んー……この本はあんま書いてないな……
ユスティナやトリニティそのものの歴史を調べていけば、そのうちアリウスが潜伏してそうな場所が見つかると思ったけど……
そんな都合良く………いや、聖園さんがアリウスと接触できた以上、不可能では無いんだ
根気強く調べていけばいずれたどり着けるはずだ
………とはいえ、ここまで手掛かりが無いとなぁ
………これは……違う
これも違う………こっちも
「……あの」
んー……違う……
「……あ、あの」
これは……ちょっとは期待できそうか……?
「き、聞こえてますか……?」
……っ!?す、すいません古関さん、集中しすぎちゃって……つい……
「あ、あの……その、そろそろ閉めたいのですが……」
え……?あっ、もうこんな時間なのか……本当にすいません、こんなに貸してもらっちゃって……
「い、いえ……それにしても随時熱心に本を読んでましたけど………何か気になることがあるんですか?」
まあ、ちょっとトリニティの歴史について調べたくなりましてね……
「………で、でしたら、その、わ、わた私が用意しておきましょうかっ?」
……いいんですか?
「この子達にどんな記憶が眠っているのかは私が一番理解しているので……」
じゃあ、お言葉に甘えて………よろしくお願いします
「は、はい。明日の夕方には揃えておくので……ですから、ま、まままた来ていただければと……いえっ!酒泉さんが良ければですけどどど……」
何かめっちゃ吃ってません?
「へあぁっ!?き、気のせいです!と、とにかくまた明日です!」
ちょっ………ちゃんと帰るんで押し出さな─────
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アサルトライフルを片手に酒泉がツルギに襲いかかる
銃口から放たれる弾丸を、ツルギは一歩も動かずに全て正面から受け止める
全て直撃したにも関わらずツルギの顔に多少掠り傷の様なものが出来た程度のダメージしか与えられていないが、酒泉にとってそれは最初から想定内だったのか構わず突っ込んでいく
そのまま無言で立っているツルギに対して、今度は背から取り出したスナイパーライフルを構えて引き金を引く
弾丸はツルギの頭部に直撃して彼女を多少仰け反らせるが、すぐに前を向いてニヤリと笑う
「………来い」
突っ込んでくる酒泉を挑発するように笑みを浮かべ続けるツルギ
酒泉はアサルトライフルを前方に放り投げ、懐からナイフを一本取り出してツルギに投げつける
ツルギは右手で刃の部分から思いっきり握りしめて受け止める。手からは血が流れるが、ツルギは全く意に介していない
「………っ」
しかし次の瞬間、鋭い一撃がツルギの左手を襲う
いつの間に次弾を装填していた酒泉のスナイパーライフルがツルギの左手にダメージを与えた
ナイフを握りしめたせいで右手から血を流し、左手もスナイパーライフルの狙撃で負傷したツルギに接近する酒泉
そのまま先程前方に放り投げたアサルトライフルを拾い上げ、ツルギの腹に銃口を突きつけると────
これならっ………どうだっ!
────容赦なく引き金を引いた
至近距離から繰り出される痛みの連撃がツルギを襲う。身体が頑丈なキヴォトスの生徒でもかなりのダメージが入るであろう攻撃だが、しかし酒泉が止める気配はない
そしてカチッカチッと虚しい音がアサルトライフルから鳴ると─────
「……キへッ!」
……っ!?やばっ……
─────ツルギが酒泉の顔を掴んでそのまま床に叩きつけた
脳を揺らされる感覚に陥る様な強烈な一撃が酒泉を襲う
ツルギも多少は手加減をしたのだろうが、それでも加減が足りなかったのか酒泉の意識が朧気になる
何とか意識を集中させようとする酒泉の目には、いつの間に身体の傷が治りかけているツルギの姿があった
驚異の治癒力に感服していると、そんな酒泉にツルギが語りかける
「………どうする?」
────っ!もう一本お願いします!
「キヘハハハハ!そうこないとなぁ!?」
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どうも、今日だけで剣先さんに五連敗した折川酒泉です………次は勝つ
訓練が終わった後、俺は下江さんに手当てを………うおっ、傷口に沁みるな
「もう……毎回ツルギ委員長に挑んで毎回こてんぱんにされてるのにどうして懲りないのよ……」
剣先さんとの訓練は得られる物が多いからな………特に近接戦闘とか学びやすいし
「その結果、私の仕事が増えるんだけど……」
すまん下江さん、迷惑掛ける………
「べ、別にそこまで思ってるわけじゃないわよ!」
ならいいんだけど……もし本当に迷惑掛けてたらいつでも言ってくれよ?他の人に頼むから
「だ、駄目!」
うおっ、ビックリした……
「あ……ごめん……じゃなくて!ほ、他の人に迷惑掛けるぐらいなら私がこれからも手当てするから!いい!?」
は、はい、分かりました……ありがとうございます
「それでいいのよそれで!」
謎の圧を感じた俺は大人しく下江さんの言うことに頷く
こういう時、下手に逆らうと事態がややこしくなるんだ、俺は知ってるぞ
「……ね、ねえ、そういえば昨日古書館に遅くまで居たらしいけど何を調べてたの?」
あー……それは……
「……ア、アンタまさか!ウイ先輩と変なことしてたんじゃ────」
は、はあ!?何変な妄想してんだよ!そんなことするはずないだろ!古関さんに失礼だろうが!
