〝アリウス〟潰すゾ!!!   作:あば茶

158 / 529
クソボケ、後悔する

 

 

 

「「ごめんなさい!それとありがとうございました!」」

 

「……は?」

 

襲われるのを覚悟した次の瞬間、目にしたのは勢いよく下げられた金髪のツインテ頭とショトカ頭だった

 

恨み言をぶつけられるどころか謝罪と感謝を口にされた俺はただ目の前の状況を整理する事で精一杯だった

 

 

「えっと……言う台詞間違ってないか?〝絶対許さねぇ!〟とか〝お前を殺す(デデン!)〟とか」

 

「で……ででん?」

 

「た、確かに調印式を襲った時は実際に人を殺していてもおかしくない状況だったけど……で、でも今はそんなこと考えてないよ!?」

 

 

慌てて否定する二人を見て演技ではない事を確信したが、恨みを買ってないとなると何故そこから感謝に繋がったのかが分からない

むしろ当時の俺はアリウスの生徒達は全員敵だと思ってたし割と容赦ない戦い方をしていたつもりだが……(具体的には近くに居た奴の髪を引っ張って人間ガードベントしたり)

 

いやまあ、自他共に命が懸かってる戦いではあったのでその事自体は別に反省も後悔もしていないが

 

 

「貴方、アリウススクワッドと一緒に姫の救出に来てたでしょ?あの時はマダムの命令に従って敵を確保する事で精一杯だったけど……でも、今になって考えてみればあそこでマダムが討ち取られた事で私達も自由になれたからさ」

 

「勿論酒泉以外の人達も後から一気に自治区まで雪崩れ込んできたけど……でも、今のアリウスを切り開く切っ掛けになったのは間違いなく貴方だから」

 

「だから、街で見掛けた時〝ちゃんとお礼伝えなきゃな〟って思ったんだけど……」

 

「その……毎回〝話しかけよう〟ってタイミングで緊張しちゃって……」

 

 

成る程、そうして話しかけるタイミングを引き延ばし続けた結果、意図せずストーカーみたいな感じになってしまったと

 

まあ、俺も俺でカイザーの件があって少しだけ警戒心強くしてたしこの二人にだけ非がある訳じゃないだろう

 

 

「とりあえず礼を言いたかったのは分かった……でも〝ごめんなさい〟は何に対してなんだ?」

 

「……全部、かな」

 

「……うん」

 

 

途端に声のトーンを落として俯く二人、顔を伏せようとした際に一瞬だけ見えたその表情は何かを悔いている様だった

 

その雰囲気はまるで、アリウススクワッドの人達が時折纏うそれに似ている様な────

 

 

「その……私達、今すっごく充実してるんだよね。勉強は難しいけど知らない事を知れるのは楽しいし、アリウスだと〝勉強〟には痛みが付き物だったけどここだとそんな事はないし」

 

「アルバイトは覚える事が多くて大変だけど……で、でも自分で稼いだお金でクラスの皆と甘いスイーツを食べに行くのがすっごく楽しくて!」

 

「……アリウスを出なかったら一生体験できなかった事ばかりで」

 

「……でも、私達そんな素敵な事をゲヘナやトリニティの人達から奪おうとしちゃったから」

 

 

後悔を口にしながら視線を落とす二人の姿に、いつか見た錠前さんの姿が重なって見えた

 

いや……いつかじゃない、あの人はいつも後悔していた。会う度に謝罪の言葉を口にされ、その度にこの人達と同じような顔をしていた

 

 

「……謝って済む問題じゃないのは分かってるけどさ、一歩間違えたら取り返しのつかない事にもなっていただろうし」

 

「でも、許されなくてもちゃんと言うべき事は言おうって二人で決めてて……」

 

 

その通り、だから錠前さんは未だに当時の事を引き摺っているし……俺も無責任に〝アンタは何も悪くない〟とは言わない事にしている

 

例えば自身の命が脅かされている状況下での正当防衛等、その様な正当な理由無く人命を奪う行為自体は間違いなく〝悪〟と断言できる、そんな俺の価値観考え方はアリウスと和解した後もずっと変わっていない

