〝アリウス〟潰すゾ!!!   作:あば茶

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パパになった酒泉とママになったイオリ─公園デビュー─

 

 

土曜日、午前7時

 

 

耳を切り落とした2枚の食パンにからしマヨネーズを塗ってからチーズとハムとレタスを挟み、食パンの端を優しく押し潰して具材が溢れないように整える

 

次も同じく耳の無いパンを用意し、そこにマヨネーズや黒胡椒とぐちゃぐちゃに混ぜ合わせておいたゆで卵を乗せて一気に挟む

 

次は……ツナだ、ツナサンドにしよう。3種類を2枚ずつ作ろう

 

因みに余ったパンの耳は俺の今日の夜食か明日のおやつになります、適当に砂糖でもまぶしてカリカリに炒めて食べるか

 

 

 

「いてててっ……こら、そんな雑に扱ったり人に投げつけたりするならこれは没収するぞー」

 

「しゃおー!でんしゃおー!」

 

「ほーら、こっちこっちー」

 

 

 

リビングではデンシャオーのソフビを何度もぶつけられた銀鏡さんがそれを尻尾で取り上げて猫じゃらしみたいにして遊んでいた

 

右に左にとソフビを揺らすとカイナもそれに釣られて自身の手をフラフラとさせている……あの尻尾便利だな、細かい仕事は難しそうだけどあんな風に大きく動かす分には使いやすそうだ

 

なんか鋭い刃物でも装備させたらどこぞのルプスレクスみたいに使えたり……いかんいかん、頭の中が男の子のロマンで埋まるところだった

 

 

 

「……ふえ」

 

「……ん?これは……酒泉、ちょっとカイナのオムツ替えてくるね」

 

────お願いします

 

 

カイナの様子からそろそろオムツ交換のタイミングだと察した銀鏡さんは俺に一言断りを入れてからリビングを出て2階の寝室に向かう

 

俺の〝眼〟があればカイナの様子がおかしい時はすぐに気づけるけど、別に態々集中して見なくてもカイナが何を求めてるのかは分かるくらいには一緒に過ごしてきた……つもりだ

 

 

 

『────あと2日だけ……一緒に居ちゃ駄目ですか?』

 

 

 

自分で思っていた以上に情が湧いていた、だからあの時あんな言葉を吐いてしまったのだろうか

 

すぐにでも本当の父親の元に帰すべきだというのは理解している、俺の我儘にカイナを付き合わせるのは間違っているという事も……だが、頭では理解していても本能がそれを拒んでいた

 

……今回の件を得て1つ分かった事がある、俺は意外と家族愛に飢えていたらしい

 

それを一度でも理解してしまえばそこから暗い感情が生まれてくるのは当然の事だった

 

俺はカイナのことを本気で愛しているし誰よりも大切に育ててきた……でもそれは自分でそう思い込んでいるだけじゃないのか?本当は自分の孤独を癒す為だけにカイナを利用しているだけじゃないのか?

 

側近さんから電話が掛かってきた昨日のその夜、そんな事を何度も何度も考えてはその度に自分の頬をひっぱたくのを繰り返した……お陰でまだ若干ヒリヒリする

 

そうして悩みに悩み抜いた結果、導き出した結論は────〝折川酒泉はカイナを本気で愛していた〟だ

 

だってカイナや銀鏡さんと過ごしてきた日々は間違いなく楽しかったし、血の繋がりはないと分かっていてもそれを理由に子育てに手を抜いたりはしなかったのだから

 

ベビー用品を買ったのも育児教室で学んだのもヒーローショーに行ったのも全てカイナに不自由なく生活させてあげたかったから……たったそれだけの純粋な気持ちだ、その時の判断に打算など混じってはいなかった

 

……何より、ここで俺が自分の心に疑問を抱いてしまったら俺に心を許してくれたカイナに失礼だからな、だからこそ俺は〝カイナを愛している〟とハッキリ堂々と宣言しよう

 

そして、そんな愛する子が旅立つ日がとうとうやって来た……いや、元の場所に帰るだけだし旅立ちってのはちょっと違うか?

 

まあ、何にせよ俺達に許された時間は2日間だけだ、その2日でカイナと素敵な思い出を作って快く送り出すとしよう

 

……側近さんに散々〝子供の近くに居てやれ〟みたいな説教しておきながら自らそれを妨げるなんて……これじゃ人の事が言えないな

 

…………いや、そもそもあの人は側近じゃなくて多分────

 

 

 

「オムツ替え終わったぞー」

 

「だーぶぅ……」

 

 

 

考え事をしていたらいつの間にか2階から降りてきていた銀鏡さんが声を掛けてくる、その腕に抱えているカイナはどこかすっきりした様に声を漏らす

 

因みに今のは声を漏らすと肥を漏らすを掛け合わs……止めておこう、俺はどこぞの曇らされてばかりのメタルでクラスタな社長と違って自分のギャグが激寒だって自覚があるからな

 

 

 

────こっちもお弁当作り終えましたよ……粉ミルクは?

