「なに……あれ……」
私達の世界の空には存在しない謎の輪、それがこの世界の空に浮かんでいた
巨大な投影装置のような物で映像を浮かび上がらせているのだろうか、それとも本当に存在しているというのか
しかし冷静に考えてみればここは夢の世界なのだから実際に輪が浮かんでいても特に可笑しくはない
「……ん?」
様々な考えを巡らせながら空を見上げていると、私の耳にがやがやと話し声が聞こえてきた……かなり小さくだけど
良かった、ちゃんと人が居ることを知れただけでも情報源としてはかなり大きい
そんな安心感を覚えながら再び足を進めていると、今度は少しずつ細道に光が差し込んできた
「どこか広い場所に出られるといいんだけど……」
ここがドのつく田舎とかでない限り、広い場所に出ればある程度通行人が居るはず
誰かしらに声を掛けてここが何処なのか聞いてみよう────
「────は?」
次の瞬間、私の思考は再びフリーズした
細道を抜けた、広い場所には出た、人だって沢山居た
ただ────その〝人〟の容姿が私の知ってる〝人〟から大きくかけ離れていた
「でさー、その時うちの上司が────」
「そちらも大変ですねぇ……こっちの部署も────」
その辺の飲食店の前で会話している二人の人間……じゃ、ない……よね……?
まず一人はロボット、少々顔が丸っこくて横に長い機械
もう一人は……犬、本当にそのまんまの犬が立って人間の言葉を発している
なんだ、この不思議世界は、どこが普通なの
「ねえねえ!この後どこいく?」
「そうだなー……クレープでも食べに行く」
「さんせーい!」
今度は近くを通りかかった人達の方に視線を向ける、するとそっちでは普通の人間の姿をした三人の女子学生達が楽しそうに会話をしていた
良かった、この世界には普通の人間もちゃんと存在して────待て
本当に普通の人間なのだろうか、よく見れば彼女達の頭上に何か輪の様な物が浮かんでいるではないか
それはキヴォトスの空に浮かんでいた物と非常によく似ていた
「……羽?」
驚愕はまだ続く
その三人の学生はなんと背中に銃を背負っていた……どころか、背中から羽を生やしていた
否、その三人だけではなくもっと全体を見渡すと全ての学生達が似たような格好をしているではないか
一体日本はいつから銃社会に染まってしまったのだろうか……いや、そもそもここは夢の中であって日本ではない可能性もある
だとしたら私は何故こんな物騒な夢を視ているのか、もしかして自分では気づいていないだけで本当の私は結構過激な願望を抱いているのか
「……いやいや、本物の銃なわけないでしょ」
そうだ、あれは多分モデルガンとかそういう類いの物だ。彼女達は全員サバイバルゲーム愛好家で、偶々ここらの土地にそういう会場があるだけだ
あの羽だってきっとコスプレに違いない、これなら辻褄が合うしきっとそうなんだ
「……ってそうだ、ぼーっとしてる場合じゃない、さっさと移動しないと────っ?」
この街らしき場所を散策して少しでも情報を集めようとしていると、少しずつ自分の方に視線が集中しているのが分かる
どうして見られているのだろう、そう思って自分の格好を改めて確認してみる
「……あ」
ドピンクのパジャマ、それが今の私
どうやらこの格好で出歩く事はこんな異世界みたいな場所でもおかしいらしい
「…………」
それなりの恥ずかしさを感じながら私は足をUターンさせ、あまり目立たないように先程の細道に戻った
決めた、次からは路地裏とかそういう人があまり来なさそうな場所を通ろう
この格好は流石に目立ちすぎる、下手すれば家出少女と勘違いされるかもしれないし
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情報収集は上手くいった……って程じゃないけど、それでも最低限の情報は集まった
まず、ここは〝トリニティ〟という学校が管理している地区らしい。学生なのに知らない人がいるなんておかしいって言われてしまうくらい有名な学校だった