 

だからこそ俺は周りの大切な人間を傷付けようとしたアリウスが嫌いだったし、事情を知っている上であの頃の俺は〝どうしてベアトリーチェに抗おうとしないんだ〟という考えが抜け切れなかった

 

 

 

「……ごめん」

 

「「……え?」」

 

 

 

────それが間違っていたんだ、この人達はただ自分の価値観を育む機会や見つめ直す機会が無かっただけだ

 

そもそもベアトリーチェの支配下に居てそんな機会が訪れる筈もなく、だからこそ奴に無理矢理植え付けられたゲヘナやトリニティへの憎悪に疑問を抱く生徒も殆ど現れず、誰も奴の命令が〝良い事〟なのか〝悪い事〟なのか疑問を抱く事もなかった

 

無論、白洲さんの様な例外も存在するが……ともかく大半のアリウス生はベアトリーチェの命令に逆らえなかったんじゃない、逆らうべき事かどうかすら分かっていなかっただけだ

 

最初から最後まで全部全部ぜーんぶベアトリーチェのせいだ、俺はベアトリーチェだけを恨み続けるべきだった

 

なのに、俺はアリウス全体を────ベアトリーチェの被害者であるこの人達まで恨んでしまった

 

 

「ごめん、本当にごめん、辛かったよな、苦しかったよな、気付かなくてごめん」

 

「な、なんで!?なんでそっちが謝ってるの!?」

 

「わ、私達また酷い事しちゃった!?」

 

 

ごめんな、これが本来のアンタらなんだよな

 

悪い事をしたと思ったらちゃんと〝ごめんなさい〟って謝れる、きっとアリウスの生徒は皆そうなんだ

 

でも、ベアトリーチェはそんな本来の優しさを洗脳教育によって歪めやがった……許せねぇ

 

この人達の未来を奪ったあの女も、感情を制御できず怒りの矛先を謝った俺自身も

 

 

「欲しい物があったら何でも言ってくれ、全部買ってやるから。邪魔な物があったら何でも言ってくれ、俺が潰してやるから」

 

「どうしてそんなに泣きそうなの……?」

 

「さ、さぁ……私に聞かれても……」

 

 

既に人生を一度経験している自分こそ感情を制御して彼女達と向き合う努力をしなければいけなかったというのに、俺はそれをせずただ相手を嫌って潰すだけという楽な道を選んでしまった

 

〝空崎さんと先生さえ助ける事ができたらそれでいい〟なんて、全てを知った今でも同じ事が言えるか?折川酒泉、お前はそんな無責任な奴なのか?

 

違うだろ、お前はあの人と約束した筈だ。〝生徒の事は勝手に背負っていく〟って───

 

 

「ごめ───っ?」

 

「えっと……こ、これでいいのかな……?」

 

「分からない……けど、スバル先輩はこうやって慰めてたし……」

 

 

自責の念に駆られ俯いていると突然頭に何かを乗せられる感触がし、直前まで下を向いていた視線が再び持ち上げられる

 

正面を向いた時に目の前にあったのは少女二人分の細腕、彼女達は俺の頭に手を置いて子供をあやすかの様に撫でていた

 

 

「な、何があったのか分からないけどこれで元気出して!」

 

「私達、人に謝らないといけない事はしちゃったけど誰かに謝られる様な事をされた事はないから!」

 

「そ、それって慰めになってるの……?それになんか堂々としてるせいで開き直ってるみたいに見えるような……」

 

「で、でもこっちまで落ち込みながら慰めるのも何か変じゃん!」

 

「それはそうだけど……」

 

 

俺の頭を撫でながらあたふたと慌てふためく二人のアリウス生

 

……アリウススクワッドだけじゃない、この人達もこんな風に感情を出せるんだな

 

あの日、俺が〝血も涙もないベアトリーチェの傀儡〟として適当に散らしていった人達は一人一人が……ただの被害者に過ぎなくて……それを分かっていながら……俺は……俺は……!

