〝アリウス〟潰すゾ!!!   作:あば茶

200 / 514
ここだけミカが告白に成功した世界線~その11~

 

 

「あ、クソボケだ」

 

「クソボケおはよー」

 

「今日もしけた面してんねー」

 

「やっと来たか、暇だぞ構え」

 

「開幕ブッパやめーや、それとお前に関してはいつも二言目に構えだよな」

 

 

あんな事件があったというのに日常には案外すんなり戻れるもので、折川酒泉はいつもと変わらぬ挨拶をぶつけてくるクラスの友人達に安堵していた

 

ゲヘナではほぼ毎日のように騒ぎが起きている為、過激な噂程度ではあまり気に留められる事はないのだろう……とはいえ、万魔殿の議長が大怪我をしたという噂があっさり忘れ去られている辺り〝はいはいいつものいつもの〟みたいな感覚で知られている可能性が高いが

 

きっと大多数の生徒がどうせアフロ頭で戻ってくるでしょと思っているに違いない

 

 

「おら、また人様の机でUNOやってんじゃねえ、解散解散」

 

「ちょっと!邪魔しないでよ!今良いところなんだから!」

 

「だから俺以外の席でやれって……」

 

「ドロー2のアタック時、私は手札のドロー4と革命チェンジ!その効果でコストの合計がドロー6になるように手札から追加で発動!」

 

「させるかぁ!スキップの効果で強制的にそちらのターンの残りを全て跳ばしてもらおうか!」

 

「お前らUNOやってんだよな?」

 

 

相も変わらず机を占拠されている酒泉、なんなら机どころかスクールバッグを掛ける部分にも勝手に女子生徒のスクールバッグが掛けられており、椅子の背もたれにも勝手に女子生徒のカーディガンが掛けられている

 

最早折川酒泉の席とは言えない状況下、それでも彼は敵に挑む、何故なら彼は多勢に無勢だろうと屈しない男だからだ

 

 

「おら!邪魔だ邪魔!さっさと退かせ!」

 

「「「「やだ」」」」

 

「ひぃん……」

 

 

折川酒泉は必要以上に食い下がらない、何故なら彼は団結した時の女子の恐ろしさを知っているから

 

なんなら相手が団結してなくても彼は前世で勉強会をしていた時にベッドを独占してきた後輩ちゃん一人追い出す事すらできず敗北した過去を持つ、尚後輩ちゃんは先に課題を全て終わらせていた為ベッドの上からひたすら情けない先輩の勉強姿を見下ろし続けていたとか

 

 

「返せよ……それは俺達の席だ!」

 

「俺達って誰だよ」

 

「誰ってチェイスだろ」

 

「誰だよ」

 

 

授業開始まで時間は残っているため、そこまで無理に追い出そうとはしない酒泉

 

そもそもキヴォトスの授業は先生が教室にやってきて直接教えてくれるようなシステムではなく、BDによる殆ど自主学習に近い形なため、仮に自分の席に着いていなかったとしても誰に怒られるわけでもない

 

それでも追い出そうとするのは彼の授業の価値観が前世基準だからか

 

 

「それよりいつまでそんな所で突っ立ってるのさ、他の人の邪魔になるしさっさと座りなよ」

 

「お前それわざと言ってる?」

 

「私の膝の上、空いてやっせ」

 

「普通逆だろ」

 

「え?やってくれんの?」

 

「おう、その代わり上下左右ランダムに揺れるから気をつけろよ」

 

「振り落とす気満々じゃん────っとお!?」

 

「しっし!あっちお行き!」

 

 

半ば強制的に酒泉の席を独占していた生徒を退かし、椅子を奪い返す酒泉

 

次は机の上のUNOを勝手に片付けて強制的にゲームを中断させた

 

 

「何すんのよママ!まだセーブしてないのに!」

 

「誰がママだ、あと紙のUNOにセーブ機能なんてないだろ」

 

「酒泉ママ……おぎゃらせて……」

 

「暇だから胸吸わせて……」

 

「お前ら逆セクハラって知ってるか?」

 

「セク……」

 

「ハラ……?」

 

「すまん、まさかセクハラ自体をご存知ないとは知らなんだ」

 

 

駄目だコイツら、早くなんとかしないと

 

そんな考えに至った酒泉はスクールバッグもカーディガンも全て外して各々に投げ返す

 

あまりにも雑すぎる扱いに女子達は揃って〝乙女の私物を投げるな!〟と怒るが耳を塞いでいる酒泉には関係のない話である

 

 

「クソボケが相変わらず冷たい……」

 

「今日も世界は残酷だ……」

 

