〝アリウス〟潰すゾ!!!   作:あば茶

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酒泉君がイブキちゃんのクレヨンを探すだけの話……の続きです


酒泉君がイブキちゃんのクレヨンを探した後の話

 

 

 

「酒泉!探してた資料、持ってきたよ!」

 

────おー……ありがとな、イブキさん

 

「うん!」

 

 

イブキさんが仕事に必要な資料を俺のデスクの上まで持ってきてくれた

 

 

「ねえねえ……イブキ、役に立てた?」

 

────ああ、大助かりだよ

 

「本当!?それじゃあ……」

 

 

イブキさんは俺の方にずいっと頭を近づけてくる

 

その表情は何かを期待しているような……ああ、あれね

 

 

────よしよし、偉い偉い

 

「えへへ……」

 

 

求められるがままにイブキさんの頭を撫でると、彼女は表情を崩してニマニマと笑った

 

子供の笑顔は見てて微笑ましくなるなー……

 

 

「酒泉!次は何をすればいいの?イブキ、どんなお仕事でも頑張るよ!」

 

────あー……いや、イブキさんに頼めそうな仕事はもうないかなー……後は俺達がやるから、イブキさんはそこのソファでゆっくり休んでてくれ

 

「…………え?」

 

 

そんな純粋な笑顔が固まり、次第に不安そうな表情に変わっていく

 

 

「な、なんで……?なんでイブキにお仕事手伝わせてくれないの……?」

 

────え?いや、だって……任せられるのは全部お願いしたし……

 

「イブキが……イブキが役に立たなかったから?本当は足を引っ張ってたから……?」

 

────違う違う違う!そういうんじゃない!本当に違うから!?

 

「お、お願い……イブキ、もっと頑張るから!もっともっと沢山働くから!」

 

 

イブキさんは声を震わせるながら叫ぶと、俺の服を掴んで働かせてくれと必死に懇願してくる

 

実はあの日から……イブキさんが天雨さんに〝風紀委員会に入れてくれ〟と頼み込んでいた日からずっとこんな感じだ

 

事情を尋ねてみたら無言で俯き、俺達の独断じゃ決められないと万魔殿まで行こうとすれば泣き叫んで必死に止めてくる

 

『私っ!働くから!マコト先輩が迷惑を掛けた分もいっぱい働くから!』

 

 

……唯一のヒントはあの言葉のみ

 

何があったのか尋ねてもまた黙り込む……の繰り返し

 

とりあえずほとぼりが冷めるまで風紀委員(仮)として働いてもらうことにした

 

した……のだが……

 

 

 

「ひっぐ……えぐっ……お願い……酒泉の役に立つからぁ……!嫌いにならないでぇ……!」

 

────ならない!嫌いにならないから!だから落ち着こ!?な!?

 

「うぅ……ぐすっ……ほんと……?」

 

 

 

……仕事熱が異常というか……いや、これは仕事がどうこうじゃないな

 

まるで〝嫌われること〟を異様に恐れているような……

 

 

「……酒泉、またイブキちゃんを泣かせたんですか?」

 

────えっ!?俺のせい!?

 

「イブキちゃん、風紀委員室のゴミ箱がそろそろ満杯になってきそうなので袋を新しく取り替えてもらってもいいですか?」

 

「うん……分かった!」

 

 

天雨さんから袋を手渡されると、涙を拭って再び笑顔で仕事に向かうイブキさん

 

 

「………こんな風に軽い仕事を適度に任せればいいんですよ」

 

────いや、それもちょっと申し訳ないといいますか……

 

「だから〝適度に〟なんですよ……とにかく彼女を悲しませないように気を遣って立ち回ってくださいね?」

 

 

中々難しい事を要求しなさるな、天雨さんは……

 

まあ、イブキさん本人が働きたがってるのは事実だし、今みたいに軽い仕事を探してちょくちょくお願いするのが一番いいか

 

 

「ゴミ袋まとめたよ!」

 

────お……ありがとな、そういう細かい仕事をやってくれるのは助かるよ

 

「でしょでしょ?イブキ、もっと皆の役に立つからね!」

 

 

何故か俺の方にドヤッ!と顔を向けてくるイブキさん

 

でも子供のドヤ顔って不思議と微笑ましいよね、なんか和むわ

 

 

「……酒泉、なんか懐かれてないか?」

────んえ?そうっすかね?

