〝アリウス〟潰すゾ!!!   作:あば茶

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番外編if~ナギちゃんフィーバー~(ナギサルート)
ナギちゃんとキヴォトス仮面様


 

 

「はぁ……」

 

 

茶会の場に相応しくない溜め息が一つ、それを発している幼馴染みに対してミカは〝また?〟と小声で呟く

 

百合園セイアの方はもはや慣れっこなのか反応すら示さなくなっていた

 

 

 

「ナギちゃんさぁ……その溜め息何回目?幸せ逃げまくってるよ?」

 

「仕方ないでしょう?私にとってはあの方を見つけられない事こそが最大の不幸なのですから……それに比べたら幸せが逃げるなど些細な事です」

 

「あの方……また〝キヴォトス仮面〟とかいうふざけた名前の者の事かい?」

 

「ふざけたとはなんですか、とても素晴らしい名前じゃないですか」

 

「ナギちゃんって時々センスおかしくなるよね」

 

 

あまりにもダサすぎる名前を擁護する幼馴染みを心配そうに見つめるミカ、しかしミカとセイアもまたナギサとは違う意味で〝キヴォトス仮面〟の事が気になっていた

 

 

「お二人とも本当にあの方の正体をご存知ないのですか……?」

 

「すまない、さっぱりだ」

「私がアリウスと繋がっていた事を知ってて尚且つあの夜補習授業部より先にナギちゃんを助けに向かった人でしょ?……そんなことをできるのはアズサちゃんぐらいかと思ってたけど、あの子は身長的に違いそうだし……」

 

「私の居場所を知っていたことも謎だな」

 

 

キヴォトス仮面、それは桐藤ナギサの謎の味方……おもちゃのバッタの仮面を黒く塗りつぶしたものを装着した謎の人物

 

ある日深夜に突然ナギサの部屋に現れ内通者の正体を仄めかすような発言をし、その日以降も度々現れては百合園セイアの生存を伝えたりアリウスの行動を伝えたりと少しずつ情報を与え、ミカが作戦を決行しようとした当日には誰よりも早くナギサを迎えにきた存在

 

 

「あの時まではただの不審者かと思っていましたが、こうして真相を知った後なら全て理解できました……彼はただ純粋に私を助けようとしてくれていたのですね」

 

「それでも不審者って点は変わらなくない?」

 

「そうだな……でも良かったじゃないかナギサ、ミカに裏切られる前にそれとなく情報を得ていたお陰で脳破壊されずに済んで」

 

「ええ、そうですね。あのままミカさんに裏切られてたらショックで寝込んでいましたから」

 

「だそうだぞ、ミカ」

 

「本当に申し訳ございませんでした」

 

 

椅子から立ち上がって綺麗に九十度頭を下げる、彼女の見事な謝罪に拍手を送る二人

 

ミカに厳しめな言葉を吐く二人だが勿論彼女達も本気で言っている訳ではない、一応許してはいるがそれはそれとしてちょっとムカついたからトリニティらしくネチネチ責めているだけだ

 

そして話題はそんなミカの計画を何故か知っていたキヴォトス仮面の話に戻る

 

 

「はぁ……早いところキヴォトス仮面様を見つけ出して今まで疑惑の眼差しを向けてしまった事への謝罪を申し上げたいのですが……」

 

「ん?ナギちゃん、それなに?」

 

 

ナギサが一枚のハンカチを取り出して頬に当てていると、幼馴染みが見慣れないデザインのハンカチを使っている事が気になったのかミカが尋ねる

 

そのハンカチは仮面を被ったヒーローが刀を構えているイラストのハンカチだった

 

 

「これですか?これはキヴォトス仮面様があの夜私の涙を拭いてくれたハンカチです」

 

「うっ……そ、その……本当にごめんね?そんな悲しませるような馬鹿な事しちゃって……」

 

「いえ、もう良いのです……今となればあの事件ですらキヴォトス仮面様との大切な思い出の一部なのですから」

 

「あの事件を不審者仮面との運命の出会いのシーンに置き換えないでくれないか?私は普通に命の危機だったんだぞ」

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……ごめんなさいセイアちゃんごめんなさいナギちゃん……」

 

「ああもうほらまたミカがヘラってしまっただろう、余計なツッコミをさせるんじゃない」

 

 

手慣れたようにミカの顔に自身のハンカチを強めに押し付けるセイア、そのまま雑に涙を拭きながらもその視線はナギサのハンカチに向けられている

 

 

「……そうだ、指紋はどうした?それがキヴォトス仮面の物だというのなら指紋がついている可能性が……」

 

「いえ、残念ながらその辺りの証拠も全く」

「声の特徴とかは?ナギちゃんその人の声聴いてるんでしょ?」

 

「あの方が喋る時は必ずノイズ混じりのランダムな声帯で会話していました、恐らく変声機のような物を使用していたのでしょう」

 

「身体はどうだ?肉付きが女のものだったとか……」

 

「それが……長手袋を着けた上でマントまで羽織っていたので何も見えなくて……」

 

「……徹底しているな、そこまでして正体を探られたくないか」

 

「私とセイアちゃんの行動パターンを把握してるどころか最初から事件の真相を掴んでるような動きをしてた訳でしょ?……じゃあやっぱりトリニティの生徒なのかな?」

 

「それかミカにすら内密にアリウスからもう一人スパイが送られていたが、その生徒もアズサと同じように途中で離反した……か?」

 

「ええ、私もその線で捜査を続けているのですが……進展は全くありませんでした」

 

「バシリカでサオリ達に仲間かどうか聞いた時も全く知らなそうだったしなー……」

 

「更には先生ですらお手上げときた……」

 

 

正体不明、行動理由不明、性別不明

 

何一つ分からない不明だらけの人物だが、それでも確かな事が一つある

 