「窓の外眺めて物思いにふけてないでさっさと授業の準備しとけ」

 

「言われなくてもわかってますぅ……ん?ねえ、あれって……」

 

「……ありゃ?」

 

「ん?どした?」

 

「いや、なんか校庭の方にトリニティの生徒が……」

 

「……トリニティ?」

 

 

クラスメイト達の声が気になった酒泉は一緒になって窓の外を覗きに行く

 

すると、校庭の方には白い翼を生やしたピンク髪の少女が────

 

 

「……いや、聖園さんじゃねーか」

 

「マジ?どっかで見た顔だと思ったらめちゃめちゃ有名人じゃん」

 

「なにしにきたんだろ?」

 

「宣戦布告じゃない?」

 

「いや、多分それはもうない……はず……」

 

 

自分達以外にもミカの存在に気付いたのか、同クラスの他の生徒や隣のクラスの窓からも次々と顔を出しはじめる

 

彼女に向けられている視線は好奇心や敵対心など様々な感情が込められている

 

 

「ねえ、あの人が手に持ってるのってメガホンじゃない?」

 

「本当だ……スイッチ探してるね」

 

「買ったばかりなのかな?」

 

「待って、何か言おうと────」

 

《酒泉くうううううううん!!!みてるううううううううう!?》

 

「……はぁ!?」

 

何をするつもりだと思った矢先、突如名指しで呼ばれる酒泉

 

それと同時にクラス中の視線が酒泉に集中して突き刺さる

 

 

「酒泉……お前……」

 

「トリニティの元トップに指名されるって一体何やらかしたのよ」

 

「ち、ちげぇ!俺は何も知らな────やめろバカ手ェ振んじゃねえ!?」

 

 

唖然とする酒泉の存在に気付いたのか、ミカは校庭から酒泉に向かってぶんぶんと大きく手を振る

 

この流石は恋する乙女、気になる彼を見つけることなど造作もないのだろう

 

 

「間違いなく今呼ばれてたよね」

 

「まさか……ティーパーティーまで惚れさせたのか!?」

 

「違っ……くねぇけど!でも俺だってあの人が何しにきたのかさっぱりなんだよ!」

 

「……は?違くないの?」

 

「……どういう事?」

 

「これはこれは……じっくりお話を聞かせてもらわないとねぇ?」

 

「とりあえず今からクソボケの学級裁判を────ん?待て、なんか取り出したぞ?」

 

「あれは……ハサミ?」

 

「酒泉……刺されるような事でもしたの?」

 

「ち、ちがっ……いや割と刺されてもおかしくない状況だったけど!」

 

「……嘘つき」

 

「裏切り者ぉ!」

 

 

メガホンに続いてミカが取り出したのはハサミ、突然の刃物に驚く一同

 

酒泉のクソボケ力が限界突破してついに本当に背中を刺しにきた女が現れた、そんな勘違いをした生徒達が酒泉を強く睨む

 

しかしその直後────ミカの行動によって疑いは晴れる事となる

 

 

「……?なにしてんだろ……」

 

「髪の毛を首のちょっと下辺りで束ねて?……ま、まさか────」

 

「……き、切ったああああ!?」

 

 

次の瞬間、首より下で束ねられたミカの髪の毛がばっさりと切り落とされる

 

地面に落ちる美しいピンクの毛、勿体ないと呟く生徒もいる中でミカは一切悲しむことなく堂々と満足気に頷く

 

そして、再びメガホンを手に持ち、大きく息を吸って────

 

 

 

 

 

 

 

《せんせええええい!!!私、聖園ミカはあああああ!!!》

 

《スポーツマンシップに乗っ取らずううううう!!!ありとあらゆる手を使ってえええええええ!!!》

 

《大好きで大好きで愛しくてしょうがない最愛の酒泉君をおおおおおお!!!ゲヘナ学園とその他の学園から奪い取ることをおおおおおおお!!!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《ここに誓いまああああああああああす!!!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瞬間、窓から外に飛び出す酒泉。ミカの宣誓からの酒泉の行動は早かった

 

まずは窓から下の階の窓際へ、そこから更に見事な壁走りを披露しながら正面玄関の屋根の上に着地

 

後は地面に降りて速攻でミカの元まで駆けつけ────

 

 

 

 

 

「なにやってんだミカあああああああああああああああああああああ!!?」

 

 

 

 

 

────先程のメガホン越しより大きな声量で叫んだ

 

 

 

 

「きゃっ……もう!脅かさないでよ!で、でも名前呼びしてくれたのは嬉しいかな?皆の前で名前を叫ぶなんて酒泉君ってばけっこう大胆なところあるんだね」

 