 

「気づいてないんですか?イブキちゃん、酒泉君が帰ってくる頃になるといつもソワソワし始めるんですよ?」

 

 

銀鏡さんと火宮さんに教えられ、自分が想像以上に懐かれている事に気づく

 

そうか……子供に好かれるのはシンプルに嬉しいな

うんしょうんしょとゴミ袋を持って風紀委員室を出ていくイブキさんの背を眺めていると、本人がそれに気づいて笑顔で手を振ってきた

 

 

「これ!捨ててくるね!」

 

「イブキ、1人で大丈夫か?」

 

「うん!イブキ、力持ちだから!」

 

 

そのまま走り去っていくイブキさん

 

そんな彼女を微笑ましそうに銀鏡さんが見つめる

 

 

「いやぁ……万魔殿の生徒とは思えないぐらい良い子だよね、イブキって」

 

「そうですね、ただ……酒泉君に向ける視線が時々……」

 

「ん?酒泉がなんだって?」

「……いえ、何でもありません。そうですよね……あんな小さい子に限って……」

 

 

ボソボソと何かを呟く火宮さんだったが、気のせいかと首を横に振る

 

 

 

「……酒泉」

 

────なんですか?空崎さん

 

「イブキを追ってくれる?あの年齢でもしっかりしてるしあまり心配は無いと思うけど……一応、ね?」

 

 

 

空崎さんは俺が判子を押そうとした書類を回収し、それを全て自分の机の上に置いた

 

 

 

「酒泉の分の仕事は私がやっておくから、酒泉はあの子をお願い」

 

────いいんですか?

 

「あの子は酒泉に懐いているし、酒泉と一緒に行動すれば少しずつ風紀委員会で働こうと思った理由を引き出せると思うの」

 

────そういう事でしたら……了解っす、今すぐ追っかけてきますね

 

「うん、お願い………それと酒泉、気を付けてね?」

 

────はい?何がです?

 

「……特に理由はないけど、でも……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんとなく胸騒ぎがして……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「見つけたぞぉ……!風紀委員んんん……!」

 

「いやぁ……毎度毎度すいませんねぇ……」

 

 

そんな空崎さんの不吉な言葉から数分後、俺はとんでもない形相の羽沼さんに壁ドンされていた

 

その後ろで棗さんは頭を下げてくるが、止めてくれる気配はない

 

空崎さんの胸騒ぎの原因はこれかぁ……フラグ回収早すぎない?

 

 

「最近万魔殿を離れてる時間が多いと思っていたが……これはどういう事だ?何故イブキが風紀委員会に出入りしている!?」

 

 

1枚の写真を俺に手渡すと、そこには俺以外の風紀委員と共に書類を運んでいるイブキさんが写っていた

 

ああー……見られたか、もうちょいイブキさんのメンタルが安定してから話しに行こうと思ってたんだけどな

 

 

「まさか貴様等……イブキを無理やり働かせているんじゃないだろうなぁ!?」

 

────いや、無理やりではないんですけど……その……

 

「やはり働かせていたのか!?イブキを!あの小さな身体を酷使させて!」

 

────あの、とりあえず話を聞いて……

 

「おのれ風紀委員んんんんんん!!!」

 

 

 

駄目だ、話を聞いてくれない

 

こっちのマコト先輩は昔のマコト兄ちゃんみたいに面倒だな……

 

どうすっかなー……さっさとイブキさんを追いかけたいんだけど、多分簡単には帰してくれないよなー

 

 

「ええい!イブキは何処だ!何処に隠している!?今すぐ出せぇ!」

 

────……ってぇな……

 

「ちょっと……やりすぎですよ、マコト先輩。少しは落ち着いて……」

 

「落ち着いてなどいられるかっ!今も風紀委員共の汚い手に触れられていると思うと……クソッ!さっさと吐け!」

 

 

羽沼さんに突き飛ばされて尻餅をつく

 

その際に頭を少々壁に打ち付けるが……まあ、大した痛みではない

 

ただ、そんな羽沼さんの様子に棗さんも少し思うところがあったのか、両手で羽沼さんの腕を押さえて止めようとする

 

 

「やめてっ!!!」

 

 

 

だが、廊下には棗さんでも羽沼さんでもない第三者の悲痛な叫び声が響く

 

何事かと思って視線を声の聞こえてきた方へ向ける

 

すると、廊下の奥からイブキさんが走ってきていた

 

