〝アリウス〟潰すゾ!!!   作:あば茶

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パパになった酒泉とママになったイオリ─隣─

 

 

 

 

 

 

 

「おわあああ!?カイナ、ストップ!私の尻尾は食べられないから!?」

 

「むひゃむひゃ……」

 

────カイナー、ミルクの時間だぞー

 

「ぅ?……あい!」

 

 

 

 

金曜日、放課後

 

今となっては当たり前のように俺の家に通ってカイナと戯れている銀鏡さんだが、今日はいつも以上にカイナがわんぱくだった為に助け船を出すことにした

 

尻尾から口を離すとカイナがこちらまでよって手を伸ばしてミルクを求め始めた

 

哺乳瓶を口に当てて飲ませてあげると嬉しそうにゴクゴクと……あーダメダメ、もっとゆっくり飲もうなー

 

 

 

「他の人達には人見知り発揮して泣き出しそうになるのにどうして私達と居る時だけわんぱくになるんだ……」

 

────まあ、それだけ心を許されてるって思えば……それに人見知りも以前程は激しくないですし

 

「ガラガラとか人形とか使って少しずつ慣らしていった甲斐があったのかな……」

 

 

 

涎まみれにされた尻尾をティッシュで吹きながら愚痴る銀鏡さんに答えると、満更でもなさそうにその頬を赤らめた

 

それにしても脚の次は尻尾を舐められるとは、銀鏡さんも不憫な……いや、この世界の銀鏡さんは別に脚舐めさせてないんだっけ?

 

原作の展開のせいで変な先入観に囚われてしまう……いてっ

 

 

 

────……なんで俺の頬を尻尾で叩いたんですか?

 

「……なんか失礼なこと考えてた気がして、つい」

 

────そんな理由で……いたっ、いたたたた……カイナ、そんなこと真似しちゃいけません!

 

「うー!やー!」

 

 

 

ちっちゃい手でカイナからも頬にビンタされる、これが成長したキヴォトス人だったら多分致命傷だった

 

 

 

「ほら、クソボケが移されるからあまり触れないようにしようなー」

 

────いきなりクソボケ扱いかよ?イオリッパリらしいな……ん?

 

「インターホン?誰だ?」

 

────ネット注文したやつはもう全部届いてるしな……ちょっと出てきますねー

 

 

 

 

銀鏡さんがカイナを抱き上げると同時に家のインターホンが鳴り、すぐに出ようとそのままカイナを銀鏡さんに任せて立ち上がった

 

廊下から分かりやすく音を立てて歩きながら〝はーい〟とだけ返事をして玄関に向かい扉を開ける

 

 

 

 

────はいはーい、今出まーす……あれ?調月さん?

 

「……こんな時間にごめんなさい、本当は貴方の予定を聞いてから日程を合わせるべきなのでしょうけど……今すぐ確認したい事があって」

 

 

 

 

扉の前に立っていたのはミレニアムガクエン……ではなく、ミレニアムサイエンススクール所属のセミナーの元会長である調月リオだった

 

時刻は18:30、別に〝こんな時間〟というほど遅くはないと思うが……

 

 

 

「……今は1人なの?」

 

────……?いえ、ちょっとお客さんが来てまして……

 

「……そう」

 

 

 

独り暮らしにしては靴が多いと思ったのか、日頃から俺が履いている靴の隣に並べられている別の靴を見た調月さんが尋ねてくる

 

それに素直に答えると、調月さんは思い悩む様に顎に手を当てて黙り込む……なんだ?

 

 

 

────えっと……調月さんの言う〝確認したい事〟が何なのかは分かりませんけど、とりあえず中に入ります?お茶でも出しますよ?

 

「……いえ、私は────」

 

「酒泉?誰が来たんだー?」

 

「うだぁ!しゃお!でんしゃおー!」

 

 

 

 

玄関で話している俺の様子が気になったのか、銀鏡さんがカイナを抱えながら廊下に現れる

 

その間にもさりげなく尻尾でヒーローのデフォルメぬいぐるみを振ってカイナを楽しませることを忘れていない

 

随分手慣れて……いや、尻尾慣れてか?