 

「鞄に入ってるよ」

 

────お湯は?魔法瓶に入れました?

 

「うん、さっき酒泉がサンドイッチ作ってた時に入れたよ」

 

 

弁当ヨシ、哺乳瓶と粉ミルクヨシ、魔法瓶ヨシ、オムツの替えもヨシ

 

財布とスマホは鞄に仕舞った、身支度も終わらせてある………これで準備完了だ

 

それじゃあ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────行きますか!ピクニック!

 

「ああ!」

 

「あいっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

「家族連れが多いな……」

 

────そっすね……まあ、休日ですし家族サービス的なアレでしょう

 

「……家族サービス……」

 

「さびう?」

 

 

 

〝えがおとしあわせの広場〟と書かれた看板の横を通り抜けると多くの家族が広場で遊んでいた

 

ある者は子供に本を読み聞かせたりある者は子供と鬼ごっこしたりと各々が我が子と触れ合っている、それ以外にも獣人の老夫婦が大きな木の下で仲良く肩を寄せあって昼寝をしていたりと老若男女構わず全員がこの場に集まっていた

 

 

「……ね、ねえ……酒泉」

 

────ん?

 

「ここって家族がいっぱい居るけどさ……その……私達のことも他の人達と同じ様に見られてるのかな……た、例えば……育児教室の時みたいに若い夫婦だと思われてたりとか……」

 

────そう見てる人もいるんじゃないっすかね?

 

「……だからアッサリと答えすぎだって」

 

 

 

返事を求められたからちゃんと返したのに銀鏡さんはどこか拗ねたように視線を逸らす……いや、普通に答えただけなのに怒られても……あ、そういうことか

 

 

 

────銀鏡さん、気が利かなくてすいませんでした……一緒にカイナのお世話をしていたからこの距離感に慣れすぎてて……つい……

 

「……?」

 

────銀鏡さんは俺と夫婦扱いされるのが嫌だったんですよぶべっ!?

 

「……ばーか」

 

「ばぁ!」

 

 

 

俺が最後まで喋り切る前に尻尾によるビンタを食らった、地味に痛い

 

銀鏡さんの機嫌はさっきよりマシになったっぽいけどその代わりに銀鏡さんの瞳に呆れの感情が宿っている、なんならカイナまで銀鏡さんの真似して罵ってくる

 

 

 

「……なんていうか……今の酒泉の態度を見てるとあの夜の出来事も本当に大して気にしてないんだなーって……」

 

────……あの夜?何の……話……を…………

 

「だぁい?」

 

 

 

あの夜と言われて思い浮かべたのは銀鏡さんが家に泊まった日の夜、そして────その時の銀鏡さんの姿

 

褐色の上からほのかに赤く火照った顔、いつものツインテールとはまた違う良さを発揮している下ろした状態の髪の毛、ブカブカのパジャマに身を包んだ愛らしいあの姿

 

いつも一緒に仕事してる時は特に気にした事がなかったのに、あの日の銀鏡さんは……なんというか……とても魅力的で────

 

 

 

 

────ッッッッッ!?べべべべべ別に!?特に何も気にしませんでしたが!?

 

「うわっ!?突然叫ばないでよ!?」

 

「うーだー!」

 

────あっ……すいません……

 

 

 

 

何を考えているんだ俺は!あの夜抱いた感情は全て忘れろ!銀鏡さんは同僚銀鏡さんは同僚銀鏡さんは同僚同僚さんは銀鏡……あれ?

 

 

 

「……それで?今日は何するの?ピクニックの前にちょっと遊んでく?」

 

 

 

馬鹿な事を考えている俺を置いて話を進める銀鏡さん、その親指をクイッと後ろに向けるとその先には滑り台やブランコなど様々な遊具が設置されていた

 

あと……あの……地球儀みたいジャングルジムを回す正式名称不明の謎の遊具もある、あれ何て言うんだろうね

 

てか、前世ではあのタイプのジャングルジムって時の流れと共に公園から消えてったけど……その理由って子供が乗ると危ないからとか言われてたよな

 

キヴォトス人は子供の頃ですら身体が頑丈だしその心配は無さそうだが……念のため遊具選びは慎重に決めるか

 

 

 

「だー!かたん!かたん!」

 

