理性川酒泉「なぜ味濃いめのニンニクマシマシ豚骨醤油ラーメンなんてものを胃袋に落とす!?これでは善玉菌の冬が来るぞ!?」
本能川酒泉「奴等は腸内環境を整える事しか考えていない!だから抹殺すると宣言した!」
理性「感情が宿主の体調を無視するなど!」
本能「私、本能川酒泉が酒泉(本体)の欲望を満たそうというのだよ!理性!」
理性「エゴだよそれは!」
本能「食欲がもたん時が来ているのだ!」
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「豚骨醤油うめぇ」
XX年、本能川酒泉が胃袋に対し宣戦布告
これにより理性率いる胃袋連邦軍とネオ・ジロウの戦争が勃発した、ちなみに勝敗はネオ・ジロウの圧勝だった
「はぁ~……ニンニクさいこ~……」
濃厚な味とくっさいくっさいスープの香り、そこから更にニンニクの香りで追撃を食らわされる
臭い+臭い=超臭い、一見最悪に見えるこの計算式だがラーメン屋ではこれこそが至高とされている
臭い=美味い、これはこの世の真理である。ニンニクなんて入れれば入れる程良い、その日誰とも会う予定が無ければ特に
「うわっ……女の子にこんな匂い嗅がせる?普通」
「……予定、無かった筈なんだけどなぁ」
鼻を摘まみながら呆れ顔を向けてくるこの女は聖園ミカ、学名はミソノ・ミソノ・ミソノ
いつも通りスイーツの気配に釣られてのこのこトリニティにやってきた俺は、そこでお嬢様校の雰囲気とは削ぐわぬ漢らしすぎる雰囲気のラーメン屋を見つけ、興味本意でそこに寄る事にした
どんなラーメンが出てくるのかと期待に胸を膨らませながら待ち時間を過ごしていると、ラーメン屋を横切ろうとしていたであろうこのゴリラと窓越しに目が合ってしまい、結果面倒な女に絡まれてしまった
「くっさ」
「ハート付けて言ってみてくれません?」
「はあ?……くっさ♡」
「うーん……やっぱアンタに言われてもムカつくだけだな」
「急になんなの?」
一部の者達にはそういう需要があるらしいので試しに聖園さんにお願いしてみたが……駄目だ、俺にとっちゃただムカつく悪口を言われただけだった、喜びも興奮も一切感じない
少しでもストレスを軽減させる為に思いついた苦肉の策も通用せず、か………仕方ない、ここは大人しく悪口を受け入れながら食事を進めるとしよう
「いっただっきまーす」
「あーやだやだ、ただでさえ野蛮人臭い酒泉君がニンニクの臭いまで纏っちゃうなんて」
うーむ、豚骨醤油特有の濃厚なスープに漢らしい太麺が合わさり最強に見える、ていうか実際最強
スープに浸りすぎてびっちょびちょになっているほうれん草やシャキシャキと噛み締める度に染み込んでいた濃厚スープが溢れ出すメンマ等、全てがこってりに支配されている
「ぷはぁ……」
「息臭っ」
なんで醤油豚骨のスープってこんなに美味いんだろうな、醤油と豚骨だからか?美味いと美味いを合わせれば美味いになるという当然の計算式だからか?
俺は最初に豚骨醤油なんて物を作り出した人にノーベル平和賞を与えたい、人間なんて油っこいもん食って口の中臭くしてりゃそれだけで幸せに生きられんのよ
「うまうま」
「酒泉君ってさー、女の子とのデート前にニンニクとか納豆食べちゃうタイプだよねー……ぷぷっ」
普通の醤油スープと違って豚骨醤油スープはどろどろに濁り切った色をしてるというのに、見てるだけでこんなにも食欲をそそられるなんて不思議なもんだな
お世辞にも綺麗な色とは言えないのに、そこに沈む麺も、葱も、玉子も、ちょっと時間が経って出来上がったスープの膜も、全てが魅力的だ
「いざキスするって時に幻滅されてそのままフラレちゃったり?」
「黙って待ってろブス」
「はっ……はああああああっ!?ブス!?こんな可愛い女の子捕まえといてブス呼ばわりは有り得なくない!?」
「そもそも捕まえた覚えも────」
「お待たせしましたー!こちら味噌ラーメンとご飯大盛でーす!」
「あ、はーい」
「ありがとうございまーす」
聖園さんの叫びを更に上回る声量で女性店員さんが追加注文した分を持ってきた
大盛ご飯は俺が注文した分、味噌ラーメンは聖園さんが注文した分だ
「ほら、聖園さんの分届いたんすから大人しく食っててくださいよ」
「言われなくてもそうしますぅー……ていうか酒泉君、なんでおかずも無いのにご飯だけ頼んでるの?」
「そんなの食べ終わった後スープにぶっこむからに決まってるじゃないすか、そういう聖園さんが頼んだのは……」
味噌ラーメンだけ……ふむ……
「味噌のみk「それ言ったらぶっ飛ばすよ?」……味噌のみか」
「ぶっ飛ばすって言ったよね?」
「だって仕方ないじゃないすか!聖園さんが味噌ラーメンだけ頼むなんて明らかにそれ言われるの求めてたでしょ!?」
「求めてないんだけど!?勝手に人の名前でダジャレ作らないで作らないでくれる!?」
俺の激オモロ爆笑ギャグ、どうやら味噌のみかさんには受けなかったらしい
明らかにそういう流れだと思ったのに……くそっ!これなら錠前さんに披露すればよかった!
