〝アリウス〟潰すゾ!!!   作:あば茶

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パパになった酒泉とママになったイオリ─家族?─

 

 

 

 

 

『────はぁ!?泊まっていくぅ!?』

 

『……うん』

 

 

想像通りのリアクションが酒泉から返ってきた、私もそれに短く一言だけ返す

 

 

『いや、〝うん〟じゃなくて……銀鏡さん自分の言ってること分かってます?女性が男性の家に泊まろうってんですよ?』

 

『でも、これなら明日の朝も遅刻とか考えずに済むでしょ?』

 

『いやいやいや……それなら話をする日を明日にズラせばいいだけでしょ?無理して今日全部話さなくても……』

 

 

至って普通、特に断る理由もないほど無難な提案をされる

 

ここでその提案を受け入れたとしても酒泉は別に約束を破る事もなく後日ちゃんと私と話し合ってくれるだろう

 

 

『……それじゃ嫌だ』

 

『……はい?』

 

『私は今すぐ話がしたいんだ』

 

 

けど、私はそれを拒否した

 

大した理由もない、〝今すぐ話が聞きたい〟という私個人の感情を優先して

 

 

『んな勝手な……』

 

『……酒泉が悪いんだ』

 

『……え?』

 

『酒泉が何も言ってくれないのがいけないんだッ!』

 

 

 

この時、私は自分の感情を抑える事ができなかった

 

それはさっき調月リオって人から酒泉との〝約束〟を聞かされたから……だけではないと思う

 

ここ最近、まるで狙い済ましていたかの様に連続で酒泉の知り合い達と出会った

 

そいつらは全員私の知らない〝重い何か〟を酒泉と一緒に抱えていた

 

知らなかった、酒泉を殺そうとしてた奴があんなに酒泉と仲良くなっていたなんて

 

知らなかった、元トリニティのお偉いさんがただの風紀委員にあんなにお熱になっていたなんて

 

知らなかった、酒泉が誰かを止める為にその手を汚そうとしていた事を

 

………知らなかった、酒泉が風紀委員会を辞めようとしていた事を

 

勿論、酒泉がアリウスの面会に行ってた事自体は知っていたし、それなら多少は話せる関係になっているんだろうとも思っていた

 

〝聖園ミカとヒナ委員長が酒泉を巡ってバチバチしてる〟って噂も偶々耳にした事もあるし、ミレニアムに友達が居るって話も酒泉から聞いた事があった

 

でも……直接この目で見て、耳で聞いて、真実を知って、本人達の目の前で想像以上の関係の深さを思い知らされたのはこれが初めてだった

 

 

『他の学園の奴等は知ってることをどうして私達風紀委員には教えてくれないんだ!?』

 

『……えっと……あまり人様に話すような事件じゃなかったので……』

 

『〝風紀委員会を辞める〟って話に関しては私達にも伝えるべきだろ!?どうして何も言わず消えようとしたんだ!?』

 

 

まるで私が軽んじられてるみたいで、それが酷くモヤモヤして

 

気がづけば自分でも無意識の内に酒泉の肩を掴み、全てを吐き出させようと必死に叫んでいた

 

 

『どうせ他にも隠し事してるんだろ!?また誰かの代わりに手を汚そうとしたりまた誰かを助けに行く為に敵地に乗り込もうとしたり!』

 

『いや、流石にもう同じような約束は……っとお!?』

 

『だったら全部教えてよ!後ろめたい事がないなら!今日!ここで答えて!』

 

 

酒泉の返事を聞こうともせずに一方的な要求を突きつけた、すぐにでも酒泉の口から隠し事を聞き出さないとまた勝手に居なくなろうとするかもしれないと思って

 

 

『勝手に約束しないでよ……勝手にいなくなろうとしないでよ……!』

 

『……すいません、正直に全て白状すると……風紀委員会を辞めると約束した時、銀鏡さんの気持ちは全く考えていませんでした』

 

 

返ってきたのは分かり切っていた答え、それを改めて突きつけられる

 

酒泉の中での私の存在は委員長程大きいわけじゃないのは分かってた、だって酒泉にとって委員長は〝特別〟だったから………まあ、気軽に私に接してくれるのもそれはそれで特別感があるけど

 

 

『……銀鏡さんがそんなにも俺のことを想ってくれていたなんて考えもしませんでした』

 

『……だろうと思ってたよ』

 

『はい、だから……今からでも聞いてくれますか?俺の話』

 

『────っ』

 

『……先に言っておくと話の中には重要機密とかもあるんで全部は話せません、けど……可能な限り隠し事はしませんので、それで勘弁してもらえませんか?』

 

 

その言葉は靄がかった私の心を晴らしてくれるのに十分すぎた

 

隠し事ばかりだった酒泉が秘密を打ち明けてくれる事で私もやっと委員長と同じくらい信頼されてる気がして

 