「ん?なんだ?……シーソー?」

 

 

 

カイナが手を伸ばした先にあったのは数台のシーソー、そこでは頭にヘイローを浮かばせている子供や犬の姿をした子供がガタンガタンと音を立てて遊んでいた

 

シーソーで遊びたいのか?確かにさっき〝キヴォトス人は頑丈〟って言ったけど……ちょっと怖いな、特に揺れた時とか

 

……いや、そこはカイナの乗ってる側が地面に着地する前に俺が勢いを調整すればいいのか

 

 

 

────銀鏡さん、カイナのこと抱いてシーソーに乗ってくれません?俺がその反対側に乗るんで

 

「うん、分かった……よいしょっと」

 

────よし、丁度良い重さですね

 

「……言っとくけど私1人の体重じゃないからな!カイナの分も入ってるからな!」

 

 

 

別にそういうつもりで言った訳ではないのだが、そもそも体重の話題を出すこと自体が女性の前だとアウトらしい

 

でも俺から見ても銀鏡さんって痩せてるし……ってフォローしようとしたけど下手したらセクハラ判定食らいそうなんで黙っておこう

 

 

 

「うぁい!かい!」

 

「おー高いなー」

 

 

 

少しずつ体重を掛けてシーソーを傾かせて2人を持ち上げると、カイナは銀鏡さんの腕の中から両手を上げてはしゃいでいる

 

そんな風に楽しんでいるカイナの邪魔をしないように両腕でシーソーを押さえながらゆっくりと地面に足をつけ、衝撃が行かないようにカイナと銀鏡さんを着地させる

 

 

 

「どうだ、カイナ?楽しかったか?」

 

「……ぅ~……」

 

 

 

……が、カイナは何故か不満そうに頬を膨らませている

 

 

「かたん!かたん!」

 

「あ、あー……もしかして思いっきり揺らしてほしかったのか?」

 

「だぶぅ……」

 

「……だってさ」

 

 

 

えぇ……そうは言われても……

 

うーん、弾丸が簡単に貫通しない以上は外皮に心配はないけど、仮にシーソーから転げ落ちて頭を打ち付けてしまった時に脳への……内部への衝撃に耐えられるのか、そこら辺が不安だな

 

この辺りの事も育児教室でもっと詳しく聞けば良かったな……

 

 

 

「まあ、今回は一応手加減しながらって事で……」

 

────ごめん、カイナ……今日は我慢してくうわあああっ!?俺の前髪があああああっ!?

 

「だぁうあー!」

 

「カ、カイナ!やめろ!酒泉が禿げちゃうから!」

 

 

 

何となく場の空気を察したのか、カイナは益々怒りを露にして俺の前髪を攻撃してくる

 

グワシと掴んでは引っ張り、また掴んでは引っ張り、酒泉君の前髪君が痛みで泣き叫んでいる、このままだと俺はカクリコンになってしまうかもしれない

 

 

 

「ほ、ほら!カイナ!今度はあっちの滑り台で遊ぼう!?なっ!?」

 

「……だい?」

 

 

 

お次に選んだ遊具は滑り台、父親であろう人達が子供を膝に乗せながら楽しそうに滑っている。そちらに気を取られたお陰でカイナも俺の前髪を離してくれた

 

サンキュー銀鏡さん、銀鏡さんには俺の前髪を司る新しい聖戦士をやってくれ!

 

 

「だっ!」

 

「よし、じゃあ滑るぞー!」

 

────任せてください、滑るのならそこそこ得意ですよ

 

「場の空気を凍らせるって意味なら本当に黙ってて」

 

 

 

ぴえん

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────

 

────────

 

──────

 

 

 

 

 

 

 

「いっけー!」

 

「うだー!」

 

 

 

先頭で腕をグーにして突き出しながら滑るカイナ!そんなカイナを抱きながら滑る銀鏡さん!………を更に抱きながら滑る俺!3人連結!

 

え?何でこんな事になってるのかって?提案したのは銀鏡さんなんで銀鏡さんに聞いてください

 

他の家族がやってるのを見て同じ様な滑り方したくなったのか、銀鏡さんは恥ずかしがりながら提案してきた……因みに銀鏡さんの腹に腕を回してる俺も普通に恥ずかしいです、はい

 

 

 

「きゃうっ!」

 

「うおっ……と!着地ぃ!」

 

 

地面に辿り着く直前、銀鏡さんは安全の為に背を倒してカイナを腹の上に乗せる

 

その際に倒れ込んできた銀鏡さんの後頭部が俺の胸元にぶつかり、更に銀色の髪の毛が俺の顔に触れてふわっとした香りが─────違う俺は変態じゃない俺は変態じゃない俺は変態じゃない俺は変態じゃない

 

 

 

(しゅ、酒泉の胸元から心音が────ま、まさか……ちょっとは意識して……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だぁ!だーぶー!」

 

「カ……カイナ、喜んでるな!」

 

────そ、そっすね!

