〝アリウス〟潰すゾ!!!   作:あば茶

184 / 514
聖園ミカは負けヒロインになりたくない~その2~

 

 

 

 

「おのれ、パンチングコング聖園め……また人の事をこき使いやがって……!」

 

 

酒泉は激怒した、必ず、かの邪智暴虐のゴリラを〝わからせ〟ねばならぬと

 

しかしゴリラは無駄に強かった、酒泉は諦めた

 

 

唐突に送られてきたミカからのモモトーク、そこに表示されるトリュフチョコレートの画像、それは本日から一部地域で限定的に発売される予定だった品だった

 

〝先週酒泉君が買いたいって言ってた限定チョコは今ぁ……私の手元にありま~す!欲しかったらトリニティの家庭科室まできてね~☆〟

 

〝ちなみに私が買った時は殆ど残ってなかったしもう売り切れてるんじゃないかな☆〟

 

〝あ!ついでにシャンプー買ってきてくれる?後でお金払うから!〟

 

〝それと百均でハンガーも買ってきてくれる?〟

 

〝ウェットティッシュもついでにお願い!〟

 

〝これも───〟

 

〝あ、それとそれと───〟

 

〝他にも───〟

 

 

「俺のことを手下か何かと勘違いしてやがんのか!?あのスクラップコングは!?」

 

 

ミカに対する文句が止まない、しかしそれをモモトークには送らない

 

何故なら彼がミカに逆らった瞬間、トリュフチョコレートが全てミカの胃袋に収まることが確定するからだ

 

あとついでにゴリラ扱いされたことでグラスフィールド下の全力鉢巻グラススライダーを撃たれるか乱闘を仕掛けられて下Bを食らわされるだろう

 

 

「……やっぱいつかぜってーわからす」

 

むりむりー☆と笑顔で煽る少女の顔を浮かべながら少年は再び決心した

 

そんなこんなで歩いている内にトリニティ総合学園前に到着し、周囲から視線を集めながらも特に気にせず門を通る

 

 

「えっとぉ……はは、わっぴー……なんちゃって」

 

 

ゲヘナ生に対する好奇の眼差しや嫌悪の眼差しを向けながら横切ってくるトリニティ生達に軽く挨拶する酒泉

 

しかし近くを歩いていたほぼ全員が不審者を見るような眼差しで〝わっぴー?〟〝あの人何言ってるの?〟〝なんか怪しくない?〟〝チョコミン党の気配がする……!〟〝は?〟〝私以外にもわっぴーの使い手が……やはりこの挨拶は間違っていなかったのですね……!〟と呟いていた

 

(一応、百合園さんには話を通してるし……このまま校内に入っても問題はないよな?)

 

 

周囲からの視線によって少々居づらくなった酒泉は早めに校内に入ろうと急ぎ足になる

 

「まあ、ここでずっと待ってても余計に注目集めるだけだしさっさと────あん?なんだこれ?」

 

 

水着で徘徊する変態とすれ違いながら正面玄関に向かうその道中、目の前にふわりと何かが落ちる

 

〝さてはまた誰かが俺にグレネードを投げたな?〟と頭の中が半分ゲヘナに染まりかけてた彼は咄嗟に下がろうとして……その落下物がグレネードではない事に気づく

 

ひらひらと舞い降りるそれの正体は一枚の純白の羽根、酒泉は両手で優しくその羽根を受け止めた

 

 

「……鳥か?」

 

 

空を見る、青い空に白い雲

 

 

「うん、何もいないな」

 

 

視界一杯に映るのはただ自分達で護ったキヴォトスの青い空のみ、この羽根の持ち主でありそうな生物は一匹もいなかった

 

とすればこの羽根はどこかの鳥の羽根が風に乗って酒泉の元まで運ばれてきた可能性もある

 

 

「……なんか、縁起が良いな」

 

 

鳥の羽根にはその種類によって様々な意味が込められているという

 