 

 

 

「……?酒泉、その人は?」

 

────ああ、この人は調月さん。ミレニアムの……

 

「……いえ、自己紹介は自分でするわ……それに、直接姿を見られて改めて決意を固める事ができたから」

 

────……決意?

 

「酒泉、やっぱりさっき言ってた言葉に甘えてもいいかしら?中でゆっくりと話がしたいし……あの子と」

 

────……え?銀鏡さんと?

 

「ええ、そうよ……だって私────」

 

 

 

 

 

そう言って調月さんは────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日は銀鏡イオリの事で話があって来たのだから」

 

 

 

廊下の奥で立っている銀鏡さんを無表情で見つめた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「あの噂は本当だったのね……酒泉が子供を育ててるという噂は」

────えっと……はい

 

「最初は何かの間違いかと思ってたけど……こうして目の当たりにすると流石に信じざるを得ないわね」

 

 

 

調月さんは俺の隣に座る銀鏡さんを見定めるように目を細める、すると銀鏡さん本人はどこか居心地悪そうにしながらもその場に無言で座り続ける

 

俺も場の空気に飲まれてカイナが泣き出さないようにおもちゃを使ってカイナの意識を逸らさせる

 

先週のヒーローショーで効果が証明された特撮グッズ、デンシャオー以外のヒーローが印刷された様々なおもちゃをカイナの手に持たせるとカイナは嬉しそうにそのおもちゃに釘付けになる

 

中のボタンを押すと変身音が鳴るデフォルメ人形、手につけて開け閉じすると銃撃音が鳴るカスタネット、ネット通販で探してみれば意外と色んな物があった

 

 

「……手慣れてるのね」

 

────まあ、3週間は経ってるんで流石に……ね?

 

「にぇ?」

 

 

 

俺の言葉を復唱するカイナを見て複雑そうに俯く調月さん

 

調月さんが何を考えているのか分からないが、とりあえずこの状況に思うところがあるのは間違いないだろう

 

 

「……イオリさん、だったかしら」

 

「……な、なに?」

 

「貴女は彼のことはどれくらい理解しているのかしら?」

 

 

調月さんの語気が強まる

 

ピリピリした空気……とは違うが、どこか緊張する様な雰囲気を感じる

 

個人的には初めてバイトの面接をした時の雰囲気に似ている……あれめっちゃ緊張するよね

 

 

「ど、どれくらいって……少なくとも最近酒泉と出会ったばかりの奴等よりは理解してるよ」

 

「本当にそうかしら?」

 

「……何が言いたいんだ?」

「貴女が今言った通り私は最近酒泉と出会ったばかりの女よ、出会いの切っ掛けはある少女を消そうと……いえ、殺そうとしていた私を説得しにやって来た時だったわ」

「はぁ!?こ、殺すって……待てよ?そういえば酒泉、この前錠前サオリと話してた時〝ミレニアムの生徒を殺そうとしていた〟って……」

 

「……そうなの?アリスのことも話していたのね……」

 

「……アリス!?それって先週出会った!?」

 

 

 

奇しくも最近伝えた話の登場人物全員と会っている事に驚いたのか、銀鏡さんは目を見開いて此方を向いてきた

 

俺自身もこんな短期間で銀鏡さんに全てを知られることになるとは思っていなかったので少々気まずい気持ちになる

 

 

 

「アリスには言葉通り世界を滅ぼせる力があった、そしてその力の一部が暴走したのを確認した私はアリスの人格データを完全に消去する事を決意したわ」

 

「……あの小さい子にそんな力が……」

 

「私の計画は当然納得されるようなものではなかったわ、実行前から非難されていたし実行後も計画を阻止するべく敵対者が増えていった……勿論今では失敗して良かったと思ってるけど」

 

「事情は分かったけど……それは当たり前だよ、人格消去って言い方はしてるけどそれって要するにアリスを殺すって事でしょ?」

 

「ええ、そうね……でも、彼は違った」

 

 

調月さんの視線に釣られて銀鏡さんも此方を向く

 

これから何の話をするのかなんとなく察してしまって少々こそばゆくなってきた

 

 

 

「酒泉だけは私の考えに理解を示した上で計画を止めにきた……けど、それだけじゃなく〝ある提案〟をしてきたわ」

 