次にあの空の巨大な輪、あれに関しては何時から存在するのかも誰が作ったのかも何もかもが不明だった。しかしただ浮いてるだけで何の変化もないなら大して気にする必要もないのかもしれない
それと他にも気になる言葉が出てきた、それは〝外〟という言葉
あまりにも物事を知らなすぎる私に対して情報収集の為に会話していたロボットが〝君、もしかしてキヴォトスの外から来た子?〟と言い放ったことがあった
キヴォトスというのはこの世界の名前らしい、だとすると会話の内容から〝外〟はここと違って喋る犬や羽根を生やした学生など存在しないと考えるのが妥当だろう
……それにしても
「いつまでここに居ればいいんだろう」
この夢は全く覚める気配がない、こうも長続きしてしまうとここは現実なのではないかと勘違いしそうになってしまう
無論、それはあり得ないと分かっている。現実世界に喋る犬だの意思を持つロボットなどは存在しないし、私の住む日本の空にあんな輪は存在しないのだから
ここが夢でなくて何だと言うのか……突然別の世界に転送されたとか?それこそ馬鹿馬鹿しい
「……はぁ」
先輩が生きてた頃の夢ばかり見るのも精神に来るが、こんな訳の分からない夢もそれはそれで御免だ
それなら辛い思いをしてでもずっと先輩との思い出に浸っていた方が何百倍もマシ……いや、嬉しかった
……なんて、今更心の中で素直になっても意味無いけど
「こんな世界で歩き回らなきゃいけなくなったのもきっと先輩のせいだ、そうに決まってます」
理不尽ながら先輩に責任を押し付けてみる、実際先輩がいなくなってから夢を見る頻度が増えたんだし強ち間違いでもないだろう
しかし今は亡き人を罵ったところで事態は好転しない、さっさとこんな訳の分からない世界からおさらばしなければ
……とはいえ、夢から自分の意思で覚める方法なんて私は知らないけど
頬をつねるとかそういうテンプレ的な行為はとっくにやっている、ただ頬が痛いだけだった
「痛みはちゃんと感じるなんてまさか本当に……ん?人の声?」
目立たないように人の少ない路地裏を進んでいたのだが、今私が歩いている道の先から女の子の声が複数聞こえてきた
困った、複数人とは出来るだけ話したくない……今の格好的に
「……まあ、早歩きで通り過ぎればいっかな」
コツコツと音を立てながら歩いていると予想通り少女達の姿が見えてきた
人数は四人、全員羽が生えていて銃を背負っている
「───!───ッ!」
「────!?」
なんだろう、何やら険悪な雰囲気で口論している……気がする
なるべく視線を合わせたくなくて俯いていたけど、少し顔を上げてみたら三人の少女が一人の少女に詰め寄っていた
「だーかーらー!ちょっとその香水貸してって言っただけじゃん!どうしてそんな嫌がるのよ!」
「だ、だって貴女達、この前も似たようなことを他のクラスメイトに言って返さなかったでしょ!?」
「あれは返し忘れちゃっただけだって、ねー?」
「そうそう!そしたら本人が〝もういいです〟って譲ってくれたんだよねー?」
「そ、それは貴女達に歯向かえなくて諦めただけでしょう!?」
……白い制服を纏った羽付きの少女、そんな天使のような見た目からは程遠い性格をしてますね彼女達は
こんな不思議な世界でも現実と同じようにイジメやらカツアゲやらは存在するようで、いよいよこの世界が夢でない気がしてきました
「違うって、私達ちゃんと確認したもんね?」
「そうそう……全員その場で聞いてたし!」
「さ、三対一で脅しただけじゃないですか!卑怯ですよ!」
「えー?別に脅したつもりなんてないけどなー、向こうが勝手に怯えてたんじゃない?」
あまりにも陰湿な会話、聞いているだけで胸糞悪くなる……といっても別に助けるつもりはないけど
詰め寄られてる子は別に私の友達ではないし、そもそも夢の世界で人助けする意味なんて無いし
だからまあ、あの子には悪いけどここは素通りさせてもらおう
