この言い方だと盗銃組は退廃地区の中でもそこまで有名じゃない組織って事になる

 

 

 

────裏の世界でもそこまで有名じゃない奴がちょっと表の世界に出てきただけで〝裏の武器商人〟って具体的に正体がバレるもんなのか?本当はアンタかアンタの仲間みたいに最初から正体を知ってる奴が通報したんじゃないのか?

 

「通報者が偶々退廃地区の事情に詳しかっただけかもしれないぜ?」

 

────はんっ!そんなの何とでも……何とでも……言え……言え……

 

「……どうした?」

 

「酒泉……?」

 

────ヤバイ、普通に反論できない……

 

「えっ」

 

「えっ」

 

 

 

そうじゃん……〝通報者が偶々退廃地区に詳しかっただけ〟って言われたら完全に否定できる証拠がないしそれで納得するしかないじゃん

 

そんな都合の良い人間が都合良く裏の武器商人の取引現場を目撃するなんて殆ど有り得ないってのは分かってるけど、その〝殆ど〟の部分を都合良く引き当てたって言われたら反論のしようがないだろ

 

かっこつけて推理を披露してみたはいいものの、相手の反論を打ち破る証拠が何一つ用意できていない

 

調月さんを説得しようとした時といい、俺はいっつも肝心な場面で論破されてしまう

 

残念ながらこれが高校1年生の知能レベルです、前世含めても高校1年生で止まっているので成長していません

 

 

 

────し、銀鏡さぁん……!

 

「わ、私に助けを求められても……」

 

「えぇ……嘘だろ……さっきまであんなに自信満々だったのに……」

 

 

 

ヤバイヤバイヤバイヤバイ、このままじゃただドヤ顔でペチャクチャ喋ってただけのマヌケになってしまう

 

ル○ィ…!!助けて…!!

 

心の中のル○ィ(お前もう船降りろ)

 

駄目だ……見捨てられた……!

 

 

 

「……あー……なんつーか、うん……頑張ったな」

 

────やめろよぉ……その生暖かい視線を向けるのをやめろよぉ……!!

 

「そう落ち込むな、お前の推理は当たってるからよ」

 

────……え?マジ?

 

「マジマジ」

 

 

 

慰められたかと思えば突然俺の言ったことを認める側近さん

 

彼はたははと笑いながら自身の頬を掻く

 

 

 

「いや、流れ的に俺の隠し事もお前に暴かれると思ってたから黙ってたんだけど……まさか途中で詰まるとは思ってなくてな?」

 

────うるせぇ!子供にしては頑張った方だろ!?

 

「酒泉、この流れで八つ当たりは流石にダサいよ……」

 

────ええい!それもこれも全部最初から本当の事を話さなかったこの人が悪いんですよ!

 

「……そうだ、結局まだ理由を聞いてなかったな……どうして自分が通報者だってことを黙ってたんだ?」

 

────それと敵の居場所が分かったのに自分でカイナを助けにいかなかった理由もね!!

 

「俺が通報者だって事を隠してたのは退廃地区で汚い事やってた人間だってバレたら色々と面倒だったから、俺が自分でお嬢様を助けにいかなかったのは……あー……本当は隙を見てから行くつもりだったんだよ」

 

────隙?

 

「武器商人がお前ら風紀委員とおいかけっこしてる間に奴の拠点に潜り込んでお嬢様を安全に探すつもりだったんだが……まさか直接拠点まで戻るとは思わなかったんだ、奴にも風紀委員を正面から迎え撃とうとする程度の覚悟はあったって事だな」

 

────赤ちゃんを人質に取ってコソコソ逃げ回るような奴なのに?

 

「結構言うなお前……」

 

────私利私欲の為に子供と親を引き離すような奴なんてボロクソ言われて当然でしょ

 

「……まあ、それほどお嬢様に親身になってくれてるなら任せられるか」

 

────……任せる?何を?

 

「それは……」

 

 

この期に及んでまだ隠し事をしようというのか、側近さんは頭をガシガシと掻きながら言葉を詰まらせる

 

それから少し間を空け、覚悟を決めた表情で俺達の目を見据える

 

 

 

「……なあ、お前達に頼みがあるんだ」

 

「頼み?……悪いけど私達は立場的にグレーゾーンの人間の頼みをそう簡単に引き受ける訳にはいかないんだ」

 

────グレーどころかレッドな気がしますけど……まあ、とりあえず頼みの内容だけでも聞いてみません?側近さんは何を頼みたいんですか?

 

「……カイナお嬢様を……預かっててほしいんだ」

 

────は?