「……提案?」

 

「〝アリスの力を抑える方法が見つからなかった場合、自分がアリスを破壊する〟」

 

「────っ、それが以前酒泉が言ってた話に繋がるのか……」

 

 

銀鏡さんは納得した様に頷く……と、同時に恨がましそうに睨んできた

 

その目を見てると何となく〝なんでずっと黙ってたんだよ〟と責められてるような気がしてきた

 

 

 

「酒泉は私の計画を一方的に否定するどころか、むしろ私の代わりに罪を背負おうとまでしてくれた。酒泉を事件に巻き込んだのは私なのに……それでも出会って間もない私の為にその手を汚す決意をしてくれた、風紀委員会を辞めてでも……今ある関わりを全て捨ててでも私と同じ道を歩んでくれると、そう約束してくれた」

 

「………は?風紀委員会を?」

 

「この意味が分かるかしら?彼は私の考えを理解してくれているし、私も彼がどういう人間なのかあの事件で理解できたわ」

 

 

話を聞いていて自分でも色んな人に対する罪悪感が湧いてくる

 

風紀委員会の皆にだったり手を下そうとしてしまった天童さんとケイさんにだったり、もっと早く計画を止めてあげる事ができなかった調月さんに対してだったりと

 

 

「……酒泉は自分の信じるものの為なら全てを擲ってでも前に進む覚悟を持つ人間よ。自分の居場所も立場も、そして……人間関係も。時には周りの人達を全員敵に回してでも戦い抜こうとするかもしれないわね」

 

「……」

 

「でも、もしそういう状況になったとしても私なら酒泉の隣に立ち続ける覚悟がある。酒泉が茨の道を進むのなら私が足場代わりになるし、酒泉が全てを敵に回すというのなら私も共に戦うわ」

 

 

調月さんが俺を見つめながら力強く宣言すると、今度は銀鏡さんに問いかける

 

 

 

「貴女にはそれ程の覚悟があるの?何が起きても絶対に彼の隣に立ち続けるという覚悟が……それも子供を背負いながら」

 

「……私は……」

 

「その覚悟が無いのなら今すぐ〝その座〟を私に譲ってちょうだい、生半可な覚悟でそこに居座られても不愉快だもの」

 

 

 

その言葉を聞いて口を閉ざす銀鏡さん

 

時計の針がチクタクと進んで数十秒経ったであろう頃、覚悟を決めた様な表情で漸く顔を上げた

 

 

 

「……うん、確かに私は貴女みたいな覚悟は持ってないよ。全部捨てて酒泉についていったりしないし、全てを敵に回す覚悟だってない」

 

「……それなら────」

 

「────だから!そうなる前に酒泉を連れ戻してやるッ!」

 

「……っ」

 

 

 

銀鏡さんの答えを正面から聞いた調月さんは眉間に皺を寄せて睨む

 

調月さんを纏う空気が冷たくて恐ろしいものに変わる……が、銀鏡さんはお構い無しに喋り続ける

 

 

 

「酒泉が全部捨てるっていうなら全部拾わせる!人間関係を切り捨てるつもりならまた繋がってやる!もし私達の元から去ろうとしたら────私が無理矢理連れ戻してやる!」

 

「……酒泉の意思を無視するというの?」

 

「ああ!そうだ!むしろそれくらい強引に縛らなきゃ酒泉はすぐフラフラとどっか行っちゃうんだから!」

 

「彼は束縛を好む人間には見えないのだけど」

 

「構うもんか!嫌われようが蔑まされようが酒泉を見失うよりマシだ!」

 

 

 

調月さんの冷静な問いに熱くなって返す銀鏡さん

 

因みに俺は不服そうな顔で不貞腐れてます、だってすぐ迷子になる子供みたいに思われてるんだもん

 

 

「それに、さっきから酒泉がどっか行くこと前提で話してるけど……私の力なら酒泉の腕を引っ張って無理矢理引き留められるもん!だって酒泉の身体弱いし!」

 

────俺が弱いんじゃないですぅ~!俺以外のキヴォトスの生徒の身体が強すぎるだけですぅ~!