友人としてなのか先輩としてなのか、それとも女としてなのかすら分からない妙な嫉妬心が少しずつ鳴りを潜めていった

 

 

『遅すぎるよ……』

 

『……』

 

『……けど、それで許す』

 

『……ありがとうございます』

 

 

 

 

 

 

 

 

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──────

 

 

 

 

 

 

 

話はカイナを寝かしつけてから始まった

 

リビングの明かりを数段階落としてオレンジの光を小さく灯し、ホットミルクを飲みながら静かに話し合った

 

調印式で起きた事件、万魔殿の企み、それを知った酒泉の行動

 

アリウススクワッドに助けを求められた時の事、アリウスの支配者の事、私が現場に駆けつける前に彼女達とどんなやり取りがあったのか

 

天童アリスとの出会い、調月リオとの約束、ゲーム開発部の子を庇って負った怪我

 

時折、私からの質問を交えて進めていった話し合いは気づけば21時のちょっと前になるまで続いた

 

 

『……色んな事件に巻き込まれてるのは知ってたけど……まさかこれ程だなんて……』

 

 

話を聞いた感想としては何て言うか……波乱万丈だった

 

ただの善意だけじゃなくて酒泉なりの理由があって彼女達を助けたのは分かったけど、それにしても誰彼構わず助けすぎだと思った

 

だけど、委員長の負担を軽減する為だけに生身のその身体で前線を駆け回るような人が簡単に他人を見捨てられるはずもないし……〝酒泉らしいな〟とも思った

 

 

『……これが今日までに起きた全てです、当然伏せてある部分もありますけど……伝えられる事は全部伝えました』

 

『……うん、ありがとう。確かに聞かせてもらったよ……酒泉の身に起きた事』

 

 

全て聞き終えて私の中に幾つもの安心感が生まれた

 

酒泉の秘密を知った、知らない酒泉を知る事ができた、それぐらいには信頼された、これなら私に黙って勝手に居なくなろうとはしないよね?

 

その不安を声に出す事はできなかった、何故ならソファに寝かしつけておいた筈のカイナの声が聞こえてきたから

 

 

『うぅー……』

 

『あ……起こしちゃったか』

 

『小声で話してたつもりなんですけどね……ごめんなーカイナ』

 

 

1人にするのは心配だからと、念のため目の届く範囲で寝かせておいたのが失敗だった

 

私個人の我儘を優先して酒泉から話を聞き出した、そのせいでカイナの眠りを妨げてしまった事に酷く罪悪感を覚える

 

 

『まぁま、ぱぁぱ……』

 

『おう、俺達はここにいるぞー……で?どうします?銀鏡さん』

 

『……え?』

 

『いや、泊まるかどうかって話ですけど……今から帰るなら銀鏡さんのこと送りますけど』

 

 

私が酒泉の家に泊まると言ったのは〝今すぐにでも話を聞かせてもらうぞ〟っていう意思表明でもあった、だから話を聞かせてもらった後はもう酒泉の家に残る理由は何もなかった

 

問題があるとしても私の帰宅時間と睡眠時間が短くなる程度で、それだって明日の朝ちょっとだけ眠気が残る程度のデメリットしかないはず

 

 

『……えっと……酒泉が嫌じゃないなら……泊まらせてほしい、かな……』

 

 

だけど、私は酒泉の家に留まることを選んだ

 

漸く固く結ばれた絆をすぐに手放したくなくて、もうちょっと一緒に居たくて、そんな単純な理由で当初の我儘を貫くことにした

 

 

『寝間着とか俺が使ってる服ですけど……それでいいですか?』

 

『……うん』

 

『じゃあ、風呂沸かしてくるんでここで待っててください……流石に女性物の下着を俺が触れる訳にはいかないんで、洗濯とかは銀鏡さんが風呂から上がった後自分でやってくださいね?』

 

『……うん』

 

『……聞いてます?』

 

『……うん』

 

今更緊張でもしているのか、同じ答えしか返せない自分が情けない

 

でも酒泉にはそんな私の気持ちなど関係なく着々と話を進める

 

 

『それで寝床についてなんですけど……銀鏡さん、2階の寝室でカイナと一緒に寝てくれません?向こうにベッドインベッドがあるんで』

 

『それは良いけど……それじゃあ酒泉はどこで寝るんだ?』

 

『俺は適当にリビングのソファで寝ますよ、ぶっちゃけ枕と毛布さえあれば何処でも構いませんから』

 

『……いや、我儘言ってこんな時間まで居座ったのは私だし……だから私がソファで寝るよ』

 

『いやいや、客人をソファで寝かせるなんてそんな事するわけにはいきませんよ。ここは俺が……』

 

『いやいやいや、私が……』

 

『俺が……』

 