 

 

 

 

突拍子もない頼みに思わず冷たい反応をしてしまう

 

だが、彼の真剣な表情を見る限り冗談を言っている訳ではなさそうだ

 

 

 

「なんで私達にそんな事を頼むの?こうして無事に取り返すことができたんだからこのまま連れ帰ればいいじゃん」

 

────銀鏡さんの言う通りだ、事件はこれで解決したはずだろ?

 

「さっきも言ったが俺達は裏切り者の〝大半〟を捕まえただけだ、まだ潜んでる奴らが僅かに残っている筈だ………そして、そいつらは組織内に潜んでいる可能性がある」

 

「……じゃあ、このままカイナを連れ帰っても組織内の人間からまた狙われるかもしれないってことか?」

 

「そうだ、だから裏切り者を全員炙り出して確実に安全が確保できるまでお嬢様のことをお願いしたい」

 

────……今日会ったばかりの俺達にそんな事を頼むのか?

 

「ああ」

 

 

 

俺の問いに側近さんは迷いなく頷くと、俺達を見定めるようにその目を細めた

 

 

 

「俺の尾行に気づいた時の行動と今のやり取りでお前達の実力は十分に理解できた、その上でお前達になら任せられると判断したんだ」

 

────アンタ、さっき俺達がカイナと共に行動してる理由を聞いてきたけど……どこか演技臭いと思ってたら本当は最初から経緯を知ってたのか

 

「おっと、そこまで気づかれてたか」

 

────俺の視線は敏感だからな、アンタの人を品定めするかの様な視線にもちゃんと気づいてたぜ

 

「……〝人の視線に敏感〟じゃなくてか?」

 

「酒泉の場合はそれで合ってるからな!」

 

 

 

俺の代わりに何故かドヤ顔で答える銀鏡さん、かわいい

 

……さて、ここまで色々と話を聞いたが俺個人としてはカイナを預かるのは別に構わない……が……

 

 

 

────アンタのボスはカイナを他人に預けることを了承してるのか?

 

「ああ、連絡ならお前達に会う前に済ませている」

 

「なあ、安全な場所で預かってほしいっていうなら警察に預けるとかじゃ駄目なのか?」

 

「勘弁してくれ、退廃地区から出てきた悪党をあいつらが見逃してくれると思うか?」

 

────……そもそもゲヘナは安全って言えるような治安じゃないぞ

 

「だからだよ、簡単に手出しできないような治安の悪さだからこそ逆に安全なんだ」

 

 

 

まあ、悲しい事にゲヘナもどんぱちの多さで言えばスラム街に負けず劣らずだからな……あ、だからカイナを拐ったあの獣人もゲヘナまで逃げ込んできたのか

 

これがトリニティみたいなお嬢様校なら裏の武器商人から武器を買ってくれるような物騒な生徒なんて殆ど居なさそうだもんな、代わりにチマチマ嫌がらせしてくる陰湿な奴はいっぱい居るけど………イジメ、イクナイ

 

 

「人見知りの激しいお嬢様もお前達には懐いてるみたいだし、ここはどうか人助けをすると思って……な?」

 

「裏の世界のゴタゴタに巻き込まれるのは人助けの範疇を越えてるでしょ……」

 

────……そうだ、そのカイナが懐いてる理由についても聞きたい事が……どうやらカイナは俺と銀鏡さんのことを父親と母親だと勘違いしてるみたいなんだが、俺達の顔はそんなにご両親に似てるのか?

 

「あー……いや……それは、ちょっと訳があってな……」

 

 

 

折角だから実はそこそこ気になっていた事を聞いてみると、側近さんの表情に突然翳りが漂った

 

聞いてはいけない事を聞いてしまったかと一瞬だけ罪悪感を感じてしまったが、そもそも此方は頼み事をされている立場なので最低限の情報を教えてもらう権利はある筈だ

 

 

 

「その……お前が父親だと間違われたのは……多分だけどカイナお嬢様が生まれてからボスが一度も顔を見せた事がないからだ、それで初めて見た奥様と同じ〝人型〟のお前のことを父親だと認識したんだと思う、あの武器商人は獣人だったからな」

 

────……は?実の父親だろ?そんなこと有り得るのか?

 

「……ボスは自らの汚れた手でお嬢様に触れることを恐れていたんだ、裏の世界に染まり切った自分が子育てなんてしたらお嬢様まで汚れさせてしまうんじゃないかってな」

 

────じゃあどうやって育ててたんだよ……

 

「部下達に真っ黒な仮面を着けさせてそいつらにローテーションで世話をさせてたんだ」

 

「黒い仮面?……何の為に?」

 

「自らの顔を隠して父親だと認識させない為だ」

 

────……母親は何をしてたんだ?まさか母親の方もそれを容認した訳じゃないよな?

