〝アリウス〟潰すゾ!!!   作:あば茶

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全員ifの記憶持ち&二週目(ただし酒泉君除く)……の続きです、大変お待たせしましたあああああ!


全員ifの記憶持ち&二週目(やっぱり酒泉君除く)

 

 

 

 

────店長店長、これなんです?

 

「ん?ああ、それは偶然拾ったよくわからん奴だ」

 

────よくわからん奴……

 

 

 

とあるジャンク屋にて、1人の少年が部屋の隅に置かれた何かを眺めながら店長に話しかける

 

すると、店長と呼ばれた機械人の男はカチャカチャと何かの機械を弄りながら質問に答えた

 

 

 

「この前直した扇風機あっただろ?あれの修理依頼出した人がミレニアム付近に住んでてな……それを届けた帰り道に拾ったんだ」

 

────ミレニアム……

 

「おん?どうした?気になるのか?酒泉」

 

────……ああいや、そういう訳では……

 

 

 

 

酒泉と呼ばれた少年の目に映っているのは店長が拾ってきたという丸っこい機械

 

彼は前世でその機械の姿を見たことがあった

 

それは〝無名の守護者〟と呼ばれる機械、天童アリスが王女として目覚める切っ掛けの1つだった

 

 

 

────……なんか……色んな事がいつの間にか起きてるな

 

「ん?」

 

────いえ、何でも……っと、そういやぁこの前頼まれてた自転車の修理完了しましたよ、試運転もした後ですし今すぐ持っていける状態ですけど……

 

「そうだな……自転車持ってきたお客さんも〝できるだけ早く直してほしい〟って言ってたし、今日中にでも渡してくるか?」

 

────んじゃあ、早速お客さんに電話してきますんで連絡が取れ次第向かいますねー

 

「おーう頼んだぞー、確かその人の住所ちょっとだけ遠かったしゆっくり帰って来ていいからなー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────チェーンが絡まりやすかったのはここのスプロケットがちょっと削れちゃってたのが原因でしたね。こう、斜めにずれた時にガガガガッ!って

 

「あー……結構昔から使ってた自転車だし無理させすぎたのかな」

 

────とりあえず交換しといたんでチェーンの問題は解決したと思います……あ、それとブレーキの効きが悪かったんでそっちもついでに直しておきました

 

「えっ?そっちもやってくれたのかい?」

 

────これに関しちゃ本当についで程度なんでブレーキ分のお代は結構です

 

「ありがとう……いやぁ、何から何までお世話になっちゃったねぇ……」

 

 

 

カラカラと自転車のペダルを回しながら状態を確認する

 

特にチェーンが絡まる事もなくタイヤも連動して回っている、これなら問題なく乗れるだろう

 

 

 

「長年職場まで自転車通勤を続けてきたからね、本当に助かったよ」

 

────いえいえ、これが俺の仕事ですから……じゃあ、そろそろ

 

「おっと、そうだね……はいどうぞ、これで丁度だよね?」

 

────はい、ありがとうございます

 

 

 

礼を言いながら修理代を頂き、それを財布にしまう

 

玄関先で深く頭を下げながら再び礼を言って去ろうとすると、依頼人さんが〝ちょっと待ってて〟と言って廊下の奥に姿を消す

 

それから数十秒後、依頼人さんがソーダ味らしきアイスを1本持ってきた

 

 

 

────あの、これは……?

 

「ブレーキを直してくれたお礼ってことで……ね?」

 

 

 

ニコニコしながらアイスを手渡してくる依頼人さん

 

仕事中に貰ってもいいのかと悩んだが、その笑みを見ていると折角の善意を無駄にしてもいいのかと考えてしまった

 

 

 

────……ありがとうございます!小腹が空いてたんで助かりました!

