〝アリウス〟潰すゾ!!!   作:あば茶

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パパになった酒泉とママになったイオリ─準備─

 

 

 

 

 

「行政官、止めなくてもいいのですか……?」

 

「……事情が事情とはいえ、酒泉にも責任はありますからね」

 

 

 

そんな会話をしながらチラッと視線をヒナの席に向けるアコとチナツ

 

そこに居たのは大量の冷や汗を流しながら俯いている酒泉とそれを無機質な瞳でひたすら見つめるヒナ……そしてそんな2人をオロオロしながら赤子を抱いて見守っているイオリだった

 

 

 

「……酒泉、私の言いたい事……分かるよね」

 

────いや確かに如何にもな危険人物と取引して空崎さんから判断を仰ぐ前に勝手に決めたりと色々やらかしてますけどこれには訳がありまして

 

「それは別に構わない」

 

────えっ

 

「私が怒ってるのは……その……2人だけで子供を育てると勝手に決めたこと」

 

 

 

アウト寄りの人間と繋がりを持ってしまった事を責められると思っていた酒泉だったが、ヒナはその事には触れずに別に事を咎めていた

 

 

「酒泉がその子を育てたいのなら私だって協力するのにイオリにしか頼らなかったのはどうして?」

 

────その……カイナは俺達にしか懐かないから……

 

「別に子育て以外にも協力できる事は沢山あるでしょ?例えば酒泉とイオリの仕事の時間が被らないように調整したり、緊急時には私が仕事を引き受けたりとか……」

 

────……えっ?

 

「委員長……いいの?」

 

「……本来なら風紀委員の活動外だけど……でも、それが子供を見捨てる理由にはならないから」

 

────空崎さん……ありがとうございます!

 

「本当に助かったよ委員長!」

 

「その代わり子育てを言い訳に仕事に手を抜かないでね……そ、それと……もしイオリが大変な時は……その……私が母代わりになる事もできるから」

 

 

満面の笑みで喜び合う2人に複雑そうな表情を見せるも、ヒナはイオリの抱いている赤子に近づいてその頬に触れようとする

 

なるべく怖がらせないように自身の表情を笑顔に変えて、静かにそーっと柔肌に触れようとした────

 

 

 

「うあああああ!だうああああ!」

 

────あっ……

 

「その……ごめん……」

 

「……ううん」

 

 

 

瞬間、赤子は大声で泣き叫んだ

 

 

 

「私達が触れようとしても結局同じ結果になるだけでしょうし……やはりここはあの2人に任せるしかなさそうですね……」

 

「ヒナ委員長との触れ合いを泣いて拒むとはなんと贅沢な……私なら逆に泣いて喜びますのに……」

 

「流石はアコ行政官……赤ちゃんに本気で嫉妬するなんて……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に私達以外には心を許さないんだな……」

 

────少しずつ人に慣らす練習とかもしておきます?

 

「うーん……この子にとってもその方がいいのかもしれないね」

 

 

 

 

現在時刻18:32、ゲヘナの大型ショッピングモール内にて

 

酒泉達は元々トリニティのショッピングモールに行く予定だったが、周りの風紀委員達の気配りによって予定より大幅に早く仕事を終えた事で〝これなら閉店までに間に合う〟と判断して急遽ゲヘナのショッピングモールへと行き先を変更した

 

 

 

「それにしても……予定より早く仕事が終わってよかったね」

 

────他の風紀委員達も協力してくれましたからね……

 

「〝お幸せに!〟ってからかわれたけどね……」

 

 

 

ゲヘナを出る前に他の同期に言われた言葉を思い出して仄かに頬を染めるイオリ

 

だが、酒泉はそれを最初から冗談だと割り切っているのか大して反応する様子を見せなかった

 

 

 

────まあ、その皆も協力してくれるって言いますし今回は存分に甘えちゃいましょうよ

 

「……うん」

 

────……銀鏡さん?