『私が……』

 

 

先程までのシリアスな空気は何処へやら、私の罪悪感と酒泉の意地がぶつかった結果謎の譲り合いが発生する

 

私としてはただでさえ酒泉に迷惑を掛けまくったのにこれ以上迷惑を重ねるような真似はしたくなかった、その一心でソファで寝ようとする酒泉をひたすら止めようとしたけど……

 

 

 

『あぅ……だー……』

 

『……っと、そうだよな、カイナも眠いよな……』

 

『………』

 

 

酒泉の腕の中から私の服の腕部分を掴むカイナを見てとある案を思い付く

 

 

『……なあ、カイナとはいつも一緒に寝てるんだよな?』

 

『ええ、そうですけど……』

 

 

それはあまりにも恥ずかしすぎる一手、だけど私も酒泉も互いに損をしない手でもあった

 

 

 

『……だったらさ、真ん中にカイナを置いて私達がその両隣で寝ればいいんじゃないか?ベッドがかなり狭くなっちゃうとは思うけど、それなら私も酒泉もベッドで寝つつカイナを1人にしないで済むしさ』

 

『……うちのベッドは若干大きめですけど3人は流石に……いや……カイナ用のベッドのサイズもそこまで大きくはないし……いけなくも……ない、か……?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな会話をしたのが私がお風呂に入る前、そして今はお風呂も洗濯も済ませて就寝の時間

 

ベッドインベッド、ベッドの真ん中にカイナ用の小さなベッドを更に置く

 

カイナが大人用サイズのベッドに埋もれて私達の寝返りで潰れたりしないようにしっかりと細心の注意を払っておく

 

優しくベッドの上に置かれたカイナはうつらうつらとしながら私と酒泉に手を伸ばしてくる、その手を握ってあげると安心した様にほにゃっと笑みを浮かべた

 

それを見た私達は2人で顔を見合わせてから微笑む……が、直後にこの後2人で同じベッドで寝ることを思い出して恥ずかしそうに顔を伏せる

 

 

 

────そ、その……本当に同じベッドで寝るんですか?やっぱり俺がリビングで……

 

「だ、駄目だ!……家主を追い出す訳にはいかないだろ?」

 

────で、でも……やっぱり男女一緒にってのは流石に……

 

「……か、カイナも……一緒……だから……」

 

 

 

だからセーフ、と自分でも疑問符が浮かんでしまうような謎理論を振りかざして無理やり酒泉を納得させる

 

酒泉もギリギリまで考え込みながら必死に頭を抱え、暫くしてから〝それなら大丈夫ですね……多分……きっと……〟と自分に言い聞かせるように頷いた

 

 

「じゃ、じゃあ……寝ようか」

 

────そっすね……じゃあ、お休みなさい

 

「う、うん……おやすみ……」

 

「ぅー……」

 

 

 

ポスッと2人同時にベッドに座り、そのまま身体を後ろに倒す

 

隣から聞こえてくるカイナの寝息が痛々しい程に響いているこの胸の高鳴りを多少押さえてくれている

 

もし間にカイナが居なかったら私と酒泉は隣り合わせで一緒に寝ることになっていた訳で……

 

 

「~~~っ!」

 

 

……あまり深く考えないようにしよう、顔が熱すぎて発熱してしまうかもしれないし

 

ゆっくりと目を閉じて眠りにつく準備をする

 

早くこの恥ずかしい時間が過ぎてほしい、でもやっぱりもう少しだけこうしていたい、そんな矛盾した想いを抱えながら夜が明けるのをひたすら待つ

 

 

「……」

 

 

チクタク、チクタク

 

ちらりと目を開けて酒泉の寝室に掛けられている時計を見れば針は21時と48分を差し示していた

 

それだけ確認してもう一度目を閉じる

 

眠りに落ちるのをのんびり待っている、私の反対側から酒泉の寝息が聞こえてきた

 

酒泉はもう寝たのだろうか、それとも今のは寝息じゃなくてただの吐息なのかな、もしあっさり眠れたのだとしたら私がこんなに緊張してるのに向こうは全く何も気にしていないってことに……

 

 

「…………」

 

 

チクタク、ドキドキ、チクタク

 

余計な雑念が湧いてきても時計の音だけは聞こえてくる、それ以外に変な音が混じっていた気がするけど多分気のせいだろう

 

再びちらりと時計を見る、現在時刻は夜中の21時49分

 

……嘘でしょ?まだ1分しか経ってないの?