 

「もしそれでも勝手にどっか手の届かない所に行こうとしたらその時は……両手両足へし折ってでも止めてやる!」

 

「……そう、それが貴方の覚悟なのね」

 

 

 

ねえ今凄い物騒な言葉聞こえてきた気がするけど多分気のせいだよね?風紀委員が両手両足へし折るなんて言うはずないもんね?

 

あと調月さんも納得した様に頷かないでくれ、出来れば今の銀鏡さんの発言を撤回させてほしい

 

 

 

「分かった、貴女の覚悟……確かに聞き届けたわ」

 

────聞き届けないでください、折川酒泉君の両手両足が危機に晒されてるんです止めてください

 

「……さっきも言った様にもし酒泉の結婚相手が生半可な覚悟しか持たない者だったら、その時は容赦なくその座を奪い取るつもりだった……でも、貴女は私の目の前で正面から堂々と自分の覚悟を宣言した」

 

────……ん?結婚相手?

 

「……ああ、いつものパターンね……」

 

「だから〝今日は〟このまま大人しく引き下がってあげるけど……もし貴女じゃ酒泉を幸せにできないと判断したらその瞬間から────」

 

────あの、調月さん?俺達結婚してませんよ?

 

「────え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────……で、こういう事情があって酒泉と2人で親戚の子供を預かる事になったんだ」

 

────だからこの子は俺達の間に生まれたって訳じゃなくて……調月さん?聞いてます?

 

「うーだ?」

 

「…………」

 

 

 

顔を伏せて座っている調月さん、しかし心なしか顔が赤い気がする

 

事情を説明しても全く反応しないし……どうしたんだ?

 

 

「……その、早とちりしてしまってごめんなさい」

 

────い、いや……別にそれはいいんですけど……調月さんはどうして俺と銀鏡さんが結婚してるって思ったんですか?

 

「あの子が……私の所に遊びに来たアリスが〝酒泉が女性の方と子育てしてました!〟って……」

 

 

 

天童さんが原因だと分かって一先ず納得する、ここ最近同じ様な誤解ばかりされたせいで俺も銀鏡さんもすっかりリアクションに慣れてしまった

 

ただ、今回みたいに態々家に来てまで事実確認する人が現れるのは想定外だったけど……待てよ?さっき調月さんは俺の隣がどうのこうの言ってたけど……あれって捉え方によってはプロポーズでは?

 

……いや、邪推はやめておこう……俺の事を大切に思ってくれてるのは伝わったけど理解者云々の流れ的にそこまで発展した話ではないはずだ

 

 

「……そう、じゃあ貴方達は別に結婚したという訳ではないのね?」

 

────はい、全くの誤解です

 

「これで何度目になるんだか……ほら、これでもう用は済んだでしょ?それなら早く帰ってよ」

 

────ちょっと銀鏡さん、そんな喧嘩腰にならないで……

 

「……先に喧嘩腰になったのは向こうだもん」

 

 

 

頬を膨らませていじける銀鏡さんだが、調月さんの方は気にしている様子を見せない

 

しかし少しだけ思うところがあったのか銀鏡さんの方を強く見つめると、その視線に気づいた銀鏡さんも迎え撃つかのように強く睨み返す

 

 

 

「銀鏡イオリさん、改めて謝罪を……今回は話をややこしくするような誤解をしてしまってごめんなさい、どうやら自分で思っていた以上に冷静さを失っていたみたい」

 

「……まあ、いいよ。もう慣れたもんだし」

 

「……でも、先程私が伝えたことは全て本心よ。彼の隣に立つ覚悟も……そこらの人間に彼を任せる訳にはいかないと言った事も」

「…………私だってそう簡単に譲らないから」

 

「……そう」

 

────あれ?調月さんもう行っちゃうんですか?飯でも食っていけばいいのに

 

「それはとても魅力的な提案だけどまた別の日に誘ってちょうだい、できれば2人きりで静かに食事ができるタイミングで……ね」

 

 

 

そう言い残すと調月さんは席から立って床に鞄を持ち上げる

 

中から複数枚の紙を取り出してトントンと軽く纏めると、その書類の束を俺に手渡してきた

 

 

 

────これは……あの計画の?