 

「イブキ!?よ、よかった……無事だった───」

 

「もうやめてよっ!」

 

「───え?」

 

 

イブキさんは息を切らしながら俺の前に立ち、両手を広げる

 

その姿はまるで俺を庇っているかのようだった

 

 

「イ、イブキ?やめろって……何をだ?」

 

「どうして酒泉を突き飛ばしたの!?酒泉の事がそんなに嫌いなの!?」

 

「……あ、あのな?私はただ酒泉と話をしていただけであってな?」

 

「お話するだけならどうして酒泉に酷いことしたの!?」

 

「い……いや……それは………………イロハァ!」

 

 

困ったように視線をオロオロさせる羽沼さん

 

自分では言い訳が思い付かなかったのか、全ての問題を棗さんに投げつけた

 

 

「えぇ……ここで私にぶん投げるんですか……………えっと、イブキ?マコト先輩は少々重要なお仕事の話をしている最中でして……邪魔しないように向こうで私と一緒にお絵かきでもしませんか?」

 

 

目線をイブキさんに合わせ、子供をあやすように頭を撫でながら話しかける棗さん

 

だが、イブキさんの頭に乗せられた手は一瞬で振り払われた

 

 

「………やらない」

 

「……え?」

 

「……イブ、キ?」

 

「絵なんて、もう描かない」

 

 

ギュッと小さな手に力を込め、羽沼さんを睨む

 

こんなイブキさんは一度も見たことが……いや、それはこの場で唖然としている万魔殿の連中も同じか

 

 

「イ……イブキ?どうしてだ?あんなにお絵かきが好きだったじゃないか!」

 

「……やだ」

 

「ほ、ほら……な?万魔殿からクレヨンと画用紙を持ってくるから……」

 

「………やだ、やだ」

 

「……そ、そんなこと言わずに……な?ほら、手を繋いで一緒に────」

 

「やだやだやだやだやだ!!!」

 

「─────っ!?」

 

 

 

年相応に駄々を捏ねるイブキ

 

だが、普段の様子を知る者達はあまりの変わりように全員が驚愕する

 

 

「嫌い!皆嫌い!」

 

「酒泉を傷つけるマコト先輩なんて!風紀委員会に意地悪するマコト先輩なんて!」

 

「それを見て見ぬふりをする先輩達も!それを知らずに呑気に笑ってた私自身も!」

 

「嫌い!嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い!!!」

 

「全部全部!全部────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だいっきらい!!!」

 

 

悲痛な叫びが廊下中に響き渡る

 

なんだなんだと教室から生徒達が顔を覗かせてくるが、イブキさんはそんな事などお構い無しに走り去っていく

 

……マズイな、やっぱ今すぐ話を聞いた方が良さそうだな

 

 

 

────おい!タヌキ女!追うぞ!

 

「ぇ……ぁ……イブ、キ……?」

 

────……棗さん、その人連れ帰ってくださいね

 

「は、い……」

 

 

 

唖然とする棗さんにペタリと座り込んでいる羽沼さんの世話を任せる……棗さんも困惑しているが隣のタヌキ女よりはマシな状態だろう

 

本当に使いもんにならんな、こっちの世界の議長様は………そんなんじゃデスティニープラン壊されちまうぞ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぅ゛……!ひぐっ……ぐすっ……」

 

 

イブキさんの後を追っていると学校の外に出てしまった……が、校舎裏のベンチで座っているところを発見した

 

意外と走ったな……流石キヴォトス人、幼くても中々の身体能力をしている

 

 

 

「なんで……なんで……っ」

 

────どしたん?話聞こか?

 

「あっ……しゅせん……」

 

 

 

クレヨンを探したあの日と同じように声を掛けると、イブキさんは涙を拭って此方の顔を見上げる

 

 

 

────……隣、座ってもいいか?

 

「………うん」

 

 

 

俯きながらも返事はしっかりと返してくれた

 

……さて、何から聞けばいいのやら。まずは……

 

 

 

────……なあ、イブキさんが風紀委員会で働きたがっていた理由ってさ、もしかして………羽沼さんが関係しているのか?

 

「……っ」

 

 

 

反応あり……ヒットか

 

 

 

「ち、違うよ!私は……自分が働きたいから……」

────……嘘を吐いても無駄だぞ、俺の眼は他人が動揺した瞬間だって見破れるんだ

 

「……本当だもん」

 

────あー……悪い、別にイブキさんのことを責めている訳じゃないんだ。ただ、心配だったから……

 

「……心配、してくれるの?」

 

────お?そりゃ……なあ?

