オレのそばに近寄るなああ─────ッ!!!
「うふふ♡大丈夫ですよ、絶対に似合いますから♡」
後ろからスク水で校内徘徊していた変質者に追いかけ回される
それだけでも絵面がヤバイのだが、よく見ると彼女はブルアカプレイヤーなら誰もが知っている〝覚悟礼装〟を持っており……
「コハルちゃんを泣かせた罰ですよ、大人しく捕まってください♡」
ふざけんな!男の娘でも中性的でも女装男子でもない、ごく普通の男の面でしかない俺がそれを着てみろ!とんでもないグロ画像が完成するぞ!?
「大丈夫です♡そういう需要もありますから♡」
ねえって!?
「あります♡」
駄目だ、全く止まる気配がない!そもそも何処から持ってきたんだよそれ!シスターフッドから持ち出した訳じゃねーだろうな!?
いや、今はそんなことを考えてる場合じゃない……とにかく逃げ切らないと……!あの曲がり角で───
「~~♪……えっ?ハナコちゃん!?それに貴方は……」
───あっっっぶねえ……!
突然曲がり角から出てきた阿慈谷さんに激突する寸前でギリギリ踏みとどまる、廊下は走ってはいけない(戒め)
す、すまん!悪かった、阿慈谷さん!
「い、いえ……大丈夫ですけど……あれ?どうして私の名前を……確か初対面ですよね?」
え!?そ、それは……下江さんから聞いたんだ!
「あっ、コハルちゃんの……」
「追い付きましたよ♡」
ヒィッッッ!?
阿慈谷さんと会話してる間に追い付かれてしまった……さらば、俺の尊厳……
「あ、あの……ハナコちゃん?これは一体……?」
「こんにちはヒフミちゃん、今から彼にこれを着せるんですよ♡」
「……えっ!?」
「コハルちゃんを泣かせた罰です♡ちゃあんと反省してもらわないと♡」
「そ、それは流石にやりすぎでは……?」
「あら?そうでしょうか?」
「色々と危ないといいますか……」
(社会的な)死を覚悟していた俺だったが、阿慈谷さんが浦和さんを説得してくれてることで希望が見えてきた
いける……いけるぞ!これなら────
「でも………確かにコハルちゃんを泣かせた罪は重いですね」
────え?
「酒泉君……でしたよね?」
は、はい……
「少し………」
「お話ししましょうか?」
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「ごめん、正実の方の用事が長引いちゃって……あれ?酒泉?何でここに……」
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい
「な、何があったの!?」
「あっ、こんにちはコハルちゃん♡」
「こんにちは……ああ、これですか?これは……〝あはは〟……気にしないでください」
ごめんなさいごめんなさいごめんなさ……ヒィッッッ!!?
「酒泉!?」
補習授業部としての活動をしようといつもの教室に向かったら、何故か酒泉が怯えていた
あははやだ……あははやだ……
「……………」
ゆるして……ゆるして……
「………あはは」
ピィッ!!?
「……………」ゾクゾク
「ヒ、ヒフミ?」
「……ハッ!?な、何でしょうか!?」
「いや、どうして酒泉がここに居るのか聞いてるんだけど……」
「その……さっき偶然そこで会いまして……お互いにコハルちゃんの知り合いってことでちょっとお話ししてたんです」
「そうなの?」
「はい………ですよね?酒泉君」
え?い、いや……
「あはは…………」
ヒッ……は、はい……その通りです……
「……………」ゾクゾクゾク
なんか納得いかないけど……ヒフミが怖いから余計な事は言わないでおこう
机の横に鞄を掛けて教科書を取り出す、確か次の範囲は………
……あれ?そういえば酒泉がこの場に居るってことは……直接勉強を教えてもらえるってことじゃ……
「待たせた、皆」
「アズサちゃん、こんにちは!」
「……ところで、何で酒泉がそこで震えているの?」
「ああ、それは………」
今だッ!
「あっ!に、逃げました!」
「うふふ……逃がしませんよ♡まだまだたっぷりと〝お仕置き〟が残ってるんですから♡」
……だ、駄目よ!酒泉には成長した私を見てもらうんだから!頼るなんて……
「待っててくださいね、コハルちゃん!すぐに連れ戻してきますので!」
「アズサちゃん、ここはお願いしますね?」
「え?よ、よく分からないけど………分かった」
………で、でも、「また勉強を教えてほしい」って約束したのは私からだし……勝手に約束を無かったことにするのも悪いよね……
「ね……ねえ、酒泉。ちょっと分からないところがあるんだけど……」
少し緊張しながら酒泉に話しかけ………あれ?
