通常モンスター
レベル4/光属性/天使族/攻1200/守2100
とある少年のモモトークの画面を開いたまま動かない少女、その頬が赤いのは風呂上がりだからそれとも他の理由からか
「もしもし?サクラコですが……少々お時間を頂いてもよろしいですか?……その、実は中々寝付けなくて……そ、それでですね!もしよろしければ睡魔がやってくるまでお話をと……え?ほ、本当ですか!?ありがとうございます!実は一度〝寝落ちもしもし〟というのをお友達とやってみたかったんです!」
UNOを顔面に叩きつけられてから二日後、結局俺はクラスメイト達に相談したもののろくな返答を貰えず自分だけで悩む事となった
うーん……駄目だ、友達とか悪友に告白されるパターンなんて漫画の中だけだろと思ってたからいざ実際に聖園さんに告白されてもあまり現実感が無い……
これを他の人で想像してみよう、千パーセントあり得ないだろうけどもし告白してきた相手が普段からドンパチしあっている陸八魔さんや黒舘さんだった場合は……うん、多分信じられないな
それか〝俺を手込めにして風紀委員の情報を入手するつもりか!?〟とかそんな風に疑っていたと思う……まあ、何度も言うが告白されること自体あり得ないが
本当に好かれてたとしても日頃から好意を向けられていなければ気付ける筈もなく、そういう事の積み重ねも無いのに急に告白されても〝ああこの人は俺のことが好きだったのか〟とはならない訳で
どんな鈍感クソボケ野郎だって毎日アプローチされていれば少しは他人からの好意に気付ける筈なのに────
『最低だぞクソボケ!』
『終わってるぞクソボケ!』
『暇だぞ構えクソボケ!』
『女の子に暴言を吐くんじゃないクソボケ!』
突然思い出すこの前の記憶
……他に可能性があるとするなら皆が言ってたように俺が本当にクソボケで聖園さんからのアプローチに気づいてなかったとか……か?
それだとしたら申し訳────いやいやいや、だったら向こうだって日頃からゲヘナ嫌いアピールして来なければよかっただけの話だろ
ゲヘナ生の俺の前でゲヘナ嫌い宣言なんてされたら気づけるもんも気づけなくなってしまう、つまり聖園さんにも責任がある、うん
どちらにせよ俺は過去に他の子からの告白を〝空崎さんを支えるという約束を優先したいから〟という理由で断っている、聖園さんだけ特別扱いという訳にはいかんしまた理由を説明して諦めてもらうしかない
「……はぁ」
ここ最近だけで様々な事が立て続けに起きてしまっているせいで思わず溜め息が溢れてしまう
なんか羽沼さんが空崎さんにまたちょっかい掛けはじめたり羽沼さんが変な金色の像を建てたり羽沼さんが定期訓練をもっと厳しくしろとイチャモンをつけてきたり────全部あのカスタヌキのせいじゃねえか死ね
「……ん?なんだ?」
頭の中でゴミカスクソタヌキの悪口を言ってたらピンポーン、という音が俺の思考を中断させた
はて、誰だろうか。回覧板は昨日お隣さんに届けたはず、特撮グッズのプレミアム版も最近頼んだ覚えはないぞ
……っと、とりあえずさっさと出るか
「はーい、今行きまーす」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「えーっと、にんじんとじゃがいもと……」
「……おい」
「玉葱とカレールーと……」
「おいってば」
「あ、お肉は牛肉でいいよね?」
「おいっ!」
「きゃっ……もう!急に大きい声出さないでよ!」
折川酒泉の自宅の冷蔵庫に食材を次々と入れていく少女
彼女の名前は聖園ミカ、つい最近酒泉に〝あまり呼び出さないでくれ〟と頼まれた筈の少女だった
「強引に押し掛けられたらそりゃ大声出しますよ……つーかなんでアンタがウチに来てんですか、まさかこの間の話をもう忘れたんすか?」