 

「……」

 

────で、でも……もう滑らなくていいかなーって……

 

「わ、私もいっかな……色々と持ちそうにないし……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────

 

────────

 

──────

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぱぁぱ!ぱぁぱ!」

 

────おん?どうし……ん?他の家族?

 

「あれは……ヒーローごっこか?」

 

 

 

カイナに袖を引っ張られてそっちを向いてみれば他のご家庭のお父さんが子供とヒーローごっこをしていた

 

そうか、カイナもあれをやりたいのか……幼い頃の俺と同じだな

 

ただ、カイナの場合はまだハッキリと喋れない年齢だしごっこ遊びは難しいと思うけど……子供のヒーロー欲は満たしてあげなければならない

 

 

 

 

────というわけで銀鏡さんがヒーロー役ね、俺敵役やるんで

 

「えっ!?わ、私がやるのか!?」

 

「まぁあ!ひーおー!」

 

────だってカイナはまだごっこ遊びできませんし……ほら、カイナも目を輝かせて尊敬の眼差しで見つめてますよ

 

「うっ……わ、わかったよ、やるよ…………で、出たな!怪人……怪人……えっと……か、怪人アルコーラー!」

 

 

 

 

突如どこぞの巨大化ヒーローの様に手を交差させてビームを打つ体勢に入る銀鏡さん、意外とノッてくれてる

 

ならば此方も全力で応えなければ……無作法というもの……

 

 

 

 

────姉ちゃんの仇だ……!

 

「えっ」

 

────あいつに……創世の女神に償わせる……!

 

「ちょっと待って、ヒーローごっこなのに何か重そうな設定作ってない?」

 

────なら……信じさせてくれよ……!

 

「勝手に自分の世界に入り込まないで!?」

 

「あぁい!あーぶー!」

 

 

 

銀鏡さんには不評だった……カイナはめっちゃ喜んでたけど

 

仕方ない、ここは方向性を変えて別のパターンで……

 

 

 

 

 

 

────カイナ、戦わないのはお前の勝手だ。けどそうなった場合、誰が代わりに戦うと思う?……銀鏡さんだ。銀鏡さんは今回の件でヒーローごっこが出来なかったカイナに負い目を感じているはずだ、だからカイナがヒーローごっこに参加しなければ自分から恥ずかしがりながらヒーローの真似事をするだろう。けど、照れの混じってる銀鏡さんでは……痛っ!?頭叩かれた!?

 

「だから変な設定作るな!」

 

────これだから人間は面白い!

 

「反省しろ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────

 

────────

 

──────

 

 

 

 

 

 

滑り台、ヒーローごっこ、それらを満喫した後の俺達の前に立ちはだかったのはバスケゴールだった…………滅茶苦茶ちっこい子供用の

 

〝ごじゆうにどうぞ(つかいおわったらかたづけてね!)〟と書かれている看板の下の篭には通常のバスケットボールより小さくて柔らかめのボールが入っていた、これだとドリブルは難しいし完全に投げる用か

 

 

 

「ぼんぼん!ぼんぼん!」

 

────ん?なんだ?あれが気になるのか?

 

「シーソーに滑り台、ヒーローごっこに次はバスケか……好奇心旺盛だな」

 

「うぅ~……ぼんぼん……」

 

 

 

他の子供達がボールを持って遊んでいるのを羨ましそうに眺めるカイナ、本当は俺もカイナを遊ばせてあげたいけど……赤ちゃんがバスケなんて出来るかと言うとねぇ?

 

という訳で……カイナの代わりに俺が遊ぶとしよう、出来れば良いプレイを見せて喜ばせてあげたい

 

既にバスケットボールで遊んでいた親御さん達に挨拶をし、〝少しだけ止まっててくれませんか〟と軽く声を掛けてからボールを篭から取り出す

 

 

 

「……どうした?投げないのか?」

 

 

 

ゴールには向かわず、逆に後ろへと遠ざかる俺を見て銀鏡さんもその場に立ち止まってくれている親御さん達も全員が首を傾げる

 

そしてゴールから15~16メートル程度離れた場所で止まり────自分の〝眼〟を全力で集中させる

 

集中、集中、集中、そして────強めに上に投げる!

