〝アリウス〟潰すゾ!!!   作:あば茶

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番外編if~ヒロインセイアですまない~(セイアルート)
セイア「君は誰だ?」酒泉「えっ」


 

 

 

「……は?百合園さん?」

 

「………」

 

 

人間本気で困惑すると自然と声が漏れてしまうんだな、階段の下の方で倒れ伏している百合園さんを見て僕はそうおもいました、まる

 

……なんて言ってる場合じゃない、早く声を掛けないと。血こそ出てはいないものの、打ち所が悪ければ頭の中で血が固まって……なんて最悪の可能性も考えられる

 

通常のキヴォトス人はそこまで柔じゃないが、ちょっと前まで床に伏していた百合園さんの身体を思えばそこまで考慮しておいた方が良いだろう

 

 

「百合園さん!大丈夫ですか!?百合園さん!」

 

 

返事がない……が、呼吸はしてる、人工呼吸の必要は無いだろう

 

恐らく百合園さんは俺が今降りた石段から一番下まで一気に転げ落ちてしまったのだろう

 

……くそっ、なんでこんな事態に……俺はただトリニティで宇沢さんと遊んでから帰ろうとしただけなのに

 

まさか帰り道で怪我人に、それも親しい知人に出会すなんて

 

 

「待っててください、今救護騎士団に連絡を───」

 

「……っ、ぅ……」

 

「───っ、百合園さん!」

 

 

スマホをポケットから取り出そうとした瞬間、百合園さんが小さく呻きながらうっすらと目を開ける

 

名前を呼べば何度かパチパチと目を開け閉じし、少し経ってから額を押さえながらゆったりと身体を起こした

 

 

「ここ、は……私は……一体……」

 

「良かった……目を覚ましてくれて」

 

 

とはいえ、つい直前まで倒れていたので安心とまではいかないが

 

救護騎士団への連絡は予定通り行うとして、聖園さんや桐藤さんにも事情を説明しておくとしよう

 

 

「とりあえず百合園さんの関係者の方々に連絡するんで百合園さんはどこかで休んで……あー、近くにベンチすら無いのか」

 

「…………」

 

「しゃーない、俺の上着そこら辺に広げとくんで座っといてください……あ、鞄も置いとくんで枕代わりにでもどうぞ」

 

「…………」

 

「……もしかして意識が朦朧としてる感じですか?それなら「誰だ」やっぱり横になってた方……が……?」

 

 

百合園さんの一言で言葉が止まり、ぽかんと口を開けたままの間抜けな表情になってしまう

 

何を言われたのか脳が理解するよりも先に百合園さんは口を開き、目付きを鋭くしながら再び一言呟いた

 

 

 

 

「君は、誰だ」

 

 

 

 

まるで敵対者と対峙しているかの様な警戒した目付きのまま立ち上がり、背中を見せず向かい合ったまま下がっていく百合園さん

 

そのあんまりな態度にドッキリか何かかと仕掛人の存在を疑ってしまったが、百合園さんの纏う雰囲気がどこかピリピリしている事から本人は至って真面目である事が窺える

 

 

「それ以前にここは何処だ?まさか新たな予知夢か?それにしては妙に現実味のある空間だが……予知夢で無いのならここは本当に現実だというのか?君が私を連れ出したのか?だとすれば君が私を暗殺する為に送られてきた───いや、違う。あの夢で見た場面はとっくに通過している、だからこそ私は死を装って……」

 

「は、はい?すんません、そんないっぺんに言われても……」

 

「待て、確かゲヘナ学園には人間の男子生徒が居ると聞いたことが……まさか君がその……何が目的だ?私からトリニティの情報でも引っ張り出すつもりか?そもそもどうやって雲隠れ中の私の居場所を突き止めた?……ハナコから無理矢理情報を聞き出した訳じゃないだろうな?」

 

「……いやいやいや、まさかも何も今更すぎるでしょ。なんでそんな他人行儀なんですか───」

 

「っ、寄るな!」

「───はっ!?」

 

 

ハンドガンを構えて銃口を向けようとしてくる百合園さん

 

その直前のモーションを見た瞬間、普段の癖で咄嗟に百合園さんの腕を取り押さえにいってしまった

 

引き金を引かれる直前に腕を掴んで垂直に上げさせればタンッ!と一発だけ発砲音が響き、誰も居ない無人の青空に弾が放たれた

 

 

「ちょっ……シャレになりませんって!?やめてくださいよ!」

 

「シャレのつもりはないさ、私は本気だ……それより君の方こそその手を離してくれないかい?レディを口説くつもりならもっと紳士的に振る舞いたまえよ」

 

「離したら離したで返事という名の鉛弾が飛んでくるでしょ!?……ああもう!これ以上暴れるなら聖園さん呼んで無理矢理大人しく───」

 

「───っ、やはりミカからの刺客か?だとすれば私の用意したフェイクニュースが暴かれて……」

 

 

聖園さんの名前を出した途端に眉間に皺を寄せる百合園さん、その表情からしてあまり良印象とは言えなさそうだった

 

なんだ?また聖園さんと喧嘩でもしたのか?……いや、だとしても俺をいきなり撃とうとする理由が────

 

 

 

「そこのゲヘナ!何をしている!?」

 

「セイア様から離れてください!」

 

「……ひょ?」

 

 

じたばた暴れながら拘束から抜け出そうとする百合園さんを全身を使って押さえ込んでいると、石段のてっぺんから女性の声が聞こえてきた

 

偶々通りかかったのか騒ぎを聞き付けて来たのかは知らないが、少し視線を上げてみればトリニティの制服を纏った少女が敵意剥き出しの目で俺を……ん?

