〝アリウス〟潰すゾ!!!   作:あば茶

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貴方とこうしてまた歩く

 

 

 

「こうして二人で出掛けるのも久しぶりだな」

 

「……そうですね」

 

 

並んで歩く程度の行為にも懐かしさを感じてしまうのは先輩の死によってそれすら出来なくなってしまったからだろうか

 

……まあ、私の方は杖付きなんですけどね。せっかくまた先輩と歩けるというのに、誰かさん達のせいで無駄に脚に気を遣わないといけなくなってしまった

 

 

「先輩、今日は付き添ってくれてありがとうございます」

 

「気にすんな、俺はお前の先輩だからな……今日はどっか行きたいところとかあるか?」

 

「……私、まだこの世界に来たばかりですよ」

 

「っと、そうだったな……悪い悪い、じゃあ今日は俺がトリニティを案内するよ」

 

 

私が負傷してから一週間、退院はまだ出来ませんが付き添いありでの散歩ぐらいなら許可を頂ける程度には状態も安定しました

 

勿論安定といっても銃で撃たれた怪我が一週間そこらで治ったわけではなく、あくまで時々走る脚の痛みが落ち着いてきた程度のものですけど

 

それに散歩と称してはいるものの名目上はリハビリですから、あまり遠くまでは行かないように言いつけられています

 

 

「何度見てもファンタジー感溢れてますね、女の子以外全員ロボットとか獣人ばかりじゃないですか」

 

「一応人間の男だって存在するぞ……本当に一応だけど」

 

「……先輩ってこの世界でも学校に通ってるんですよね?もしかして……」

 

「お察しの通り女子だらけだ、中学時代は肩身が狭いなんてもんじゃなかったぞ……時々学校に来る清掃のおっちゃん達だけが癒しだったからな」

 

キヴォトスに来たばかりの時はたった一日の間に色々な事が起こりすぎて街を見回る余裕がなかったけど、こうして改めて落ち着いてみるとやはり元の世界とは違うんだなと再認識させられる

 

喋る犬や感情を持つロボットは明らかに異様な存在なのにまるで人間かの様に平然と振る舞っている、一方で殆ど人間と変わらない容姿の生徒達は全員銃を背負っている

 

 

「なるほど、つまり現在は何事もなく大勢の女子生徒に囲まれていると……良い御身分ですね」

 

「おう、モテすぎて熱烈なアプローチと共に鉛弾を跳ばされる学園生活を毎日のように送ってるぜ」

 

「自分で言ってて悲しくならないんですか?」

 

「もう慣れたからな」

 

 

慣れてしまっては駄目ですよ先輩、向こうの世界でまた学校に通い始めた時に物騒な価値観のままだと色々苦労しますよ

 

すぐ喧嘩腰になったりちょっと気に入らない事が起きただけで銃で解決しようとしたり……本当にリハビリが必要なのは私の脚よりも先輩の価値観なのかもしれませんね

 

 

「あ、そういえばお前の暮らす部屋についてなんだけどとりあえず元の世界に帰るまでは俺の部屋を代わりに使ってもらう事にしたから」

 

「……ケダモノ」

 

「やめろそんな冷めた目で俺を見るんじゃない……心配すんな、俺はその間リビングに私物置いて適当に過ごしてるからよ」

 

 

まさか同じ部屋で暮らすつもりかと目で訴えると先輩は焦りながら私の言葉を否定する

 

リビングで……それはつまり先輩が自分の部屋から出ていくということでしょうか、家主がそんな扱いなのは可笑しな話ですしそれ以前に申し訳なさを感じてしまいます

 

 

「その、私の為にそこまでしていただかなくても……それなら私がリビングで寝ますよ」

 

「駄目だ駄目だ、客人にそんな扱いできねえよ」

 

「……では、いっそのこと二人とも先輩の部屋で生活するのは?」

 

「いや、流石にそれは……なあ?」

 

「家主を追い出すのは流石に気が引けますし、それに先輩だって出来ることなら自分の部屋で睡眠をとりたいでしょう?」

 

 

なので、仕方なくケダモノ先輩と同じ部屋で生活を共にする事を選択する

 

これは本当に仕方なくです、だって私は先輩のお世話になる立場なんですからあまり我儘は言えません

 

なので万が一何かしらの〝間違い〟をケダモノ先輩が起こしてしまってもそれも仕方ない事なのです、私は仕方なく受け入れるしかないのです

 

 

「…………それに、私は先輩が相手なら別に嫌では─────」

 

「いや、俺は別にどこでも寝れるタイプだしそんな部屋に拘ったりは……ちょっと待てなんで杖を振り上げているまさかそれで俺を殴るつもりじゃ────」

 

 

 

 

 

 

 

──────────

 

────────

 

──────

 

 

 

 

 

 

 

「先輩先輩、なんですかあの可愛い生き物は」

 

 

そんなやり取りをしながらトリニティを歩いていると、近くのお店のショーウィンドウに黒くてモフモフしたぬいぐるみが飾られているのを発見した

 

顔が白くて外皮が黒くて如何にもマスコットしてますって感じの見た目で凄くモフモフしてそうでモフモフしてそうなモフモフ生き物は一体……

 

 

「ほう、スカルマンを気に入ったのか……お目が高いな。そいつはモモフレンズってシリーズに出てくるキャラクターでな、実は俺のお気に入りでもあるんだ」

 

