「そうですねぇ……これなんてどうでしょうか♡」
────おー、結構いいデザインしてますね……でもこっちの金色のとかも中々……
「なるほど、控えめなイメージの聖職者に対して敢えて派手な物を着用させると……それでしたらこちらも中々ですよ♡」
────おお、かなり面積が狭い……ギリギリを攻めてる……
「色も白ですし、清楚なイメージを崩さないままエッチな雰囲気を醸し出せると思いますよ♡」
「あの……」
「あら……おはようございます、サクラコさん♡」
────はよざーっす
「あ、はい……おはようございます……ではなくてですね?どうしてハナコさんが早朝から聖堂に?」
「それは……実は酒泉君と少々お話したいことがありまして……」
「えっと……二人きりで?……よ、宜しければ何を話すつもりだったのかお聞きしても……?」
「……ふふっ♡心配せずともサクラコさんの思うような会話はしていませんよ♡」
「わ、私は別に何も心配してなど………」
「私達はただ────」
「サクラコさんに似合いそうなマイクロビキニを話し合ってただけですから♡」
────やっぱ金ビキニが一番エロいっすね
「……はい!?」
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「貴方はまた朝の礼拝をサボって!い、いいい如何わしい話を……!」
────でも話振ってきたのは浦和さんからっすよ
「一々それに答える必要はありません!」
酒泉の腕を引っ張りながら足早に歩くサクラコ、その頬は赤く染まっている
……この〝顔を赤くしたサクラコが酒泉を連れて二人だけで何処かに行こうとしている〟という光景を目撃した通りすがりの生徒達が小声で噂話をしている事にも気づかずに
────えー?なんすか?じゃあ歌住さんは〝浦和さんを無視しろ〟って言うんですかー?
「そ、そういう事ではありません!私はただ、する必要のある会話としなくてもいい会話の区別をつけろと……!」
────シスターフッドはちょっとの雑談も許してくれないんすかー?
「雑談は構いませんけど……でも……」
────〝あの子可愛いよね~〟とか〝アイツエロくね?〟とかよくある会話でしょ?だからさっきの浦和さんとの会話も雑談っすよ?
「そ、それを本人の前でしないでください!」
────だから敢えて歌住さんの名前を言わずに会話してたんじゃないですか、それを歌住さんが無遠慮に聞いてきたから……
「えっ!?わ、私が悪いんですか!?」
おかしい、自分に非は無かったはず
それなのに何故自分が押されているのか、そんなサクラコの疑問に答えるとするならばそれは彼女が意外と流されやすかったり乗せられやすかったりするからだろう
「えっと……ご、ごめんなさい……?」
────本当ですよ、全く……今度から俺と浦和さんの〝歌住さんに似合うマイクロビキニトーク〟の邪魔しないでくださいね?
「は、はい……分かりま────待ってくださいやっぱり私悪くないですよね?」
自分が謝っていること自体がおかしいと流石に気づいたのか、サクラコが頷く前にギリギリで思い留まる
酒泉は〝流石に無理があったか〟と小声で呟いてから舌打ちをした
「危ないところでした……また貴方に流されるところでした……」
────逆によくあれぐらいで流されそうになりましたね
「……と、とにかく!今後はあの様な如何わしい話は控えるように!」
────はいはい分かりましたよー、今後二度と歌住さんでエロい妄想はしませんよーっと
「……え?に、二度と?」
────そうっすよ……これで文句無いでしょう?
「……い、いえ……別にそこまでは……」
酒泉はサクラコの命令に素直に頷くが、逆にサクラコ側はどこか不満そうに口元をモゴモゴさせている
「わ、私は何も〝一生妄想するな〟とまでは言ってませんよ?人間である以上、性に対する欲求があるのは仕方ないですし……そ、そこまで縛るつもりは……」
────はい?じゃあ適度にならしていいんすか?
「……そ、その……私を題材にハナコさんと話し合っていたという事は私に対してそういう感情を抱いている……という事ですよね?も、もしそういった邪な気持ちをどうしても抑えられないというのならば……わ、私のいない所で少し妄想する程度でしたら……と、特別に許可を────」
────いや別に歌住さんが対象じゃなくても普通に他の人でエロい妄想できますけど
「……酒泉、今朝やり忘れてしまった分の礼拝を今すぐ捧げてきなさい、3時間ほど」
────はーい、わかり待って3時間?
人は何の為に祈るのだろうか
自身の幸せの為?他者の幸せの為?今後の人生の為?ギャンブルの為?ソシャゲで最高レアを当てる為?ユズパチでビナーをしばく為?
俺はそのどれでもない、俺が祈る理由はただ一つ
────はーしんどー……急に時が跳んだり時が加速したりしねーかなー
さっさとこの時間終わらせろや役立たずの神様、そんな願いを込めながら偉大なる主へと祈りを捧げる
「そんな簡単に時間が経つわけないでしょう」
あとついでに〝俺の後ろに立っているダイエット失敗巨乳デブがどっか行きますように〟とも願っておく
「誰がデブですか誰が!それと私はダイエット失敗なんてしていませんよ!」
────ええ~?ほんとにござるかぁ~?
「本当です!その証拠に先々週は2kgの減量に成功したんですから!」
────で?先週は何kg増えました?
