速攻魔法
このカード名の効果は1ターンに一度しか使用できず、このカードは「クソボケムーブ」カードとしても扱う
①自分フィールドの「折川酒泉」カードを3体リリースして発動できる、EXデッキから「ゲヘナ学園風紀委員・折川酒泉─覚醒─」を召喚条件を無視して特殊召喚する
ゲヘナ学園・折川酒泉─覚醒─
融合・効果モンスター
レベル8/闇属性/戦士族/攻3600/守2600
カード名の異なる「折川酒泉」モンスター3体
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに一度しか使用できない
①相手が効果を発動した場合に発動できる。手札から任意の枚数「クソボケムーブ」カードを捨て、その枚数によって以下の効果を適用する
・1枚:その相手の効果の発動を無効にし、除外する
・2枚:この効果の発動時に積まれていた全てのチェーン上の効果を無効にし、除外する
②相手がモンスターを特殊召喚した場合に発動できる、そのモンスターをこのターンの終了時まで除外する
③相手エンドフェイズに発動する、このカードをEXデッキに戻す
奔流─溢れ出す神秘─
速攻魔法
このカードは「クソボケムーブ」カードとしても扱う
①手札から「覚醒─開かれし眼─」を捨てて発動できる、EXデッキから「ゲヘナ学園風紀委員・折川酒泉─ヘイロー─」を召喚条件を無視して特殊召喚する
「はぁ~……やっと買えた」
「思ってたより時間掛かりましたね」
列が動いてから一時間半後、途中列の乱れや客同士の口論が始まったりと様々なトラブルが起きたがミカは何とか目的の物を手にしていた
二人の後ろではまだまだ客が並んでおり、恐らく彼女達は自分達より倍近くの時間が掛かるであろうとミカは同情した
「じゃあ、買う物は買ったしさっさとお店出よっか」
「っすね……げ、出口まで埋まってるよ」
次々と店内に入ってくる客を避けながら少しずつ進んでいく二人
そんな人混みの中からひそひそ話が聞こえると同時に複数の視線が突き刺さる
「あれって───魔女───」
「──また──燃──」
(……まあ、それもそうだよねー)
聖園ミカという少女を恨む者は未だに多く、トリニティの裏切り者という烙印は一生拭えない
今でこそ風当たりは多少マシになっているものの、それでも尚ボランティア活動中に絡んでくる生徒は多数存在する
堂々と貶す者、今のように陰から貶す者、どちらが相手にせよミカにとってはよくある出来事だった
「あんな──ゲヘナなんか──」
「足──踏み入れ───」
「────汚らわしい」
「……っ、酒泉君!さっさと行くよ!」
「うおっ!?ちょっ……力強っ……!?」
突如声を荒げて酒泉の腕を掴み、人の波を強引に押し返しながら突き進むミカ
酒泉が背後で他の客達にぶつかりまくって睨まれてもお構い無しである
この後は予定通りスイーツ店に向かったが、ミカは何故か到着しても暫く不機嫌だった
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「……しまった」
「どうしました?食べないんですか?」
「……いや、食べるよ……うん」
とあるスイーツ店の一席
ミカと酒泉が駄弁る際によく利用する店の中で、ミカが深く溜め息を吐く
彼女は自身の計画の穴を見つけてしまった、それは────現在時刻が午後の二時で、冷静に考えたら星空の下で告白するにはまだまだ早すぎる時間帯だという事だ
実際、彼女の悩みを馬鹿馬鹿しいと切り捨てるのは間違っている。周囲の風景や雰囲気によって告白の成功率が上がるというのは実際に起こり得る現象なのだから
ならばどうするべきか
「……ねえ酒泉君、この後五時間くらい時間潰さない?」
「流石に長いですって……つーか聖園さんの場合寮長に怒られますよ?」
「……だよね」
(まあ、告白自体は別にどこでもできるし……)
妥協、それがミカの出した答え
この判断は正しい、何故なら彼女のような恋愛弱者は一度告白を先延ばしにするとずるずるずるずると何処までも伸ばし続けてしまうから
更にはそうして先延ばしている間にもいつもと変わらぬ面倒な女ムーブを続ける事によって折川酒泉から完全に女として認識されなくなる可能性もあった
よって、この日の内に決着をつけようとしたのは正解だろう
そして少しでも勝率を上げる為に、彼女がこの場ですべき事は────
(告白する直前……なるべくギリギリまで好感度を上げ続ける!)
