「……ねえ、聖園さん」
「なに?もうすぐ映画始まるんだから静かにしてよ」
「いや、なんで聖園さんがついてきてるんですか」
〝マスクヒーローハッチャード・フューチャーデイブレイク!〟と書かれたチケットを握る酒泉、この日彼は一人で趣味の特撮映画を楽しむ予定だった
しかしタイミングの悪い事にその日の朝にミカから〝今日予定空けといてねー〟とモモトークを送られた酒泉は〝映画観に行くから無理〟と返してしまった
〝何の映画観るの?〟に対して酒泉が〝特撮〟と答えた瞬間から彼女は酒泉が観に行きそうなゲヘナ付近の映画館の場所を調べ、上映時間を把握し、即座に身支度を整えて外出した
ストーk……恋する乙女(本人は認めていない)の行動力がここ一番で発揮された瞬間である
「別にいいじゃん、減るもんでもないし」
「……まあ、俺は別にいいですけど……アンタこの作品知ってんです?」
「知ってる知ってる!確か……えっと……ほら、蜘蛛に噛まれて糸を出せるようになった人が……」
「違うけど……系統的には同じか」
「もう、細かい事はいいじゃん……あ、始まった」
ひそひそ声で会話していた二人だがスクリーンに制作会社のロゴが出た瞬間にはピタリと口を閉ざした
海が波打ち、水飛沫が飛び、スクリーンが暗転する
〝いよいよか〟という気持ちになれる、長いCMの後にやってくるこの瞬間が酒泉は何よりも好きだった
幼子の様に期待に胸を踊らせながら大好きなヒーロー達の登場を待ちわびる酒泉、そして隣のミカはと言うと────
(ついに始まった……〝映画館でこっそり手を繋いじゃおう作戦〟!)
それは恋愛漫画でよくあるテンプレ的展開、暗闇の中で偶然手が重なっちゃってそのまま惹かれ合うように握っちゃう的なアレである
これこそ恋愛強者(笑)聖園ミカが考えた最強の必勝パターンだ、多分勝利の法則は決まっていない
そして聖園ミカは失敗の可能性など考えない、何故なら彼女は恋愛強者(大爆笑)だからだ、セクシーゴリラですまない
(問題はどのタイミングで手を重ねるかだけど……)
スクリーンの中では既に主人公ヒーロー達が未知の侵略者達と戦っており、まだまだ物語が始まったばかりである事を示している
……映画館の中で手を握る、それは通常ロマンティックな場面で起きがちな現象
当初ミカは〝特撮映画でも多分それっぽいシーンはあるよね〟と考えてこの計画を企てた。そして実際にその考えは正しく、この後の展開で主人公とヒロインの思いが通じあってパワーアップするというシーンがある
そんなシーンが来るまでとりあえず待機しておこう、そう考えたミカは大人しく〝勝負の刻〟を待った
──────────
────────
──────
《私……ずっと待ってた!○○が私の声に気づいてくれる時を……!》
《△△……これからはずっと一緒に戦おう!》
(────っ!きた!)
そしてついに訪れたその瞬間、スクリーンの中では再会した主人公とヒロインが抱き合って目映い光に包まれている
間違いなくロマンティックなシーン、映画館でこっそり手を繋いじゃおう作戦を決行するならこの瞬間しかない
(あ、汗とかかいてないよね?酒泉君に汚いとか思われたりしないよね?あんまり緊張しすぎると手に力が入っちゃうからなるべくリラックスしないと……)
が、今更になって〝大好きな彼(本人は認めていない)に引かれたくない〟という乙女思考が湧き出てきたミカは直前で手を止めてしまう
だがそうこうしている間にもシーンが切り替わろうとしている、迷っている暇はない
(────あーもう!やればいいんでしょやれば!)
誰に急かされている訳でもないのに怒りながら手を伸ばすミカ、彼女の手は酒泉の手の上に重ねられ────
(なっ!?)
────る事はなく、再び直前で止まってしまう。その原因は彼女にではなく酒泉の手にあった
そう……なんと!折川酒泉の両手は酒泉自身の胸の前で握られていたのである!
何故彼がこんな体勢になっているのか、その理由は彼の両手に握られている〝来場者特典〟にあった
この〝来場者特典〟というのは作中で主人公が使用する変身アイテムだったのだが、映画の途中でその変身アイテムを握りながら仲間達が主人公を応援するシーンがあった
更には作中キャラの〝皆もこれを握ってアイツを応援してくれ!〟という台詞、ここまで言われては此方も応援せねば無作法というもの……という事で酒泉も作中キャラと一緒に主人公を応援していた
さて、ここまでは良かった……が、問題はその後
なんと折川酒泉、映画に夢中になりすぎて応援シーンを過ぎても変身アイテムを両手で握り続けてしまった、そしてそれがミカの計画を狂わせた
(ど、どうしよう……このままじゃ酒泉君と手を繋げない……!)
否、別に手を繋ぐ事は可能である。今すぐ酒泉の手を掴んで無理矢理にでも繋げばいいのだから
だが……
(私が自分から手を繋ぎにいったら……そういう気があるのかと勘違いされちゃいそうだし……!)