酒泉は別にその事に詳しい訳ではないが、目の前に綺麗な羽根が落ちてくれば何となくそんな気持ちにもなろう

 

 

「すっごい綺麗な羽根だな……白洲さんのみてぇ」

 

 

せっかくだし、そんな考えで特に深い理由もなく羽根をスクールバッグの横ポケットに入れる酒泉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……その羽根が、上階の家庭科室の窓から降ってきた〝ミカの羽根〟だとも知らず

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よ、よし……酒泉君も到着したし私もそろそろ……!」

 

 

窓を開けて家庭科室の換気を終えたミカ、その際にたった一枚の羽根が落ちた事も気に留めずテーブルの上を見る

 

そこに置かれているのは複数の〝手作りチョコ〟だった、ちなみに今はバレンタインではない

 

 

「……大丈夫、何度もシミュレーションしたし」

 

 

脳内で繰り返される妄想劇、彼女の作戦はこうだ

 

ほわんほわんほわわわーん

 

 

ミカ『どう?トリュフチョコレート、美味しい?』

 

酒泉『はい!めちゃくちゃ美味いです!』

 

ミカ『ふふっ……酒泉君、気づいてる?』

 

酒泉『?』

 

ミカ『それ、私が作ったやつだよ?』

 

酒泉『なっ!?』

 

ミカ『そ・れ・と!酒泉君が欲しがってた商品の方もちゃんと用意してるよ☆』

 

酒泉『結婚しよ』

 

 

 

「……計算通り、完璧ー!」

 

 

一瞬で因数分解されてしまいそうなほどガバガバな決め台詞を放ちながらミカは己の勝利を確信する

 

酒泉君なんかじゃ私みたいな美少女に釣り合わないけど惚れさせちゃったなら責任は取らないといけないよね、そんな事を思いながらウキウキで手作りチョコの包装を始める

 

ちなみにもし酒泉が本当に自分の身の程を弁えて一般の女性と結婚した場合、それはそれでぶちギレるだろうコイツめんどくせえな

 

 

「よし、包装もしたし後は────っ、来た!?」

 

 

コツン、コツン、と廊下を歩く音が聞こえる

 

放課後の家庭科室に立ち寄る人間は限られている為、必然的に候補が絞られる

 

そして先程の〝到着しましたよ〟というモモトーク、恐らく高確率で折川酒泉であろう

 

 

「聖園さーん?約束通り(トリュフチョコに)会いに来ましたよー?」

 

「入っていいよー」

 

 

普段通りの声色で返事をするミカ、その表情に緊張の二文字はない

 

何故なら聖園ミカは折川酒泉を意識などしないからだ、むしろあちら側が私に会えることを緊張すべき────なんて考えている、それは負けヒロインの思考だ

 

 

「うーっす、言われたもん買ってきましたよー」

 

「おっそーい!私が呼んだんだからもっと早く……きて……よ?」

 

 

家庭科室に入る酒泉、たったそれだけなのにミカの体が固まって視線がとある箇所に向けられたのは何故か

 

その視線の先……スクールバッグの横ポケットには一枚の羽根が入っており、その羽根はミカが自分の翼の手入れをする際に何度も見たことのある物だった

 

 

「え、えっと……酒泉君?その羽根は?」

 

「羽根?……ああこれ?なんか目の前に降ってきたから拾っちゃった」

 

「拾っちゃったって……なんで?」

 

「なんでって言われても……縁起が良いから?」

 

「へぇ……意外とロマンチストなんだね、酒泉君」

 

「いや、ただの鳥の羽根なら別にスルーしてたけど誰もいないところから降ってきたからさ……にしても改めて見てもめっちゃ綺麗だなこの羽根」

 

「……ふーん」

 

「あ、そうだ!それよりも礼のチョコはどこだよ!その為に来たんだからな!?」

 

「そう慌てないでよ、ちゃんと用意してるからさ☆」

 

 