一分一秒でも無駄にはできない、そんな彼女が考え出した作戦
名付けて〝あーん〟作戦、シンプルイズベスト
「ねえ、酒泉君!私が食べてるモンブラン美味しいよ!」
「あーそれ美味いっすよね、俺もよく頼みます」
そうだった、この店で折川酒泉がまだ食べていないスイーツなど存在していなかった
なんなら彼は気になる物があれば自分で注文するタイプなので〝一口ください〟なんて言わないタイプだった
「…………ひ、一口あげよっか?」
「食いたくなったら自分で注文するんで大丈夫っすよ」
「……まあまあ、そんな遠慮せずに」
「いや、別に遠慮とかじゃ……」
「はいあーん!!!」
「アブドゥルッ!!?」
酒泉が口を開けた瞬間、無理矢理スプーンを突っ込むミカ
奇妙か悲鳴を上げながら酒泉はモガモガと苦しみ、口に突っ込まれたモンブランを食べ終えてから文句を言い始める
「なにすんですか!?危ないでしょ!?」
「だ、だって私の親切心を無下にしたから……」
「無理矢理食わせるのは親切心でもなんでもないでしょう!?俺だってその日毎に食いたいスイーツは変わるんですよ!?」
「う………うるさい!最初から素直に頷かなかった酒泉君が悪いんだもん!」
完全に逆効果、これでは好感度を上げるどころの話ではない
遠慮された時点で素直に退いておけばよかったものを〝酒泉君の癖に生意気〟という無駄なプライドが最悪な形で表に出てしまった
「あ~前歯いてぇ~……誰かさんのせいで」
「……私しーらない」
ふいっとそっぽを向いて無視を決め込むミカ、流石の酒泉もその態度には頬がヒクつく程度の怒りを感じた……が、深く深呼吸して感情を落ち着かせた
一方でミカも〝私は何も悪くないでーす〟みたいな態度を取っておきながら内心は焦りまくりだった
(何やってんのミカァ!?いつもの癖でつい強引にしちゃったけど流石に今のは理不尽すぎるって!?)
折川酒泉が相手ならば多少強引に迫っても問題ないだろう
こんな事は下江コハルや先生が相手ならば絶対にしないし、なんなら相手が桐藤ナギサや百合園セイアだったとしてももう少し遠慮していただろう
雑に接することができるほど気安い関係というのは良いことばかりではなかった
「あ、あー……えっと……あのさ、この後どうする?」
「この後ぉ?……普通に解散じゃないんすか?」
先程までの件をなかった事にして会話を続けるミカ
酒泉も酒泉でミカからの雑な扱いにはとっくに慣れっこなのか、大して怒りを募らせる事もなくけろっと食事を続けている
「わ、私はちょっとだけ食後の散歩がしたいかなーって……」
「一人で行けばいいじゃないですか───ぐああああああっ!?」
酒泉の答えを聞いた瞬間、ミカはレモンジュースのグラスに刺さっていたレモンを抜いて酒泉の目に果汁を飛ばす
これもミカのいつものムーブ、気づいたら手が勝手に動いていただけである
「き、貴様ぁ……!」
「あ、ごめ……ううん!これも酒泉君が悪いんだもん!」
レモンエナジースカッシュが目に直撃した酒泉は先程と同じくミカに怒りを募らせる、そして先程と同じくミカは謝らない
因みにこんな攻撃を食らっても酒泉は本気で怒ったりなんかしない、何故ならミカの〝不機嫌構ってイヤイヤ攻撃〟にはとっくに慣れっこだから
「女の子が散歩に行きたいって言ったなら普通は隣を歩いてくれるもんじゃないの?」
「……女の子?」
「は?」
「すいません」
謎の圧を感じた酒泉はすぐに謝罪を口にする、彼は良くも悪くもすぐに頭を下げれる人間である
「……でもさ、散歩するだけなら俺必要ないでしょ?」
「そこはほら……話し相手みたいな…………酒泉君でも暇潰しの相手程度にはなるかなーって」
「へいへい、どうせ俺なんてその程度の存在ですよーっと」
〝ゲヘナ嫌いの癖にゲヘナ生を連れ歩くなんて馬鹿だなー〟と思いながら酒泉はグラスの中の飲み物を飲み干す
聖園ミカ投手、本来ならば〝酒泉君と歩きたかったから〟と直球ストレートで伝えるはずだったにも関わらず再び変なプライドが邪魔して斜めの方向に暴投か
(くっ……まさかこんなに強敵だなんて……!)
