〝アリウス〟潰すゾ!!!   作:あば茶

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番外編~クソカスシスター~(シスフルート・未完結)
シスターフッドの適当修道士君(見習い)


 

 

 

 

 

「聞いてください……私の罪を……数週間前、私は日に日に増えていく体重計のメモリを前にダイエットを誓いました」

 

「ですが、心が弱い私は幾つものスイーツの誘惑に負け続けてしまい、呆気なくダイエットに失敗してしまいました」

 

「……この様な失敗は一度や二度だけではありません、既に何度も同じ事を繰り返してしまっています」

 

「私はいつになればこの心の弱さを克服できるのでしょうか……神よ、どうか私の様な簡単に欲に屈してしまう愚か者に救いの手を……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────知らね

 

「えっ」

 

 

あまりにも適当すぎる一言、それを聞かされて少女は思わず固まってしまう

 

しかしその声を放った人物は特に気にする事もなく話を切り上げようとする

 

 

 

────はーい懺悔タイムおーわり、神様は有給消化中なんでここにはいませーん。キャバクラで女の子達とイチャイチャしてまーす

 

「……ちょ、ちょっと待ってください!私の悩みはまだ何も解決してませんよ!?」

 

────んなこと言われても……〝さっさと痩せろやデブ〟としか答えられませんし……

 

「デブ!?そ、そこまで太ってませんから!!」

 

 

 

突然の暴言に流石に抗議する少女だが二人を別つ仕切りの向こうから聞こえてくるのは男の欠伸だけだった

 

それを聞いた少女の怒りは更にヒートアップしていく

 

 

 

「ちゃんと聞いてくださいよ!ここは相談に乗ってくれる場所の筈でしょう!?」

 

────んー……ここで相談するぐらいならその時間を使ってダイエットしてた方が良かったのでは?

 

「それが続かないから困って────」

 

────アンタがスイーツ食うの我慢すればいいだけじゃん

 

「…………そ、それができないから困って……!」

 

────いやそこは我慢しろよ、やっぱ自制できないデブじゃん

 

「うぐぅ……!」

 

 

 

痛いところを突かれて口を閉ざす少女、そんな彼女に対して男は〝そうだ〟と何かを思い付いた様に呟いた

 

 

 

────じゃあ、自分にペナルティを課しましょう

 

「ペナルティ……?例えばどのような?」

 

────次ダイエットに失敗したら無駄に付いた贅肉を自ら掻っ捌いてキヴォトス中の恵まれない子供達に恵んだ後余った身体を寸胴の中に投げ入れてラーメンの鶏ガラスープ作りの役に立ちながら死んでください

 

「ダイエット失敗のペナルティが死って重すぎませんか!?しかもかなり拷問染みた方法なんですが!?」

 

────デブのくせに文句言わないでください、アンタに許されてるのは死か痩せるかの二択ですよ、デブなんですから

 

「2回も言わなくていいですから!!!」

 

 

ここは本当に相談室なのか、彼は本当にシスターフッドの生徒なのか

 

そんな困惑と好き勝手言われたことへの怒りを抱きながらもそれでもアドバイスを貰おうと相談室を出ようとはしない

 

 

「分かりました!少々太っているのは認めます!ですからせめて多少の助言とか……!」

 

────運動しろ、食事を改善しろ、必要な栄養だけ摂れ、適切な時間で食べろ、必要無い食事はするな……以上

 

「いや、まあ……それはそうなんですけど……その、ダイエットに挑む際の心構えとか……」

 

────気持ちだけで痩せられるわけないじゃないですか、だからデブなんですよアンタ

 

「デブじゃないです!少々体重が増えてしまっただけです!」

 

 

男が少女の言葉を〝はいはい〟と適当に流すと少女の声が更に騒がしくなる

 

しかし男が深く溜め息を吐くと、少女を渋々口を閉じて次の言葉を待った

 

 

 

────つーか、そもそも俺ってどんだけ食い過ぎても太った経験とか無いんでアドバイスとか求められても困りますわ

 

「貴方は今、全世界の女性を敵に回しましたよ」

 

────やべえ、相撲部屋に閉じ込められちまう

 

「ですからっ!!!そこまで太ってはいませんから!!!」

 

────……さて、冗談は置いといて……あ、アンタがデブってことは冗談じゃないからな?