 

時間の進みが遅く感じるのは他者のベッドを使っているからか、それとも別の理由があるのか

 

 

「うー……でんしゃおー……」

 

聞こえてくるのは相変わらずカイナの声のみ、酒泉は本当にこの短時間で眠りに落ちてしまったのかもしれない

 

 

「………………っ」

 

 

 

チクタク、ドキドキ、ドキドキ、ドキドキ

 

明らかに時計以外の音が増えてきても気づかないフリをしながらまたまた時計を確認する、時刻は21時52分

 

……いや、さっきよりは進んでるけど……それでも全然眠れる気がしない

 

体感では15分くらい経ってる気がするのに、実際には計4分くらいしか経ってない

 

 

 

「……ね、ねぇ……酒泉……もう寝た?」

 

 

起こしてしまうのは申し訳ないと思いつつ、胸の苦しみを紛らわす為につい酒泉に声を掛けてしまった

 

そんなに時間が経っていないのなら酒泉だってまだ起きているはず、免罪符の様に自分に言い聞かせて酒泉、酒泉、と小声で声を掛ける

 

それでも返事が来ないので少しだけ身体を横にして酒泉が眠っているベッドの左側に視線を向けると、酒泉は目を閉じたまま小さく寝息を吐いていた

 

私と違って全く緊張していないのは女として見られていないからなのか、それともこういう状況に慣れているからなのか

 

そんな面倒臭い女みたいなことを考えながら私もさっさと寝ようと身体を仰向けの状態に戻そうとしたが、その前に視線が酒泉の手元に移される

 

 

「だぶぅ……」

 

「……ふふっ」

 

 

2人とも無意識の行動なのか、酒泉の手と小さなベッドから伸ばされたカイナの手が繋がれていた

 

その姿を見ているとまるで本当の親子の様に感じてつい笑みが溢れてしまい、咄嗟に口を塞いでカイナを起こさないようにする……さっきまで酒泉の名前を呼んでいたのに可笑しな話だ

 

 

「……あとどれくらい一緒に居られるか分からないもんな」

 

 

すやすやと眠る2人の中に何となく混ざりたくなり、カイナの空いてる方の手を私も握る

 

子供特有のあったかくてちっちゃな手、更にその奥で酒泉もこの手を握っていると考えたら心の内側までぽかぽかしてきた

 

川の字の様な格好になったまま、若干のドキドキを残しつつもう一度眠りにつこうと試みる

 

……酒泉の方はあっさり眠れたことに関して色々と思うところがあるけど……それを考えるのはまた今度でいいや

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(やばい髪下ろした銀鏡さん超可愛い……いや、別にツインテでも可愛いけどギャップが凄いっていうか。てか風呂入った影響でほっかほかしてるのも可愛いし寝る時の癖なのか今も俺の脚に無意識に尻尾が巻き付いてるのも可愛いし……待って銀鏡さんってこんなに可愛いの?いや可愛いのは元からだけどなんか普段見慣れてる姿なのに普段以上に可愛いっていうか何言ってるんだろ俺。そうだよ日頃から気軽に話してるけど相手は美少女だぞ今更意識すんの遅すぎだろ。てか今思えば落とし穴にハマっちゃうドジっ子属性も散々な目に遭う不憫属性も全部愛おしく思えてきたっていうか落ち着けこれは同棲効果によって一時的にそう見えてるだけであっていつもの生活に戻れば俺のフィルターも元に戻るはず────)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「酒泉起きろー、自分でセットした目覚ましが鳴ってるぞ────うわあ!?なんだその目の隈は!?」

 

────おは、よう……ござい、ます……

 

「ちゃ、ちゃんと寝たのか!?」

 

────寝ましたよ……2時間くらい

 

「仮眠!?」

 

────体感

 

「体感!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはよー」

 

「おはようございます!」

 

「今日って午後のパトロールだけー?」

 

「確か午前から定期訓練が……」

 

 

 

学園に着いてそのまま本日の集合場所であるグラウンドに行くと、既に到着していた風紀委員達の雑談が聞こえてきた

 

定期訓練という言葉が出た瞬間にギョッとして祈るように手を合わせる風紀委員達、その反応をする理由はこの後の訓練がどれ程苛烈なものになるか分からないからだろう

 

射撃訓練や戦闘訓練、走り込みや腕立て伏せ等の筋トレならまだ優しい方だろう……まあ、それでもそこら辺の学園の訓練よりは厳しいだろうけど

 

だが、日によっては空崎さん本人が戦闘訓練の相手をする時がある。俺達が大怪我しない程度に手加減はしてくれるのだが、それでも容赦ない攻撃が襲い掛かってくる

 

 

 

「定期訓練かー……今日はどうなるんだろうな?」

 

────さあ……俺としては別にどんな訓練でも構わないんですけどね

 

「随分強気だな……毎回委員長にボコられてるのに」

 

────せっかくキヴォトスの最強格に挑める良い機会なんですからむしろメリットの方が多いでしょうに

 

「……ちょくちょく聖園ミカと模擬戦してるって話を聞いたことがあるんだけど?あれはカウントしないの?」

 

────あの人が空崎さんレベルな訳ないでしょ、ウチの委員長の方が何百倍も強いです

 

「じゃあ噂よりは弱いの?」

 

────はい?聖園さんはバチくそ強いんですが?噂通りどころか噂以上ですが?