 

「溶けない内にねー」

 

 

 

元気よく礼を伝えてからこの場を去ろうとすると依頼人さんが後ろから手を振ってくれた、此方も手を振り返しながらこの後の予定を考える

 

この後は店に戻って、そんで次の修理依頼を確認して……あ、そうだ。ついでに帰る前に何か買ってきてほしいものがないか聞いてみよう

 

 

モモトークを開いて店長に〝只今帰宅中、なんか買うもんあります?〟とメッセージを送る

 

すると店長も偶然スマホを弄ってたのか一瞬で既読が付き、それから数十秒経った後〝洗剤と石鹸〟と返ってきた

 

洗剤と石鹸か……帰り道にコンビニがあるけど折角普段こない所まで来たんだしこの辺りで買い物しよっかな

 

スマホでマップを開いて一番近くのスーパーを検索するとトリニティ自治区のマップが画面に表示された

よし……店長もゆっくり帰ってこいって言ってたし、トリニティに寄ってから帰るか

 

それにしても……トリニティか……そういや少し前に〝アリウスの生徒が保護されたー〟みたいなニュースが流れていたな

 

他にも連邦生徒会長が失踪してなかったり先生が〝2人〟もキヴォトスにやってきたってニュースが流れたり………ここまで流れが違うなんて、もしかしたらこの世界は原作よりも圧倒的に平和なのかもなー

 

まあ、何事も平和が一番だな、うん

 

こんなに平和だと色彩の襲来イベントとか来ない可能性だってあるし、もしそうなら俺はこのまま店長とのんびり過ごすとしますかね

 

折角の新しい人生なんだ、今度こそ寿命が尽きるその日まで生き続けるぞ

 

銃撃戦とは縁の無い普通の学校で普通に勉強して、普通に運動して、普通に文化祭とか体育祭とか経験して……

 

……そんで、まあ?そんな感じで青春してる内に?恋人とかも出来ちゃったり?それで店長に紹介して?孫の顔なんかも……ふへ、ふへへへへ……

 

 

 

「なんか笑ってる……」

 

「ふ、不審者……?」

 

 

なんてニヤニヤしてたらすれ違い様にトリニティの制服を着た生徒達にドン引きされた、お願いします通報しないでください

 

急に恥ずかしくなってそっぽを向いていると、偶然視線の先のバス停にバスが到着した……そうだ!折角だしバスに乗って色んな場所でも見渡していこうかな、トリニティとか殆ど来た事ないし丁度良い機会だろ

 

いつかスイーツ巡りする時とかお世話になるかもしれないしその時の為の予行演習って事で

 

 

「わっ……お、男の子?」

 

「珍しいね……」

 

 

プシューッと扉が開くと同時にバスの中に入ると、小声で会話しながら俺に視線を向けてくる少女達が視界に映った

 

俺はこの辺り……ってより現在の居住区から離れた事なんてあまりないし珍しがられるのも可笑しい話ではないな

 

通っている学校だってゲヘナとかトリニティみたいな有名な場所じゃないし、人間の生徒以外も通っているこじんまりとした学校だしなぁ

 

 

「……ん?あれって────嘘」

 

 

まあ、別にデカい学校に通えば必ず幸せになれるという訳でもない。俺は今通ってる学校で十分……いや、それ以上に満足しているからな

 

友達と遊んだり勉強したりエロ本交換したりと楽しくやらせてもらってる

 

 

「酒泉……本当に酒泉なの……!?」

 

 

いや、最後のは余計だったな……うん……

 

我が半身(主に下の方)の相棒であるエ駄死本の事を頭の片隅に追いやりながらワイヤレスイヤホンを耳につける

 

それと同時にバスの扉が閉まり、グワンと発進時の揺れが身体に伝ってきた

 

さて、このまま適当な音楽でも聞きながらバスからの風景でも眺めてますかね……

 

 

「ねえ!待ちなさいよ!あんた、今まで何処に隠れてたのよ!?」

 

曲の内容は当然特撮ソング、前世で言う仮○ライダーポジションの番組の曲だ

 

なんだかんだこの世界でもハマれる作品が出来たのは良かったな……

 

 

「みんな酒泉のことを探してたのよ!?ツルギ委員長もハスミ先輩も!イチカ先輩もマシロも!それに私だって!」

 

そういや特撮で思い出したけど、この世界だとカイテンロボとか生で見られる可能性があるんだよな………あ、でも登場する時は大抵カイテンジャーが悪事とかやらかした時になるのか

 

そう考えるとちょっと複雑だな……それ以外だと最終編で登場するけど、それってつまりキヴォトスが色彩に目をつけられたって事になっちゃうし……

 