「照れてんじゃねえよ!?なんつーことしてくれたんだアンタ!?」

 

 

両頬を押さえながらわざとらしく〝きゃっ〟と声を出すミカ、しかし酒泉の心境はそれどころではない

 

良い意味でも悪い意味でも有名人なミカがゲヘナの生徒にアタックしていると知られればまず間違いなく噂は一瞬で拡散されるだろう、それによって困るのは情報統制に尽くさなければならなくなる両学園の組織群だ

 

 

「なんでこんな事をした!?」

 

「え?だって前にも言ったけど私酒泉君のこと好きだし、今のうちに〝酒泉君を狙ってるよ〟って周知させとこっかなって」

 

「やり方が直球すぎんだろ!?色々あったからってこれは流石に吹っ切れすぎだ!」

 

「いいじゃん、好きなんだし」

 

「何の言い訳にもなってねぇ!?み、聖園さん……アンタ一体どこに恥じらいを捨ててきたんだよ……」

 

 

酒泉は別に〝二度と告白しないでください〟とミカに伝えたわけではない、自分に告白するも途中で諦めるも本人の自由だと止めないようにはしている

 

しかしここまで大胆に来られるとは思っていなかったのか、酒泉は声を荒げながら抗議する

 

 

「……しいに……てる……」

「……あん?なんて────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「恥ずかしいに決まってるけど!!?!?」

 

 

次の瞬間、酒泉が目にしたのは真っ赤に染まった顔で目をぐるぐると渦巻かせているミカの姿だった

 

 

「今まで散々〝興味無いけど?〟ムーブしてきた相手に対して堂々と想いを伝えるとか恥ずかしいに決まってるじゃんね!?」

 

「顔赤っ!?あっか!?つーか湯気出てるし!?」

 

「それでも好きな人に堂々とアプローチしたいからこうして覚悟を決める為に髪の毛まで切ったんだけど!?」

 

「分かった!分かったから!一旦離れあづぅ!?」

 

 

赤い顔は更に赤く、顔の熱は更に上昇、渦巻く目は更に高速回転に

 

見事なまでにテンプレ的な恥じらい方をするミカ、その姿はさながら少女漫画のヒロインと言ったところか

 

 

「……つーか、本当に髪の毛切ってよかったのか?なんか勿体なくね?」

 

「勿体ない?何が?」

 

「いや、その……せっかく綺麗な髪だったのにって」

 

「ふ、ふーん?綺麗って思ってくれてたんだ?……まあ、髪の毛なんてどうせまた伸びてくるし……あ、でも酒泉君の好みがロングヘアーだったらちょっと勿体ない事しちゃったかな?自分から武器を捨てたようなもんだし」

 

「……お、おう……そうか」

 

「……しゅ、酒泉君的にはどうなのかな?その……ショートの私って」

 

「……まあ、可愛いんじゃね?」

 

 

ミカからの質問になるべく素っ気なく見えるように答える酒泉、その態度はまるで男子中学生が〝女なんかに興味ありませんよ〟と強がっているような素振りにそっくりだ

 

そんな小さなプライドなど気にも留めず、ミカは顔を明るくさせて素直に歓喜する

 

 

「ほ、ほんと!?よかった~!これで似合ってないって言われたらまた引きこもっちゃうところだったよ~!」

 

「んな大袈裟な……」

 

「……大袈裟じゃないよ、好きな人からは可愛く見られたいもん」

 

「な、なんつーか本当にグイグイくるようになったな……まあ、今のアンタは前に比べて嫌いじゃ────」

 

 

嫌いじゃない、そう答える直前に酒泉の中で待ったが掛かる

 

本当にこのまま答えていいのか?向こうは勇気を出して素直になったっていうのに俺だけ妙な気恥ずかしさやらちっぽけなプライドやらを優先して強がるって、今の俺って最高にダサいのでは?

 

 

(嫌いじゃない、なんて誤魔化すのはちと間違ってるな)

 

 

言葉を止め、口を閉ざし、そして開き直す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今のアンタ、結構好きだぜ」

 

「えへへ……そっか、それなら私も素直になってよか────うぇ!?好きぃ!?」

 

 

 

突然好意を伝えられ、声が上擦るミカ

 

酒泉は別に告白的な意味で好きと伝えたわけではないしミカもそれは理解している……が、それはそれとしてやはり気になる異性からの〝好き〟はかなり強烈な言葉だった

 

 

 

「しゅ、しゅしゅしゅしゅしゅ酒泉君!?今好きって言った!?」

 

「さあ……忘れちゃいました」

 

