「先輩───っ!」
「まだ動くな、脚痛むだろ?」
身体を起こして先輩に駆け寄ろうとすれば撃ち抜かれた右脚に痛みが走る
でも今はこんな痛みなんてどうでもいい、だって聞きたい事が山程増えてしまったのだから
「……先輩ですか?」
「ん?」
「今、私の目の前に立っているのは本当に死んだ筈の先輩なんですか?」
「ああ、俺は確かにあの雨の日にトラックに轢かれて死んだ筈の折川酒泉だ」
あの日の天候や死因までハッキリと答えられた、つまりこの人はそっくりさんとかでもなく正真正銘の酒泉先輩だ
……でも、まだ解せないところもあります、それはこの世界の事です
「……じゃあなんですか、現実と受け入れるにはあまりにも滅茶苦茶すぎるこの街は私達の世界に実在した都市だと?」
「あー……いや……そもそもここは俺達が暮らしていた世界じゃないんだ」
「……異世界とかそういう類いですか?」
「その通り……と言っても俄には信じがたいだろうけどな」
当たり前だ、異世界だの何だのといった話は前の世界でもフィクションの中でしか聞いた事がない
自分がその当事者になってしまったなど、簡単に受け入れられるわけがない……けど……こうして実際に体験してしまった以上は嫌でも受け入れるしかないのだろう
「……先輩」
「ああ」
「甘い物と特撮が大好きだった先輩」
「今でも大好きだぜ」
「鈍感でクソボケで……」
「おいおい、それはちょっと余計じゃ────っとぉ?」
「それでも優しくて……大好きな先輩」
気付けば、私の身体は勝手に動き出していた
脚の痛みを無視してベッドの上から先輩の身体に抱きつき、自身の両手を先輩の背中に回す
強く、強く、逃げられないように、逃がさないように抱き締め続ける
「会いたかったです、先輩が死んだ後もずっとずっと、先輩を求め続けてました」
「美咲……」
「でも、先輩はもういないから、それが叶わないと知ってても、それでも諦め切れなくて」
涙と鼻水でぐちゃぐちゃになろうと自分の言ってる言葉が滅茶苦茶だろうと関係無い
今はただ、また先輩に触れられた事への喜びと感謝を
「馬鹿、なんでいなくなっちゃうんですか、なんで私をおいていったんですか」
「連れていくわけにはいかないからな」
「しってます、それでも勝手にしなないでください」
「……ごめん」
「あやまらないでください、先輩はわるくないのに」
理不尽な死に対する怒りは先輩だって抱いているはず、だというのに私の八つ当たり染みた言葉を先輩は頭を撫でながら優しく聞いてくれた
そんな先輩の行動を見て〝ああ、本当に前世の先輩なんだな〟と再認識してしまい、涙が余計に止まらなくなってしまう
「……ばか、ばか」
「うん、うん、本当に馬鹿だよな、こんな先輩想いの後輩を残して勝手に死んじまうなんて」
「もうはなしません、これからはずっといっしょです、だからこんどこそ私の前からいなくならないでください」
「……ああ」
「女の子をなかせたんですから、せきにんとってください」
「任せろ、何だって聞いてやる」
「……じゃあ、せんぱいのむねかしてください」
ぐずりと啜り泣きしながらそう頼むと、先輩は黙ったまま私を抱き締め返してくれた
でもこれじゃ足りない、もっと、もっとだ
「もっとつよくだいてください、私の顔がかんぜんに埋もれるくらいつよく…………いまから、おおごえでなきますから」
「……おう、好きなだけ泣け。声が漏れないようにずっと抱きしめてやるから」
「ぅ……ぁ……」
ああ、よかった
やっと抑えてた感情を全て晒け出せる、目の奥にずっと溜まってた涙もついでに全部流してしまおう
先輩の着てる服がびちゃびちゃになっちゃいますけど別に構いませんよね、だって先輩に泣かされたんですから
「ぅあああ───────!」
数分後
「離れてください、あと顔も見ないでください」
「えっ!?い、いや……お前から抱きついてきたんじゃ……」
「うるさいです、女の子の泣き腫らした顔を見ようとするなんて最低です」
「うん、やっぱお前美咲だわ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「……んで?そろそろ落ち着いたか?」
「……はい、取り乱してしまってすみませんでした」
「気にすんな……といってもクールキャラ貫いてきたお前自身は気にするかもしれないけどな」
「……別にキャラを演じてたつもりはありません」
「冗談だよ、冗談」
私が泣き終わってから十分程経った頃だろうか、先輩が具体的な説明をしたいと話を切り出してきた
今思えば恥ずかしくなるような言葉を沢山吐いてしまったような気もするが、それでも何の反応も示さないこの人を見る限りきっと〝ラブ〟ではなく〝ライク〟としての感情で受け止められているのだろう
「さて、一段落ついたところで早速この世界の事を説明したい訳だが……お前、ブルーアーカイブってゲームは知ってるか?」
「えっと……確か、先輩がはまっていたゲームの名前ですよね?……美少女だらけの」
「なんか含みのある言い方だけど……その通りだ」
あまり詳しくは知らないけど、先輩が生前はまりまくっていたゲームである事だけは覚えている
そんなゲームが気になって私も寝る前にアプリをインストールした覚えが────え?