 

「だ、駄目……はぁ……はぁ……バスが……遠くに……!」

 

 

うーん、でもなぁ……やっぱ見たいよなぁ……巨大ロボットが戦ってるところ……

 

「待ってよ……置いてかないでよ……!も、もう何処にもいかないって約束したのに……!」

 

 

 

……まあ、カイテンロボが使われない=キヴォトスが平和だって事だし見れなくても我慢しようか

 

 

 

 

 

 

 

──────────

 

────────

 

──────

 

 

 

 

 

 

「ご乗車ありがとうございまーす」

 

────運転ありがとうございましたー

 

 

 

 

電子マネーで乗車賃を支払ってから外に出ると、トリニティの駅の近くに到着した

 

はぇー、ここがトリニティか……殆ど自分が住んでる地区から出たことないし初めて来たなー

 

なんか色んなスイーツ店とかあるっぽいし、洗剤とか石鹸とか買うついでに店長の分も買ってから帰ろっかなー

 

 

「あの人……男の子……」

 

「噂……本当に……」

 

 

なんかまたひそひそと声が聞こえてきた、この人達も人間の男子生徒が珍しいから気になってるのだろうか

 

……てか、逆に今までよく存在が広まらなかったな、俺

 

確かにさっき殆ど自分が住んでる地区から出たことがないって言ったけど、にしても不自然すぎるくらい存在感無かったな……

 

まあ、下手にジロジロ見られるくらいならそっちの方が良いけど────待てよ?こういうのは逆に存在を知られた方が店の宣伝とかになるのでは?そうしてガッポガッポ儲けたら店長さんももっと良い店に改築出来たりするし……

 

……っと、そうだ考え事に集中しすぎて本来の目的を忘れるところだった。俺は買い物をする為にここに来たんだった

 

さーて、スーパースーパーっと……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……やっと見つけたよ、酒泉君」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────

 

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──────

 

 

 

 

 

なんやここめっちゃ安いやんけ!!?

 

石鹸は普段通ってる場所より38円、洗剤は58円も安いぞ!?しかも普段使ってるのと同じタイプのが!

 

えらいこっちゃ……戦争や……こんなん奪い合いになるに決まっとるやろが……!……って思ったけど、意外と誰も取らない

 

ここら辺に住んでる人にとっては当たり前の値段だからだろうか……まあ、その分俺が得できるから構わないけどな!3つぐらいまとめ買いしちゃおっと!

 

 

『───えー!只今、魚介コーナーの全商品半額となっておりまーす!本日の夕飯にお悩みの方は是非お立ち寄りくださーい!』

 

 

うっきうきで買い物かごに商品を入れてると更に吉報が舞い込んできた、もしかしたら今日は人生で一番幸せな日なのかもしれない

 

せっかくだし今日は魚料理にでもしようかしら……白身魚とかあれば嬉しいな

 

他のお客さん達よりも先に魚介コーナーにたどり着こうと案内を見ながら人にぶつからない程度の早さで歩く

 

その際にも肉コーナーの所に30%引きされてる商品があったりと色々気になる物が目に付いた……が、今は魚が優先だ

 

 

 

「ふーん?今日はお魚にするんだ?……自炊スキルの方は衰えてないのかな?」

 

────別にそんな特別でもないですけどね、人並みにできる程度……ん?

 

 

 

隣から女性の声が聞こえてきたからそれに答える

 

でも、冷静に考えたら俺は1人でここに来た訳だから誰かに話しかけられる筈がない

 

じゃあ誰がこんな親しそうに話しかけてきたんだ?

 

 

 

 

 

「やっほー☆久しぶり!酒泉君!」

 

 

 

 

そう思って隣を見ると、そこには前世プレイしてたブルアカの総力戦でめちゃくちゃお世話になった少女がいた

 

 

 

「もう、今まで何処に居たの?こっちは必死に探していたのに……まさかこんな所で呆気なく見つけちゃうなんて」

 

────ぇ……あ……あの……

 

「それにしても私の尾行に全く気づかないなんて……ちょっと見ない内に実力が衰えちゃったんじゃないの?」

 

────……み、聖園……ミカ……?