 

「褒めてるのか貶してるのかどっちなのさ……」

 

────空崎さんの方が聖園さんより強いと信じてるけどそれはそれとして俺の事を散々負かしてきた聖園さんにも簡単に負けてほしくないだけですが?

 

「拗らせてる……」

 

 

 

極普通のありふれた正直な感想を伝えたら面倒そうな表情で銀鏡さんに呆れられた、解せぬ

 

煽り合いでもただの軽口でも実際の戦闘でも何度もぶつかり合ってきた相手が他の人にあっさり負けるのはそれはそれで嫌じゃん?ただそれだけなんだけど?

 

 

 

「……なんか、酒泉って変なとこ負けず嫌いだよな」

 

────まあ……相手が他人だろうと空崎さんだろうと負けたら悔しいもんは悔しいですからね

 

「だったら今日こそ勝てるといいな……ほら、私もカイナと応援してあげるからさ」

 

「ぱぁぱ!ばえー!」

 

「……まあ、応援と行っても執務室からだけど」

 

 

 

〝がんばれー〟と呟きながら銀鏡さんはカイナの手を握る

 

カイナもキヴォトス人とはいえまだ赤子、訓練の間は流れ弾が来る可能性も考えて銀鏡さんが執務室でカイナの面倒を見る事になった

 

にしても……これが子供に応援される父親の気持ちかぁ……中々心地好いなぁ……

 

前世で幼稚園児だった頃、運動会で親御さんリレーみたいなのがあったことを思い出したが、その時父さんを全く応援せず友達とヒーローごっこしてたのが今更申し訳なくなってきた

 

案の定、父さんも俺とヒーローごっこしていた友達の父さんもどっちも落ち込んでいた

 

 

「……あ、そもそも委員長が直接訓練に参加するのかはまだ分からないんだった」

 

────まあ、もし違ったら普通に頑張ってるところを応援してくれれば……

 

「……いえ、今日は私も参加するわ。定期的に厳しくしないとマコトが煩くなるから」

 

 

 

新たな声がスッと流れるように会話に入ってきた、その声の聞こえた方を見てみれば空崎さんが無表情に立っていた

 

 

 

「あ、委員長……おはよう」

 

「おはよう、イオリ……それとカイナも」

 

「……ぁう?」

 

 

 

空崎さんがスッと手を伸ばしてカイナの頭を撫でようとするとカイナは一瞬ピクリと反応する……が、以前の様に大きく拒絶したり泣き叫んだりはしていない

 

特にオモチャであやしている訳でもないのに、カイナは目を閉じながら身体を縮こませているだけで逃げようとはしていない

 

 

「……あれ?」

 

「……ん?」

 

 

空崎さん自身も受け入れてもらえるとは思っていなかったのか、少々驚いた様子を見せながら首を傾げる

 

恐らく今日こそは懐いてくれないかと思いながら期待半分諦め半分で触れようとしていたのだろう

 

 

 

「カイナ……普通に触らせてくれたわね……」

 

「でも、まだどこかぎこちないし……」

 

────もしかして……人見知り改善の為にあの手この手で頑張ってきたのがやっと身を結び始めたのでは!?

 

「お、おお!?そうなのか!?頑張ったなぁカイナ!」

 

「あいっ!」

 

 

 

銀鏡さんと2人でカイナの頬をふにふにと優しく押しながら褒めるとカイナは返事をするかの様に元気よく両手を上げた

 

この子の笑顔は本当に俺を癒してくれる、ゲヘナのテロリスト共の相手をして疲れ果てた身体にスゥーっと染み渡って……ああ~頭がパーになるぅ~

 

「ぱぁぱ?」

 

────一生を捧げてでも……この子は……俺が守り抜く……!

 

「……随分入れ込んでるのね」

 

 

 

カイナのちっちゃな手を握りながら感極まっていると、それを心配してくれたのかカイナは俺の頬に手を当てながら〝ぱぁぱ〟と呼んでくる

 

そんな事をされたら俺の理性が保つはずもなく、この年齢では芽生える事などない筈の父性が己の中で湧き上がってくるのを感じる

 

 

 

「……血の繋がりがなくても本気で愛せるのは良いことだと思うけど……でも、ちゃんと自分の中で線引きしておかないと別れが辛くなるわよ?」

 

────……え?

 

「……酒泉?」

 

「ぱーぱ?」

 

────……あ、ああ!分かってますよ!この子には本当の父親がいますもんね!