 

「イブキ、万魔殿の生徒だよ?」

 

 

 

何かを恐れながら尋ねてくるイブキさん

 

……なんだ?どこか違和感が……

 

 

 

「酒泉の事を傷つけた万魔殿の生徒なんだよ?それなのにイブキのことを心配してくれるの?」

 

────と言われても……別にイブキさんに傷つけられた訳じゃないしなぁ……

 

「でも、酒泉は万魔殿が嫌いなんでしょ?……さっきもマコト先輩に酷いことされてたし」

 

────あー……あれは……ほら、ちょっとしたじゃれあいだよ。互いに仲が良いが故の……な?

 

「……本当に?2人は本当に仲良しなの?」

 

────本当だよ、周りからは喧嘩ばっかしてるように見えてるだろうけど……でも、あれは全部演技みたいなものなんだ

 

「……そうなんだ、それじゃあ────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────どうしてマコト先輩は調印式で酒泉を殺そうとしたの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────……なん、で……それ、を……?

 

「教えてよ、マコト先輩が私の大好きな人を殺そうとした理由を」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「……………」

 

「……イブキ、帰ってきませんね」

 

「………ああ」

 

「……まあ、それも無理ないよね」

 

「こ、こうなったら私の催眠術で皆を元気に……」

 

「今度こそ万魔殿が崩壊するのでやめてください」

 

 

マコトが、イロハが、チアキが、サツキが

 

万魔殿の全員が落ち込んでいる

 

理由は言わずもがな、この場に居ない幼い少女の事で

 

 

「……すっかり意気消沈してるね、私もだけど」

 

「し、仕方無いじゃない……だって、イブキちゃんが……」

 

「あっ、その話をすると────」

 

「……イブ、キ……」

 

「────マコト先輩が……って、あれ?」

 

 

大声で泣き叫びかと思いきや、それすらなくイブキの名をポツリと呟くだけのマコト

 

余程ショックだったのか、彼女は執務室に着いてからずっとこの調子だった

 

……というよりも、全員同じ調子だった

 

 

「……こんな空気でも、イブキちゃんさえ居てくれたら明るくなるのにね」

 

「そのイブキに嫌われちゃいましたからね……」

 

「イブキ……イブキ……」

 

「マコト先輩もずっとこんな感じだし……」

 

 

皆を照らしていた太陽、丹花イブキ

 

お日様のような笑顔で周囲を幸せな気持ちにさせる少女を失ったことで、万魔殿の空気がかつてないほど暗くなる

 

 

「……どうやってイブキちゃんに許してもらおっか」

 

「ふ、風紀委員会と仲直りする……とか?」

「……肝心のマコト先輩が風紀委員を嫌っているんじゃ、また同じことの繰り返しになるだけですよ」

 

 

全員の視線がマコトに集中するが、そんな事など意に介さずマコトは項垂れ続ける

 

溜め息を吐き、目を閉じ、また溜め息を吐く

 

同じことをひたすら繰り返し、時々イブキの名を呟く

 

 

「……マコト先輩も原因の1人なんですから、何か解決案を考えて────」

 

 

マコトに文句を言おうとイロハが口を開いた瞬間、突如万魔殿の扉が開かれる

 

その音に反応した一同は一斉に視線を一ヶ所に集める

 

そこに立っていたのは────

 

 

 

「……お、折川酒泉?どうしてここに?」

 

 

 

風紀委員の少年だった

 

 

サツキが酒泉に声をかけるが、酒泉はそれを無視してズカズカと部屋の中に入っていく

 

……そして、マコトの前でピタリと止まった

 

 

「……なんだ、イブキじゃないのか」

 

 

チラッと視線を上げ、落胆したように呟くマコト

 

口からは自嘲じみた言葉が出てくる

 

 

「こんな所に何の用だ?私を笑いにきたか?それとも……私の首でも獲りにきたか?好きにしろ、イブキを失った今の私に生きる意味など────ぬおっ!!?」

 

「なっ……酒泉!?一体何を……!」

 

 

突如、マコトの胸ぐらを掴んで無理矢理立ち上がらせる酒泉

 