 

「そこも冗談にしてくださいよ……」

 

 

 

流石に怒り疲れたのか、少女は肩で息をしながらゆっくりと呼吸を落ち着かせる

 

 

 

────さっきアドバイスした通りダイエットを成功させる為には本格的に食生活から改善させる必要があります、そこで貴女の昨日の食事メニューをお聞きしてもよろしいでしょうか?

 

「急に真面目になりましたね……えっと、昨日は確か……朝食にホットケーキを頂きました」

 

────ホットケーキ……まあ、朝食としては全然あり得る話ですね

 

「そこにアイスとハチミツとバターを乗せて」

 

────………まあまあまあ、とりあえず続けて?

 

「登校中は途中のコンビニで美味しそうな限定クレープを見つけてそれを食べてから学園に向かって……それで授業を終えた後のお昼休みは卵焼きとサラダ、ハンバーグに白米が入ったお弁当を……」

 

────弁当は普通でs「デザートに先程のコンビニでついでに買ってきたカスタードシューを頂きました」………成る程?

 

「放課後は部活動が始まる前にエネルギー補給としてたい焼きを食べて、活動後には頑張った自分へのご褒美としてプリンを2つ程頂きました……一体どこを改善するべきなのでしょうか」

 

────就職先はポークソテーと酢豚のどちらをご希望で?

 

「私は豚じゃないですっ!!!」

 

どこを改善すべきか……むしろ改善する箇所しか存在していないが故に少女は自身の生活の何がいけないのかが理解できていないのだろう

 

 

────んー……とりあえずやっぱ死にます?

 

「はい!?」

 

────だってこれダイエットするより1回死んで生まれ直した方が早いですって、それほど絶望的ですもん

 

「ダイエットの為だけに死ぬつもりはありませんよ!?そもそも生まれ変われるのかすら分からないのに……!」

 

────大丈夫大丈夫、転生が存在するって事に関しては俺が保証しますから……あ、それかキヴォトス力士会に〝天才的な人材がいる〟って紹介しときましょっか?

 

「力士になるつもりもありませんから!」

 

────えー?でも他の解決策なんて……あ、だったらアンタんとこの先輩に生活費預けとけば?

 

「……生活費を?」

 

────スイーツを買ってしまう金が手元に無ければ諦めるしかないでしょ

 

「なるほど、元を断つと……ここに来て漸くまともな案が出てきましたね」

 

────アンタがまともなダイエットしてたら話も早かったんですけどね

 

「うっ……そ、それは……申し訳ございません……」

 

────じゃあ話も終わった事ですし早速正実に行って剣先さんにお金の管理お願いしましょっか

 

「えっ」

 

 

 

何故自分の上司の名前を、そもそもどうして自分が所属している組織を知っている

 

そんな疑問を口にする暇もなく仕切りの向こうから〝よっこいしょ〟と声が聞こえてくる

 

 

 

「あ、あの……?」

 

────どうしました?さっさと外に出る準備してくださいよ羽川さん

 

「な、名前までバレてる!?」

 

────つーか相談室狭いな……この顔隠すやつとか絶対いらねーだろ邪魔だし

 

「ちょっ……それを取ってしまうと顔が……!」

 

────お、外れた

 

「プライバシーがっ!?」

 

 

仕切りが外れると同時に男の顔が露になる……が、すぐに相談室を出ていった事で目の前から顔が消える

 

 

 

────あー狭い狭い、マジで相談室とかいらねーだろ……あれ?懺悔室だっけ?どっちだっけ?覚えてます?