折川酒泉という男のクソボケっぷりは十分に理解している、そのつもりだった
しかしいざ実際に告白の手前まで来ると彼のクソボケウォールの強固さを改めて知らされる事となる
……なんてミカは考えているがこの壁は素直な女性ならあっさり崩せる程度の壁でしかない、つまりミカは自ら難易度を上げてしまっている
(で……でも!まだ好感度を上げる機会はあるはず!)
この後、ミカはトリニティで人気な花畑を散歩する予定である
星空の下での告白はできないだろうが、花に囲まれながらの告白というのも中々に美しい光景となるだろう
因みにその花畑には白いチューリップや黄色いチューリップが沢山生えていることで有名だとか、花言葉は気にしないでほしい
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(告白する告白する告白する絶対に告白するここで告白する)
(うおっ、すげえ広い……秤さんが好きそうな場所だなぁ……)
ミカが顔を真っ赤にしながら歩く横で平然と他の女の子の事を考えている酒泉
片や色ボケ、片やクソボケ、それを忘れてはならない
「……ね、ねえ酒泉君!」
「痛っ!?な、なんですか!?」
「あ、ごめん……」
「もう……なんすか?急に腕なんか掴んできて」
「いや、その……もう少しゆっくり歩かない?せっかく綺麗な場所なんだしさ」
「別に構いませんよ、俺ももうちょいこの辺見たくなってきましたし」
少しでも告白までの時間を稼ごうと酒泉の腕を掴むミカ、咄嗟の事でつい力みすぎてしまったが結果はオーライだろう
歩くスピードを落とした酒泉は辺りを見渡しながらスマホで写真を撮る、心の中では〝秤さんと話す時の話題の種になればなー〟と思っていた
しかしミカの方は緊張のあまり周囲の景色を楽しむ余裕も〝好感度上昇作戦〟を実行に移せる余裕もなかった
「ん?……聖園さん聖園さん」
「うぇ?な、なに?」
「そっち入っていい場所じゃないですよ」
「あ、本当だ……ありがと」
「……?」
〝立ち入り禁止!〟と書かれた看板が立っている道を避けて歩く
酒泉はミカの様子が若干可笑しい事に気付いたのか、首を傾げながらミカの顔を見る
「……聖園さん、もしかして熱でもあります?なんか顔赤いですけど」
「えっ!?い、いや……それは……」
「体調悪いなら帰ります?」
「そ、それは駄目!駄目だから!」
顔が赤いまま首を横に振って酒泉の提案を蹴る、しかしあまりにも必死なその姿が酒泉には逆に変に思えた
「……なんつーか……今日の聖園さん様子が可笑しいですね、やっぱり体調悪いんじゃないすか?それかさっき列に並んでた時に周りから変なもん貰っちゃったとか」
「違うから!本当にそんなんじゃないから!」
折川酒泉の観察眼は時には恋する乙女の敵としても立ちはだかる
ミカは顔が赤く染まった状態で俯きながら隣の少年の目の良さを恨んだ
(もぉ~!?私の気持ちには気付いてない癖になんでそういうところは気付けるの!?そんなに目が良いなら日頃からの私の態度も照れ隠しだって気付いてくれてよくない!?ていうか私だけこんなに緊張しないといけないっておかしくない!?これじゃまるで私だけが意識してるみたいじゃんね!女の子と二人きりなのに全然そんな様子を見せないなんて酒泉君やっぱりおかしいよ!それとも何?酒泉君は本当に私のことを喧嘩相手とか悪友程度にしか思ってないっていうの?そんなのズルじゃん!私だけ酒泉君の事が大好きで私だけ〝いつ告白しようか〟って一方的にドキドキしてるなんて「は?告白?」理不尽じゃんね!酒泉君だって私と同じようにドキドキしてもらわないと公平じゃ……な……え?)