「うん?覚えてるよ?あまり呼び出さないでほしいって話でしょ?だからこうして私の方から来てあげたんじゃん」
「……そういう問題じゃない」
確かに呼び出すなとは言った、しかし来るなとは言ってない
そこら辺を曖昧にした自分も悪いかと反省する酒泉、かといってここで許してしまえばこれからも何度も遊びに来てしまうかもしれないと危惧する
「今日は大丈夫でしたけど……最近、周囲から視線を感じる事がちょくちょく増えてきました。多分万魔殿の誰かしらがあのゴミカスクソザコ汚物屑タヌキの命令で俺を見張ってるんでしょうよ」
「だからそう簡単に接触するなって?ちょっと警戒しすぎじゃない?」
「しゃーないでしょ、あのタヌキの思考回路が理解不能すぎて何してくるのか逆に予測できないんですから」
とはいえ、どうせ風紀委員会に対する嫌がらせ以外考えていないだろうと酒泉は考える
それさえ分かっていればある程度は対応できるものの、毎回毎回完璧にやり過ごせるとは限らない
何か一つでもボロを出せばマコトは面白おかしく笑いながらそこを突っついてくるだろう……最悪の場合、風紀委員長であるヒナに責任を取らせる場合も
「……いや、確実にそうしてくるだろうな」
「なにが?」
「なんでも……とにかく!これからは何の連絡も無しに急に押し掛けて来ないでください!」
「……じゃあ連絡したら家に入れてくれるの?」
「それは……前にも言いましたけど暫くは────」
「……とか言っておきながら、本当はこの前の事を気にしてるからじゃないの?」
酒泉は言葉を詰まらせる、どうやら痛いところを突かれたらしい
あの日酒泉はミカの心境状態などお構い無しにハッキリと告白を拒絶した、しかし今更になって酒泉の心は〝あの告白は本気だったのか〟〝彼女の想いは本物なのか〟と悩み出してしまった
それは告白を断った事に対する罪悪感などではない、むしろその部分の答えだけは絶対に変わらないだろう
ならば何に対してか────それは自身に向けられた〝好意〟を疑ってしまった事に対する罪悪感
断るまではよかった、しかし〝好意を信じられない〟と切り捨てたのは言い過ぎだったのではないか
「……っ……別に気にしちゃいませんよ、今でも告白を断ってよかったって思ってますから」
「……ふ、ふーん?」
聖園ミカほどではないにしろ折川酒泉も大概素直ではない、それを忘れてはいけない
その捻くれた性格は特に聖園ミカを相手にしている時に顕著に現れる、故に〝言い過ぎたかもしれません〟と素直に口にすることなく自分は何も気にしていないかの様に取り繕う
「……それよりも聖園さん、なんで食材なんて買ってきたんですか。まさかウチで料理でもするつもりですか?」
「うん?そうだけど?」
「……俺、昼はシロコさんと食いに出掛けるって約束してるんですけど」
「じゃあ予定変更ね☆」
「変更しません、今すぐ荷物持って帰ってください」
「やだ!」
「やだじゃない、幼稚園児じゃあるまいし駄々を捏ねないでください」
素っ気なく、なるべく無関心を装ってミカを帰そうとする酒泉
現在シロコはシッテムの箱を持ってプラナと共に連邦生徒会へ向かっている
精神状態や健康状態の定期的な検査、それが酒泉とシロコが共に暮らす上で言い渡された条件だった
「……そもそも、どうしてウチで料理しようと思ったんです?もしかして俺の胃袋を掴もう的な?だとしたら無駄ですよ」
「…………」
「……マジ?」
無言の肯定、ちょっとした冗談で言った言葉も告白された後では現実感溢れるものとなってしまう
「……なんすか?俺が聖園さんの料理上手なところを見れば〝やっぱ付き合おっかなー〟って気になるとでも?聖園さんがどれほど優良物件だったとしても俺の答えは変わりませんよ?」
「……ほ、本当にそれでいいの?他にもいっぱい役に立てそうなところとかあるけど」