 

「ああ、いや……なんでも……」

 

 

 

キョロキョロと落ち着かない様子を見せるイオリに心配そうに声を掛ける酒泉だが、なんとなく彼自身も理由は察していた

 

 

 

「あれって……風紀……」

「子供…作……」

「風紀……乱して……」

 

「……なんか……視線感じない?」

 

────……そっすね

 

「うあ?」

 

 

 

それも当然、そもそもゲヘナ全体に置いて風紀委員会の存在はかなり有名だ……況してやそこに人型の男子生徒が赤子を抱いていれば視線を集めるのも無理はないだろう

 

そんな事を微塵も考えていなかった酒泉達の周りの者がコソコソと噂話をすると、その一部がイオリの耳に届いた

 

 

 

「まさか……あの2人の子供?」

「風紀委員と言ってもやることやってるんだね……」

 

 

 

「~~~っ!しゅ、酒泉!早くベビー用品売場まで行こうよ!」

 

────ええ?カイナ抱っこしてるんですからゆっくり歩きません?

 

「うっ……そ、そうだな……」

 

 

 

周りの視線が気になってきたイオリは酒泉を急かすが、その酒泉は抱いているカイナを揺らさない様に静かに歩いていた

 

そんな姿を見るとイオリも流石に必要以上に急かす事ができず、結局周りからの視線を浴びせられながらのんびりとベビー用品売場まで向かう事にした

 

 

 

「……な、なあ……私達さ、これから一緒に子育てしていくことになるんだよな?」

 

────ええ、そうですね

 

「……その……そうなると自然と色んな噂が出てくるんじゃないか?」

 

────……色んな噂?例えば?

 

「だ、だから!わ、私達が結婚したとか私達に……こ、子供が……出来た……とか……」

 

────ああ……だったら〝親戚の子を預かってる〟って口裏合わせときます?

 

「……なんか随分とあっさりしてるけど酒泉は何とも思わないの?」

 

────……何が?

 

「……何でもない」

 

 

イオリは恥ずかしそうにモジモジしながら小声で呟くが、酒泉の方は平常時と変わらず普通に言葉を返す

 

なんとなくそれが気に入らなかったのか、イオリはムスッとしながら話を誤魔化した

 

 

「カイナはこんなクソボケに育っちゃ駄目だからなー」

 

「くおーけ?」

 

────いきなり罵られた!?俺、何か悪いこと言いましたか!?

 

「別に?最初から期待なんてしてないしなー」

 

 

どこか機嫌悪そうにしながら足早に進むイオリの背中を酒泉が追っていると少しずつ〝ベビー用品〟と書かれた看板が見えてきた

 

ベビーカーにおしゃぶり、ガラガラにファンシーな柄のおくるみ等……恐らく2人とも人生で一度も買ったことがないような品ばかりが並べられていた

 

 

「っと……ここか……色々置いてあるな……」

 

────まさかこんな若い内から子育てグッズを買いに来る事になるとは……銀鏡さんはどれが良い品とか分かります?

 

「わ、私だってこういうの買うの初めてだし分からないよ……」

 

────ですよねぇ……とりあえずネットで色々意見を見ながら……

 

「あの~……」

 

────ん?

 

「その、何かお困りでしょうか?」

 

 

 

イオリと酒泉が互いにううむと首を傾げながら唸っていると、それを遠目に眺めていた女性店員が声を掛ける

 

若い2人が子育てグッズの前でオロオロしているせいか店員の目は珍しいものを見た時の様な目をしていたが、酒泉は敢えてそれには触れず用件だけを伝える

 

 

 

────えっと……実はこの子の為にベビーカーとか色々買いに来たんですけど……こういう経験は初めてでして……

 

「あうぶ?うだー!」

 

「あら、それでしたらベビーカーとかに実際乗せてから決めてみます?」

 

「え?いいのか?」

 

「勿論です!私達も赤ちゃんに不自由な思いはさせたくないですから、最高の乗り心地のベビーカーを選んであげてください!……そうだ!折角ですのでガラガラとかも振らせて反応を見てあげてください!」

 

────本当ですか!?ありがとうございます!

 

「いえいえ!では、私はこれで……お若いご夫婦同士、ごゆっくりと決めていってください!」

 

「ふ、夫婦!?別に私達はそんなんじゃ───って、もう行っちゃったし……」

 

 

 

去り際に店員が発した言葉を否定しようとイオリが顔を真っ赤にしながら首を横に振るが、店員の背中は既にレジの方へと遠ざかっていた

 

誤解を解く事ができなかったイオリは顔に熱を帯びながらも今の発言を聞いた酒泉の反応が気になってチラッと視線を酒泉に向ける

 

しかし酒泉はカイナをベビーカーに乗せて既に試し乗りを始めており、店員の〝ご夫婦〟発言は特に気にしていない様子だった

 

 

 

「ぱあー!ぱぁ!」

 

────お?これが気に入ったのか?でも他にもベビーカーはあるからもう少し試していこうなー

 

「あいっ!」

 

「……酒泉の馬鹿」

 

────ん?なんか言いました?