「……あの、今〝酒泉君の事が大好き〟とか〝いつ告白しようか〟とか言いました?」
二人の足が止まり、周囲の音はいつの間に風の音だけに
聖園ミカは口を半開きにしたまま何とか声を発した
「……え?酒泉君、もしかしてエスパーにでも目覚めた?」
「いや別に俺が心読んだ訳じゃないですよ、聖園さんが自分で言ったんじゃないですか」
やらかした、その五文字だけが今のミカの脳内を埋め尽くしている
心の中での独白はいつの間にか外の世界へ、大好きな彼への想いはいつの間にか本人へ
取り返しのつかないミス、もはや〝予定より早く告白してしまった〟などと後悔しているどころではない
自分の意図せぬタイミングでこんな急に想いを伝えてしまったのだ、その恥ずかしさはあまりにも計り知れず────
「……そ、そうだけど?それが?」
「……マジ?」
────聖園ミカ、ここに来てやけくその開き直り作戦
失敗してしまったものは仕方ない、彼女が突然バグスターウィルスにでも感染してリセット能力を手に入れたり未来から聖園デイブレイクが過去を変えに来たりしない限り時間は巻き戻ったりはしないのだから
「ほら、どうせ酒泉君も私と同じような思いでしょ?でもいつまで経っても告白しに来ないから仕方なく私からしてあげよっかなーって☆」
しかしやはり元ティーパーティー、ただでは転ばぬ
彼女の作戦は〝そっちだって私のこと好きでしょ?〟でごり押す作戦、これにより両思いである事を無理矢理成立させようというのだ
またまた変なプライドが邪魔した事によって生まれてしまった謎の作戦、今回ばかりはただで転んでほしかった
「ほ、ほら!酒泉君だって文句言いながらも毎回私の呼び出しに応じてくれてるでしょ!?だからさ、多分酒泉君も私に対してそういう気持ちあるよね!?いや、ある!それかあるけど気付いてないだけだよ!」
予想→確定→願望、悲しい事に聖園ミカの中では〝好きであってくれ〟という藁にも縋る思いが生まれていた
「そ、それにさ?もしそんな思いが無かったとしてもここで私の告白を断るのは勿体無いと思うよー?こんなに強くて可愛いトリニティのお嬢様をゲヘナの一般生徒が捕まえられる機会なんて二度と訪れないと思うけど~?」
涙を流し目をぐるぐるさせながら滅茶苦茶な事を言い出す恋愛クソザコ少女、ついには自身のプレゼンテーションを始めてしまう
聖園ミカと付き合うべき理由を長々と語り始め、それを聞いていた目の前の少年は────
「え、むり」
「……え?」
────声を震わせながら答えた
「いやいやいや急に好きとか言われてもめちゃくちゃ困惑するっていうか今までずっとそんな素振り見せてこなかったし信じられないというか」
「……」
「この後〝ドッキリ大成功!〟の看板を持った桐藤さんと百合園さんが出てきた方がまだ安心するというか」
割と容赦なく理由を言う酒泉、一方のミカは立ち尽くしたまま口を半開きにしている
しかし漸く状況を把握できたのか、突如再起動したかのように慌てて手を振って動き出した
「────っ、い、いや!嘘じゃないよ!?私、本当に酒泉君のこと好きだよ!?」
「えーっと……」
「全然ドッキリとかでもないし!酒泉君の思ってるような事は何もないからね!?ていうか何でこんな正面から伝えてるのに信じられないの!?」
「いや、だって────」
「────アンタ、ゲヘナ嫌いじゃん」
「あ」
ミカの身体が石のように固まる
その言葉はミカが口喧嘩の際に度々宣言してた事実だった
「あんだけ何度もゲヘナのヘイトスピーチ食らっておきながらゲヘナ生の俺が好かれてるってのは……ちょっと……あんま想像できないっていうか」
「……」
「何度も悪口言い合ってたから〝ああ、喧嘩相手とかパシリ的な認識なのかなー〟って……」
「……」