 

「どうしてそんな他人行儀なの?いつもみたいに聖園さん……ううん!〝今回〟ぐらいは仕方ないから名前で呼んでも許してあげるよ?」

 

 

 

目の前の少女は友達と話しているかの様に俺に接してくる

 

楽しそうに、笑顔で、俺のことを知っている様に……でも

 

 

 

────……い、いや……名前で呼べって言われても……初対面なのにそんないきなり……

 

「……え?」

 

 

 

そう、俺達は初対面……いや、それはちょっと違うな

 

俺は〝原作知識〟で一方的に聖園ミカのことを知っているが、少なくとも向こうは俺のことは知らないはずだ

 

だからここまで親しく接される覚えなんてない……はずだけど……

 

 

 

「……あはははっ!もう、冗談キツイよ?酒泉君……」

 

────いや、冗談じゃなくてマジで知らないっす。本当に誰ですか?

 

「……い、いつもの煽り?こんな時までやめてよ……」

 

 

 

その〝いつもの煽り〟も全く見に覚えがない

 

最初は俺のことを別の誰かだと勘違いしてるのかと思ってたが、この人はハッキリと〝酒泉君〟と名前で呼んでいた

 

……謎が深まったな

 

 

 

「ほ……本当は私のこと覚えてるんでしょ?そうだよね?」

 

────んなこと言われても……

 

「だ、だって!ナギちゃんとセイアちゃんは覚えてたもん!それにミネ団長も歌住サクラコも、ウイちゃんやコハルちゃん達だって……!」

 

────はぁ……

 

「サ、サオリ達もそうだよ!アリウスの皆だって覚えてたんだよ!?それなのに酒泉君だけ記憶が無いなんて……そんなこと……!」

 

 

 

アリウス……アリウススクワッドか?彼女達が何の為に俺を……?

 

トリニティに保護された後だし、俺としては調印式での事件を起こさなければ別にどうでもよかったが……場合によってはじっくりと話を聞かないといけないかもしれないな

 

 

「……本当に?本当に私のこと覚えてないの……?」

 

────本当ですって……そもそも今日会ったばっかでしょう?俺達は……

 

「……そん……な……」

 

 

 

聖園ミカは酷く絶望した様な表情で力なく俯く

 

そんなにショックを受けられるとこっちも罪悪感が湧いてくるが……でも俺は事実を述べているだけだ、ここで嘘を吐いて後々面倒な事態になるよりはいいだろう

 

 

 

「……そっか、そうなんだ……それじゃあ仕方ないよね……」

 

────……?あの……?

 

「……うん!決めた!そうしよう!」

 

 

 

聖園ミカは落ち込んでいたかと思えば突然元気になった……が、何故かその元気な様子に寒気が走る

 

 

「酒泉君!私と一緒にトリニティで暮らそっか!」

 

────は?

 

 

 

かと思えば、とんでもない爆弾発言をかましてきた

 

 

 

「覚えてないならゼロから全部教えてあげればいいんだよ!そしたらきっとまた〝前〟と同じ酒泉君に戻ってくれるじゃんね!」

 

────前?何の話……いや、それより勝手にそんなこと決められても……

 

「酒泉君と喧嘩した事も酒泉君に水着を買ってもらった事も酒泉君に偽装彼氏になってもらった事も!全部全部教えてあげるからね!」

 

 

 

バッドエンドスチルで見たような恐ろしい笑みを浮かべながら近づいてくる聖園ミカ

 

彼女は俺の手を取ると力強く握って────ってえ!?

 

 

 

────いてぇなオイ!?離せよ!?

 

「あっ……」

 

────そんなゴリラみてぇな力で握るな!ちょっとは加減しろよ!

 

「………っ」

 

 

 

さっきから繰り返される自分勝手すぎる言動と自分勝手すぎる行動につい怒りを抱いてしまい、口悪く罵りながら聖園ミカの手を振り払ってしまう

 

流石に初対面で言い過ぎたかと思い、咄嗟に謝罪の言葉を口にしようとする

 

 

 

────……あ、その……す、すいません……今のはちょっと言い過ぎ「それだよ、酒泉君」………え?