「いや今言ってたよね!?絶対に言ったよねぇ!?」

 

「聞き間違いじゃないっすか?」

 

「そんなことないもん!この距離で聞き違えることなんてないって!ね、ねえ!もう一回だけ〝好き〟って言ってみてよ!?」

 

「嫌です」

 

「な、なんで!?」

 

 

もう一回もう一回としつこくせがむミカ、あまりにも必死すぎるその表情を見た酒泉はミカの額を人指し指でトンと一突きしてニヤリと笑った

 

 

「俺のことが好きなんでしょう?だったら俺を堕としてみてくださいよ、その時は本気の〝好き〟をもう一度聞かせてあげますから」

 

「まっ……魔性の男……!」

 

 

聞き手によっては一瞬で襲い掛かってくるような挑発を吐きながらミカの背を押す酒泉

 

先程の大声量告白のせいで校庭に野次馬しに来た生徒がじわじわと増え始めた為、酒泉としては大事になる前にミカに帰ってほしかった

 

 

「はいお疲れー解散解散」

 

「えー!?もうお別れー!?」

 

「こっちはまだ授業残ってんの……つーかそっちだって今日は授業あるでしょ?」

 

「体が痛いから休んできちゃった☆……あ、理由は本当だしずる休みじゃないからね?」

 

「だったらさっさと帰って体を休めてくださいよ……」

 

「むー……あんな恥ずかしい思いしてまで酒泉君とお喋りしようと思ったのに────」

 

「恥ずかしいなら帰ればいいわ」

 

 

凍てつくような冷たい声と共に二人の身体の動きが止まる

 

ミカは会いたくない人物に会ってしまったかのような歪んだ顔を、酒泉は壊れたロボットの様にぎこちない動きを見せる

 

 

「人の学園で随分と好き勝手やってくれたわね」

 

「別に貴女だけの学園じゃないでしょ?風紀委員長ちゃ────え?」

 

「空崎さん!これには訳が────え?」

 

 

しかし、声のする方へと振り向いた瞬間に酒泉とミカは二人揃ってフリーズしてしまう

 

そこには確かに空崎ヒナが立っていた……のだが、異変を感じたのはその髪型

 

なんと、ミカと同じくハサミでばっさり切り落としたかのように首から下の髪の毛が切れているではないか

 

 

「えっと……空崎さん?その髪は?」

 

「聖園ミカが髪を切り落とすのを目撃した瞬間に私も速攻で執務室に戻って切ってきたわ……私も覚悟を決めないといけないから」

 

「ふーん?つまり二番煎じって事かな?」

 

「ええ、そうよ。今回ばかりは素直に敗北を認めるわ………まさか立ち直った貴女がここまで成長するなんて、やっぱり敵に塩なんて送るものじゃないわね」

 

「あれ?気付いてなかったの?貴女、敵に塩どころか砂糖と醤油と味醂とその他諸々の調味料を送ってたんだよ?」

 

「その時は肝心の食材の方が腐り切っていたから大丈夫だと思ってたのよ」

 

「あはっ☆……誰が腐ってるって?」

 

 

ミカの初手煽りを煽りで返すヒナ、ミカが酒泉に対して素直になってからは見掛けなくなったこのムーブも他の女相手だと健在である

 

 

「そんな事より酒泉、私の髪についても感想を聞いてもいいかしら?」

 

「えっと……すっごく可愛いです!いつもとのギャップがあって、ショートヘアの空崎さんも最高だなーって……」

 

「……ねえ酒泉君、私の時と違ってやけに素直じゃない?」

 

「え?そうですか?」

 

「酒泉、気にしなくていいわよ。どうせただの嫉妬だから」

 

「私の〝真似事〟で褒められたのがそんなに嬉しいんだね!」

 

「コピーの方がオリジナルよりすんなり褒められてるけどね」

 

「……あの日の続きをここで始めてもいいんだよ?」

 

「別に構わない……って言いたいところだけどやっぱりやめておくわ」

 

「どうして?もしかして自信がないのかな?あ、それか酒泉君の前でピーピー泣かされるのが恥ずかしいからとか────」

 

「だって私、弱い者いじめはしたくないから」

 

「────は?」

 

「あの日と全く同じ無様な敗北姿を酒泉の前で晒したくないでしょう?これは私なりの優しさでもあるのよ?」

 

「……あはは」

 

「……ふふっ」

 

「「……」」

 

「お願いしますその銃を下ろしてください俺が死んでしまいます」

 

 

一触即発どころか既にオーラで殴り合っているようにも見える二人

 