 

「……分かってるならいいけど」

 

 

 

そう言うと空崎さんはグラウンドに居る風紀委員の数を数え始める、定期訓練開始の時間はまだだが既に到着している人の分だけ先に名簿にチェックマークを入れていた

 

軽く名簿を覗いてみれば天雨さんと火宮さんの名前には既にチェックマークが入れられていた、この場に居ないのなら恐らく何らかの準備をしているのだろう

 

多分だけど火宮さんは救急セットの用意をしているんじゃないだろうか、空崎さんが相手という事は全員漏れ無くボロボロになるだろうし本日も火宮さんにはお世話になります

 

 

「じゃあ、私はカイナを連れていくね」

 

────お願いします、終わったら俺もすぐ戻るんで……あれ?

 

「だぅ?」

 

「どうした?」

 

────……無い

 

「無いって……何が?」

 

────ナイフが……無い

 

「カイナにそんな寒いギャグ聞かせないでよ」

 

 

 

受け取り手の問題なのに銀鏡さんは俺に呆れた眼差しを送ってくる、そうじゃなくて俺がいつも愛用しているクソ強カチカチナイフがどこにも無いと伝えたかったんだ

 

腰回りのナイフホルダーにも、非戦闘時は基本的に隠してある制服の内側のポケットにも……どこにも無い

 

 

 

「家に置いてきたとか?」

 

────あー……そういえば朝は色々とドタバタしてたからそのまま忘れちゃったのかも

 

「そういうのは目に留まりやすい場所に置いておかないと」

 

────いつもは起きた時すぐに視界に入るようにベッドの頭側の棚にホルダーつけて置いてたりしてるんですけどね……

 

「私が酒泉のベッドで寝た時はそんなのどこにも無かったぞ?」

 

────カイナを預かってから危険物は手の届かない場所に保管するようにしてまして……ホルダーがあっても一応ね?

 

「そっか……まあ、今日はナイフ無しで頑張ってね」

 

 

 

自分には関係ないからか銀鏡さんは興味無さそうに手を振ってくる、ちくせう

 

……まあ、別にナイフが無いと近接戦闘ができない俺ではない。こう見えてもそこらの不良相手なら此方が素手でも制圧できる程度には得意だ

 

え?真っ向勝負?キヴォトス人に勝てるわけないだろ!いい加減にしろ!小手先の技術くらい使わせてくださいよ……

 

 

 

「……酒泉の……ベッド……?」

 

「……あっ」

 

「イオリ、どういうこと?どうしてイオリが酒泉のベッドで寝てるの?」

 

 

 

空崎さんの声色がおかしいのが気になって振り向いてみると、空崎さんが身体と羽をめっちゃプルプル震わせながら顔を青くしていた

 

 

 

「えっと……実は昨日は色々あって私の帰りが遅くなりそうで……だから酒泉の家に泊まらせてもらったんだ」

 

「……」

 

「で、でも!疚しい事は何も起きてないから!本当にただ一緒に寝ただけだから!」

 

「一緒に寝た?」

 

 

しまった、と口を咄嗟に塞ぐ銀鏡さん……だがもう遅い

 

空崎さんの顔色が更に青く……いや青じゃなくて黒じゃねこれ?

 

 

 

「お、同じベッドで?酒泉とイオリが?2人で?」

 

「ち、違う!カイナも!カイナも一緒だから!真ん中にカイナも居たから!」

 

「あい!」

「こ、子供を挟んで寝たの……?そ、そんなのもう……夫婦と同じじゃ……」

 

「うえっ!?べ、別にそんな意図があったわけじゃ……!」

 

 

 

銀鏡さんが言い訳をすればするほど空崎さんの顔色が悪くなっていく、恐らく空崎さんは俺達が風紀委員として相応しくない事をしなかったか心配しているのだろう

 

けど安心してほしい、俺が銀鏡さんに手を出すことは絶対にあり得ないから……だって、銀鏡さんは俺を信頼して一緒に寝てくれたんだろう?その信頼を裏切るなんて失礼じゃないか

 

 

 

────心配しないでくださいよ空崎さん、風紀を乱すような事は決してやらかしてないですから

 

「ほ、本当に?一緒に寝る以外本当に何もしてない?一応1日の流れを細かく話してくれるかしら?」

 

「う、うん……えっと、とりあえず全部話すと長くなっちゃうから泊まる流れになった後の事を話すね?まずは酒泉にお風呂を借りて……」

 

「────、」

 

「い、委員長!?」

 

 

 

〝お風呂〟と言った瞬間に何故か空崎さんのヘイローがガタガタと震え始める

 

歯もガチガチと音を鳴らし、真っ青を越えて真っ黒になっていた顔は漆黒へと染まる

 

今の空崎さんがどんな表情かと具体的に例えるなら、原作でシロコテラーが絶望して泣いていた時みたいになっていた

 

 

 

「き、聞いた!?イオリ先輩、酒泉君の家にお泊まりしたんだって!」

「お風呂も借りたんだって……」

「〝先にシャワー浴びてこいよ〟ってこと!?」

「そ、そんな……酒泉君……」

「やっぱり関係してたんだ……」

「脚だけじゃなくて他のところも舐めさせたんだ……」

 

 

 

いつの間にか俺達の会話に耳を澄ませている人達も増え、有ること無いことを好き勝手に囁かれてる

 

あと最後の台詞吐いた人、風紀委員がそんな事を言うんじゃあない!そもそも脚を舐めた覚えもないわ!