 

「ええ、アリスとケイを救う為の作戦の流れを細かく書き記したものよ。大まかな流れは知っていると思うけど一応そっちにも目を通しておいて」

 

「……作戦?」

 

「……気にしなくていいわ、別に貴女は知らなくても何も問題は起きないから」

 

「……ふーん」

 

 

 

何か言いたげにしながらも、銀鏡さんはそれ以上は口を開かなかった

 

調月さんも特に何か言うこともなく、結局この後は玄関から調月さんを見送ってこの日の会話を終えた

 

 

 

──────────

 

────────

 

──────

 

 

 

 

 

 

 

────……で?穏便に事が済んだかと思えば……どうして俺は正座させられているのでしょうか?

 

「……知らない」

 

────……はい?

 

「私、酒泉が風紀委員を辞めようとしてたなんて聞いてない」

 

────えっと……それは……

 

「誰にも言ってないの?」

 

────……はい

 

「私にも何も言わずに勝手に目の前から消えるつもりだったの?」

 

────…………はい

 

「……話してよ」

 

────……

 

「全部話してよ、今まで酒泉が巻き込まれてきた事件も、その時酒泉がやろうとしてた事も……私が見てない所で起きた事を全部、細かく」

 

────でも、もうすぐ夜の8時ですし……明日は土曜日とはいえ、朝から風紀委員会のパトロールがあるでしょ?全部細かく話なんてしてたら相当遅くなっちゃうんじゃ……

 

「……それなら────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シャワー音が風呂場から聞こえる

 

折戸の向こうで銀鏡さんのシルエットがうっすらと見えた瞬間、一瞬だけ向こう側に裸体の銀鏡さんが居ることを想像してしまう

 

……が、それ以上疚しいことを考えてしまう前に咄嗟に視線を逸らす

 

 

 

────し、銀鏡さん!着替え、置いときますね!

 

『……うえっ!?わ、わかった!』

 

 

 

返事を聞くと同時にその場から逃げ出すように直ぐ様風呂場から出ていく

 

リビングに戻った途端、胸が苦しくなってしゃがんで深呼吸する

 

このまま何度か深呼吸を繰り返そうかと思った矢先にガラッ!と折戸が開く音が風呂場から聞こえた……あと、いつの間にかシャワー音が消えていた

 

それと共にぴちゃ、ぴちゃ、と水滴が落ちる音も聞こえてくる

 

ふぅー、と疲れを吐き出すような吐息も……カイナが寝ていて静かなせいか、耳が研ぎ澄まされて微かに聞こえてくる着替えの音も

 

煩悩滅却煩悩滅却、ひたすら心を無にしようと手を合わせて心で念じる

 

 

 

「えっと……終わった、よ?」

 

 

そうしていると遠慮がちに背後から声が聞こえてきた

 

振り向いてみるとそこには俺が用意しといた、サイズが大きめな上下揃った灰色のパジャマを着た銀鏡さんが立っていた

 

勿論、俺用のなのでブカブカだ

 

 

「……お風呂、ありがと」

 

 

ほかほかと立つ湯気、下ろした銀髪、風呂のせいか赤く染まった頬

 

そんな立ち姿で銀鏡さんはモジモジしながら呟いた

 

 

 

「次、酒泉が入ってきなよ……さ、先にカイナと寝室で待ってるからさ」

 

そう言って去っていく後ろ姿を見送りつつ、俺も風呂場に向かう

 

いつもは俺が使うまで乾いている足拭きマットや体を拭く用のタオルも、今日だけは俺が使う前から濡れていた

 

……ここまで見れば誰でも分かるだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺、今日、銀鏡さんと寝ます

 

……どうしてこうなった

 

 

 

 




てれれれれれれれれれれれ~れ~(ワン○ースの次回予告的な曲)

調月リオからの誤解を解いた酒泉、しかし彼には次なる試練が待ち受けていた

ツインテ解除状態のギャップ、ブカブカのパジャマ、風呂の熱も相まって火照った身体、果たして酒泉はイオリの魅力に耐えられるのか

「俺のクソボケはみんな……一段階進化する!」

次回!クソボケピース!

〝酒泉んんんんん!(据え膳食わぬとは)なにやってんだお前えええええ!!!〟

クソボケ王に、俺はなる!

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