もしヒナとミカが本格的な戦闘を開始した場合、まず真っ先に巻き込まれた酒泉が粉微塵と化し、次にゲヘナ学園が更地となるだろう

 

そして、その戦場には悪魔とゴリラしか残らないだろう

 

折川酒泉はなけなしのちっぽけな脳で考える、この状況を打開する策を

 

〝眼〟が覚醒していない自分では二人を力ずくで止める事は不可能、かと言って話し合いをしてくれそうな雰囲気ではなく、その段階はとっくに通りすぎてしまっている

 

ならばこれしかないと、折川酒泉は行動に移した

 

 

「おっ……俺はどっちも好きですけどねぇ!?」

 

「……」

 

「二人とも元が美少女なんでやっぱりどんな髪型も似合いますよ!うん!いやーどっちも可愛すぎて優劣付けられないなー!?」

 

「……」

 

 

酒泉は二人の女性を平等に褒めて機嫌を取ることを選んだ

 

しかし酒泉は気付いていない、その選択がこの世で一番の悪手だったと

 

優劣付けない、何でも似合う……二人の女性に対するその回答は所謂〝今日何食べたい?〟に対する〝なんでもいいよ〟であり〝どっちの服が似合うかな?〟に対する〝どっちも似合うよ〟という答えとほぼ同義だった

 

 

「……」

 

「……」

 

(動きが止まった!?これは……や っ た か ! ?)

 

 

やったわけねえだろクソボケ、残念な事に二人の表情は俯いてて確認できないが、この瞬間だけは恐ろしいほど真顔になっているだろう

 

しかし酒泉を責めることはできない、何故ならこの状況でどちらかの味方をすれば事態はより悪化していただろうから

 

この状況で被害を最小にまで押さえる最善手、それは────折川酒泉一人が犠牲になること

 

 

「……ねえ、風紀委員長さん。一つ提案があるんだけど」

 

「奇遇ね、実は私からも提案したい事があったの……多分、同じ考えよね」

 

「うん、じゃあ……とりあえず……ね?」

 

「ええ、ここは共闘と行きましょうか」

 

「……え?あ、あの……お二人とも何を────ぬぅおおおお!?」

 

 

突如顔を見合わせ、何の打ち合わせもなく互いに理解したように同時に動き出す

 

ヒナは酒泉の右腕を、ミカは酒泉の左腕を、それぞれ後ろから引っ張って酒泉を校内の方へと引きずりはじめる

 

 

「私達、何を勘違いしてたんだろうね。他の女の子が一番の敵だなんて」

 

「本当ね、一番最初に倒さないといけなかったのは酒泉のクソボケっぷりだっていうのに」

 

「優柔不断って一番良くないよねー」

 

「待って!?俺何かしました!?これから何されるんです!?」

 

「大丈夫よ、ちょっと乙女心をわからせるだけだから」

 

「まず酒泉君の感性を普通の男の子レベルに合わせないと話が始まらないじゃんね」

 

「場所は旧校舎の奥の方でいいわね、あそこならあまり人も立ち寄らないし不良が居たとしても追い出せばいいだけだから」

 

「時間ならたっぷり余ってるからね、酒泉君☆」

 

 

尻を引きずられ、砂埃が舞う校庭

 

二人の少女が淡々と計画を立てる様子を間近で見た酒泉はこれから何が起こるのか理解はできなかったが、きっと恐ろしい事に違いないと不安を募らせる

 

 

「待ってくださいよ!?俺これから授業あるんですよ!?学生の本分は勉強だと思いませんか!?」

 

「ええ、だから人の気持ちに寄り添えるように道徳の授業を開始しましょう」

 

「せんせー、酒泉君はおやつに入りますかー」

 

「入るわ、途中でおやつ休憩も挟むから」

 

「わーい☆」

 

「カニバリズム!?な、なんか急に仲良くなってません!?さっきまでの空気は何処へ!?」

 

「「気のせい(じゃない?)(よ)」」

 

「やっぱ仲良くなってるって!?息ピッタリだって!?やだ!やだ!ねえ小生やだ!?まさか本当に(物理的に)食うつもりじゃないでしょうねえ!?」

 

「……さあ?」

 

「どうだろうね?」

 

「ライナアアアアアアアア!!!助けてえええええええええ!!!折川酒泉が食べられるうううううううう!!!」

 

 

余談だが、この聖園ミカの宣誓(または宣戦布告)はゲヘナ中に広がり、更にそれだけには留まらず噂は他校にまで広まったとか




このあとめちゃくちゃ頑張って酒泉君が逃げた、あとヒナちゃが切った髪の毛はアコが持ち帰ろうとしたけど流石に他の風紀委員に止められた
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。