 

「わ、私に聞かれても……というよりもこんな簡単に姿を現していいんですか!?」

 

 

 

気だるそうに出てきた男は大きく背伸びをしながら再び欠伸をする

 

 

 

────はー……んじゃ、迷える子豚……子羊を救う為にさっさと行きますか

 

「今子豚って言いましたよね?」

 

────ノーノー、イッテナーイ。神に誓ってイッテマセーン

 

「神様なんて信じてなさそうな性格してるのに……」

 

────いやいや、ちゃんと神様の存在は信じてますよ。実際にこの目で土管から出てくる神様とか見たことありますもん

 

「土管から出てくる神様なんて存在するはずないでしょう……」

 

のんびりと歩き去っていく男を追うハスミ、しかし男は突如ピタリと足を止めて後ろを向く

 

最初はハスミの顔を、そこから徐々に徐々に視線を下げていく

 

 

 

「……あの……何か言いたい事でも……?」

 

────……いや、冷静に考えてみたら体重が増えた理由って太ったから以上に胸が大きk

 

 

 

 

 

それから数秒後、男の頬に大きな紅葉が出来上がっていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

つー訳で剣先さんが羽川さんのスイーツ代を預かる事でダイエットの第一歩を踏み出し始めましたとさ、めでたしめでたし────

 

「────ではありませんっ!貴方はなんて失礼な事を!?」

 

 

 

ダンッ!とテーブルを叩くサクラコだが、酒泉はスマホをぽちぽちと弄りながら適当に〝さーせん〟と呟く

 

テーブルが叩かれた拍子に上に乗っていたお皿と幾つかのスイーツが揺れ、酒泉はそれを心配そうに見つめる……そしてそれらが無事だと分かった途端に再び興味なさそうにスマホを弄り始める

 

サクラコはその態度に益々顔を赤くして怒りを高めるが、一旦冷静になる為に大きく深呼吸をしてから笑顔で語りかける

 

 

 

「ふぅー……いいですか?酒泉、貴方を相談役に選んだのは人々の心に安心感を与える為です。そうして世のため人のために多くの悩みや弱音と接している内に貴方にも他者を思い遣る心が芽生えると、そう信じて────」

 

────うっわ、この子エッロ……スクショしとこ

 

「人の話を聞きなさい!!!」

 

 

 

説教中だというのにサクラコの言葉を無視して独り言を呟く酒泉

 

サクラコもいよいよ怒りが限界に達したのか酒泉のスマホを無理やり奪い取る……が、そのスマホの画面を見た瞬間に今度は怒りとは別の理由でサクラコの顔が赤く染まる

 

 

 

「なっ!?なななな……なんですかこのサイトは!?」

 

────何って……エロサイトですけど

 

「人と話してる時にこんなサイト見ないでください!大体、貴方はいつもいつも空気も読まず好き勝手に────もごっ!?」

 

────まあまあ、そう怒らず

 

 

 

少しずつサクラコの声が大きくなっていくが、その途中で酒泉がテーブルの上にあったシュークリームをサクラコの口に突っ込んで黙らせる

 

モゴモゴと口を動かし、ゴクリと音を鳴らしてそれを飲み込むサクラコ

 

 

 

────美味しい?

 

「はい、美味し……じゃなくてっ!いきなり何をするんですか!?」

 

────いや、糖分でも摂らせて怒りを収めてもらおうと……

 

「むしろ今の行動のせいでもっと怒りましたよ!」

 

────ストレスでも溜まってんですか?ちょっとは休まないと駄目ですよ?

 

「貴方のせいでそのストレスを───はむっ!?」

 

 

 

続いてマカロンを軽く投げる酒泉

 

サクラコが口を開けたタイミングを見逃さず完璧なタイミングで口の中に放り込まれたそれを、サクラコは何度か咀嚼して飲み込む

 

 

 

「んぐっ……」

 

────それ最新作のメロン味ですけどめっちゃ甘いですよね

 

「はい!甘味が口の中全体に広がってとても…………って、また貴方は話を遮らせるような真似を!」

 

 

 

話を逸らされたことを怒るサクラコ、しかし素直に味の感想を言いかけていた彼女も大概である

 

 

 

「いいですか?今回の件、貴方はハスミさんの悩みを解決する為に具体的な案を出していました。その事に関しては文句無しの百点の行動と言えましょう」

 

────なら良いじゃないっすか……そんな怒らなくても

 

「問題はそれ以外の対応です!いくら何でも言い方がキツすぎます!もう少し言葉を選んで────ふみゅっ!?」

 

────このパンケーキ、コンビニで売ってるとは思えないほどのクオリティですよね

 