「────っ、───!」
「───!───!」
後ろで何が起ころうと私には一切関係ない
「─────ッ!!」
「───!?───!!」
先輩みたいに誰かの為に頑張れる人ならあの子を助けただろうけど、生憎私はそこまで他者の為に必死にはなれない
だから……
「三人掛かりで上に立った気になれるなんておめでたい頭ですね、羨ましい限りです」
「……はぁ?」
……何を無意味な事をしているのだろう、私は
どうせ目を覚ましたら全て無かったことになるのに、なんなら私自身の記憶からも消えているかもしれないのに
ただ、先輩ならこうしただろうなと考えただけなのにそれを実行に移してしまうなんて……私の頭の出来は先輩と同レベルになってしまったのだろうか
「……アンタ誰?トリニティの生徒じゃないよね?」
「部外者が口を出さないでくれる?」
「ほら、さっさと帰ってくれない?」
「ええ、言われなくても……ほら、帰りますよ」
「えっ?ちょっ……!」
詰め寄られていた子の手を握って無理矢理その場から離脱……しようとした瞬間、私の腕に痛みが走る
顔を歪めながら痛みを感じた部分を見ると、私の腕が陰湿な生徒の手に掴まれていた
……いや、力強すぎでしょう、見た感じだと私と年代は近そうなのに
「……なんですか?まだ何か用でも?」
「なんですかはこっちの台詞なんだけど?なに勝手にそいつまで連れていこうとしてるわけ?」
「なーに?それとも貴女が代わりに私達と遊んでくれるの?」
「私達は別にそれでもいいけどねー」
「はぁ……先行っててください」
「え?で、でも……」
「いいから」
おずおずしながらもその場に立ち止まろうとする被害者Aを背中を押す形で無理矢理立ち去らせる
すると目の前の女達はにやにやと意地の悪い笑みを浮かべながら私を囲んできた
「へー?正義のヒーローみたいでカッコイイねー?……銃も何も持ってないくせに」
「そういえばコイツ丸腰じゃん!」
「いやいや、流石にどっかに武器は隠してるでしょ……てかなんでパジャマなの?」
武器?この人達はもしかして中二病を拗らせてしまった可哀想な人達なのだろうか
それかそういう設定で遊んでいるだけとか……驚きました、女子にもそういう子はいるんですね、男子特有の病かと思い込んでましたよ
「……なによ、その目は」
「いえ、別に……妄想するだけなら自由ですから」
「その可哀想な人を見るような目、今すぐやめてくれる!?」
声を荒げた生徒が私の胸ぐらを掴んで壁に押し付けてくる、相変わらず力強い
下手すればそこらの男子より強いのではないだろうか……先輩との腕相撲以外で比べたことがないので分かりませんが
「すぐに暴力に頼るなんて自分が馬鹿だって言ってるようなものですよ」
「はぁ?何言ってんの?こんなの暴力の内にも入らないでしょ、銃で撃った訳でもあるまいし」
「銃?銃というのはその背の玩具のことですか?」
「……ねえ、もうコイツやっちゃわない?」
「……さんせ~い、相手するのも馬鹿馬鹿しくなってきたしちゃっちゃと終わらせようよ」
「アンタが悪いのよ?こっちは最初に警告してあげたんだから」
目の前の女は私の胸ぐらを離すと、今度は自身が背負っていたモデルガンを私の脚に向けてきた
モデルガン……それなりに痛そうですが、服の上からならあまり大したダメージにはならないでしょう
「泣いたってやめてあげないから」
数発撃たれて相手が満足してくれるならそれでよし
そんな事を考えながら、私は引き金を引こうとする女の指をじっと見つめていた
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「わーれらはゲーヘーナーせーいー♪たくましーいかーらだーのせーいとーたちー♪」
糖分、それはこの俺折川酒泉の身体の九分九厘を構成する重要な栄養素
つまり今俺が手に持っている〝奇跡の限定販売!ミラクル5000ボックス詰め合わせセット!〟も俺が生きる上で必須なのだ