 

「何も……それよりも私は幾つかガラガラを選んでくるから酒泉はベビーカーをお願いね」

 

 

小声で呟いた言葉を咄嗟に誤魔化してそのまま酒泉とカイナから離れていくイオリ

 

その頬が赤く染まっていた事はイオリ自身も気づいていたか定かではない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「あーお腹いっぱい!」

 

「久しぶりにちゃんとした食事が摂れたね……」

 

「大きな依頼を解決できたからね!お金はまだまだ残ってるわよ!」

 

「さ、流石はアル様……懐も器も大きいです……!」

 

 

 

満足気にショッピングモール内を歩く4人の少女

 

便利屋として活動する彼女達はこの日、珍しく大金が掛かった依頼を無事に遂行して会社の経営を黒字へと転換させる事に成功した

 

そのお金でショッピングモール内のファミリーレストランで贅沢な食事を堪能してから大量の食材を買い込み、今月の生活はもはや困る事はないだろうと浮かれ気味に帰宅しようとしていた

 

 

「今日はすんなりと行けたねー」

 

「い、いつもと違って邪魔者も現れませんでしたし……」

 

「そうね……逆に手応えがなさすぎるほど簡単に依頼完了しちゃったけど……まあ、こうしてお腹が膨れるのならそれに越した事はないわね!」

 

 

この日の依頼はブラックマーケットで名の売れているちょっとした有名人を表の世界で護衛する事だったのだが、途中からその有名人に恨みを持つ者との戦闘が発生してしまい、幸いにも人的被害は出なかったものの代わりに現場の建造物等が被害に遭ってしまった

 

それからはいつもの様に風紀委員に追い掛けられる事を覚悟していたが、いつまで経っても風紀を取り締まる者達は現れず、何度も自分達の前に立ちはだかってきた少年も全く姿を見せなかった

 

 

「珍しく風紀委員も大人しかったね」

 

「こっちに手が回らないほど忙しかったのか、それとも他に優先すべき事があったのか……何にせよ私達からしたら都合がよかったね」

 

「ふふっ……そうね!お陰で当分はお金に困らないわよ!」

 

 

カヨコは空気が読める、だから〝来月また赤字になってそうだけど〟なんて言葉をわざわざ声に出すつもりはない

 

体質的にかそれとも性格的にか、トラブルを起こしやすい社長ならきっとまたどこかのタイミングでやらかすだろうと生暖かい視線を送っている

 

そんなトラブルだらけで常に経営難な会社でもこの場の誰も辞めようとしないのはやはり社長の人柄故か

 

どこか抜けていて、かっこつけようとすると大抵失敗して、でも決める時にはちゃんと決める……皆が背中を追いかけて手助けしたくなる様な彼女だからこそ彼女達は全員が陸八魔アルという女に惹かれたのだろう

 

 

(どっかの風紀委員さんといい、無自覚に人を誑し込む人に弱いのかもしれないね……)

 

 

己の分かりやすさに1人で苦笑しながらも、カヨコは赤子を抱いている酒泉をチラッと見ながら楽しそうにスキップしている社長の後を追う

 

今、希望に満ちた顔をしている社長も来月くらいには白目を剥いて〝なんですってえええええ!?〟と叫んでいるだろうと予想しながら────

 

 

 

 

 

(……ん?赤ちゃん?)

 

 

 

 

 

ふと、数秒前に視界に入った光景が気になって立ち止まってから後ろを向く

 

そこに居たのは赤ちゃんを抱っこしている酒泉と……

 

 

 

「……銀鏡イオリ?」

 

「んー?どうしたの……ん?あれって?酒泉とイオリ?」

 

「えぇ!?なんであの2人がここに────え?赤ちゃん?」

 

「ま、まさか……アル様を追ってここまで……!」

 

 

どうしてこんな所に、あの赤ちゃんは誰の子か

 

各々が思考を巡らせる中、全員の耳に酒泉とイオリの会話が聞こえてくる

 

 

 

 

「これで必要な物は揃ったな」

 

────んじゃあ、ちょっとレジまで行ってくるんでカイナのこと預かっててもらってもいいですか?