未だに己の感情を素直に認めようとしないミカは自分から手を伸ばしたら負けだというプライドから行動に移せずにいた
手汗は拭いた、心も落ち着かせた、だというのにプライド一つで簡単に台無しにしてしまう
やはり恋愛最弱は聖園ミカか……
(~~~っ!ていうか、なんで酒泉君は自分から私の手を握りにこないの!?女の子が待ってるんだよ!?)
計画を狂わされたミカの怒りは理不尽にも酒泉に向かい、自ら負けヒロイン道を走り出した事にも気付かずミカは酒泉を睨み続けた
どうして偽装カップルを演じた時の様に接する事ができないのか、それは単純に聖園ミカという少女がめんどくさい女だからだろう
〝あ♡酒泉君好き♡すきすき♡〟という気持ちと〝はあ?私がゲヘナなんか好きになるわけないじゃん〟という愛情と嫌悪を何度も頭の中でループさせてきたミカが正常に戻るのは最早不可能に近い
唯一救われる方法はミカが素直になること、しかし素直になれるのならとっくに告白している訳であって……つまりどうしようもない
これって……ああ、ミカの勝ちだ
──────────
────────
──────
《そして、ヒーローは白く輝き、瞬く間に漆黒王マチ=ハクリを倒しましたとさ》
《なんだとおおおおおおお!?》
敵が倒されるシーンで終わり、最後にエンディングが流れる
そして全てが流れ終った後、酒泉は満足げに立ち上がりながら両手を伸ばした
「いやー面白かったぁ……んじゃ、俺達も出ましょっか」
「……うん」
「……そういや聖園さんは映画楽しめました?全く前情報知らない状態だったと思うんですけど」
「……主人公とヒロインが結ばれて羨ましいなと思いました」
「なぜ敬語……?」
可愛いお洋服を来てきた、お化粧だって軽くしてきた、作戦が成功して万が一〝そういう雰囲気〟になって〝そういう場所〟に行くことになった時の為に下着だってしっかりしてきた
結局、それらの準備は全て徒労に終ったとさ
しかし今日に限っては別にミカは酒泉に悪態を吐いたりした訳ではない(ストーカー紛いのことはしてたが)
つまり好感度メーターだってミジンコくらいには上昇したかもしれない!
頑張れミカ!負けるなミカ!この調子で立派な勝ちヒロインになるんだぞ!
「……あの主人公ってちゃんとヒロインの子の想いに気づいてたんだね、酒泉君みたいな女の子に嫌われてそうな鈍感とは大違いだね☆」
「はあ!?俺のどこが鈍感だってぇ!?」
「そのミジンコみたいな頭で考えてみたら?」
……頑張れ!
ゲヘナ学園風紀委員・銀鏡イオリ
効果モンスター
星4/闇属性/戦士族/攻1800/守1200
このカード名の①の効果は1ターンに1度しか使用できない
①このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる、デッキ・手札から「折川酒泉」モンスター1体を特殊召喚する
②「折川酒泉」モンスターがフィールドに存在する限りこのカードは戦闘では破壊されず「落とし穴」カード及び「ホール」カードの効果を受けない
ゲヘナ学園風紀委員・火宮チナツ
効果モンスター
星4/闇属性/戦士族/攻1200/守1000
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない
①手札を1枚捨てて発動できる、墓地から「折川酒泉」モンスター及び「ゲヘナ学園」モンスター1体を特殊召喚する
②「折川酒泉」モンスターが戦闘で破壊された場合に発動できる、墓地からその戦闘で破壊されたカードとこのカードを特殊召喚する
ゲヘナ学園風紀委員・天雨アコ
効果モンスター
星4/闇属性/戦士族/攻1100/守800
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない
①このカードを手札から捨てて発動する、デッキから「ゲヘナ学園」モンスター1体を手札に加えるか除外する
②「ゲヘナ学園」モンスターが戦闘を行うダメージステップ開始時に墓地のこのカードを除外して発動できる。戦闘を行う自分のモンスターの攻撃力を元々の攻撃力の2倍にし、この効果で「折川酒泉」モンスターの攻撃力を上げた場合、このターンそのモンスターは戦闘では破壊されない
ゲヘナ学園風紀委員長・天雨アコ─avenge─
効果モンスター
星4/闇属性/戦士族/攻1100/守2000
このカード名の①の効果は1ターンに1度しか使用できない
①「折川酒泉」モンスターが戦闘、または相手の効果でフィールドを離れた場合、手札・墓地のこのカードを除外して発動できる。相手フィールドのカードを1枚破壊し、破壊したカードが「アリウス」カードだった場合、更にもう1枚破壊できる
②お互いに「空崎ヒナ」モンスターを通常召喚・特殊召喚・反転召喚できない
③このカードがフィールドに存在する場合、このカード及び「欠損・折川酒泉」は「アリウス」カードの効果を受けず、戦闘では破壊されない
欠損・折川酒泉
効果モンスター
星1/闇属性/戦士族/攻0/守0
このカードは「ゲヘナ学園」カードとしても扱う
①自分フィールドの「折川酒泉」モンスターを対象として発動できる。選択したカードを破壊し、このカードを手札から特殊召喚する
②自分のスタンバイフェイズに発動する、以下の効果から1つを選択する。「天雨アコ」モンスターがフィールドに存在しない場合、全て選択しなければならない
・自分は1000LPを失う
・このカードを破壊する
③「空崎ヒナ」モンスターが自分フィールドに存在する場合、相手はこのカード以外を対象に取る事ができず、攻撃対象に選択できない