 

 

「く、ぐぅ……!」

 

「よしよーし」

 

「いいこいいこ……あ、あれ?なんか余計に苦しんでない?」

 

「も、もしかしたらやり方が悪かったのかも───」

 

「酒泉!!!このバカヤロウ!!!!!」

 

「「!?」」

 

 

両手両膝を地につけ、頭部を全力で地面に打ち付ける

 

すると先程まで俺の頭を撫でていた二人が大人しくなったのを頭上からの気配で何となく察した

 

 

「きっ、急にどうしたの!?」

 

「そ、そんなに私達のなでなで嫌だった!?」

 

「違う、ただちょいと己を罰したくなっただけだ」

 

「だからってそんな奇行を……いや、ちょっとだけ分かるかも」

 

「うん、私達も自分を責めたくなる時があるし……」

 

「ぐううううううっ!?」

 

「クラスの皆が優しくしてくれる度に〝私達はこの人達を傷付けようとしたんだな〟って思うようになって……」

 

「こんな素敵な日常を知っていたら絶対マダムの指示になんか従わなかったのに……もし過去に戻れるなら皆に〝この世界は虚しくなんかない〟って教えてあげられるのに……」

 

 

一気に表情を暗くした二人を見て余計に〝やっちまった感〟が強くなる

 

何をやってるんだ俺は、過去の行いを後悔している人に〝己を罰したい〟とか言ったらそりゃそっち方面の話に切り替わるに決まってるだろ

 

だ、駄目だ……罪悪感で……罪悪感で死ぬぅ!!!

 

 

「……何か……何か奢らせてくれ」

 

「お、奢る?」

 

「何でまた急に……」

 

「俺はアンタらの立場も深く考えず固定観念で一方的に〝悪だ〟と決めつけてきた、その罪滅ぼしをここでさせてくれ」

 

「罪滅ぼしって……別にそっちが悪い事した訳じゃないのに……」

 

「それにあの時の私達は確かに人を殺そうとしてんだから〝悪〟で間違いな「うるせえええええええええっ!!!」───どっちが!?」

 

 

そうだよ!人を殺すのは理由があろうとアウトだってずっと思ってきたよ!でも当たり前の事の様に人の殺し方を毎日毎日ババアに叩きこまれちゃ多少常識が歪んじまうのもしょうがねーだろ!?

 

俺だってゲヘナで生活してたらいつの間にか他人に銃突きつける事に抵抗無くなってたしな!昔は引き金に指掛けるのすら怖がってそのまま反撃食らって痛みで泣き叫んでたのによぉ!今じゃすっかり対問題児用の歩く暴力マシーンだぜ!

 

 

「とにかく謝らせてくれ!頼む!なんかさせろぉ!」

 

「えぇ……?そんな事言われても……」

 

「謝りにきたのに謝られちゃった……ど、どうする?」

 

「どうするって……そうだなぁ……」

 

「……あ!じゃ、じゃあさ!今度お給料入ったら美味しいスイーツ食べたいからオススメのお店教えてよ!」

 

「じゃ、じゃあ私は〝映画〟っていうのが気になるからオススメの作品教えてほしいな!」

 

「任せろ!腹がはち切れるくらい甘いもん食わせてやるし24時間365日ずっとオススメ映画見せ続けてやるからな!!!」

 

「そ、そこまでしてほしいとは言ってないよ!?」

 

「ていうかそれただの拷問じゃない!?」

 

 

俺に出来る事と言えばこの人達の失くした青春を取り戻す事くらい……いや、この二人だけじゃない!いずれは全アリウス生に青春を!

 

青春!青春!青春!みんな青春し続けろ!激しく!もっと激しく!友情と愛情を擦りあって!勉強と遊びを混ぜあって!汗と汗がとろけ合うまで青春し続けろ!

 

いっぱい友達が増えるんだぞ……!いっぱい友達が増えるんだぞ!?お前もその仲間に入れてやるってんだよぉ!!!