「体が臭くて女の子の悪口も平然と吐いてダジャレもつまらないなんて……酒泉君って男の子として以前に人間として終わってるよね☆」
「悪口に関してはアンタが喧嘩を売ってきたのが原因だしダジャレだってセンスある人なら面白さがしっかり伝わりますぅ!それに臭いだってニンニク食ってるからで────」
反論しようとしたところでふと脳裏に浮かんだ懐かしき記憶
そこでは俺が前世の世界でジャージを着て走っていた
『先輩、こんな所で会うなんて奇遇で───っ』
『おう美咲、奇遇……ん?どうした?』
『……臭いです、先輩』
『そりゃまあ、ランニングしてたし汗臭くもなるだろうけど……』
『それにしても臭すぎます、酷いです、酷すぎます、悪臭です……最っ低』
『そ、そんな言う程か……?』
『駄目です♡これっ♡女の子に嗅がせちゃ駄目なやつですっ♡臭いです♡雄臭すぎますっ♡』
『……マジ?』
……だ、大丈夫だよな?少なくとも前世の後輩以外からは臭いとか言われた事無いし、後輩に言われた時も俺が暑い日にランニングしたから汗かきまくってただけだし
今世だって体臭を指摘された事はないし、距離感の近いクラスメイトのかまちょちゃんにも臭いとか言われた事ないし!きっと大丈夫だ!うん!
「……臭くねぇ!」
「急に本気になるじゃん、そんなに心配なの?」
「女子ばっかの学校で女子に嫌われでもしてみてください、社会的地位と人権の全てを失いますよ」
「大丈夫大丈夫!そうなっても私が構ってあげるから!勿論オモチャとしてだけど☆」
「すみません、俺実は髪が長くて髪色がピンクで腹の中が黒いトリニティの先輩は生理的に受け付けられない体質なんですよね、なので遠慮しときます」
「酒泉君って浦和ハナコに何かされたの?」
「ウトナピシュティム以外で接点無いしなんなら殆ど会話した事すらねーわ、つーか脳味噌ムキムキのピンクゴリラと本当は繊細なピンクフラワーを一緒にすんじゃねえ」
「……酒泉君ってあの子のことそんな詳しかったっけ?」
「…………ただの勘です」
「セイアちゃんみたいなこと言うね」
前世の知識に引っ張られるせいで〝こいつがこの情報知ってんのおかしくね?〟みたいなミスを未だにちょくちょく犯しそうになってしまう
こういうムーブをしていると傍から見れば何故か関わりが無い人の情報まで握ってるストーカー野郎にしか見えないので注意せねば
「……そのセイアちゃんで思い出したんだけどさー、あの子最近水着買ったんだってー」
「水着?へー……海でも行くんですかね」
「うん、皆で行くよー」
「皆?」
「私とナギちゃんも(仕事を中断させて強制的に)一緒に行くからね!」
何故か自慢気に語るその様子に困惑しつつも、同時にティーパーティー三人が普通の女子高生らしい関係性で普通の女子高生らしい遊びをしている事実になんとなく嬉しさを覚える
エデン条約のゴタゴタからある程度時間は経ったが、三人の関係がすっかり元通りになっているのはとても喜ばしい……なんて、後方理解者面する権利なんか部外者の俺には無いか
「海だよ海!泳ぎにビーチバレー!スイカ割りにバーベキュー!」
「おお」
「セイアちゃんなんてはりきり過ぎて〝私が車を運転しよう〟なんて言い出してさー、本当に大丈夫なの?って感じ!」
「……おお」
「きっと……ううん!絶対楽しいだろうなー」
海に遊びに行くなんて夏の定番行事みたいなものだが、定番であるという事はつまり毎年定番になるほど安定して楽しめる行事だという事
人生二週目の俺ですら海に行くって聞くと心踊るしな……まあ、これは単に俺が二回分の学生経験を得ても尚ガキすぎるだけかもしれんが
「あーあ……私達は青空の下キャッキャウフフと海辺で追いかけっこしながら皆で青春を謳歌するのになー、酒泉君は同じ青空の下に居てもゲヘナの不良達としか追いかけっこできないなんて可哀想だなー」
「……」
「酒泉君が緊急要請に応じて急いで栄養バーをお腹の中に収めている時、私達は皆で楽しくバーベキューしてお肉とかじっくり焼いてるんだろうなー」
「…………」
「……私、水着二着持っていくつもりなんだよねー。一つは酒泉君が買ってくれたやつで、もう一つは最近買った白いやつ。どっちも可愛いだろうなー、セクシーミカちゃんの水着が拝める機会なんて滅多にないだろうなー」