 

「それだよ酒泉君!!」

 

 

しかし、聖園ミカは何故か満面の笑みで喜んでいた

 

 

 

「酒泉君はこうでなくちゃ!堂々と正面から悪態ついてくるのが酒泉君だもんね!」

 

────は、はぁ!?アンタ、何言って……!

 

「やっぱり一緒暮らそうよ!それで私といっぱいお喋りしよ!?」

 

────や、やだよ!何でそんな事しなくちゃいけないんだよ!

 

「絶対に前の酒泉君に戻してあげるからね!すぐに人を煽って、簡単に喧嘩を買って、でも最後には優しく接してくれる!私が大嫌いで大好きな!そんな酒泉君に!」

 

 

 

周りの客の目などお構い無しに迫り寄ってくる聖園ミカ、そんな彼女に危機感を抱いた俺は買い物かごを店内に置いてから全力で逃走を始めた

 

店員さんごめん!買い物かご放置したり店の中走ったり色々やらかしちゃってるけど!後日謝りに行くから!

 

心の中で深く詫びながら必死に走っていると店の出口にたどり着いた……よし!このまま店を出たら駅まで向かうぞ!それで何とかやり過ごすんだ!

 

 

 

「あ、あの!止まってください!」

 

「その場から動かないで!」

 

 

 

なんて考えてたら何故か出口の前に正実の生徒とシスターフッドの生徒が立ちはだかった

 

と゛う゛し゛て゛た゛よ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!゛!゛?゛

 

 

「えっ!?ど、どうしてシスターフッドがここに!?」

 

「わ、私達はサクラコ様から命じられて……と、とにかくここは私達にお任せを!」

 

「わ、私達だってツルギ先輩やハスミ先輩から保護するように言われてて……!」

 

 

両組織の生徒達が言い争っているせいで完全に出口が封鎖されている

 

仕方ない、ここは入り口の方から抜け出して……「酒泉君の身体スペックで逃げ切れると思ったのかな?」駄目だ前門の天使、後門のゴリラだ

 

 

「そんなに怖がらなくても酷い事はしないからさ、だから……ね?一緒に行こ?」

 

 

本人は優しく笑みを浮かべているつもりだろうが、明らかに目がギラついている

 

俺の人生もここまでか……ごめん店長、帰れそうにないや

 

心の中で念仏を唱えながら自身の運命を呪い、そして────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴女には渡さない」

 

「……えっ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如、身体に浮遊感を覚えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

連邦生徒会の会議室、そこに2人の生徒と2人の〝先生〟が座っていた

 

 

 

「……初めまして、酒泉の〝先生〟です」

 

「……奇遇ですね、実は私も酒泉の〝先生〟なんですよ」

 

 

 

青に近い髪色の〝女性〟がにっこりと含みを込めた笑みで挨拶すると、眼鏡をかけた〝男性〟がこちらも負けじと圧を感じさせるような笑みで返事をする

 

そのやり取りを2人の生徒────連邦生徒会長と七神リンが心配そうに見守っている

 

 

 

「……会長、どうしてここに先生が2人も?」

 

「え、えっと……実は、2人とも〝先生〟としての記憶があるらしくて……よく分からないから2人とも招待しちゃった」

 

「〝しちゃった〟じゃありません、事態がややこしくなってるじゃないですか」

 

「うぅ……どうしようリンちゃん……」

 

 

 

リンに泣きつく会長だが、そんな2人の横で先生同士のミラーマッチが続く

 

 

 

「酒泉には日頃から良くしてもらっててね?2人でデートした事とかもあるんだー」

 

「へぇーそうなんだ、私はウトナピシュティムを動かす時に酒泉に頼られたけどね……あの1人で突っ走ることで有名な酒泉が、だよ?」

 

「1人で突っ走る?そっちの酒泉もそうだったんだ……まあ?私には〝ずっと支える〟って言ってくれたし?私とはそう簡単に離れないだろうけどね?」

 

「因みに私は酒泉とアトラ・ハシース内で背中を預け合った事があるよ」

 

「因みに私は酒泉におんぶしてもらったことがあるよ」

 

「因みに私は────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……この状況、どうするつもりですか」

 

「ど、どうしよっか……?」

 

 

 

苦笑しながらも先生同士の醜いマウント合戦を眺めるリン、そんな彼女の横で連邦生徒会長がボソッと呟く

 

