〝アリウス〟潰すゾ!!!   作:あば茶

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もしもifトリニティの記憶が突然本編コハルに流れ込んだら

 

 

「凄いですコハルちゃん!また合格ラインの点数を越えてますよ!」

 

「ギリギリだったけどね………でも、ありがと」

 

「流石はコハルだな、一人でも相当勉強したんだ」

 

「………一人じゃないんだけどね」

 

「あら?それは……誰かと二人っきりで、私達にも秘密の〝お勉強〟を開いた……ということですか?」

 

「アンタが言うと変な意味に聞こえるのよ!………まあ、大体そんな感じだけど」

 

「そうだったんですね!もしかして先生と?それか………正実の先輩方ですか?」

 

「……………こっちには……いない……」

 

「……コハルちゃん?」

 

「なんで………なんで隣にいないのよぉ………っ!?」

 

「コハルちゃん!?ど、どうしたんですか!?」

 

「な、泣いてるのか?コハル」

 

「……何かあったのですか?」

 

「〝一緒に居る〟って約束したのに!嘘つき……!嘘つきぃ……!」

 

 

 

 

 

 

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どうも、伝説のスイーツ〝ミラクル5000〟を買えてホクホク顔の折川酒泉です

 

事前にトリニティ自治区内で待機し、開店と同時に並んだ甲斐があったぜ……!

 

あっ、当たり前の話だけど開店するちょっと前までは適当に色んな所をぶらついてたからな

 

店前での徹夜待機やそれに該当する行為は駄目だって事前にホームページに告知されてたからな、皆もルールやマナーはちゃんと守るんだぞ!

 

それにしても……結構ギリギリで買えたんだな、俺

 

俺の番が回ってきた辺りで、残り十数個になっていた

 

店を出てウッキウキでミラクル5000が二個入った袋を眺めていたら、店内から〝売り切れでーす!〟って外で並んでる人達にも聞こえるほど大きな声が響いてきた

 

そこからは、何て言うか……空気がめちゃくちゃ重かった

 

苦悶の表情でトボトボと去っていくシスターや恐ろしい表情で帰っていく猫耳パーカーの生徒、そして正実の制服を着た身長の高い黒羽の女性が項垂れていた気がするが、多分気のせいだろう

 

これは戦争………弱者は淘汰され、勝ち残った一握りの勝者達だけがその甘味を受けとることを許されるのだ

 

身体は糖分を求める………愛しているんだ!君達(スイーツ)を!

 

さーて!早く家に帰ってゆっくりと堪能しますかねぇ!

 

一つ目は家についたらすぐに!二つ目は………食後のデザートだな!

 

美味しいデザートの前には美味しい夕食を!そうと決まれば今夜はすき焼きじゃああああ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……え?酒泉……?」

 

 

 

 

 

 

 

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此方の顔に向かってくる弾丸を顔を逸らすだけで回避する

 

買い物袋片手に銃を取り出し、敵の額にスナイパーライフルの弾を一発食らわせてやる

 

すると、目の前の敵は額を押さえながら痛みで悶え苦しみ、そのまま後ろに倒れ込む

 

……あのさぁ……

 

 

「いっづ……!くそ、相変わらず面倒な目してやがんな!?」

 

「風紀委員さんよぉ……この前は随分と世話になったな、あん?」

 

「テメーを取っ捕まえて空崎ヒナに対する人質にしてやるよ!」

 

「おらっ!囲め囲め!」

 

 

 

なんでこんな日に限って絡まれるの?タイミング悪すぎない?

 

コイツらを倒すだけなら俺一人で十分だが………問題はこの買い物袋だ

 

戦闘に巻き込まれて、〝ミラクル5000〟が台無しになる事態だけは避けたい

 

………くそっ、ここに来てゲヘナ生の野蛮さを再認識することになるとは……!こいつら全員、空崎さんの爪の垢を煎じて飲んでくんねえかな……!

 

……でも、本当にどうしよう………後日俺のことをボコボコにしてくれて構わないから見逃してくれないかな………

 

 

「おい!黙ってないでなんとか言えや!」

 

 

……しゃーない、買い物袋を一旦置いてから別の場所に誘導して、それで────

 

 

 

 

 

 

「いっ……イジメは駄目!そんなこと許さないんだからっ!」

 

 

 

 

 

────次の瞬間、俺の耳に届いたのは少女の甲高い叫び声だった

 

 

「……あ?誰だお前?」

 

「つーかアレってトリニティの制服じゃね?」

 

「は?トリニティのチビがなんでこんな所にいんだよ」

 

 

その少女は不良共に睨まれるとビクッと身体を震わせて一瞬縮こまるが、それでも果敢に前に出る

 

 

「こ、これ以上暴れるようなら………わ、私が相手になるんだから!」

 

「……へえ?どう相手になるって?」

 

「えっ?そ、それは………わ、私はこう見えてもエリートなのよ!貴女達なんて一瞬で倒せるんだからっ!」

 