「あの、先輩。まさかこの世界って……」
「ああ、御察しの通り────ブルーアーカイブの世界だ」
やはりそうだった、ここは地球上の何処でもない……どころか次元そのものが違った
ゲームの世界に転生だなんてなに二次創作の主人公みたいな現象に巻き込まれてるんですか先輩、その場合の作品タイトルはきっと〝転生したら美少女に囲まれていた件〟とかでしょうね
「あの……先輩はこの事を誰かに話したりしましたか?」
「いや、お前以外には一切話してない……流石に事が事だからな」
「……私もその方が良いと思います」
信用されるかどうかはともかく、急に自分がフィクション世界の存在だと突きつけられても混乱するだけだろう
下手に悩みの種を植え付けるくらいなら秘密を墓場まで持っていった方が安全だろう
「んで、俺もお前も死んでブルアカの世界に転生した訳だが……そうだな、まずはキヴォトスで生きていく上で必須になるだろう世界観の説明から────」
「────待ってください、死んだというのは?」
「ん?だってお前、理由は分からんけど俺みたいに死んで転生したんじゃないのか?」
「違います、私は目が覚めたらこの世界に居ただけです……転生というよりは転移と言った方が正しいかと」
「……どうなってんだ?」
それは此方の台詞だ、何故私と先輩で転生した理由が違うのだろう
……もしかして、寝る前にインストールしたあのアプリが原因だろうか
「あの、先輩。私、実は寝る前にブルーアーカイブをスマホでインストールしてまして……」
「……それが原因だと?」
「根拠も何もありませんが今のところ私とブルーアーカイブの繋がりはそれぐらいしかないので」
「……今スマホ持ってるか?」
「いえ、何も……パジャマ以外この世界には持ってこれませんでした」
「そうか……参ったな、手詰まりだ」
向こうの世界に置いてきてしまったスマホからしか干渉する事ができないのなら私は帰る手段を失ってしまった事になる
それは困る、お父さんとお母さんを心配させたくないし、それに……引きこもったままの妹の事だってあるのに
「まあ、それを考えるのは色々説明し終わった後でもいいか……にしてもブルアカってまだ続いてたんだな、長続きしてんなー」
「……はい?長続きも何もまだ数年しか経ってませんよ?」
「いやいや、もう十年以上は経過してんだろ?」
「何言ってるんですか、先輩の死からまだ一年程しか経ってませんよ」
「……?」
「……?」
互いに話が噛み合わず、同時に首を傾げてクエスチョンマークを浮かべる
そしてまたもや同時にある可能性を思い浮かべて顔が強張る
「あの……先輩……もしかして私達が元々居た世界とブルーアーカイブの世界って……」
「ああ……時間の流れ、違うかもしれんな」
「……先輩って今何歳ですか」
「十六歳、ただし二週目だ……お前は?」
「私も同じ年齢で、そして……高校一年生です」
「こっちでの十数年はそっちの一年……か。まあ、幸いな方だろ。少なくとも何年何十年も向こうの世界で行方不明扱いされる訳じゃないんだからさ」
「そうですね、下手すれば一週間ここに留まっても向こうでは一日も経ってないんじゃないでしょうか」
「……ご両親と真咲には申し訳ないけどな」
「……そう、ですね」
銃社会の洗礼を受けるのは一度だけで十分、早いところこの世界から抜け出す方法を考えなければ
いや、一日だけじゃ見つからない可能性の方が高いだろうしその前に衣食住も何とかしないと
「……でも、お前が死んでなくて本当によかったよ」
「そうですね、私もそう思います……死後の世界がこんな危険な場所だったなんて最悪の展開ですから」
「ははっ、キヴォトスは俺達みたいな現代人が生きるにはちとキツい環境だからな……まあ、俺はもうそっちの世界の現代人じゃないけど」
先輩はそう言うとどこか悲しそうな笑みを浮かべた
……?この人は何を言っているのだろう、先輩だって私の世界の人間なのに……一緒に帰るのだから何をそんなに寂しそうにしているのやら