「じゃ、じゃあ何で口を濁すのよ!何かやましいことがあったんでしょ!」
そ、それは……下江さんを巻き込みたくなかったというか……
「巻き込む?………やっぱり変なことしてるじゃない!」
言葉狩りやめろや!?
「エッチ!変態!卑猥!死刑!」
ちょっ……痛い痛い!バンバン叩かないで!
「だ、だいたいアンタって入学前からウイ先輩と知り合いだったわよね!?どんな関係なのよ!」
少し前から古書館を借りてただけだって!
「……少し前?それっていつから?」
二年ほど前から………その頃は古関さんもまだ高一だったから、他のトリニティの先輩に必死に頼み込んで古書館を借りてたんだ
んで、それ以来ちょくちょく会うようになって、ある程度仲良くなった
「その頃アンタまだ中学生じゃない!そんな前からウイ先輩を狙っていたなんて……!」
は!?
「そ、そういえばミカ様とも入学前から知り合いだったわね………まさか、ミカ様のことも狙って───」
んなわけあるか!?どんだけ妄想に人を巻き込むんだよ!
「………ちなみになんだけど、他にも入学前からの知り合いとかいるの?」
………桐藤さんや百合園さんとも
「ま、まさかトリニティを支配して女の子達を好き勝手するつもり!?」
待て!誤解しないでくれ!桐藤さんとは聖園さん経由で知り合っただけだし、百合園さんに関しては向こうから接触してきたんだ!
「な、何でセイア様からわざわざ酒泉に近づく必要があるのよ!」
さ、さあ?予知夢にいないのがどうこうとか……?
「変なこと言って誤魔化さないで!やっぱり何か隠して────」
「………コハル、酒泉、周りの注目を思いっきり集めてますよ」
……あ、羽川さん
「────うえ!?ご、ごめんなさい!」
──────────
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「いや~、相変わらず仲良いっすね~あの二人は」
「途中から私達のこと忘れてましたもんね……」
「……あれ?そういえば酒泉は?」
「……また〝例の呼び出し〟です」
「うわー……あのお姫様達に随分気に入られてるんすねぇ……」
「彼女達はきっと酒泉を人質にしようとしているに違いありません……!おのれっ……!」
「ハスミ先輩、結構怒ってますね……」
「まあ、あの人もあの人で酒泉のこと気に入ってたりしてるっすからね………この前もプライベートで一緒にスイーツ食べに行ったとかなんとか」
「ティーパーティー……一体何を企んで……」
「こういう時は普段とは逆にツルギ先輩がストッパーになるんすけど………そのツルギ先輩は?」
「……あそこです」
「ど、どうしよう……さっきの訓練の時、強く叩きつけすぎちゃったかな……で、でも本人も手加減しないでほしいって言ってたし……あ!だ、だったら叩きつける瞬間、少しだけ力を抜いたのまずかったんじゃ……」
「き、嫌われてないかな……?大丈夫だよね?気にしてる様子も無かったし……本当に大丈夫だよね?あ……そ、そうだ、もっと分かりやすく褒めてあげた方がよかったかな……で、でも、露骨に褒めすぎて『うざい』って思われるのは嫌だし……」
「そ、そういえば戦闘中、ついテンション上がっちゃったけど気持ち悪いとか思われてないかな?へ、変な顔してなかったかな?う、うう……また一緒に訓練してくれるかな……?」
「よ、よし……次からは良かったところはちゃんと褒めて、それでウザがられない程度にして……そ、そうだ、先輩らしく何処か食事に連れていってあげて……で、でも私、そういう所あまり知らないし……」
「………ねえ先輩」
「………なんすか」
「彼って罪作りでは?」
「罪作りだし罪深いっすね」
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す、すいません……お待たせしました……
「なに、私もつい先程到着したところだ………ところで、随分と疲れているようだが……?」
いや、ちょっと頭がピンクな子に絡まれていただけなんで気にしないでください
「そう言われると逆に気になってしまうのだが……まあいい、それじゃあ早速対策会議を始めようじゃないか─────」
「─────私達の未来についての」
はい、百合園さん