 

やめてよね、これ以上風評被害が広がると僕の居場所がなくなるだろ

 

 

「えっと……委員長?大丈夫?」

 

「……帰る」

 

「えっ」

 

「今日の定期訓練は……終わり……執務室に帰る……」

 

────落ち着いて聞いてください、そもそも執務室は貴女の実家じゃないんです

 

「やだ……お仕事する……全部忘れる……」

 

 

 

急に肩を落として口を開いたかと思えばとぼとぼしながらグラウンドを去ろうとする空崎さん、心なしかシナシナしているような気がする

 

そんな空崎さんを止めようと両肩を掴み、無理やり動きを……動きを……うご、きを……!

 

 

 

────と、止まらねぇ!?力強っ!?

 

「かえる……ねる……」

 

────ネル先輩はここには居ませんよ!?

 

「また他の人の名前出てきた……しかも下の名前呼び……もうやだ……ひなかえる……」

 

 

 

軽い気持ちで冗談を言ってみたら更にしょんぼりしてしまった、ふざける相手を間違えたなぁ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「ぶえっくしょおい!……なんだ?誰かあたしの噂でも────」

 

「ここです!」

 

「んなっ!?て、てめぇ!?余所見してる間に……!」

 

「パンパカパーン!アリス、チビネル先輩に20連勝しました!」

 

「まだまだぁ!もう1回だっ!」

 

「勝てんぜ、お前は……」

 

「んだとぉ!?」

 

「酒泉がゲームで煽ってきたモモイを逆に煽り返す時に使ってた台詞です!アリス、一度言ってみたかったんです!」

 

「あ、あいつ……余計なことを……!」

 

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────ぶえっくしょおい!……なんだ?かわいこちゃんが俺の噂でもしてんのか?

 

「それはない……絶対ないから」

 

────じょ、冗談で言っただけなのに……そんな念押ししなくても……

 

 

銀鏡さんに強めに否定されて泣きそうですが俺は元気です

 

突然の委員長命令によって定期訓練が中止された為、我々は現在執務室にて休憩しております

 

最初は銀鏡さんと交代でカイナの世話をしながら書類仕事を進めていたが、今日は大して仕事が溜まっていなかったのか1時間経つ前に終わってしまった

 

 

 

「みぅ!みぅく!」

 

「今飲ませてあげるからなー……酒泉、哺乳瓶ちょうだい」

 

────はいよー

 

 

 

適温まで冷ましたミルクの入った哺乳瓶を鞄から取り出す、そろそろカイナが欲しがる頃だろうと予め作っておいて正解だったな

 

銀鏡さんもすっかり慣れた手つきでカイナの口に哺乳瓶を近づけ、ある程度間隔を空けて早く飲み過ぎないように安全に飲ませている

 

 

「オムツは?」

 

────さっきトイレ行った時ついでに交換しときました

 

「ありがと」

 

「……完全に夫婦みたいですね」

 

「……全く……人目も憚らずイチャついて……」

 

「べ、別にイチャついてなんか……夫婦だって子育てする時は一々恥ずかしがったりしないだろ?それと同じだよ」

 

 

 

天雨さんと火宮さんの作業をする手がピタリと止まる

 

2人が使っているペンがカランと床に落ちるも、それを拾う気配はない

少々異様な空気を感じ取って周囲を見渡すと天雨さんと火宮さんは表情を驚愕に染めて銀鏡さんを見つめている

 

 

「イオリ……貴女……」

 

「……今、サラッと夫婦だと自ら認めましたね……」

 

「え?………あっ!?い、いや!?例え話だからね!?別に本当にそう思ってる……わけじゃ……なく、も……」

 

「まぁま?ふーふ?」

 

 

 

下から上へと徐々に顔が染まっていき、最終的に林檎みたいに真っ赤に染まる銀鏡さんの顔

 

彼女は先程の発言から生まれた誤解を必死に解こうと全力で首を振るが、天雨さんと火宮さんからの視線はむしろもっと鋭くなる

 

 

 

「……随分と役に入り込んでますねぇ?」

 

「……もしかして満更でもなかったのでは……」

 

「違うから!本当に違うから!邪推しないで!」

 

 

銀鏡さんはこういう単純なからかいに弱かったりする、理由は性格的に単純……じゃなくて純粋だからだろう

 

……そういえば銀鏡さんが夫婦発言した時、俺も別に反応したりしなかったな……案外俺も満更でもなかったり?