雑談も程々にして早速本題に入る二人、これより聖園ミカによるかんぺきーな計画が始動する

 

この一連の流れによって折川酒泉は胃袋を掴まれ(ミカの願望)、一瞬で心奪われ(ミカの願望)、そしてあまりの愛しさに求愛にまで及んでしまうだろう(ミカの願望)

 

そして少女は酒泉と共に壁越え(意味深を)果たし────そこまで想像しておきながら未だにチョコを渡そうとしない

 

 

 

 

『改めて見てもめっちゃ綺麗だなこの羽根』

 

 

「…………」

 

「聖園さん?どうした?さっさとチョコくれよ」

 

「……分かってるって。ほら、これあげ────」

 

 

 

『めっちゃ綺麗だなこの羽根』

 

 

 

「…………」

 

「……聖園さん?」

 

 

突然電池が切れたロボットのようにピクリとも動かなくなるミカ

 

今、彼女の頭の中では先程の発言が何度もリフレインされている……特に〝綺麗〟と〝羽根〟の部分が

 

 

 

「おーい?起きてますかー?」

 

「……っ、あ!ごめんごめん、ちょっとぼーっとしちゃってたよ」

 

「……直前にボランティアでもやってたんすか?」

 

「まあ、そんなとこかな…………はい!約束のものあげ────」

 

 

 

『めっちゃ綺麗だなこの羽根』

 

 

 

「……これあげる」

 

 

 

「おお!これが礼の───ん?なんかパッケージ二つありません?」

 

「それ、トリュフチョコのパッケージの方が私の作ったやつだから。それで適当に包んである方が本物のトリュフチョコね」

 

「なんでそんな面倒な事を……」

 

「別に?ただイタズラでも仕掛けてみよっかなーって思ってやってみただけ……まあ、直前でなんか下らなくなってきてやっぱ止めたけど」

 

「だったら最初からやろうとしないで────って、聖園さん?どこ行くんですか?」

 

「ちょっと用事思い出したから行ってくる……食べ終わったらそのまま帰っちゃってもいいからねー」

 

「は?ちょっ……聖園さん?俺が買ってきたこれは!?」

 

「後で取りに行くから適当に置いといてー……はい、お金も置いとくから」

 

 

 

聖園ミカ、作戦変更。特に何事もなかったかのように装いながら平然と家庭科室を後にする

 

呼び出しておきながら自分は一言二言交わしてすぐに帰る、そんなミカに困惑しながらも〝まあ……貰うもんは貰ったし〟と一瞬で切り替える酒泉

 

彼は知らない────

 

 

(馬鹿じゃないの馬鹿じゃないの!?なんで酒泉君が私の羽根を持ってるの!?何でもかんでも拾ってくる男子小学生なの!?しかも平気な顔で〝綺麗な羽根〟とか言っちゃうし!?やっぱり酒泉君って馬鹿だよね馬鹿でしかないよねそれ以外の何者でもないよね!?酒泉君の馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿…………綺麗………えへへ………)

 

 

 

────今、聖園ミカの顔があり得ないくらい真っ赤に染まっていることを

 

それとこれは特に重要でも何でもない雑学だが、一部の鳥類にとって羽根を渡すという行為はプロポーズの意味を持つのだとか……トリニティにそのような文化があるのかは不明だが

 

それはともかく頑張れミカ!負けるなミカ!君の負けヒロイン脱却の戦いは始まったばかりだ!

 

 

 

(綺麗……綺麗って言ってくれた……えへ、えへへへ……)

 

 

 

……頑張れ!




スクラップ・ミソノコング

効果モンスター
星8/地属性/獣戦士族/攻2000/守1000

①「折川酒泉」がフィールド・墓地に存在する状態でこのカードの召喚・特殊召喚に成功した時に発動する。このカードを破壊する
②このカードが破壊された場合に発動する。デッキ・手札・墓地・または除外されている「原始生命態ニビル」を任意の数だけ特殊召喚する
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。