 

 

「……そうだ、先生達が争ってる隙に私が酒泉君を……」

 

「会長?事態を更にややこしくするおつもりですか?」

 

「冗談!冗談だから!」

 

「はぁ……火種にガソリンを撒く様な真似はしないでください、貴女が抜け駆けしたせいでキヴォトス中で争いが起きたらどう責任を取るつもりですか」

 

「ごめんなさい……因みにリンちゃん?」

 

「はい?」

 

「その抜け駆けって……〝誰〟に対して?」

 

「……彼を慕う生徒達に対してです、決して私のことではありません」

 

「別にリンちゃんの事とは一言も言ってないんだけどなぁ……」

 

「……防衛室長といい会長といい、私と彼の関係を邪推しすぎです。私と彼はただの上司と部下に過ぎませんから────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヤバイよヤバイよ!!!とんでもない事になったよ!!!」

 

 

 

言い訳気味に捲し立てようとするリンだったが、その直後に会議室の扉が勢いよく開かれる

 

そして中にモモカが入ってくるや否や大声で騒ぎ散らかす

 

……そのお陰で先生同士のマウント合戦もリンと連邦生徒会長の腹の探り合いも止まったのだが

 

 

 

「……モモカ、部屋に入る前にノックを────」

 

「それどころじゃないんだって!!これを見てよ!!」

 

 

 

リンの言葉を無視してまで自分の話を優先するモモカ

 

そのまま1台のノートPCを起動すると、とあるデータベースのコピーページを開くと

 

 

 

「これ!このエネルギーの集まり方!見覚えがあるでしょ!?」

 

「そんな……これはまるで……」

 

 

各々がノートPCの前に集まって画面を凝視する

 

……その画面は男の方の先生とリンは直接見た覚えがあった、何故ならそれは────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アトラ・ハシースが来た時と同じ状況の────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「飲み物はコーラでいいかな?」

 

────は、はい……

 

 

 

前世で見た覚えのある空間────アトラ・ハシースの内部、その中央に不似合いな座布団とちゃぶ台がぽつんと置いてある

 

その座布団に座って待っているとデスマスクを着けた男がお皿にスナック菓子とコーラを持って近づいてきた

 

〝どうぞ〟と言いながら手渡してきたが、俺は素直に礼を返せず動揺しながら受け取ることしかできなかった

 

 

「そんな緊張しなくてもいいのに……遠慮せず寛いでね?」

 

 

デスマスク越しでも分かるほど上機嫌な雰囲気を醸し出しながら声を掛けてきた

 

……いや、なんか普通に話してるけどこの人……どう見てもプレナパテスだよなぁ!?

 

 

「うーん、私の顔を見ても分からないってことは……それなら────」

 

 

プレナパテスの周囲が黒く染まったかと思えば、次の瞬間────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こっちの姿なら覚えてるかな?」

 

暗闇の中から青に近い髪色をした女性が姿を現した

 

……は?え?何?プレナパテスって女性だったの?

 

 

「あれ?これも違う?なら……こっちは?」

 

 

 

またプレナパテスが暗闇に包まれる……かと思えば今度は便利屋先生に似た人が現れた

 

 

 

「あれれ?これも見覚えない?……じゃあ、記憶そのものが存在しないのかな?」

 

────えっ!?いや、あの……さっき……女性に……!

 

「ん?もしかしてあの姿の方が好きなの?……はい、これでどう?」

 

 

俺の言葉を聞いて勘違いしたのか、プレナパテスがまたまた女性の姿に戻る

 

……いや、戻るって言い方正しいのか?本来はどの姿が素なんだ?俺的にはプレナパテスはあのデスマスクの姿しか知らないんだけど……

 

 

「どうしたの?何か聞きたそうだけど……」

 

────いや、本当はどの姿なのかなって……

 

「君が望む姿で構わないよ」

 

 

女性の姿のままめっちゃニコニコしながら答えてくれたけど違う、そうじゃない

 

ここまで会話しておきながら何一つ状況が理解できていない、俺を拐った理由も俺を知ってる理由もプレナパテスの正体も

 