「とにかく!お前を元の世界に帰す方法だけは絶対に見つけ出すから安心してくれ!……といっても俺に出来る事は限られてるし知り合いの力を借りる事になるだろうけどな、お前には暫く慣れない環境で暮らしてもらうけど可能な限り俺が助けてやるからなんとか乗り切ってくれ」
「ありがとうございます……先輩も出来る限り早めに見つかるといいですね、先輩のご両親や私の家族にもまた先輩の顔を見せてあげ────」
「美咲、ストップ……足音が近付いてきた、話は一旦ここまでだ」
「足音って……私には何も───」
聞こえない、なんて言おうとしたら本当に足音が聞こえてきた
しかし聞こえてきたのは距離的にまだそれなりに離れているであろう微弱な音、先輩は私との会話中にこれを聞き取れたという事なのか
一体いつからバトル漫画の登場人物みたいな事ができるようになったんですか先輩
「すみません、救護騎士団の者ですが……入ってもよろしいでしょうか?」
「どうぞー」
〝失礼します〟と入ってきたのは私の脚を撃ち抜いた人達と同じで羽の生えた女性だった……彼女達と同じ〝種族〟の人間なのだろうか
羽の色は水色、髪も水色、キリッとした顔立ちがとても気品に満ちている
「怪我の具合はどうですか?」
「え?えっと……まだ痛みますけど無理して動かそうとしなければ激痛とかは感じないです」
「そうですか……では、まだまだ安静にしておいた方が良いですね。リハビリなどはある程度痛みが収まってからにしましょう」
「蒼森さん、美咲を助けてくれてありがとうございます」
「……ありがとうございます」
先輩が蒼森さんと呼んだ人に私もお礼を言うと、彼女は〝当然です〟と美しい顔立ちを崩さず当たり前のように答えた
「トリニティの生徒だろうと他校の生徒だろうと外の人間だろうと、怪我をしているのならば私にとっては全員等しく〝救護対象〟です、助けない理由などありません」
「外の人間────はい、その通りです」
私が〝外の人間〟という言葉に引っ掛かった瞬間、先輩が目配せで話を合わせろと伝えてきた
恐らく私が眠っている間に先輩が色々と身分を誤魔化しておいてくれたのだろう……たった一瞬のアイコンタクトで事情を察してくれる女なんて私ぐらいしかいませんからね、先輩
「美咲さん、キヴォトスは外から来た方が暮らすにはあまりにも苛烈すぎる環境です、あまり無茶な行動はしないように……出掛ける際は可能な限りボディーガードを連れていく事をお勧めします」
「大丈夫です、俺が美咲には無茶な事はさせませんから……何かあれば俺が代わりに戦いますし」
「何を言ってるんですか、貴方もですよ酒泉さん」
「えっ」
突然の名指しに先輩の身体が固まる、まさか自分が流れ弾を食らうとは思わなかったのだろう
「貴方の肉体も美咲さん同様脆いのですから、なるべく自身の事も気遣ってください」
「い、いや……でも……俺、風紀委員ですし……」
「先程も言いましたようにトリニティの生徒だろうと他校の生徒だろうと怪我人は救護対象です、貴方の無茶な戦闘が過去にどれだけ貴方自身の身を苦しめたか御自分で覚えている筈でしょう?」
「いやいや、俺の怪我の具合なんてトリニティの蒼森さんが知ってるわけ…………あっ」
「調印式の日、貴方がどこで治療を受けたかお忘れですか?」
「……トリニティです」
調印式、風紀委員、また新たなワードが出てきた
それに無茶な戦闘というのは何の事だろう、先輩の身を苦しめたというのも気になる
「美咲さんを守る事だけに集中しすぎるあまり自分の身を疎かにしてしまう……などという事は起こらないように呉々もお気をつけください、未だその身に残る数多の傷痕を忘れぬように」
「は、はい……」
「もし、また貴方が重体で運ばれてくるような事があればその時は……」
「そ、その時は……?」
「私が〝救護〟します」
では、と一礼してから立ち去っていく蒼森さん
最後まで何の話かは分からなかったけど、でも……
「良かったじゃないですか先輩、他校の生徒でも〝救護〟してくれるなんて……優しい人じゃないですか」
「ウン、ソウダネ」
「?」
先輩は何故か片言だった
「いや、良い人なんよ……良い人なのは分かってるんよ……なのに救護って言葉を聞くと何故か物騒なイメージが浮かんでくるのよ……」