 

銀鏡さんやカイナが家に居ると笑顔や声が絶えないし、料理とか掃除とかの家事も遣り甲斐がある。それに、2人が居るとまるで俺に家族が出来たみたいで────

 

 

「も、もう……人をからかってる暇があるなら仕事しなよ!委員長に怒られるよ!?」

 

「委員長ならご帰宅されましたよ」

 

 

銀鏡さんが怒りながら咎めると天雨さんが俺を睨みながら返事をした……なんで?なんで睨まれたの?

 

 

 

「委員長が?……なんで?」

 

「何故か……な・ぜ・か!急に気分が悪くなってきたみたいですよ?」

 

────な、なんでそれを俺に強調して言うんですか……?

 

「……委員長、帰る時に〝しゅせんが……しゅせんが……〟とか呟いてましたよ」

 

────ま……まさかあの後本当に帰ったんですか!?俺、何もしてませんよ!?

 

「どうせ貴方の事ですからいつも通り無自覚クソボケムーブを決めたんでしょう!?このクソボケ!」

 

────冤罪!弁護士を呼んでください!

 

「一瞬で有罪判決食らうに決まってるでしょうクソボケ!だからクソボケはいつまで経っても酒泉なんですよ!」

 

────酒泉を悪口みたいに言わんでくださいよ!全国の酒泉君が泣いてますよ!

 

「貴方のせいで全国の酒泉君がクソボケ扱いされてるんですよ!貴方こそこの世に生きる全ての酒泉君に謝って────ん?」

 

 

 

ギャーギャーギャーギャー言い争いに発展しそうになったところで何かが振動する音と共に天雨さんの動きが止まる

 

天雨さんはそのまま自身のポケットに手を入れてスマホを取り出すが、振動音を発しているのはそれではなかった

 

かと言って別に俺のポケットに入れてるスマホが揺れている訳でもないし……

 

 

 

「ぶーぶー!ぶーぶー!」

 

「ん?……ねえ、酒泉のスクールバッグから音出てない?」

 

 

カイナがバシバシと叩いている俺のスクールバッグからは連続する振動音が鳴っている

 

発信源はそこか……いつも使ってるスマホの着信音とは違うから気づかなかったな

 

……あれ?俺、着信音なんて変えたっけ?

 

 

「出ないのか?」

 

────ああ、いや……すぐ出ますよ

 

「ぶーぶー!」

 

「どうしたー?携帯の真似かー?」

 

 

未だにスクールバッグを叩き続けているカイナの手を銀鏡さんが止めてくれた隙にスクールバッグの中からスマホを2つ取り出す

 

1つは俺個人の端末、これは鳴っていない

 

もう1つはカイナを預かると約束したあの日、側近さんから預かった方の端末────鳴っているのはこっちだ

 

 

「……酒泉?」

 

────……すいません、ちょっと電話してきますね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一旦執務室にいる全員に断りを入れてから廊下に出た後、廊下を歩きながらスマホの通話画面を開く

 

結局、すぐに通話に出る事ができなかった為に折り返し掛けることにした

 

 

『……名前は?』

 

────折川酒泉……分かってて掛けたんだろ?

 

『一応だ』

 

 

通話ボタンをタップしてから数コールもしない内に男の声が俺の耳に届く、その声は数週間前に会話した時に聞いた声と全く同じだった

 

 

『カイナ……お嬢様の様子はどうだ?』

 

────……実は、ほんの少しだけ人見知りが改善したかもしれません

 

『……あのお嬢様が?それは驚いたな……どんな手段を使ったんだ?』

 

────俺や銀鏡さんが側に居たり好きなオモチャで遊びながら他の人と触れ合ってみたりと……まあ、色々です

 

『そうか……今後の参考にしよう』

 

 

その答えの後、すぐに要件を伝えられるかと思いきや側近さんは黙ってしまった

 

……正直、間を置いてくれたのは助かる。だって……この後側近さんが何を言うのか大体察せてしまっているのだから

 

 

『……あまり時間を掛けすぎるのも悪いしな、早速要件を伝えるぞ』

 

 

いつかこの時が来るのは分かっていたけど、それでも何となくそれは考えないようにしていた

 

それが現実逃避と何ら変わらないであろう事は自分でも理解しているが、こうしてその状況に直面してしまえば嫌でも向かわざるを得ない

 

 

『盗銃組内部の裏切り者は全員炙り出せた、そいつらが新たに作り出した逃走ルートも仮拠点も全部洗い終えた……つまり────』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『カイナお嬢様を迎える準備ができたって事だ』

 

 

 

 

 

 

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