 

「……死んだ」

 

────………え?

 

「お嬢様を産んでから死んだよ」

 

 

 

赤子を放置してた訳じゃないと知れたが代わりにもっと絶望的な答えが返ってきた

 

この事に関しては流石に問い詰めるべきではないかと思って咄嗟に口を閉ざしたが、側近さんは〝気にするな〟と一言呟いてから話を続ける

 

 

 

「奥様は生まれつき身体が弱いらしくてな……子供を産むだけでも危険だと医者に言われるほど病弱なお人だった。だが、奥様はそれでもボスとの愛の結晶を欲しがったんだ。貴方の子を産みたいと、貴方と共に幸せを分かち合いたいと」

 

「そうして産まれたのがカイナお嬢様だ、カイナお嬢様は病弱な奥様の腹で育ったとは思えないほど健康な身体でこの世に生を受け、奥様も命を落とすことなく無事に出産を終えた────なんて、その時までは思っていた」

 

「それから1週間後だった……奥様が亡くなったのは。結局病弱な身体は出産の負担に耐えられず、奥様はその僅かな時間で目一杯の愛情をお嬢様に注いだ」

 

「……これがその奥様の写真だ」

 

 

 

側近さんはそう言って新たに写真を取り出して手渡してくる

 

そこに写っていたのは優しそうな笑みを浮かべながら美しい銀色の長髪を靡かせ、頬の周りに大きな火傷跡が付いている女性の姿だった

 

 

 

「綺麗な人だな……」

 

「……それで、さっき聞かれたお前が母親に間違えられた理由についてなんだが……この銀髪だったり火傷跡と褐色肌の色が少しだけ似ていたりと、共通点がそこそこあるからだと俺は思っている」

 

「……そっか、産まれたばかりの頃にちょっと母親の顔を見ただけだから上手く見分けられなかったのか」

 

 

 

自分の子の成長を見届けられない、それはどれほど辛い事なのだろうか

 

……カイナの母親の気持ちを想像する度に自分の胸がぎゅうぎゅうと締め付けられる感覚に陥る

 

 

「〝貴方と共に幸せを分かち合いたい〟……奥様の言葉通り、ボスは2人でカイナを育てるつもりだったんだ。普通の家庭と同じ様に顔を隠さずに……な」

 

「それがどうしてカイナの前だと顔を隠すようになったんだ?」

 

「これは昔の話だ……奥様は元々は表の世界の人間だったんだ、病弱が故に日頃から外出を制限されていた奥様はある日こっそり自身が世話になっている病院から抜け出して街中を勝手に歩き回る事にしたんだ。好奇心に駆られて行きたい場所を自由気ままに……ってことを土地勘の無い奥様が繰り返してる内に見事にまあ、退廃地区に繋がる裏道を通ってきてしまったって訳だ」

 

 

 

そうはならn……いや、正直理解できなくもないな

 

俺も前世で小学生だった時はよく分からん裏道を通って友達と一緒に帰ってたりしたからな……その後母さんにめちゃくちゃ怒られたけど

 

因みに父さんは俺を注意しつつも「でも父さんもその気持ち分かるぞぉ!男の子はそういうの気になっちゃうもんなぁ!」ってはしゃいで母さんに怒られてた

 

 

「そんで、まあ……すっかり退廃地区に迷い込んでしまった奥様だが、そこで偶然出会ったボスに保護されて無事に退廃地区の外まで送り届けられたんだ」

 

「なんだ、そのボスって人優しいじゃん」

 

「……いや、この時ボスは〝行方不明人を探す為に警察が退廃地区にまで調査に来たら困る〟っていう理由で奥様を助けたらしい。つまり厄介払いだな」

 

「ああ……そういう……」

 

「ただ、奥様の方はその事に心から感謝していてな……折角外に送り届けたってのに後日礼の品を持って再び退廃地区に入ってきたんだ。しかも、何度も何度も!」

 

「え?もうお礼はしたんでしょ?」

 

「どうやら初めて病院を抜け出した時の冒険が忘れられなかったらしくてな……長年の入院生活によって蓄積された奥様の冒険心はあの1日だけで大きく刺激されたらしい」

 

「写真で見た時は淑やかそうな人だったけど……結構わんぱくだったんだな……」

 

「まあ、そこが可愛いんだけどな……」

 

────……ん?