「……はぁ」
再び始まった、始まってしまった聖園ミカによる聖園ミカのプレゼンテーション
こうも必死にアピールされると流石の酒泉も情に流されそうになってしまうもの、しかしその場の流れだけで恋愛云々を決めたくない彼は決して首を縦には振らない
「た、たとえばさ……ほら!私って強いでしょ?だから巻き込まれ体質の酒泉君を色んな危険から守ってあげられるよ!」
「必要無いです、俺だって結構強くなりましたから……てか俺の為だけに盾になろうとしないでください、流石に心苦しいんで」
「うっ……」
それは間違いなくミカの為を思って発した拒絶の言葉だった
しかしミカにとっては自身の心配をしてくれたのは嬉しくても告白を受け入れてもらえなければ何の意味もなかった
「じゃ、じゃあ!私も風紀委員のお仕事手伝ってあげる!特に戦闘とかが絡む肉体労働を私が全部やっちゃえば酒泉君だって楽できるでしょ?」
「他校の生徒を巻き込む訳にはいきませんよ……」
「っ……そ、そうだ!酒泉君って特撮好きなんでしょ?だったら私がそのグッズ買ってあげる!何か欲しい物がすぐに稼いでくるし……」
「ボランティアだってあるんだからそう簡単に時間作れないでしょ……」
何がなんでもと必死に食い下がるミカ、最初から全て否定するつもりだった酒泉はまともに取り合おうとはしない
そんな彼の表情を見たミカは覚悟を決めたようにゴクリと喉を鳴らし────
「じ……じゃあ!別に身体だけとかでもいいから!」
────自ら一線を越えた
「……は?」
「酒泉君だって男の子だもん!だったらちょっとは〝そういう事〟とかにも興味あるでしょ?あるよね!?」
「待て、なにを」
「周りの人達に〝そういう事〟をお願いするのは言い辛いだろうけど……で、でも!私なら別に気にしないから!酒泉君が求めるならいつでも呼び出して……なんなら今すぐでもいいし……」
一度越えてしまった線はすっかり千切れ、一向に元に戻ろうとする気配を見せない
信じられないようなものを見る酒泉の目に気づくこともなく、ミカの発言はより過激なものへと変わっていく
「そ、そうだ!それじゃあ私は一番じゃなくていいよ!風紀委員長の次……二番目の女とかでもいいから!」
「……やめてください」
「それすら駄目ならもう二番目ですらなくてもいいよ!一番下でも……ううん、全然眼中に無くてもいいから!暇な時にぱっと名前を思い出したら適当に呼び出すとかでもいいから!」
「やめてください」
「本当に時々……本当に気が向いたらちょっと褒めてくれるだけでもいいから!ほんの数分構ってくれるだけでもいいから!」
「やめろ」
「お、女としてじゃなくてもいいから……都合の良い道具でもいいから……も、もう一度だけチャンスを────」
バチン、と何かを強く叩いた音がした
縋りながら腰に抱きついていたミカの顔は横を向いており、酒泉の右手がいつの間にか前に出ていた
「え……?」
「ぁ……ち、ちが……俺……」
ゆっくりと、静かにミカの視線が酒泉に向けられる
その表情は手を出した本人だとは思えないほど、酷く悲痛なものへの変わっていた
言い訳でもしているかの様に口をぱくぱくと開け閉じさせている酒泉を見てミカが呟く
「……やっと、手を出してくれたね」
酒泉君、と
酷く歪んだ笑みで
トリニティ総合学園シスターフッド・歌住サクラコ~お出掛け~
通常モンスター
レベル4/光属性/天使族/攻1200/守2100
「次の犠牲者が……」
「ああ、可哀想に……」
威圧するような笑みでゲヘナの少年を連れ回す少女、周囲の人々は少年に同情すると同時に無事を祈った
「酒泉さん酒泉さん!次はあのジェットコースターに……あ……ご、ごめんなさい!こういうのは初めてでした……私ばかり盛り上がってしまうなんて……え?〝俺も楽しい〟……ですか?……えへへ」