 

 

「俺がっ!俺達がっ!アリウス再興委員会だ!」

 

「この人ゲヘナの生徒だよね……?」

 

「う、うん……」

 

 

 

 

 

 

──────────

 

 

 

────────

 

 

 

──────

 

 

 

 

なんて事もあり、俺は今半ば強制的に女の子二人の胃袋に無理矢理食べ物を詰め込もうとする極悪非道の人間と化していた

 

いいかいアリウスの学生さん、スイーツをな、スイーツをいつでも食えるくらいの生活を取り戻しなよ

 

……あ、そういえばこの人達がトリニティの制服着てた理由なんだけど、どうやらこっそり潜入してるとかじゃなくてティーパーティーのサポートを受けた上で身分を隠しながら編入したかららしい

 

どうやら桐藤さんも桐藤で色々アリウスについて思うところがあるらしく……まあ、〝それ俺にバラしていいのか?〟って思ったからあまり深く追及はしなかったけど

 

 

「凄い……パンケーキも生クリームも全部ふわふわしてる!」

 

「美味しい……美味しいよぉ……」

 

「……で、でも……こんなに沢山甘い物食べて怒られたりしないかな……」

 

「あっ……た、確かに───」

 

「誰も怒るわけねえだルルォ!?おらっ!このストロベリーシェイクも飲めっ!」

 

「えっ!?これも飲んでいいの!?」

 

「じゃ、じゃあお言葉に甘えて……いただきます!」

 

 

口の周りに生クリームをくっつたまま一気にストローからシェイクを吸い出す二人を見て自分の中で父性の様な何かが芽生えてくるのを感じた

 

もっと食えガキ共……もっとぱんっぱんに腹を膨らましてやるからな……!

 

そんで次は映画館で塩とキャラメルのWハーフポップコーンとコーラのLサイズぶちこんでやるから覚悟しておけ……!

 

 

「……酒泉は何も頼まないの?」

 

「おじさんはね、君達の笑顔だけでお腹いっぱいなんだ」

 

「なんで急におじさん名乗りだしたの?」

 

「キャラ変わってない?」

 

 

おっといけない、自認おじさんは俺のキャラじゃなかったな……自認おじさん枠は既に存在しているというのに

 

なんてのは置いといてこの人達の笑顔だけで満足出来るというのも事実だったり、自分で作った料理や自分が奢った料理で誰かが笑顔になるのを嬉しく思わん人間などおらん

 

その為なら今月のスイーツ代くらい我慢して……あっ!?だからなのか!?仕事帰りに先輩達がやけに飯奢りたがろうとしてくんのは!

 

ファミレスで飯食ってると次から次に口の中に飯突っ込まれんの、あれ餌付けされてるとかじゃなくてそういう理由があったのか!

 

長年の謎ではないが入学当初からの謎が今解け───もごっ

 

 

「どう?美味しい?」

 

「んぐっ……美味い、けど……なんで急に───ふもっふ」

 

「こっちもあげる!」

 

 

一人で勝手に納得していると突如口の中にハチミツ掛けのチュロスをぶっ込まれ、それを食い終えると今度はふわっふわのパンケーキを口にぶっ込まれた

 

口内というステージで甘味というアイドルが踊り、一曲歌い終えればまた新たなアイドルが舌で踊り跳ねる。終わる事のないアンコール、これぞまさに甘味のライブ───じゃなくて

 

 

「ど、どうした?もしかしてもう腹いっぱいなのか?」

 

「え?いや、そうじゃないけど……でも皆で食べた方が美味しくならない?」

 

「味気無いクラッカーも何故か皆で食べるとちょっとだけ美味しく感じたよね」

 

「何の調味料も掛けてないのに不思議だったよね」

 

「結局今も理由は分かってないけどねー」

 

 

なんだ、この暖かい人達は……これが人の心の光だというのか?