 

「了解……あ、そういえばベビー用品はどっちの家に置くんだ?」

 

────とりあえずウチに置こうと思います、カイナを預かるって言い出したのは俺なんで……

 

「そっか……じゃあ、カイナに会う時は私が酒泉の家に行くよ」

 

────はい、お願いします

 

 

 

 

カイナという名前は恐らく抱いている赤子のことだろうと理解した便利屋の面々、しかしどうして赤子を抱くような状況になっているのかは不明のままだった

 

そうして頭を悩ませている間にも酒泉とイオリの会話は続く

 

 

 

 

「うーだっ!ぱぁぱ!」

 

────おお……どうした、カイナ?腕なんか引っ張って……

 

「うーん……酒泉と離れたくないとか?」

 

────そうなんですかね……?

 

「ほら、パパはやる事があるから少しだけママと一緒に待ってようなー?」

 

────ごめんな、パパもすぐ戻ってくるからちょっとだけ我慢してな?

 

「あぃ……」

 

 

 

 

「……は?パパ?ママ?」

 

「こ、これって……もしかして……」

 

「……ありゃ?もしかしてあの2人ってそういう関係なの?」

 

「……な……なななななななななっ……」

 

 

 

父親と母親の様に接する酒泉とイオリ……更にはそれぞれ自らを〝パパ〟と〝ママ〟と名乗っている

 

そんな衝撃的な光景を目の当たりにした便利屋は目を見開いて驚愕している

 

端から見れば新婚夫婦、それも若い内から〝ヤっちまった〟感じの……流石に若すぎる気もするが

 

 

「むぅ…うぁ…」

 

────ん?なんか自分の指をちゅぱちゅぱとしてますけど……

 

「……あっ!確かさっきこうやってた時はミルクを欲しがってた様な……」

 

────そういえば……最後にミルクあげてから少し時間経ってますもんね

 

「じゃあ、酒泉がお会計してる間に私は外に行ってミルクをあげてくるね」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……はっ!?ミルク!?」

 

 

イオリの衝撃的な発言に思わず大きな声をあげてしまうカヨコ

 

……イオリの言う〝ミルク〟とはコンビニで買った〝粉ミルク〟を風紀委員会から持ってきた魔法瓶の中に入っているお湯で溶かした物のことを言っているのだが、カヨコはそんな事を知る由もない

 

ミルクとはどういう事だ、銀鏡イオリの身体は〝そう成長した〟のか、だとしたらいつの間に

 

そんな考えが頭の中で繰り返される中、隣でわなわなと震えていたアルが一歩踏み出し、そして────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんですってえええええええええええええええ!?」

 

 

 

 

 

 

人生で一番の叫び声をあげた

 

 

 

 

「ん?今の声は……便利屋!?」

 

────どうしてこんな所に?……って、まあ……一応ゲヘナの生徒ではあるしこの辺りに居てもおかしくはないか

 

「〝どうして〟はこっちの台詞よ!?今日は珍しく風紀委員が姿を見せないと思ったら……酒泉!貴方はそんな事をしてたの!?」

 

────……そんな事?

 

「だ、だからっ!その……こ、ここここ子育ての……計画を……!」

 

 

 

頭の中で既にストーリー(という名の妄想)が出来上がっているのか、アルは顔を真っ赤にして酒泉に指を突きつける

 

その顔の赤さは思わず頭部から湯気が出ているの幻視してしまうほど真っ赤っかだったとか

 

 

 

「だ、大体!そんな若い内から子供を作るなんて……その……は、早すぎるわよ!」

 

「……え?」

 

「そもそも風紀委員の活動とかはどうするのよ!?酒泉!子育てと両立して私達を捕らえられると思ってるの!?」

 

「アルちゃん怒りの方向性拗らせすぎー」

 

────えっと……なんか勘違いしてるっぽいですけどこれには事情が……

 

「酒泉……風紀委員のくせに風紀を乱すような事してたんだ……うわぁ……」

 

────話を最後まで聞けって!?鬼方さんもその冷たい目で見るのやめてくださいよ!?

 

「ア、アル様に近寄らないでください……!」

 

────お前は何を警戒してんだよぉ!?