万魔殿の生徒達に銃口を向けられるが、酒泉はそんな事など気にせずにマコトをそのまま壁にガンッ!と押し付け、冷たい瞳で睨みながら口を開く

 

 

 

 

 

 

────全部、アンタのせいだぞ

 

「……な、なんだと?」

 

────アンタがあんな馬鹿げた計画を立てたから……イブキさんに嫌われたんだ

 

「……っ」

 

 

 

目を逸らそうとするマコトだが、酒泉はそんな彼女の頬を掴んで無理矢理正面を向かせる

 

 

 

────仮にあのミサイルで俺が死んでいたとしよう……アンタ、人を殺した手でイブキさんに触れるつもりだったのか?人を殺した手でイブキさんと遊ぶつもりだったのか?

 

「……わ、私は……」

 

────言っとくけど、この例えは被害者が俺から空崎さんに変わったとしても同じ事だからな?

 

 

言い訳を許さず、更に問い詰める酒泉

 

その瞳には尋常ではない怒りが込められていた

 

 

 

────イブキさんは今、医務室のベッドで眠っている

 

「なっ……け、怪我したのか!?どこを!?」

 

────違う、精神的な疲労で寝ているだけだ……原因は分かるよな?

 

「っ……」

 

────完全に寝付くまで俺が手を握り続けてないとすぐにも泣き出しそうになっていたぞ、なんなら寝付いた後も暫く手を離してくれなかったしな

 

「そ、そんなに……酷い状態に……」

 

 

 

〝誰のせいだ〟と、そんな表情で睨みながらも酒泉は話を続ける

 

 

 

────大切な人が他の誰かを殺そうとしてたんだぞ?それを知った時のイブキさんの気持ちが理解できるか?

 

────これまでの悪行の積み重ねがイブキさんの純粋な心を傷つけたんだ……あんな小さい子を苦しめやがって

 

────自業自得だ……全部全部、アンタの……馬鹿なリーダーを止めなかったアンタらの、な

 

「……ぁ……ぅあ……わ、私が……イブキ、を……?」

 

 

 

酷く傷ついた表情をするマコトを見て舌打ちをする酒泉

 

その怒りは彼女の震えを見ても収まらなかった

 

 

 

────……あの子は純粋だけど、あの年齢に見合わないくらい頭がいい。俺が〝羽沼さんとは仲直りした〟って嘘吐いても一瞬で見破られたよ

 

────つまり、この問題は俺達が本当の意味で手を取り合わないと解決できないだろうよ

 

「な、なら……どうすればいい……?どうすれば、イブキは万魔殿に戻ってくる!?」

 

 

 

縋るように酒泉の肩を掴むマコト

 

酒泉は数秒間自分の頭に手を置いた後、苛ついたかの様に頭をガシガシと掻く

 

 

 

────俺はアンタが嫌い、アンタも俺が……風紀委員会が嫌い。それをどうにかしない限り、根本的な解決には至らない

 

「なっ……ま、まさか!私に風紀委員会を好きになれと言うのか!?」

 

────話は最後まで聞け!……別に完全に好きになる必要は無いんだ、どれか1つでも……ほんの数ミリだけでも互いに認められるところを見つけるんだ

 

「そ、それは……つまり、何をすれば……?」

 

 

 

不安そうなマコトの瞳を見つめた酒泉は口をモゴモゴさせながら拳を握り締める

 

非常に言いづらそうにしながらも、意を決したように口を開いた

 

 

 

 

────くそっ……くそっ!こんな、こんなドブカス以下のクソ女にこんな事を言わないといけないなんて……!

 

「な、なんだ!?言いたい事があるならさっさと言え!イブキと仲直りする方法をさっさと教えろ!」

 

────や、やっぱ今からでも止めて……で、でもそれだとイブキさんに信じてもらえるか……!

 

「なんだってする!どんな事でも耐えてみせよう!だから……だから……!」

 

────ぐ、くぅ……!ちくしょう……よ、よりにもよってコイツに……!いいか!?一度しか言わないからよく聞けよ!?

 

「あ、ああ!」

 

────今度の土曜日、イブキさんを連れて3人で出掛けるぞ!そして少しでも互いの良いところを見つけるんだ!

 

「そ、それはつまり……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「〝デートしろ〟ということか!?風紀委員と私が!?」

 

────誰がテメェなんかとするかぁ!!!これはただの〝仲直り大作戦〟だ!!!

 

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