「いや、別にゲヘナを馬鹿にされた事を怒ってる訳じゃないんだ。俺だって正直ゲヘナはクソだと思うよ?何度ぶっ飛ばしても反省しない生徒だったり平気で他人に迷惑を掛ける生徒だったり……実際に他校の生徒に貶されても可笑しくない校風だしアンタに貶されてた時も〝そりゃそうだ〟って思った事もあったし、なんなら俺が一番ゲヘナにムカついてるまであるし」
「……」
「でもなぁ……あんだけ嫌い嫌い言われてたらゲヘナ学園だけじゃなくて普通に俺の事も良く思ってないって勘違いするっていうか……」
「……」
「好きなら好きでもっと態度にしてほしかったっていうか……」
「……」
「え、えーっと……だから、その……告白されてもあまり実感が……すまん」
「……」
「で、でも俺個人としては別にアンタのこと嫌ってたり憎んでたりしてる訳じゃないからさ!これからもお友達……ってか、まあ……喧嘩相手というか……そ、そんな感じで付き合っていきたいなーって……」
「……」
「は、ははは……えっと……じゃ、じゃあ……そういう……ことで……な、なんかごめんな?」
まるで女子が告白してきた男子を振る時の様なフォローの仕方、実際に振られているのは女子の方だというのに
明らかに気遣ったような引き釣った笑みで気まずい空気の中を去っていく酒泉
ミカはその背を追うことなく、ただ見つめて一言
「………………………………え?」
──────────
「…………」
公園のブランコにぽつんと座り込む少女が一人
きーこ、きーこ、と音が響く
時刻は門限の少し前、日が沈み出してるのも相まってより一層悲しい雰囲気が漂う
「……うぅ」
ぐすっと音を立てながら涙を目の端から流す
認めたくなくとも〝失敗〟の二文字が何度も頭の中から浮かび上がる
「なんで……本当に好きなのにぃ……!」
何故か、そんな理由は彼女自身が一番理解している
それはあまりにも単純すぎる理由────素直になるのが遅すぎたから
クソボケである彼にとってゲヘナ嫌いを公言しながらゲヘナ生である自分を誘うミカは〝よくわからん人〟でしかない、むしろ散々煽り合っていながら苦手寄りの感情を抱かれてない時点で奇跡とも言えるだろう
「うぅ……うぅえ……!」
その奇跡を自ら遠ざけてしまったのはミカ自身、途中からでも……少しずつでも素直に感情を表に出していれば酒泉も多少は意識していただろう
しかし少女はそれをしなかった、奇跡は偶にしか起きないから奇跡だというのにそれを当たり前だと思って
……誤解されないように説明しておくが、彼女は別に酒泉からの好感度が下がったり低かった訳ではない、ただ一定値から上がらなかっただけだ
「ひっぐ……うっ……ぅう……!」
振られてから気づいた、それでは遅すぎた
時間は戻らない、この日の出来事はきっと一生ミカの心に残り続けるだろう
勇気を出した告白、それをあっさりと蹴った酒泉
「……私とあの子、何が違うのかな」
頭に浮かぶは酒泉に告白した経験のあるもう一人の少女────正義実現委員会の生徒
聞けば彼女は酒泉に断られた今でも酒泉にアタックを続けているとか、それを許されている彼女を羨むと同時にある考えが浮かぶ
「……そうだ、あの子は振られた後でも何度も酒泉君にアタックしてるよね……」
なら自分も、自分だって何度も挑む権利があるはず
諦めるのはまだ早い、今からでも酒泉の好感度を上げてまた告白しよう
……この決意だけを比べるならミカも正実の生徒に負けていない不屈の心の持ち主に見えるだろう
「私だって……私だって……!」
唯一違うとすれば────
「同情でも何でもいいから……酒泉君の気さえ引ければ……!」
正面から酒泉の心を射止めようとしている彼女とは違い、ミカは真っ向勝負を最初から諦めているという点か
告白(する事)に成功したミカ