 

 

 

 

「え?あそこから投げるの?」

 

「いやぁ……厳しいでしょ」

 

「子供用だし普通のボールとは使い勝手だって違うだろうし、流石に………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────俺のシュートは……落ちん!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……え?」

 

 

 

 

パスッという軽いボールが軽く入った音と同時に親御さんの驚く声が聞こえる、一方で子供達は目を輝かせながら〝すっげー!〟と褒めていた……よせやい照れるべ

 

近所の子供に好かれるタイプですまない……これでも前世では〝将来お兄ちゃんのお嫁さんになるー!〟って近所の女の子に言われたことあるもんねー!

 

……え?子供特有の口約束だって?そんなこと分かってらあ!

 

 

 

「酒泉……そんな特技あったんだな……」

 

────特技ってか、まあ……的を狙うのは得意なんで……あっ、皆さん待っててくれてありがとうございます、それと遊びの邪魔しちゃってごめんなさいね……

 

「いやいや、中々良いシュートを見させてもらったよ」

 

 

 

一旦ゴールから離れて見守ってくれた皆さんにも感謝と謝罪を忘れずに頭を下げる……動いてる子供にボールが当たっちゃったら危ないからね、うん

 

 

「ぱぁぱ!おちん!おちん!」

 

 

 

元々カイナの為にかっこつけてみただけだが、目論見通り喜んでくれて良かった

 

だけど〝おちん〟の部分だけ連呼するのはやめような、その内とんでもない言い間違いしそうだから

 

 

 

「ねえねえ兄ちゃん!今のどうやったの!?」

 

「もう1回!もう1回やって!?」

 

 

 

1回投げただけで十分満足できたし銀鏡さんの所に戻ろうとしたが、その前に俺のシュートを見ていた子供達が集まってきた

 

全員が期待する様な眼差しで俺を見上げてくる、因みにお父様方の何名かは嫉妬の眼差しを向けてくる

 

坊や達の憧れを奪ってしまってすまない、セクシー酒泉ですまない

 

 

 

「他にはどんな事ができるの!?」

 

────そうだなぁ……この〝眼〟さえあればアンクルブレイクでもフォームレスシュートでもなんでも……

 

「炎のキック出せる!?」

 

「ペンギンのシュートできる!?」

 

「魔神出せる!?」

 

 

 

 

うーん、それはちょっとスポーツが違うかなー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぅ……だーぶ……」

 

「どうしたー?パパを取られて嫉妬してるのかー?」

 

「あぃ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「んぐっ……おお、この卵サンド美味しいな」

 

────ありがとうございます……カイナもミルク美味しいかー?

 

「んくっ……んくっ……んま!」

 

 

 

スポーツだったり様々な遊具だったりと色んな事をして遊んでいたら昼になったので朝作っておいたお弁当を食べる事にした

 

勿論、カイナの粉ミルクも忘れていない。タイミング的にカイナも欲しがる頃だろうと思って作っておいた

 

 

 

「……酒泉は食べないの?」

 

────ん?いや、俺はカイナが飲み終えたら食べ始めますよ

 

「はふぅ……」

 

「……そうか?」

 

 

 

どうせもうすぐミルクタイムも終わるだろうし、その時からでいいや……なんて思ってたら突然横から視界にサンドイッチが映り込んできた

 

一瞬驚いたけど視線を軽く横に逸らせばすぐに理由が分かった、銀鏡さんがサンドイッチを手に持って差し出していた

 

 

 

「……手、空いてないなら食べさせてあげるけど」

 

────いや、もうすぐカイナも満足すると思うんで「食べさせてあげるけど!」……別にサンドイッチなんで片手でも「あ・げ・る・け・ど!」……頂きます

 

「最初から素直に答えればいいの……はい、あーん」

 

 

 

何故か強引に話を進める銀鏡さんに押し切られて食べさせてもらう事になったが、別に損する事もないしそのまま甘える事にした

 

にしても突然だな……って思ったけど、よく見れば正面数メートル先では子連れの夫婦さんがお互いにご飯を食べさせあっていた

 

……やっぱりああいうのに憧れてたり?

 

 

 

「……な、何さ」

 

────……いや?銀鏡さんって結構乙女だなーって

 

「まぁま、とめ?」

 

────とめとめ、姑

 

「それは意味が違うだろ!?」

 

 

うがーっ!と怒る銀鏡さんをスルーしてカイナと2人で笑い合う、この子も随分と笑顔を見せるようになってくれた……最初から懐いていたけど、それを含めてもだ

 

今回のピクニックでもあまり人見知りを発揮しなかったし本当に成長を感じるな……まあ────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この生活もあと1日だけなんだけどな

 

 

 

 

 

 

 

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