「さーとうぶんーをーいーれーろ♪ミールクをいれてすーすーめー♪」
いやー買ってしまった、買えてしまった、俺の後ろで何か言いたげに見ていた生徒達には申し訳ないがラス1ギリギリで買えてしまった
まさかの当日いきなりモモッターで商品の告知がされるってんだからビックリだよな、しかもその当日限定販売とか期間限定すぎるだろ
何はともあれ本当に買えてよかった、店に並んでる時ずっと不良っぽい猫さんやスイーツ大好きな正実さんに睨まれてたけどラス1が俺なら仕方ないよね、うん
あと正体不明のシスターフッドの長も謎のオーラを発してたけどあれは別に俺を脅してたんじゃなくて買えるかどうかハラハラしてただけだと思う……他の人達は怯えてたけど
相変わらず不憫な人だ、相変わらずと言っても接点ほぼ無いけど
「ああ、ミラクル5000!貴方はどうしてミラクル5000なの!?」
「ままー!あの人ふくろにはなしかけてるー!」
「しっ!見ちゃいけません!」
ミラクル5000まじミラクル、ちょうリスペクトっす
さて、帰ったら早速シロコさんにも分けてやるか、出来ればプラナにも食べさせてあげたいけど……そうだ、アロナさんに頼もう
あっちのシッテムの機能は無事だし多分ケーキとかも転送できるだろ、それならプラナを一旦アロナさんの方に送ればいいだけだ
よし、プラナの分も残しとくか
「甘味だけだ!!この世には甘味だけが残る!!」
「ままー!あの人こわーい!」
「本当ね……正実に通報した方がいいかしら……」
……うん、子供を怖がらせるのは良くないよな、自重自重っと
にしても今日は本当に運が良かった……もしかしたらこのケーキとの出会いは人生で一番素敵な出会いだったかもしれない
これ以上に素敵な出会いなんて俺には到底考えられない
「今日は良い事ありまくりんぐだなー……あん?」
そんなハッピーわっぴ~な気分でいると俺とは正反対に不幸そうな顔をしたトリニティ生を発見した
不幸そうっていうか……不安そう?心配そう?みたいな?
ちょっとだけ観察してみるとオロオロと辺りを見渡しながら誰かに声を掛けようとしていた、なんだ?迷子か?落し物か?
「あのー……大丈夫ですか?」
「え?わ、私?」
「ええ、なんか挙動不審だったんでつい……何か困り事でも?」
道に迷った程度なら案内できると思って事情を尋ねてみる
すると、トリニティ生は数秒言葉を詰まらせた後に意を決したかのように口を開いた
「あ、あの……た、助けてほしいの!」
「はぁ……元より助けるつもりで声を掛けましたけど……それで、俺は何をすればいいんです?」
「そ、そうじゃなくて……私を助けてくれた人を助けてあげて!」
「……んん?どういう事っすか?」
「その……実はさっきまで柄の悪い人達に絡まれてて……そこに割って入って私を逃がしてくれた人がいるの!でもその人……た、多分今も絡まれてると思って……」
「ははぁん……なるほど?」
大体分かった、この世界を破壊する
……というのは冗談で、つまりこの人は援軍を求めてたわけか
「貴方って折川酒泉よね!?すっごく強いのよね!?」
「あ、そうです、すっごく強い折川酒泉です」
「たった一人でゲヘナの問題児を壊滅できるって噂の!」
「……まあ、準備すればやれなくもないかもだけど……」
「空が赤くなったあの日に突然現れた塔を素手で破壊したって噂の!」
「えっ」
「裏で空崎ヒナを支配し錠前サオリと聖園ミカを纏めて殴り倒して剣先ツルギの再生能力を上回るスピードで傷を付けて近接戦闘最強の美甘ネルを組み伏せて嘗てアビドスに存在した伝説の生徒・暁のホルスを下したと噂の!」
「それ多分別人ですね」
噂に尾ひれがつくなんてレベルじゃねえ、噂にガトリングガンとロケットランチャーが装着されてる
誰だよその化物、そいつ絶対に折川酒泉じゃねえよ……いや、いずれそれくらいの強さにはなりたいと思ってるけどさ
でも流石に虚妄のサンクトゥムを素手で破壊するのは無理です、はい