「はぁ……よく分かりませんが、先輩はあの人とよく話すんですか?」
「いや、今回で四回目か五回目の会話かなって程度の関係、その会話だって以前大怪我負って救護騎士団のお世話になった時の礼を伝えただけだし……ただ、ほら、俺には原作知識があるから一方的に知ってるっていうか」
「原作知識……ああ、ゲームの」
そういえばそうだ、この世界は先輩が大好きな作品の世界だった
ストーリーやキャラクター設定等も正確に把握しているのだろう
「蒼森さんも気の毒ですね、先輩なんかに一方的に自身のプライベートを知られてるなんて」
「し、仕方ねえだろ!?ブルアカで遊んでると嫌でも知っちまうんだよ!」
「あんな美人な方のプライベートを〝嫌でも〟ですか、贅沢ですね」
「……べ、別に嫌じゃねーけど……」
「やっぱり蒼森さんのプライベートを想像してにやにやしてたんですね、キモいです」
「なあ、これってどう答えても詰んでねーか?」
最低です、先輩
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「……んで、キヴォトスの生徒達は身体が頑丈だけど」
「ヘイロー……頭の上の輪を破壊されたら死に至る……と」
ベッドの上で横になる私にキヴォトスの……この世界の〝設定〟を語る先輩
このゲームのチュートリアルすら始めていない私にとって先輩の話は未知の情報しか無かった
「学園が国家の様な役割を担っている世界観……ですか、それって大丈夫なんですか?」
「何が?」
「子供に政治のあれこれを任せるなんてどう考えても話が拗れるに決まってます」
「おう、拗れた」
「やっぱり……」
「ちょっと生意気な友達を懲らしめたいって理由だけでトリニティのトップがテロリストと手を組んで裏切られたり気に入らない部下を始末する為だけにゲヘナのトップがテロリストと手を組んで裏切られたりした」
「その人達は馬鹿なんですか?」
「後者は間違いなく馬鹿、前者も森の賢者だけど馬鹿」
何がどうなってテロリストの手を借りる選択をしたのか分かりませんが、そんな事をしたら口喧嘩どころか殺し合いに発展してもおかしくなかったでしょうに
いや、私の価値観が元の世界基準だからおかしく感じるだけで、キヴォトスではただの悪戯感覚だという可能性も……
「因みに前者も後者もキヴォトス基準で犯罪だからな」
「あ、やっぱり馬鹿なんですね」
なんですかこの世界、急に銃を撃ってくるような人がいたりさらっとテロリストが存在していたりと物騒すぎませんか?
先輩はずっとこんな世界で生きて……
「……あ、そういえば先輩。私を撃った人達の事なんですけど……」
「ああ、その後が知りたいって?」
「いえ、それは後で聞かせてもらいますけど今は別の事が気になってまして……」
私はあの時痛みで悶え苦しんでいたけど、それでも誰かが戦っていたのだけはうっすらと覚えている
駆け付けてくれたのは先輩とカツアゲ被害者の子の二人、私の身体を抱えてくれていたのは被害者の子だった
つまり戦っていたのは消去法で先輩という事になる
「その……あの人達は先輩が倒してくれたんですか?」
「ん?そうだけど?」
「……銃を持った人間三人を同時に相手して?」
「おう」
……生前と何も変わらないって言ったことを訂正しよう、私の知るちょっと運動が得意な先輩は運動が得意どころのレベルではなくなってしまった
「あー……すまん、やっぱ俺のことも怖いか?」
「……はい?」
「いや、ほら……俺も銃を使って戦ってたからさ、銃で撃たれた側のお前からしたらあまり良い気分しないのかなって」
私の知らないところで成長していた先輩にちょっとだけ寂しさを感じていると、急に不安そうな顔をした先輩が一歩下がりながら尋ねてきた
……それがちょっとだけムカついたので先輩の腕を引っ張って無理矢理近寄らせた
「……なんですか、先輩の目には私がそんなに恩知らずな女に見えてるんですか」
「そういう訳じゃないけどさ……でも……」