 

駄目だ、なんていうかこう、凄く胸が痛くなってきたぞ。具体的には今すぐ過去に戻って俺がぶん殴ったりゼロ距離で射撃食らわせたり髪掴んでガードベントにしたアリウス生全員に土下座して思いっきり抱き締めてあげたくなってきた

 

これが歪んだ情操教育を受けなかった本来のアリウスの姿なのか、これ潰そうとした奴が居るってマジ?節穴か?眼ぇ悪そう

 

 

「……ねえ、大丈夫?」

 

「……え?」

 

「いや、さっきから顔色悪そうにしてるから……」

 

 

笑顔でスイーツを頬張る姿から一転、心配そうにじっと見つめてくる二人

 

俺がただの〝敵エネミー〟として認識していた人達は、マスク越しではこんなにも表情豊かな人達だった

 

 

「……ちょっと仕事の疲れが出てきただけだよ」

 

「それなら私達構ってないで休んだ方がいいんじゃ……」

 

「いいから食っとけ、ガキは大人の顔色伺ってないで甘えてりゃいいんだよ」

 

「ガキじゃないもん!」

 

「そっちだって子供の癖に!」

 

 

精神年齢は未だ高校一年レベルだけど、生きてきた年月だけで言えば三十越えてるしちょっとくらい大人びても許される筈だ

 

……あれ?もしかして俺って本当の意味で〝こどおじ〟なのでは……止そう、これ以上深く考えて傷を負いたくはない

 

 

 

 

 

──────────

 

 

 

────────

 

 

 

──────

 

 

 

 

 

「モニターすっごく大きかったね!」

 

「映画館のチュロスもお店のに負けないくらい美味しかった!」

 

 

キャーキャーとはしゃぎながら映画の感想というより映画館その物の感想を言い合う二人を見てこれまた父性的な何かが芽生えてきそうになる

 

なあ、今からでもこの人達ベアトリーチェじゃなくて俺が育てた事にならん?……ならんかぁ

 

 

「映画も派手で面白かったよね!」

 

「訓練でもないのにあんなに沢山火薬を使えるなんて……アリウスの外は進んでるなぁ」

 

「主人公っぽい人がいきなりテロリストになっちゃった時は驚いたけど……皆信じてくれてたね!」

 

「テロリストという言葉は好きじゃない、反政府勢力と発言を」

 

「あっ!それ悪い人が言ってた台詞!」

 

「ふふん」

 

「……」

 

 

どうやら映画館の内装だけでなく映画自体も楽しんでくれていたみたいで、早速ドヤ顔で劇中の台詞を使いこなしながら楽しそうに会話している

 

しかし途中、急に二人の表情に翳りが見えたかと思えば、互いに同じ事を考えているかの様に二人揃ってオドオドとし始めた

 

 

「ね、ねえ……私達本当のテロリストな訳だけどさ……私達も周りから信頼してもらえるような生徒になれるかな……?」

 

「ど、どうだろう……今は身分を隠してるから皆良くしてくれてるけど、でも……」

 

「…………大丈夫だって、きっと仲良くなれるよ」

 

「わぷっ!?」

 

「ふえっ!?」

 

 

さっき撫でてもらった御返しとばかりに二人の頭に手を置いて強引にわしゃわしゃすると、二人の薄暗い表情は一瞬で驚愕に染まった

 

 

「映画の主人公だって言ってたろ?〝夢は現実を越える〟って……ゲヘナ生の俺とアリウス生のアンタらが友達になれたんだ、きっとトリニティとアリウスだって仲良くなれるさ」

 

「……とも、だち?」

 

「……私達と酒泉が?」

 

「なんだ、俺はてっきり一緒に飯食って映画まで観たんだからとっくに友達になってるもんだとばかり……それとも嫌だったか?」

 

「う、ううん!そんな事ない!」

 

「嬉しい!嬉しいよ!」

 

意地悪く笑いながら訊ねてみたら二人は首を横に振って全力で否定してくれた

 

よかった、これで〝嫌だ〟って返されたら十年は寝込んで高校留年するところだった

 

 

「や、やったやった!ゲヘナのお友達だ!」

 

「え、えとえと……じゃあ、まずはモモトーク交換とそれから……えっと……と、友達って何するんだっけ!?」

 

「た、確かこう……お互いに拳を叩きながら〝びしばしぐっぐ〟するってネットで見たような……」

 

「び、びしばしぐっぐ?何それ?」

 