 

「と、とにかく!全員一旦落ち着いて────」

 

「……ぅ…ぅあ……うぅ……」

 

「────カ、カイナ!?」

 

 

 

誤解が新たな誤解を生み、連鎖的に妄想が広がっていく状況

 

酒泉とイオリが必死の形相で事情を説明しようとしていると、イオリの腕の中でカイナがふるふると震えて泣き出しそうになる

 

 

 

────もしかして知らない奴等に囲まれたから!?

 

「ほ、ほーら!ママが一緒に居てやるからな!?何も怖くないぞー!?」

 

────パパもここに居るからな!?絶対守ってやるから落ち着いて!?な!?

 

「や、やっぱり結婚してたの!?」

 

「……学生婚は周りの目が厳しくなるけど……本当にその子を幸せに育てられるの?」

 

────勝手に話を重くしないでくれません!?

 

「くふふふふっ!これは大ニュースだねぇ?」

 

「……ア、アル様は来る日も来る日も貴方を出し抜く方法を考えていたというのに……それを無視して能天気に恋愛を……!」

 

「だーもう!だーかーらー!これは違うんだって!」

 

 

 

 

アルとカヨコが誤解を深め、ムツキがそれに便乗し、ハルカがガチギレする

 

そんな事を繰り返している間にも時間は進んでいき、結局誤解が解けたのは約30分後の話だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「よし……とりあえず買った物はこんなものか」

 

────すいませんね、家まで荷物持ちさせちゃって……

 

「きゃっきゃ!あーだー!」

 

 

 

ベビーカー、おむつ、おくるみ、新しく買った粉ミルク

 

他にも大量のベビー用品をリビングで並べながら礼を言う酒泉にイオリはカイナとガラガラで戯れながら〝気にしないで〟と返した

 

 

 

「それにしても……面倒な奴等の相手をしてたせいですっかり予定より遅れちゃったね」

 

────そうっすね……普段ならそろそろ夕飯を作り終えてるはずなんですけど……

 

「夕飯か……もうそんな時間────あっ」

 

────……今の音は……

 

「……聞かなかった事にして」

 

 

 

意識したせいで自らの空腹に気づいてしまったのか、イオリの腹からグゥ…と小さく音が鳴る

 

恥ずかしそうに俯きながらお腹を押さえるイオリを見て酒泉はある提案をする

 

 

 

────あの……もし良かったら何か作りましょうか?今日は散々お世話になっちゃいましたし……

 

「……いいの?」

 

────むしろこのまま帰すのは恩知らずすぎるんで……それにもう少しちゃんとカイナの今後についても話し合いたいですし

 

「……そうだな、それじゃあ今日は酒泉にご馳走してもらおうかな?」

 

────ありがとうございます、早速なんか作りますんで……その間カイナのこと見ててもらってもいいですか?

 

「はーい……ほら、カイナはママと遊ぼうな」

 

「あぃ!まーま!」

 

「おお……夜なのに元気だな……」

 

 

 

エプロンを着けながら台所に向かう酒泉を見送り、早速買ったベビー用品を使ってカイナと遊ぶイオリ

 

折角だし様々な物を使って反応を見てみようと袋の中を漁っていると、その中に一冊の本が入っているのに気がついた

 

本の表紙には赤ちゃんの絵、タイトルは〝初めての子育て〟と書いてあった

 

 

「子育てか……やっぱり色々と大変だよなぁ……」

 

────身近に経験者が居ればアドバイスしてもらえるんですけどね

 

「それか育児教室とか?」

 

────実はそれもちょろっとスマホで調べてみたんですけど、この辺りじゃ育児教室は開いてなさそうですね……

 

「そっかー……他の所はどうだ?最悪、ゲヘナからちょっと離れた程度の場所とかでも……」

 

────他の場所は……

 

 

 

 

一旦料理の準備を止めて素早くスマホを操作する酒泉

 

何度か画面をタップしていると気になるサイトが視界に入ったのか、その指を止めて画面を注視する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────んー……あっ!今週の土曜日、トリニティの方で育児教室やるっぽいですよ!

 

「へぇ……ならそこにする?」

 

────そうしましょっか!

 

 





酒泉君、ゲヘナのショッピングモールに行くことで修羅場を回避!!!これで一安心だね♡
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