「それなら実際にやってみてくれよ、なあ?」

 

「そうだなぁ……確かに、アタシらもエリート様の実力とやらを見てみたいなぁ!?」

 

「うぅ………」

 

 

 

ニヤニヤと笑いながら一歩ずつ少女に近づく不良共

 

逆に少女は近づかれる度に一歩ずつ後ろに下がっていく………丁度良いかもしれないな

 

 

 

悪い、そこのアンタ………この袋持って離れてくれ

 

「え?い、いきなり渡されても……」

 

「ようやくやる気になったか!折川酒泉!」

 

「めんどくせえ!このチビッ子ごとやっちまえ!」

 

アンタはただそれを持ってくれるだけでいい、後は全部─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────俺がやるんで

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────

 

────────

 

──────

 

 

 

 

 

 

 

 

「す、凄い………」

 

 

 

戦場で踊るかのようにくるりと敵の弾丸を回避する酒泉

 

敵の弾丸が自らの背後にいる敵に当たるように誘導し、その間にも銃口を向けようとしている別の敵にもしっかりと攻撃を当てる

 

回り込もうとする敵に対しては最初から移動先が分かっているかのように脚を狙い撃つ

 

そうして隙が出来れば手慣れたように近距離で弾丸を当てる

 

たった一人で敵集団を蹂躙するその光景を見てコハルは自分達のリーダーを想起するが、二人の戦い方は実際には少々異なる

 

圧倒的な実力差で隙も作戦も関係なく全ての敵を正面から叩き潰し、その脅威の耐久力と回復力でひたすら暴れまわるツルギ

 

敵の攻撃を受けないように回避しつつ確実に隙を狙い、時にはその生身の身体で自ら敵に突っ込んで近距離射撃で確実に仕留める酒泉

 

 

(酒泉ってあんなに強かったんだ………)

 

 

目の前で敵を翻弄し続ける酒泉を見てコハルは息をのむ

 

だが、すぐにその強さの理由に気づいた

 

 

(でも、それも当然よね!だって酒泉はツルギ委員長に直接鍛えてもらってるんだから─────)

 

 

そして、それが間違っていることにも気づいてしまった

 

 

(─────………違う………こっちの酒泉はゲヘナに居るんだった………)

 

 

その事を思い出した瞬間、コハルの胸がひどく痛んだ

 

(どうしてなんだろう、ただ夢で見ただけなのに………こんなに寂しく感じちゃうのは……)

 

 

 

 

 

 

───おーい?聞こえてるかー?

 

「…………え?」

 

あ、やっと反応してくれた………もう終わったぞ

 

「……あ、ホントだ」

 

 

 

コハルが落ちかけていた視線を前に向けると、そこには地に横たわって気絶している十数人の生徒達がいた

 

何人かは意識はあるものの、それでも呻き声をあげて立ち上がることができない

 

 

 

 

────いやー……下江さんが居てくれて助かったよ、ありがとな

 

「……え?私の名前、知ってるの?」

 

うぇ?あー……ほら、前にゲヘナとトリニティで戦術対抗戦したことあるだろ?その時にな……

 

「そうなんだ……………その、怪我とか大丈夫?」

 

ん?ああ、一発も当たってないし余裕だったよ

 

「……なら、いいけど……」

 

 

 

心底安心したように息を吐くコハル

 

彼女の脳裏には夢の中で見た光景────〝折川酒泉が死んだ時の記憶〟が浮かび上がっていた

 

その夢の中でも別に酒泉は本当に死んだ訳ではなく、敵の目を欺く為に誤情報を流していただけだったが………それでもコハルは心配せずにはいられなかった

 

 

 

 

「えっと……この袋……」

 

おっ、サンキュー……そうだ、流れ弾とか大丈夫だったか?なるべくそっちに銃口が向かないように立ち回ったんだが……

 

「う、うん……平気」

 

そうか、なら良かったよ

 

「……ね、ねえ……酒泉────」

 

 

 

 

 

────あ、それともう一つ聞いてもいいか?なんでずっと俺のこと尾行してたんだ?

 

 

 

 

 

「………え?」

 

 

 

 

今日ずっと俺を監視してただろ?具体的には俺がスイーツ店から離れた辺りから

 

「な、なんで……」

 

いや、あんだけ視線を感じたら、そりゃあなぁ……だから人気の少ない所で一旦撒こうとしたんだ

 

……そのせいで変な連中に絡まれちまったけどな

 

「…………」

 

それで?なんで俺を追ってたんだ?

 

「……それ……は……」

 

 

 

正面から向き合って問い質されると、コハルは口を閉ざしてしまった

 

そのまま何かを言おうと口をモゴモゴさせるが、中々話を切り出さない

 

酒泉が頬をぽりぽりとかきながら待っていると、コハルは小さく震えながら漸く口を開く

 

 

 

「………って………もん……」

 

……え?なんて────

 

 

 

 

 

 

 

「だってっ!!!酒泉が隣にいないんだもんっ!!!」

 

─────は?