 

 

 

 

一瞬気になる発言が聞こえたが、側近さんは咳払いをしてから話を再開する

 

 

 

 

「……ボスと奥様の馴れ初めについてはこんな感じだな……その後は何度も会う内に互いに惹かれ合っていくっていう恋愛ドラマとかで有りがちな展開さ」

 

「……いや、結局どうして顔を隠すようになったんだ?今の話を聞いてる限りだとあまり関係ないように思うんだけど……」

「……奥様はな、本当に心が綺麗な人なんだ……真っ白で純粋で明るくて、その手もその心も汚れきったボスでさえ照らしてくれるような〝光〟そのものだったんだ。そんな奥様と一緒に暮らしていけば自分のような悪党でも真人間になれると、そして産まれてくる子供も真っ当な道を歩めるように育てる事ができると、そう思わせてくれるような人だったんだ」

 

────……まさか、その奥さんが死んだから……

 

「大切な者を亡くしたこともあってボスは自信を無くしたんだろうよ……自分を照らしてくれていた奥様が亡くなってしまったらまた薄汚い昔の自分に戻ってしまうのではないか、そうなったら奥様が残していった愛の結晶まで自分のように汚れてしまうのではないか……ってな」

 

────……なんだよその理由

 

「……だからボスは我が子を他の人間に育てさせようとしたんだ、毎月の生活費と共にごく普通の家庭に預けることによってな」

 

────っ

 

「もしボスみたいな薄汚い父親の顔を覚えていたらお嬢様が大人になった時に色々面倒な事になるかもしれないだろ?〝どうして私にはパパの記憶が2つもあるの?〟って問い詰められたらきっと新しい父親だって困るはずだ……そうならない為にも俺も俺の部下も全員顔を隠して覚えられないようにしてるんだよ」

 

────……要するに〝育てる自信が無いので手放します〟ってことだろ、長々と言い訳してんじゃねえよ

 

「……ああ、その通りだな……今更考えを改めてももう遅いな」

 

────……考えを改めた?

 

「いざ引き取り手を探そうとした時、ボスは我が子を手放す事なんてできなかったんだ。やっぱり離れたくない……自分みたいな悪党が父親じゃ子供も嫌がるかもしれないが、やっぱりこの汚れた手でも我が子を愛したいと、そんな未練に己の覚悟をあっさりと砕かれて自らの手で子を育てる事を選んだんだ」

 

────……それでいいんだよ、それで

 

「……結局、グズグズ迷ってる隙を突かれてお嬢様を誘拐されてしまったけどな」

 

 

 

 

これで全て話し終えたのか、側近さんは大きく息を吐いてからカイナに視線を向ける

 

その後、自らの頭を深く下げながら必死そうな声色で言葉を紡いだ

 

 

 

 

「……頼む!ボスはもう二度とお嬢様を失いたくないんだ!裏切り者を炙り出し終えたらすぐに迎えにいくから、だからカイナお嬢様を────っ!」

 

「しゅ、酒泉!?何してるんだよ!?」

 

 

 

何か喋ろうとしている側近さんの胸ぐらを掴んで無理矢理顔を近づける

 

俺の行動を後ろから銀鏡さんが止めようとしてくるが、そんな事はお構い無しに感情のまま言いたいことを吐き捨てる

 

 

 

────別にカイナを預かるのは構わない、その代わり条件がある

 

「……条件?」

 

────全部終わったら……アンタんとこのボスに会わせろ、一発ぶん殴ってやる

 

「お、おい!勝手に決めるのはマズイって!」

 

────銀鏡さん、止めないでくれ……そのボスって奴は子供を独りにする事の意味を分かってない

 

「……ボスだってお嬢様を独りにするつもりはなかった筈だ、その為に引き取り手を────」

 

────本当の親からの愛情じゃないと満たされない子供だっているんだ、ボスの行動なんて〝きっとカイナも幸せになれるだろう〟っていう願望込みの責任の押し付けだろ

 

「………」

 

────そもそも生まれが不幸なのか幸福なのか決めるのは子供自身だ、その意思表示すらできない年齢の内から勝手に事を進めようとすんじゃねえ

 

「……そう、だな」

 

────……で?どうすんだ?俺の条件は呑むのか?……って、アンタに言っても仕方ねえか

 

「いや……その条件、呑もう。ボスならきっと頷く筈だ」

 

────……そうか、なら直接会えたら遠慮なく殴り飛ばしてやるか

 

「……ああ、覚悟しておこう」

 

「いやいや、何でボスでもないのに殴られる覚悟してるのさ」

 

────……アンタ、もしかして……

 

「────さて、話は以上だ」

 

 

 

 

話を強引に切り上げた側近さんはゆっくりと立ち上がり、懐から真っ黒なスマホを取り出して俺に手渡してきた

 

 

 

「そのスマホは俺にしか繋がらないように設定されている、組織内の裏切り者を全員捕らえたと判断したら此方から連絡しよう」

 

────……おう

 

「……カイナお嬢様の事、よろしく頼んだぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なんか……凄い事になっちゃったな」

 

────そうですね……ん?