少しでも情報を整理しようと必死に思考を巡らせていると、視界の奥から2人の少女が歩いてきた

 

 

「……先生、トリニティの様子見てきたよ」

 

《どうやら全組織を用いてトリニティ内部とその近辺を探っているようです》

 

 

1人は俺を拐った張本人、原作でシロコテラーと呼ばれていた少女……ぶっちゃけあのまま聖園ミカに捕まるよりはこっちの方が安全そうだ

 

もう1人はプレナパテス側のシッテムの箱に存在する〝プラナ〟と呼ばれる少女、アトラ・ハシース内でならこうして直接姿を現す事ができる

 

 

「そっか、2人とも見回りありがとね」

 

 

先生の礼に頷くとシロコテラーとプラナはゆっくりと腰を下ろして座布団に座った

 

………何故か俺の両隣に

 

 

「…………」

 

《…………》

 

 

2人は左右から無表情で俺のことを凝視して……いや、無表情?違うな、よく見たら口元が微かに緩んでいる……本当によく見たらってレベルだけど

 

いや、そんな事よりもどうして俺の両隣を確保しているんだ?もしかして人質?絶対に逃がさない為に?

 

プレナパテスもプレナパテスで相変わらずニコニコしてるし……

 

 

 

────あ、あの……ちょっと近いと思うんですけど……もう少し離れてほしいなーなんて……

 

《否定、家族同士の距離感ならこれが適切です》

 

「うん、だから離れる必要はないよね」

 

────家族!!?

 

 

あまり怒りを買わない様に恐る恐る〝離れてくれ〟と頼むと、予想だにしなかった答えが返ってきた

 

いや!確かにさっきは〝恋人ができるかもー〟みたいな妄想をしてたけどさ!?まさかその段階すっ飛ばしていきなり家族まで行くとは思わないじゃん!?

 

 

 

────あ、あの……俺と貴女は今日会ったばかりだし、それで家族ってのはちょっと話が早すぎるんじゃ……

 

《……やはり覚えていないのですね》

 

「……分かった、じゃあ今日から家族になろ?」

 

────はい!?

 

「じゃあ今日から私は酒泉の……この姿だとお義母さんかな?」

 

────勝手に話を進めないでくれません!?てか、貴女どうやってそんなほいほい性別変えてるんですか!?

 

「多次元解釈って便利だよね」

 

 

 

そんな簡単に答えないでほしい、多次元解釈はオモチャじゃないんだぞぉ!

 

もう何が何やら……逆にここまで来ると頭平成なお祭り映画を観た時の気分並に楽しくなってきたぞ

 

いっそ思考を投げ出してしまおうかと渇いた笑いが出てきたが、そんな俺の服の裾をちょいちょいとシロコテラーが引っ張ってきた

 

そして、それを真似する様にプラナも同じ行動を取る

 

 

 

「……一緒に居てくれないの?約束までしたのに……」

 

《……提案、暫くはこの空間で共に生活を送るのはどうでしょうか。そうすればいずれ記憶が……》

 

「こらこら、2人とも酒泉の意思を無視しないの。彼には彼の生活があるし、それに……今日はこうして会いに来ただけでしょ?」

 

「……むぅ」

 

《しかし……》

 

 

先生に注意されても尚食い下がろうとするシロコテラーとプラナ、俺的にはどうしてここまで好感度が高いのかが理解できない

 

しかも話を聞いてると存在しない〝約束〟まで交わしてるみたいだし……本当に訳分からん

 

 

 

「せっかく〝私達の方の〟ホシノ先輩達に紹介しようと思ったのに……」

 

 

 

あとなんか向こうの世界の展開も原作と違ってアビドス勢が生きてるらしい、それはとても喜ばしい事だけど

 

でも俺の疑問は益々深まるばかりだ、何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故────

 

 

 




おまけ情報

・プレ先とクロコとプラナはセリカ誘拐前に記憶を取り戻しました

・プレ先世界のベアおばのせいで色彩はやってきましたけど気合いで乗り越えました(その時の色彩の影響でクロコの姿とプレ先の姿に変われるようになった、多次元解釈って便利だね!)

・マエストロさん、情報隠蔽をめちゃくちゃ頑張っていた……けど流石に限界がきた
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