 

 

 

 

 

 

何の脈絡も無いことを叫ばれた酒泉はポカンとするが、そんな事などお構い無しにコハルは叫び続ける

 

 

 

 

「隣に居てくれるって約束したのに勝手にいなくなっちゃうしっ!かと思えば別の学校に行っちゃうしっ!」

 

「これからも隣に居てくれるって約束したのにっ!勉強だって教えてくれるって言ってたのにっ!」

 

「なんでトリニティにいないのよぉ!ばか!ばかああああ!」

 

え?いやっ………えっ?えっ!?

 

「うあああああん!!酒泉のばかああああ!!」

 

 

 

 

ひたすら大声でギャン泣きし続けるコハルに困惑する酒泉

 

とりあえず自分が悪いという事だけはなんとか理解できたが、その理由が何も思い浮かばなかった為にどうすることもできない

 

結局、この場には〝トリニティ生を泣かせるゲヘナ生〟という光景だけが残った

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

どうだ?旨いだろ?

 

「ぐすっ……うん……おいしい……」

 

 

 

 

酒泉の家でミラクル5000を泣きながら食べるコハル

 

目は若干赤くなっており、涙が出そうになる度に服の袖で拭っている

 

 

 

「ごめんね……変な事言っちゃって………」

 

いえ、別に………それにしても、また〝夢〟か……

 

こうも連続で同じような事が起こると、本当にあった出来事なんじゃないかって錯覚しそうになるな……

 

………もしかして別の世界線の?でも生徒会長は〝折川酒泉はこの世界にしか存在しない〟みたいなこと言ってたしな………〝もしも〟俺がトリニティに行ってたらそうなってた可能性はあるが……

 

「……どうしたの?」

 

……いや、何でもないです

 

「………そう」

 

 

 

酒泉はぶつぶつと独り言を呟くが、コハルに話しかけられてすぐに考え事を中断する

 

………あの後、酒泉はコハルを慰めながら自分の家まで案内し、そこで話を聞いた

 

〝存在しない記憶〟と〝実感のある夢〟

 

話の内容を聞けば聞くほどサオリの時の状況と一致していった

 

 

 

「……その……別にストーカー紛いのことをするつもりはなかったの、ただ少し様子を見てみたくて……」

 

ん?ああ、それについてはもう気にしてないから大丈夫だぞ

 

あの状況だとむしろ礼を言いたいくらいだ、おかげで俺のミラクル5000が無事だったからな

 

「そ、そう?」

 

流石はエリート!ゲヘナトリニティ関係なく活躍するな!

 

「と、当然よ!だって私はエリートなんだから!」

 

 

 

さっきまで泣いていたのにも関わらず、ドヤッ!と得意気になるコハル

 

酒泉はそれを優しい目で見守りながら立ち上がる

 

 

 

 

────さて……そろそろ暗くなってきたし、解散しようか……トリニティまで送るよ

 

「……え?いいの?」

 

まあ、俺がここまで連れてきちゃったんだしな………男としての最低限の責任は果たすよ

 

それに、スイーツを守ってくれた礼もしたいしな

 

「……ね、ねえ……お礼って言うならさ……もう一つだけお願いしてもいい?」

 

 

 

コハルはモジモジしながら口を開くと、今度は恐る恐る酒泉に尋ねる

 

 

 

「その……勉強で分からないところがあったらさ……モモトークとかで聞いてもいい……?」

 

え?それは補習授業部に聞けばいいんじゃないか?それに先生だっているし、わざわざ俺を選ばなくても………

 

「……え?で、でも……他の人達にはちょっと申し訳ないし………いやっ、酒泉には申し訳なく感じないとか、そういう事じゃなくて!………その……うっ……うぅ……!」

 

 

 

 

再び泣き出しそうになるコハルを見て酒泉はギョッとし、すぐに返事をする

 

 

 

 

────おっ……俺で良かったら何時でも力になるから!いくらでも頼ってくれて構わないから!そうだな!二人で勉強しような!

 

「うう……本当……?」

 

モチのロンよ!なんなら今日の夜とかでも構わないから!な!?だから泣かないでくれ!

 

「………えへへ、ありがとう」

 

 

 

涙を流しながらも満面の笑みを浮かべるコハル

 

酒泉も安心したような顔をし、コハルと共に家を出てトリニティまで送った

 

更にはその日の夜、就寝前に早速コハルからモモトークが届き、そのまま勉強会が始まった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは余談だが………後日、折川酒泉は〝下江コハルを泣かした男〟や〝泣いている下江コハルを自宅に連れ込んだ男〟として正実や補習授業部、そしてミカに呼び出されることになる

 

コハルやアズサが庇ってくれなかったら死んでいたかもしれない

 

ちなみにタレコミは酒泉が倒した不良達からだった

 

 

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