ワタワタしながら〝友達〟について学ぼうとする二人、彼女達のどこがテロリストだというのか

 

それに本物のテロリストというのは他人の敷地で勝手に温泉掘り当てようとしたり他人の店を勝手に爆破したりブラックマーケットで散々暴れ散らかして風紀委員に眼をつけられるような真似をする連中の事を……はっ!いかんいかん、これ以上奴等の面を浮かべていると胃が痛くなってしまう

 

あんな連中の事より今はこの人達に助け船を出してあげないとな

 

 

「二人とも、友達ってのは〝何かしなくちゃいけない〟とかそういう義務感の下で生み出される様な関係性じゃない。ただ何となく遊びたくなったら何となくで遊びに誘ってみたり、何となく一緒に帰りたくなったら何となく並んで帰ってみるとか、そんな大雑把なもんでいいんだ」

 

「そ、そうなんだ……」

 

「私達、友達っていうのがなんなのかあまり知らなくて……」

 

「……あれ?ていうか二人ともクラスの連中と一緒にスイーツ食べに行ったりしてたんだろ?だったらそいつらもアンタらの事とっくに友達だと思ってんじゃねえの?」

 

「え?そ、そうなの……かな?」

 

「い、言われてみれば……特に帰る約束とかしてないのにいつも流れで一緒に帰ってたような……」

 

なんだ、心配するまでもなく全然トリニティで上手くやっていけてんじゃん

 

ゲヘナも野蛮人ワイルズばかりではないように、トリニティだって陰湿な奴等ばかりじゃないんだ、過剰に心配しすぎたな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

「───よし、これで交換完了っと……んじゃ、ゲヘナ生の友達第1号は俺って事でこれからよろしくな」

 

「う、うん!」

 

「よろしく!……ねえ、酒泉」

 

「おん?」

 

「今日のお礼、絶対にするから!」

 

「わ、私も!今度は私がトリニティの美味しいスイーツ御馳走してあげる!」

 

「……おう!楽しみに待ってるわ!」

 

 

新たに縁を結んだばかりの友達からの御厚意を無下にするのもどうかと思ってここは素直に頷いておく、遠慮しすぎるのも良くない事だ

 

いずれはアリウスの制服を堂々と太陽の下で纏える様になった彼女達と買い物を、トリニティの制服姿で帰宅する二人の背中を見送りながらそう願った

 

 

「……さて、俺も俺の成すべき事を」

 

なんてカッコつけながら軽くなった財布を覗き込む

 

紙幣は千円札が一枚、小銭は五百円が一枚、百円が二枚、五円が一枚で一円が四枚

 

 

「おお」

 

 

おおじゃないが、流石にカッコつけすぎだぞお前

 

財布の中には一万と五千円程入っていた筈だが、それらは一瞬にして溶けてしまったらしい……まあ、友達の笑顔を見られるなら安いもんだな

 

さて、今月はどうするべきか……失ったのはあくまでスイーツ代であって生活費はちゃんと銀行に残してある、連邦生徒会から振り込まれてるシロコさん達の分の生活費に手を付けるつもりだって当然無い

 

つまり今月はスイーツさえ我慢すれば俺だけもやし生活する必要も無くなる。そう、スイーツを……我慢……すれば……

 

 

「論外」

 

 

財布をしまい、スマホで使い慣れた仕事探しアプリを起動する

 

検索条件欄に〝単発〟と入力してから募集一覧を素早くチェックしていくと、途中で〝戦車清掃〟の目に止まりそのページを開いた

 

何々?戦車十台分の清掃……ふぅん、つまり〝戦車を洗車する〟という事か

 

……7時~16時まで、日給は14000円か……悪くないな

 

いや、でもそれならこっちの〝流れてくる薬莢に異常が無いか確認するだけの簡単なお仕事です!〟の方が俺的には楽そうだな、時間も9時~16時でこっちの方が短いし……あ、でもこっちは日給13000円か

 

……お?長射程武器のテスター?これ良さそうじゃね?事前面接有りで一人しか採用しないっぽいけど……でも拘束時間5時間で日給30000はかなりの────

 