「やれへくらはい!いりまへんはら!いりまへんはら────」

 

 

 

口に押し付けられるパンケーキを何とか口の中に入れて窒息させられるのを防いだサクラコ

 

その食感はとても柔らかく、それでいてしっかりとした厚さと甘さを感じさせるようなコンビニクオリティを上回るコンビニスイーツだった

 

 

 

「……こ、これは……」

 

────これも最近発売されたやつらしいっすよ、税込156円

 

「たった156円でこの味を楽しめるとは……技術の進化というものはとても早いのですね……」

 

────んじゃあ前夜祭を楽しんだ頂いたところで最後にメインを……はい、これどうぞ

 

「なんですか?この箱……は……ま、待ってください!?これってまさか……!」

 

 

 

その箱は特に変わったところもない白い箱、若干の冷たさを感じて中に保冷剤が入っていることが窺えるが本当にそれだけだ

 

しかしサクラコはその箱の中央に描かれたロゴに見覚えがあった、それは〝ミラクル5000〟という大人気ケーキを取り扱っている店のロゴと同じだった

 

酒泉がその箱をパカッと開けると中には2つのケーキが入っていた、そう────それこそがミラクル5000だった

 

限定品且つ大人気すぎて滅多にお目にかかれないそれを前にサクラコの瞳が輝き

 

酒泉は同じ箱に付けられていたプラスチックの使い捨てフォークをケーキに刺してそれをサクラコの口元まで運ぶ

 

 

────はい、あーん

 

「えっ?い、いいんですか!?」

 

────だってこれ歌住さんの為に買ってきたやつですから

 

「……私の為に?」

 

────今日だけじゃなくて日頃から迷惑を掛けてしまってるので……せめてその謝罪とお礼をと思って

 

「酒泉……」

 

 

 

サクラコは何も酒泉が嫌いだから説教をしているのではない、むしろ酒泉の未来が心配だからこそ何度も何度でも説教をしてきた

 

しかし肝心の酒泉の態度はスマホを弄っていたり別の考え事をしていたり、挙げ句にはサクラコをからかう様な行動まで取る始末

 

そんな行動ばかり繰り返されている内にサクラコは〝私の言葉は届いていないのか〟と心配になっていた……しかしそんな事はなかった

 

サクラコの言葉はしっかりと酒泉に届いていた、彼は不器用ながらもこうしてその礼をとスイーツを食べさせてくれた

 

 

 

「ふふっ……ええ、分かりました。貴方の真心、ありがたく受け取らせて頂きます」

 

 

 

今思えばさっきまで話を逸らしながらスイーツを口に突っ込んできたのも照れ隠しなのかもしれない、そう思えば可愛いものではないか

 

 

────どうです?美味しい?

 

「ええ!とても────」

 

────あ、そういえば俺への説教はもう終わりですか?

 

「……あっ!?ま、まだです!まだ話は終わって────」

 

────はい、あーん

 

「あむっ……」

 

────美味しい?

 

「はい!この苺もクリームと合って中々の────」

 

────それで?説教の続きは?

 

「……はっ!?そ、そうです!貴方は自分の行動がシスターフッドの評判に繋がると理解して────」

 

────あーん

 

「あーん……流石は大人気ケーキ、今まで感じた事のない美味しさを────」

 

────で?シスターフッドの評判云々の続きは?

 

「……あっ!?えっと……た、確か続きは……」

 

────あ、ミラクル5000もう1個食べます?

 

「あ、頂きます……そうれふ!おもいだひまひた!ごくん……貴方が周囲の人間に迷惑を掛ければ、それはシスターフッドの責任にも繋がる可能性が────」

 

────あーん

 

「あーん……」

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな勘違いをしながらサクラコはミラクル5000を食し続ける

 

結局、酒泉が彼女の話をまともに聞かない理由なんて────

 

 

 

(この人おもしれー)

 

 

 

見ていて面白いから、ただそれだけである

 

 

 

(いやー愉悦愉悦、誰も曇らないし誰も傷つかない軽い愉悦は最高だな!やっぱ麻婆豆腐は甘口に限るわ!)

 

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