「……3です」
顔を伏せながら指を3本立てる羽川さん
この人、実はダイエットに成功した日の週末に〝頑張った私へのご褒美です!〟とか言いながらまたスイーツを沢山食べていた
折角俺もトレーニングメニューとか食事メニューとかの作成に協力してやったというのにこの人は……めんどくせーしコイツでいいか、コイツはそれを数日で無駄にしてくれやがった
一度自分に許してしまった〝甘え〟は完全に〝痩せる〟という覚悟を破壊してしまい、その後もあと一口だけあと一口だけと次々とスイーツを口に運んでいった
マジで養豚場に送られてくんねーかな
────減らすのは大変、増やすのは簡単、ダイエットに失敗する奴等って皆それを知らないんですよ
「うっ……で、でも!あの時貴方も現場に居たんですから私のことを止めてくれても……」
────おやぁ?正実の人間ともあろうお方が他人に責任を押し付けるんですかー?罪を被せるのが正義なんですかー?
「うぅぅ……!貴方だって〝ちょっとぐらい食べても大丈夫ですよ〟って言ってたくせにぃ……!」
────ああ、アレね……アレは今回のダイエットでの羽川さんの本気度を確かめる為に言っただけですよ
「……は!?」
何回もダイエットに失敗してるって前科持ちの人間がそう簡単に食を諦められるとは最初から思っていない
そもそもたった2週間食を我慢した程度でダイエットを達成できる訳がない、痩せた後の食の管理もできないのであればその程度だ
「は、謀りましたね!?酒泉!」
────アンタの食い意地がいけないんですよ……で?どうです?懲りました?
「……ええ……嫌というほど」
────……で?これからどうするんですか?
「これから……というのは?」
────またダイエットするんですか?それともリバウンドしたまま終わるんですか?
「…………また同じ事の繰り返しになったりは……」
────一度リバウンドを経験すれば次からはそれを想起して無駄な食事を避けられるようになるでしょう?
「酒泉……貴方、もしかしてその為に敢えて私を止めずに……?」
────いや普通に絶望した羽川さんの顔が見たかっただけですけど
「くっ……少しでも貴方を信頼した私が馬鹿でした……!」
────羽川さんはダイエットの成功を信じて生活費を預かってくれていた剣先さんの信頼を裏切ってますけどね
「申し訳ございませんそれは本当に反省しています」
心底悔やんでいるように口元を歪めた後、羽川さんは深く頭を下げる
俺に謝られても困るのだが……まあ、なんとなく面白いしこれはこれで良いだろう
────……さて、それでどうするんですか?またダイエットするってんならまた協力してあげますけど……つっても、再び俺の前に姿を現したって事は最初からリベンジするつもりなんでしょ?
「……ええ、当然です!先程まではあまり自信が無かったのでハッキリと伝えることができませんでしたが……今度こそ私は協力者の皆さんの期待を裏切らずにダイエットを成功させてみせます!その為にも……!」
────俺の力を借りに来たと……いいっすよ、その代わり今度こそ裏切らないとここで誓ってください
「はい!誓います!」
ドンッ!と胸を張って宣言する羽川さん、うーんこれはデカい
────よしオーケー、それじゃまた一緒に頑張りましょう……といってもダイエットの方法は以前と殆ど同じですから
「……殆ど?」
────もしまたダイエットに耐えきれず腹が空くような事があればその時は……ウチの寮に来て下さい、俺が出来るだけ太りにくいダイエット料理作ってあげますから
「は、はい?貴方が?………きゃっ!?」
困惑している羽川さんにポケットから鍵を取り出してそれを投げつけると、羽川さんは驚きながらもそれをキャッチする
その鍵は俺が暮らしている寮の2つ目の鍵……つまり合鍵だ
────もし羽川さんの空腹が限界に達している時にタイミング悪く俺だけ出掛けるとかの予定があったら、その時は作り置きしてから出掛けるんで羽川さんはその合鍵使って部屋で勝手に飯食ってください
「えっ!?貴方の部屋に……ですか!?」
────中にはトレーニンググッズとかもあるんでそれ使ってもいいっすよ別に
「えっと……色々と急ですけど……でも、ありがとうございます……?」
首を傾げながら礼を言う羽川さん……そうだ、あとアレも伝えておかないとな
────その代わりウチで食事をする場合、俺に罵られながら飯食ってください
「……は、はい?」
────だって俺に頼るってことは己の中の食欲に負けたってことでしょう?それに対する戒めでもありますからね
「……その、具体的にどの様な罵倒を……?」
────デブ、豚、とんこつ醤油、リバウンドデブ、学習しない女、栄養が胸と腹に行き渡るせいで一向に頭が成長しない女、ファスナークラッシャー、ジャージ虐待おばさん、制服君虐待おばさん、体重計君をいじめるな、パフェを飲み物だと思ってそう、33-4
「結構です!もう言わなくていいです!絶対に貴方の料理にはお世話になりませんから!」
羽川さんは首を横に振って必死に否定する、ここまで言えば流石に耐えられるだろう
……あん?〝お前そもそもダイエット料理作れんのか〟だって?
んなわけねーじゃん、練習すれば作れなくもないけどそこまでしてやる義理もないしな……もし頼られたらその時は全力で高カロリー料理食わせるつもりだ
……これを機に〝無理なダイエットはよくない〟と思っている人達に言っておこう。確かにそれは正しい、我慢のしすぎは身体に毒だ
「で、でも……ダイエットに挑む前にせめて一口だけパフェを……暫く会えなくなりそうですし……」
だが、世の中には一度無理をさせなきゃ痩せられない人だっているのだ