 

「あ、あのっ!!!」

 

「どわあっ!?」

 

「あ、ごっ……ごごごごごごめんなさい!」

 

 

邪魔にならぬようベンチで座りながらスマホをポチポチしていると、突然の大声に身体が反応して危うくスマホを落としそうになってしまった

 

いや、それよりも今の声どこかで聞いたような……もしかして知り合いだったり───

 

 

「……あれ?」

 

「あっ……そ、その……私のこと、覚えてくれてたりは……し、してない……ですよね……」

 

「……立木さん?」

 

「!そ、そうです!立木マイアです!」

 

彼女とは以前会った時に少し話をしただけなので声を聞いても一瞬で思い出せた訳ではないのだが、それでも出会いが出会いなだけに少し考え込むだけで自然と名前が浮かんでくるくらいには自分の中で印象的だった

 

 

「おお、久しぶりだな立木さん!元気して……いや、相変わらず大変そうだな?」

 

「うぅ……わ、分かります……?」

 

 

見るからにくたくたな様子の立木さん、頬や手の甲にうっすらと土汚れの跡が見られる事から仕事帰りと予想してみる

 

もしやあの後、故郷に帰る事なく都会の荒波に揉まれながらも戦い続けていたのだろうか

 

 

「……その、突然お声がけしてすみません。本当はモモトークで予定を聞いてから会いに行こうと思っていたんですけど……そ、そしたら丁度タイミングよく本人を見掛けたからつい……」

 

「……丁度?」

 

 

偶々見掛けたから声を掛けただけ……とかではなく、どうやら俺に用があったらしい

 

もしやこの間の〝仕事を紹介してくれそうな人を紹介する〟という話の続きだろうか……?

 

 

「あ、あの……ところで酒泉さん、先程トリニティの生徒の方と楽しそうにお話していましたが……あの方達は……」

 

「ん?ああ、あの人達は俺の友達……つっても今日なったばかりだけどな」

 

「……お友達、ですか」

 

「……どうした?何か気になる事でもあるのか?」

 

「あっ……い、いえ!人混みの中でも特にはしゃいでいたので目立ってたなぁって……」

 

「あー……それは……」

 

 

……立木さんにアリウスの話するの、流石に不味いよな?

 

 

「あー、なんつーか……あの二人も立木さんみたいに最近田舎からこっちにやって来たばっかなんだよ、だから映画館とかに来るのも初めてらしくてさ」

 

「…………本人達がそう言ってたんですか?」

 

「あ、ああ……そうだけど」

 

「……そ、そう……ですか」

 

 

適当にそれらしい言い訳を述べると、立木さんは何故か言葉を詰まらせながらさっきの二人が帰った方角をじーっと見つめていた

 

その瞳にはどこか羨望の様な憧れの様な、なんとなくだがそんな感情が込められている様な気がした

 

 

「あっ……と、それで?さっきの口ぶりからすると俺に用があるみたいだったけど」

 

「はっ!そ、そうでした!実は、酒泉さんにお渡ししたい物がありまして……」

 

 

焦りながらぱんぱんに膨らんだ巾着袋を漁る立木さん、中にはどこかの会社の作業服らしき物がぎゅうぎゅうに詰め込まれていた

 

その中からくしゃくしゃの封筒を見つけ出した立木さんは〝あった!〟と嬉しそうに微笑み、そして───

 

 

「その、こんな状態で申し訳ないんですけど……で、でもっ!頑張って集めてきたのでどうか───」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───受け取ってくださいっ!!」

 

 

緊張と不安を帯びた声色で、且つ上擦った大きな声で、映画館前という大勢の人間が集まる空間で

 

頭を下げながら万札が五枚入った封筒を俺に渡そうとしてきた、やめてね

 

 

 

 





友達「資格取りました!」
友達「昇進しました!」
友達「彼女出来ました!」

俺「ブルアカのメインストーリー更新頻度が早くてさぁ!サイコザクの下方がさぁ!ドギ逆の採用率がさぁ!」

この差よ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。