 

「……んぅ……だぅ……」

 

 

 

側近さんとの取引を終えた帰り道、カイナを抱きながら歩いていたらカイナがゆっくりと目を覚ました

 

カイナはどこか朧気な眼でふにゃりと笑うと、その両手を俺の顔に向けて伸ばしてきた

 

 

 

「きゃう!うあ!ぱーぱ!」

 

────おー起きたか、悪いけど家までもうちょい時間が掛かるから野郎の腕の中で我慢してくれよなー

 

「……なあ、酒泉」

 

────ん?

 

「委員長への報告はどうするんだ?」

 

────……あっ

 

 

 

どうしよう、完全に忘れてた

 

もし自分から事件に首を突っ込んだ事を知られたらまた空崎さんの監視の目がキツくなってしまう……!

 

 

 

────……そうだ!カイナのご両親が今は入院してて、退院するまでの間のお世話を頼まれたって事にしよう!

 

「……この子が捨てられてた理由はどう説明するのさ」

 

────……誘拐犯がご両親を刺してその後は計画通りカイナを誘拐した……が、途中で警察に追いかけられたから咄嗟にドラム缶に赤ちゃんを隠してから撒いたってのはどうです?

 

「……うーん……普通にバレると思う」

 

────ですよねぇ……

 

 

 

しゃーない、ここは素直に話して大人しく叱られよう

 

……多分相当怒るよな、風紀委員が自分から前科持ちの大人に協力するなんて

 

 

 

「ここは諦めて一緒に叱られよっか」

 

────いや、叱られるのは俺だけで十分ですよ。俺が勝手にこの子を預かると決めたんですから

 

「むっ……何さ、1人で育てるつもりなの?」

 

 

 

銀鏡さんはどこか不機嫌そうに頬を膨らませ、後ろから尻尾でツンツンと背中を突いてきた

 

俺としては自分の勝手な判断で銀鏡さんを巻き込む訳にはいかないと思っての発言だったが、どうやら銀鏡さんにとってはそれが気に入らなかったらしい

 

 

 

「目の前であんな話を聞かされたら流石に知らんぷりできないし私も協力するよ」

 

────……無理して付き合わなくてもいいんですよ?

 

「別に無理してないって!私だってこの子が心配だし、それに……」

 

「まぁ!まぁま!」

 

「私もこんな風に懐かれちゃってるからさ……な?」

 

 

 

銀鏡さんが顔を近づけるとカイナは俺の腕の中で嬉しそうに身体を揺らした

 

きゃっきゃとその手を振るカイナを見て銀鏡さんも自然と笑顔になっていた

 

 

 

「今更私を仲間外れにできると思うなよ!」

 

────……ありがとうございます、銀鏡さん

 

「お礼を言われるような事はしてないって、私もカイナのことはどうにかしてあげたいって思ってたし……それで?この後はどうするの?」

 

────そうですね、とりあえず空崎さんに怒られるのは確定として……その後はこの子を育てる為に必要な物を買いに行きましょうか

 

「……因みにもしも怒られたら時に委員長に〝今すぐ返してこい〟って言われたら?」

 

────嫌です、この子を独りにはしません。本当の父親に会うまで絶対に寂しい思いはさせません

 

「珍しく委員長に対しても頑固だな……」

 

 

 

自分で引き受けたからには最後まで貫き通す、たとえ委員長に何を言われたとしてもだ

 

そうしてこの子を育てる決意を固めていると、銀鏡さんがカイナを見ながらその表情を悩ませた

 

 

 

「まあ、一緒に育てるのは確定として……生活用品はいつ買いにいく?今日は書類仕事が多めに残ってたし結構時間が掛かりそうだけど……」

 

────確か……トリニティの方のショッピングモールなら遅くまで営業してたはずなんでそっちで買い揃えますか?

 

「うん、それでいいと思う」

 

────んで、買う物は……まずはオムツに粉ミルクでしょ?

 

「後はベビーカーとか……あ、ガラガラも買っておこうよ」

 

────いいっすねー、他にはおくるみとかベビー服とかも?

 

「そうだ!育てる家はどっちのにする?」

 

────俺が言い出しっぺなんで俺の家にしましょう

 

「そうしよっか、基本的には酒泉の家で一緒に育てて………」

 

────後は色々お互いの休日を合わせたりとか……

 

「この子を連れて遊びに行ったりとかも────」

 

 

 

 

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