俺が想像しやすいようにか、わざとらしく声を張りながら海で遊ぶ自分達の姿を語る性悪ゴリラ
しかし実際羨ましくなってしまったのでここは素直に負けを認めざるを得ない……いいな……あれ(休暇)欲しいな……
「……これは独り言なんだけどさー……私、あと一人誰か誘おうと思ってるんだよねー。セイアちゃんも〝人数は多い方が盛り上がる〟って賛同してくれたし?ナギちゃんも多分許してくれるだろうし」
「……海」
「個人的には料理できる人を連れて行きたいんだよねー、バーベキューとかやるわけだし?手際が良くて自炊が得意な人とか欲しいよねー」
「……行く」
「……え?今、なんて?」
「行くか、海!」
聖園さんの話を聞けば聞く程羨ましくなってしまった
こちとら年中働きっぱなしの風紀委員やぞ!他のヤンキー共が何も遠慮せず楽しんでる中どうして俺達が働かにゃならんのだ!
俺だって海行きてぇよ!バーベキューしたりビーチバレーしたりスイカ割ったりそのスイカ食ったりしてえよ!ナンパだって……あ、それはいいや、そもそも女の子からの告白を断っておきながらどの面下げてって感じだし
だから泳ぎを満喫……もいいや、傷痕だらけの背中見せて場の空気盛り下げたくないし……皆から離れて一人で泳ごう、それかパーカーでも羽織ってレジャーシートの隅っこで読書でもしてよう
「ほ、本当!?」
「ああ!」
「や、やった───じゃなくて!ふ、ふーん?酒泉君も海行きたかったんだー?それじゃあ珍しく素直な酒泉君に免じて特別に連れて行って……」
「よし!まずは空崎さんに相談だ!」
「あげ……る?」
まずは日程の調整!海に行く日を決めてその日までにゲヘナの問題児共を徹底的にボコる!具体的にはトラウマで数日間動けなくなるレベルで!
当面の仕事は万魔殿に任せる!その為にもまずはあのタヌキの弱みを……いや、今回は俺の我儘なんだし弱みを握る方向じゃなくてタヌキのご機嫌を取る方向でいこう
暫くはタヌキの無茶振りに応えつつ煽てる事に専念し、いざというタイミングで限定品プリンを渡す!そして〝イブキさんに渡せば好感度上がりますよ〟と囁いて───
「ちょ……ちょっと待って!もしかして風紀委員長も誘うの?私、さっき〝あと一人誘う〟って言ったはずだけど───」
「ん?そりゃ風紀委員会の皆で海に行くんですから空崎さんだって誘うに決まってるでしょ」
「……え?えっと……私達についてくるんじゃ……?」
「は?なんでそんな話になってるんすか?こっちはこっちで楽しむんすからそっちはそっちで楽しめばいいでしょ」
「……嘘!?まさか気付いてないの!?あれだけアピールしたのに!?」
「さーて、どこの海にしよっかなー」
まだ行けると決まった訳じゃないのに既に頭の中が海の事で一杯になってしまっている
……海に行く為の説得、煽てればなんとかなりそうな羽沼さんより実は責任感が強い仕事人間の空崎さんの方が大変だったりする
どうしよう、風紀委員の皆を休ませたいって言えば聞いてくれそうだがその場合は空崎さんだけ学園に残ろうとする可能性が……〝どうしても空崎さんの水着が見たいんです!〟ってお願いすればドン引きする様な視線と引き換えに休んでくれないかな?
……まあ、説得する方法は後で考えればいいか。最悪の場合は俺が学園に残って問題児共の相手をして他の風紀委員達を全員海に行かせればいいし
そんな事より今は海探しだ!
「うーん、やっぱ行くにしても綺麗な海がいいよなー。この辺りだとゼッタイシュラバオキルビーチとかヤベーサメイッパイ海とか……でもシツドヤバイ水浴場かその近くのヘドキャット二オソワレルビーチも良さそうだな」
「いやいやいや!なに勝手に話進めて……ていうか本気でそんな名前の海に行くつもりなの!?」
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「……というわけで説得失敗しちゃった☆」
『…………ミカ』
「……なーに?」
『このバカヤロウ!!!!!』
すみません、最近後輩ちゃんの話を投稿できてません
理由としてはナイトレインとバナンザが面白すぎてそのうえイニブまで稼働してしまったからです