「あの人達が撃った弾は私を傷付ける為、先輩が撃った弾は私を守る為、その違いが分からないほど私は子供ではないです」
「……」
「正直、銃を持った人達はちょっと怖いです……でも、先輩は怖くないですから」
「……おう、ありがとな」
ほら、強さは変わってもやっぱり中身は変わってない
銃を撃つための手だって、こうして私を撫でてる時はただの優しい先輩の手になるのだから
「……さて、一通り世界観の説明を終えたところでそろそろ今後の方針について話すぞ」
「あっ……」
「ん?なんだ?」
「……いえ、別に」
私の頭から先輩の手が離れた瞬間、思わずか細い声が漏れてしまう
別にもっと撫でてほしかったとか勿体無いとかそんな事は考えてない、断じて考えてない
「まず、蒼森さん含め今回の事件の当事者達にはお前はキヴォトスの〝外〟から来たって説明してある、だから話は適当にその場その場で合わせてくれ」
「フィーリングでやれって事ですか?流石に危険すぎません?キヴォトスの外のことなんて何も知らないのに根掘り葉掘り質問されたらどうするんですか」
「大丈夫だ、キヴォトスの外は多分俺達の元居た世界と似たようなもんだからそれを基準に答えてくれればそれでいい……本当に多分だけど」
「……少々心配ですね」
余程下手な答え方をしなければ大して探られることもないだろう
この世界の秘密は私と先輩の二人で墓場まで持っていけばいい、といっても私も先輩が元の世界に帰還すればその秘密も一生暴かれる心配はないだろうけど
「んで、俺達はこれからそのキヴォトスの〝外〟から来た人と会う。その人は〝先生〟って呼ばれてる……まあ……前の世界の呼び方をするならブルーアーカイブの〝主人公〟だ、俺達はその人と一部生徒達の力を借りて元の世界に帰る方法を探す事になる」
「主人公……つまりプレイヤーって事ですか?前世プレイヤーだった先輩が主人公ポジションって訳ではないんですね」
「俺達はほら、例えるならメアリー・スーとかそういう立場の方が合うだろうからな……でだな、俺は先生と極一部の協力者達には一部事情をちゃんと話しておこうと思ってる」
「一部事情……どこまで話すつもりですか?」
「まずブルーアーカイブというゲームの事を話すのはNGだ、これだけは絶対に守らないといけない。俺自身、ここは現実だと受け入れちゃいるがそれでも元ネタとなる作品が存在してる時点で〝この世界のこの展開は最初から決められてました〟なんて突きつけられる事になるからな……特に死者が出る展開だと〝そいつは最初から死ぬ事が運命付けられてる〟って遺された者達に知られる事になる」
「元の世界の事に関してはどうするんですか?」
「美咲が異世界人って事はどうしても説明しないといけないけど、俺の正体の方は一応伏せておこうと思う……まあ、別にこっちは最悪バレても問題無いだろう。俺が別世界から来た人間だったとしてだからなんだって話だしな」
だからなんだ、ですか……本当にそうなのでしょうか
もし先輩と仲の良い人がいたとして、その人が先輩が異世界に帰る方法を探していると知ったら……私がその立場なら引き留めてしまいそうです
元の世界に帰るまでにちゃんとその辺りの説得もお願いしますよ、先輩
「つーわけでだ、もうすぐ先生がトリニティに来るから互いのキャラ設定とNGワードの打ち合わせすんぞ」
「先輩……少し見ない間に頼もしくなりましたね」
「俺一応先輩だからな?成長を見守る師匠みたいな顔してるけど俺お前より年上だからな?」
「今は同学年ですけどね」
「……そうだった」
キヴォトスと元の世界で時間の流れが違う、それだけが唯一の救いか
そのお陰でこうしてまたあの頃の先輩の顔を見られたのだから
「あ、打ち合わせ後は会話の練習もするからな。あまり親しくしすぎると色々関係を疑われるかもしれんし……そうだな、まずは先輩呼び禁止な、俺もお前の事は新野さんって呼ぶから」
「先輩、やはり前世の事も含めて全て先生に打ち明けませんか?協力者に対して隠し事をするのはよくないと思います」
「お前急に意見変わったな」
久しぶりに会えた先輩はやはりクソボケだけは治ってなかったらしい