「まあ、噂みたいなチート野郎ではないですけど……自分で言うのもなんですが結構強い方なんで大抵の争い事はなんとかできますよ」
「知ってる!正実との戦術対抗戦見てたから!」
「あ、どうも……んで、その人は今はどこに?」
「こっちよ!まだ移動してないなら近くにいるはずだから!」
「あいよっと」
自分の実力が知れ渡るというのは男の子なら誰でもちょっとは嬉しかったり……なんて言ってる場合じゃねえ
これ以上無駄話する前にさっさと行かねえと
「……平和な一日になると思ったんだけどなー」
必ずどこかしらで鉛弾が暴れる世界、学園都市キヴォトス
前世基準で考えるとそもそも平和な場所なんて一切存在しないのかもしれない
「……まあ、そんな場所に慣れちゃってる俺も俺だけど」
平然と銃をぶっぱしてる俺を前世の人達が見たら一体どんな反応をするのだろうか……なんて、こんな事を考えても意味はないけど
前世は前世、今世は今世、価値観切り替えてこ
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「……え?」
私の脚から、赤い液体が飛び出す
私の脳は固まったまま、目の前の現実に困惑している
目を見開いて驚愕している彼女達の表情も、流れる赤い液体も、全てが止まって見えた
「────」
その静止した時が動き出す瞬間、脚にかなりの痛みを感じて
「────ぁ」
待って、これ、かなり痛いなんてレベルじゃない
「────ぁ、ア、ああ゛あアああああ゛あ゛あっ!!?」
次の瞬間には、恥も外聞もなく大声で叫んでいた
なに、何がおきたの
あしが、痛い
血がでてる、じゅうはほんもの?
「ぅ…っ…ぐ……ぅうっ!?」
なんで、いたい、ゆめじゃない?あり得ない、こんなのげんじつてきじゃない
だめ、たえられない、いたい
「なっ……アンタなにやってんの!?」
「ち、違っ……私だってこんな事になるなんて思ってなかったわよ!?コイツなんでこんな弱いのよ!?」
「ね、ねえ……コイツもしかして先生やゲヘナのアイツと同じで外から来たんじゃ……」
「そ、そういえば頭の上に何も浮かんでないし……なんで確認する前に撃ったのよ!?」
「う……うるさい!アンタ達だって乗り気だったでしょ!?」
なにか言ってる、せんせい?ゲヘナ?なんのはなし?
わからない、いたい、しんじゃう、でも、しねばせんぱいにあえる?
「どうすんのよこの状況!?」
「し……知らない!私のせいじゃない!」
「ね、ねえ!もう放っておいてここから離れようよ!?」
「そんなことしたら後から通報されるでしょ!?」
「じゃあなに!?正直に〝カツアゲの邪魔をしてきた市民を銃で撃って重傷を負わせました〟って伝えるつもり!?」
あいたい、せんぱい、あいたいです
「────!」
「───、───?」
おねがいです、もういちどだけ、かおをみたいです
「───銃声──って」
「──危険───下がっ───」
しにたくないです、しぬまえにあいたいです
「いた!あの人!あの人が私を助けてくれた……っ!?そんな、血が……!?」
「少し遅かったか……ちょっとこの袋持っててくれ、すぐに終わらせ……て…………?」
「ど、どうしたの……?」
「………………嘘だろ?」
せんぱい、せんぱい、いたいです
くるしいです、あいたいです
「あり得ない、なんでアイツが、違う、そんな筈はない」
「な、なにを言ってるの!?早くあの子を助けようよ!?」
「ここにいるなんて、んな馬鹿な、まさかアイツも?なんで、死んで────いや、それより」
いたい、いたいいたいいたいいたい
「ああもう!ねえアンタ!この事誰にも言うんじゃないわよ!?……聞いてんの!?」
「無理だよ!まともに話なんてできる状態じゃないし……やっぱり逃げようよ!?」
「わ、私は撃ってないから!責任負うならアンタ達だけにしてよ!?」
「わ、私だって撃ってないし!」
「はぁ!?何よそれ!?私一人が悪いっていうの!?」
たすけて、せんぱい
「お前らさ、誰に何してんの?」