「……酒泉は?」
「突然走り去っていったぞ」
「えっ……アズサ?いつの間に?」
「ついさっき来たところ」
「……ヒフミとハナコは?」
「何故か酒泉を追いかけていった」
「………」
「………コハル?」
「な、何よそれ………また酒泉に勉強を教えてもらえると思ったのに、どうして他の子と追いかけっこなんかしてるのよ……そうやってまた私のことを置いていくんだ……私が悲しんでる間にも他の子と仲良くしてるんだ……どうして私には何も言ってくれないの?私のことなんてどうでもいいの?私なんかには興味が無いの?私は酒泉のことばかり考えているのに……どうして……」
「コ、コハルがまた壊れた……」
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「酒泉君!どこですか!コハルちゃんが待ってますよー!」
「こちらの服のサイズが合わなければ後で〝調整〟しますので……♡」
「そ、それは本当に止めた方がいいと思いますよ……?」
必死に走って何とか外まで逃げ出せたのは良かったものの、キヴォトス人の全力疾走によりすぐに距離を縮められる
何とか途中で物陰に隠れることができたが、これでは見つかるのも時間の問題だ
「それほど遠くには行ってないと思うんですけど……」
「ここら辺から探してみますか?」
ああ、今度こそ終わりだ……さらば、俺のトリニティ生活────
「………何か探し物?」
「ただ事ではない雰囲気ですが……」
────と思った瞬間、二人の女性が阿慈谷さん達に話しかける
あれは………
「あ、貴女は……?」
「ゲヘナ学園の風紀委員長、空崎ヒナさん。そして行政官の天雨アコさん………ですね?」
「えっ!?風紀委員会の方達ですか!?どうしてトリニティに……」
「エデン条約絡みの仕事で来ただけ」
空崎さんに天雨さんか……そういえば、今日はゲヘナから訪問者が来るって話を正実の子から聞いたな……
「………それで、貴女達は何を探していたの?何か必死だったけど……」
「その……ある人物を探していまして……」
「……それってもしかして男の子?」
「え……?もしかして見かけたんですか?」
「うん、さっき凄い勢いで向こうに走っていったから……」
そう言って俺が隠れてる場所とは違う方角を指差す空崎さん
阿慈谷さんと浦和さんがその方角を見た瞬間、二人にバレないようにコッソリと空崎さんがこちらに目配せをしてきた
まさか……助けられた?理由は分からんが……ここは厚意を無下にしないようにしよう
足音を立てないようにコソコソと歩き、少しずつ離れていく
サンキュー空崎さん!縁があれば借りを返すぜ!
「………委員長、何故彼を?」
「分からない」
「え?」
「分からない、けど…………何故か助けたくなった」
「………ま、まさか委員長……あの男に一目惚れを!?で、ですが!彼はトリニティ────ちょっ……待ってください!委員長!ヒナ委員長!」
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念のためトリニティ学園から結構離れた場所まで逃げてきた
少し視線を斜め下に落とすと河川が見え、辺りには虫の鳴き声が聞こえてくる
へぇ……こんな所あったんだな、知らなかった
民家が一件も存在せず、周りには人の気配が全く感じ取れないことからあまり有名ではないことが窺える
田舎の更に端っこ……って感じだ
さて……今すぐ戻ると大変な目に遭いそうだし、しばらくブラブラしてますかねぇ……
偶にはこうして自然の空気を吸うことも大事────ん?なんだあれ?
少し視線を奥に向けると何かが川沿いに設置されているのが目に入った、あれは………キャンバス?
恐らくその場から見たであろう光景が描かれており、それ以外にも何枚かの絵が近くの組立式の台に置かれていた
ひまわりの絵だったり何か暗い世界観の絵だったり色々とあるが、その中でも一番心を惹かれたのが……
様々な色が混ざりあっているぐちゃぐちゃの絵だった
一見適当に塗られたようにしか見えない絵だが、何故かそのぐちゃぐちゃ具合が〝綺麗だ〟と思ってしまった
芸術家じゃない俺には上手く表現できないけど……その……必死に描かれている感じが凄く良い
……これ描いた人居ないのかな?良い作品を見せてもらったお礼を言いたかったんだけど……
………それなら────
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「ふぅ………黒服め、シャーレの事について語り出したかと思えば一人で勝手に興奮してしまうとは……」
「お陰で会議が長引いた………むっ?少し席を外している間に……この紙は……」
「これは………」
「……………」
「……………ふむ」
「悪くないな」
《凄く綺麗な作品でした》