 

「まあ、その人物が何者であろうとナギサが救われたという事実に変わりはない、礼の一つくらいは伝えたいものだな」

 

「だね……うーん、やっぱりトリニティの人なのかなぁ?ていうか私の計画を止めてアリウスの侵攻を防いで得する人なんてそれぐらいしか思い付かないし」

 

「もしくはエデン条約を締結させると得する人物……ゲヘナか?」

 

「だとしても正体を隠す必要なくない?……むしろ私の件でトリニティを責めて自分達の立場を優位にしてきそうなもんだけど」

 

「……それもそうか」

 

「はぁ……キヴォトス仮面様……貴方は今どこに……すーはー」

 

「駄目だ、ナギサは既に使い物にならな────待て、今ハンカチを吸わなかったか?」

 

「気のせいでは?……すーはー……ああ、まだ微かにあの香りとあの温もりが残って……」

 

「ナギちゃんが変態みたいになって……これも全部私のせいだ……!」

 

「君も定期的にヘラるんじゃない……それよりナギサ、こんなところでトリップしてる場合じゃないぞ、三時間後にはエデン条約の件で万魔殿と会議する手筈だろう?それに今回の会場は向こう……ゲヘナ学園内だ、早めに準備しておくといい」

 

「勿論準備はとっくに済ませてありますよ、いつでも出発できます」

 

 

チラリと時計を確認して余裕を崩さないナギサ、どれほど情緒が乱れていてもその辺りの仕事はしっかりこなす辺り流石か

 

しかしそんなナギサとは反対にミカはゲヘナという言葉を聞いて苦虫を噛み潰したような顔をする

 

 

「ねえ、ナギちゃんセイアちゃん……ゲヘナに行くって……その……大丈夫なの?多分、私の起こした事件のせいでトリニティを嫌ってる人達もいつもより荒ぶってるかもしれないし……」

 

「大丈夫ですよ、会議の場まで正義実現委員会とゲヘナの風紀委員会の皆様が護衛してくださりますから」

 

「……そっか」

 

 

今回、ナギサのセイアがゲヘナに向かうことを決めたのはエデン条約前のトラブルに対する謝罪も兼ねて

 

ゲヘナ自体は何も被害を受けていないのだが、もしミカのクーデターが成功してトリニティが内部から崩壊すればエデン条約どころの話ではなくなっていた可能性がある

 

その為の謝罪、それのせいでナギサとセイアに頭を下げさせてしまっているという事実がミカの心に突き刺さる

 

 

 

「……ねえ!私も一緒にさ────」

 

「駄目ですよ、ミカさんがゲヘナに来てしまっては三秒で暴れるでしょう?」

 

「そうだぞ、君は大人しく檻の中のバナナの皮でも掃除しておくんだ」

 

 

 

が、それはそれとしてちょっとムカついたりはする

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「やべぇ!?風紀委員が来たぞ!?」

 

「空崎ヒナが来る前に逃げろおおおおおおおおおおお!!!」

 

「クソボケがきたぞおおおおおお!絆される前に仕留めろおおおおおお!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは……その……」

 

「随分……元気が溢れてる学園……ですね……」

 

 

 

ゲヘナに到着したナギサとセイア、そんな彼女達が正実の車から降りて第一に目撃した光景は不良生徒達と盛大に追いかけっこしている風紀委員達の姿だった

 

罵声が飛び交い、ついでに鉛弾も飛び交う戦場を自分達を守ってくれている正実の生徒達の後ろから眺める

 

 

「……ん?彼は……」

 

 

そんな中、ナギサの視界に一人の生徒が映る

 

その生徒はキヴォトスでは珍しい人間の男……男子生徒だ、しかしそれだけが理由で好奇の眼差しでジロジロと見続けるほどナギサも無作法な人間ではない

 

彼女が彼を気になったのだってただ本当に〝珍しい〟と思ったからというだけ、その後は特に気にすることもなく男子生徒から視線を外した

……そして正面を向いた瞬間、駆け足で他の風紀委員達が寄ってきた

 

 

 

「お、お待たせしましたあああああ!!!桐藤ナギサ様と百合園セイア様ですね!?」

「え?ええ……は、はい……」

 

「私達は迎えの────ああもういいや!戦闘に巻き込まれる前にさっさと移動しましょう!自己紹介はその後で!」

 

「え?ちょ、ちょっと急では……?」

 

「……なるほど、噂通りの治安だ」

 

 

 

慌ただしくナギサとセイアの周囲を堅め、流れ弾の一発も来ないように盾となる風紀委員達

 

その光景に若干引きつつもナギサとセイアは案内されるがままに彼女達の後を付いていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそっ!学園外に逃げたか……追跡班!今すぐあいつらを…………っ!」

 

────先輩!?大丈夫っすか!?

 

「大丈夫だ、ちょっと腕を負傷しただけだ……っ」

 

────待っててください、すぐに応急手当てを……っと

 

「……すまない、足を引っ張ったな」

 

────んなことありませんよ……それに先輩が怪我したのは前で戦って皆を守ってくれてたからでしょう?むしろこっちは礼を言いたいくらいですよ

 

「……ありがとう」

 

────よし……ちょっとだけ染みるけど我慢してくださいね?

 

「ああ……ところで酒泉、手当てしてくれるのはありがたいけど……そのハンカチ、使って良かったのか?」

 

────え?

 

「だってそれ気に入ってるんだろ?何かのキャンペーンで貰った限定品とか言ってなかったか?」

 

────大丈夫っすよ、これ二枚持ってるんで……あっ

 

「……どうした?」

 

────いえ、何も……(そういや一枚どっかで失くしたんだよな……どこだっけ……)

 

 




キヴォトス仮面様です、一般生徒とは何の関係もありません
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