 

この状況、かなりヤバイのでは?事情を知らない人が見ればゲヘナの一生徒がトリニティのトップを襲っているという絵面に……

 

「…………あ、いや!?ち、ちが……これは俺から襲った訳じゃなくて────」

 

「問答無用です!」

 

「この不届き者!」

 

 

百合園さんに銃弾が当たったらマズイと判断したのか、二人のトリニティ生は銃を構える事なく直接手を伸ばしてきた

 

キヴォトス人相手に完璧に拘束されるのはマズイと判断して咄嗟に百合園さんから離れて近づいてくるトリニティ生達から距離を取る

 

すると百合園さんへの誤射という不安要素が失くなった二人はショットガンを構えて容赦なく此方に向けてきた

 

 

「セイア様!ここは私達にお任せを!」

 

「このゲヘナ生は我々が裁きます!」

 

「あー……あの、そんな事より百合園さんを早く病院に連れていった方が良いかと……さっき頭打ったっぽいんで混乱してる可能性が───」

 

「黙れ!そんなその場しのぎの嘘が通用すると思うなよ!」

 

「参ったな、誰かに見つかる前にまた姿を眩ましたかったのだが……いや、その前にこの二人は私が無事な事に驚かないのか?」

 

 

時間経過と共に強くなる二人の敵意、その後ろでボソボソと何か言ってる百合園さん、少女襲撃の冤罪を被せられそうな俺

 

ここまで来るとマジで〝ドッキリ大成功!〟の看板を用意しておいてほしいが……うん、多分ガチなんだろうなぁ

 

シロコさん、プラナ、ごめん。もしかしたら俺、地上波デビューしちゃうかもしれない……ニュース番組録画しといてくれよ

 

今の内に弁護士も探しておこう、確かゲヘナの支援者の顧問弁護士に〝コメカミケイスケ〟とかいう七三分けヘアーの勝率百パー弁護士が居たはず、その人を紹介してもらってなんとか冤罪を……あ、でも依頼料高額なんだっけな……

 

 

「……待て、君達は何か勘違いしているようだな。私がいつ彼に襲われたと言った?」

 

「…え?」

 

「セイア様……?」

 

「私はただ友人とじゃれあっていただけだ、少々興奮しすぎて距離感が近くなっていたかもしれないが……」

 

「で、ですが先程は明らかに抵抗して……」

 

「嫌よ嫌よもというやつさ」

 

 

風紀委員会にどう説明しようか、明日から変態を見るような目で見られたら嫌だなーとか考えていたら、まさかの助け船が百合園さん本人から出された

 

しかも独り言を呟いて頭の中で状況を整理したからか、先程の様子とは異なって百合園さんはすっかり冷静さを取り戻しており、再び此方に銃を向けてきそうな程物騒な雰囲気は感じられなかった

 

 

「誤解を招くような真似をしてすまなかったな、これからは場所を考えて触れ合うように心掛けておくよ……ああ、それと出来ればこの事は誰にも言わないでくれ。たかが個人的な交遊関係の事で周りに心配を掛けたくないからね」

 

「は、はぁ……まあ、事件性がなければ別に構わないんですけど……ティーパーティーがゲヘナの生徒と恋人みたいな距離感でイチャついてる時点で大問題じゃないの……?」

「そ、そうですね……」

 

 

イマイチ納得していない表情をしながらも渋々と引き下がり立ち去っていく二人のトリニティ生

 

辛うじて冤罪を回避した事に安堵しながら彼女達の背中が見えなくなるまで見送ると、俺が話しかけようとしたタイミングで先に百合園さんの方から話しかけてきた

 

 

「さて、周囲から人の気配が消えたところで尋ねたいのだが……君はゲヘナ学園の〝折川酒泉〟で合っているかな?」

 

「それ以外に誰が居るってんですか、それともまさか本気で俺のこと忘れちゃったわけじゃないでしょう?」

 

「忘れてはいないさ、存在を知っているだけだがね」

 

「……はあ?」

 

「そうだな、先ずは君が敵で無い事を信じて……情報交換といこうか」

 

「いや、情報交換ってなんの……?」

 

「それは後でだ……ほら、案内はするから君が前を歩いてくれ」

 

 

俺を庇ってくれはしたものの、無防備な背中を見せる程にはまだ信頼してくれていない百合園さんは俺に前を歩くように促す

 

……まさか本当に頭を打った時に脳にダメージを負ったとかじゃないだろうな、だとしたら無理矢理にでも救護騎士団……いや、専門の医者が居る病院にぶち込むべきだろう────

 

 

「先に言っておくが余計な真似はしない方が身の為だぞ、君だって小児性愛者として週間トリニティの一面には載りたくないだろう?」

 

「────それだけはご勘弁を!俺は〝ロリコンの酒泉〟の名を他校にまで轟かせたくない……!」

 

「……ゲヘナでは手遅れだったか」

 

 

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