「先輩にしてはセンスが良いじゃないですか……それで?スカルマンの隣に座ってるあの可愛らしい鳥の名前は?」

 

「え゛っ゛!?ペ、ペロロだけど……か、可愛いかそれ……?」

 

 

何を言ってるんですか先輩は、どう見ても可愛くてキュートでチャーミーでしょう

 

あのだらしなく飛び出た舌が愛らしさをより際立たせてますし、あの今にも魅了されてしまいそうなつぶらな瞳なんか最高じゃないですか

 

 

「これはゲーム本編にも登場するキャラなんですか?だとしたら元の世界でもキャラグッズの販売などはされていましたか?」

 

「え?ま、まあ……スカルマングッズもペロログッズも前世からあった気がするけど……」

 

「はぁ……どうして私はもっと早くブルアカを始めなかったのでしょうか……」

 

「すげえ、美少女やストーリー目当てじゃなくモモフレグッズ目当てでブルアカ始めようとする奴初めて見た」

 

 

出来ればどちらも買って帰りたい……が、今の私は無一文なので手に入れる術がありません

 

私の生活費などは先輩の口座に送られるらしいのですが、それは退院後なのでまだ先の話になるでしょう

 

……しまった、こうなる事も予期して私を撃った生徒達から口止め料を貰っておけばよかった

 

 

「はぁ……」

 

「なんだなんだ、溜め息なんて吐いて……幸せが逃げるぞー」

 

「……幸せならこの世界に来てから十分感じてますよ」

 

 

幸せが逃げるからなんですか、私は先輩とこうしてまたお話できるだけで幸せですから問題ありません

 

……いや待て、私にとっての幸せが先輩の存在なのだとしたらそれはつまり先輩が逃げるという事に……やっぱり溜め息は程々にしておこう

 

 

「行きましょう先輩、これ以上あの子達を見ていると手が届きそうで届かない現実に打ちのめされてしまいそうですから」

 

「ん?あれ買わなくていいのか?」

 

「買うも何も私はまだお金を持ってませんよ」

 

「いや、そうじゃなくて俺が買ってやろうかと思ってたんだけど」

 

「……はい?」

 

 

買う?先輩が?私に?

 

 

「……」

 

 

そう思いながらちらっと視線を逸らせばスカルマンとペロロの瞳が買ってほしそうに私を見つめてくる

 

……いやいや、ただでさえご迷惑をお掛けしてしまってるのにこれ以上は流石に……

 

 

「せっかくキヴォトスに来たんだし何か一つくらいこの世界のプレゼントをって思ってな……嫌な思い出を残したまま元の世界に帰るってのもあれだしな」

 

「……」

 

 

プレゼント……でも、これ以上お世話になるのは……

 

…………先輩からのプレゼント、か

 

 

「……………その、お願いしてもいいですか?」

 

「おう、任せとけ。すいませーん、これお願いしまーす」

 

 

ぬいぐるみが可愛いだけなら歯を食い縛りながら辛うじて耐えることができただろう、だがそこに先輩からのプレゼントという付加価値が乗せられてしまえば話は別だ

 

結局、欲望という波を押し留める事ができなかった私の心の防波堤は一瞬で打ち崩されてしまった

 

 

「……でも、仕方ないじゃないですか」

 

 

また先輩からプレゼントを貰えるなんて夢にも思ってなかったんですから

 

 

「……ふふっ」

 

 

今の状況、そしてこれから先の未来を想像すると幸せすぎてつい笑みが溢れてしまう

 

先輩と一緒に帰ってきたら皆はどんな反応をするのだろうか、まず先輩のご両親やご友人は間違いなく喜ぶ

 

妹だって想い人が帰ってきたのだから再び以前の様な明るい性格に戻って部屋から出てくるだろう……まあ、そしたら私の恋敵が増えてしまうけど(あとついでに竜島君の脳がまた破壊されるだろう)

 

私のお父さんとお母さんだって義理の息子が帰って来るのだからきっと泣いて喜んでくれるはず……ああ、元の世界に帰還する日が本当に待ち遠しい────

 

 

「おーい美咲ー、プレゼント買ってきたぞー」

 

「あ……先輩」

 

「ほら、ペロロとスカルマンだ」

 

 

そんな事を考え込んでいた私の視界に二匹の可愛いぬいぐるみが映り込む

 

手渡されたそれを軽く揉んでみると想像通り……いや、想像以上の柔らかさを感じた

 

そこから一気に抑えが効かなくなり、二匹纏めて力強く抱き締める

 

 

「……」

 

「ははっ、そんな気に入ったのか」

 

「……はい」

 

 

こっちの世界に来て初めて先輩から貰った大切なプレゼント、気に入らない筈がない

 

この世界自体は好きじゃないけど、むしろ先輩を傷付けようとするこんな世界なんて大嫌いだけど、でもこの世界で生きてきた先輩のことは嫌いじゃないから

 

 

「……ありがとうございます、向こうに帰っても一生大切にします」

 

「おう、そうしてくれ」

 

「ふーん、似合わない人形買ってると思ったらそういうことだったんだ」

 

 

先輩と出会えたこの世界から思い出の一つを持ち帰るくらいならそこまで嫌悪感も抱かないし……ん?

 

なんでしょう、今私の後ろから女性の声が聞こえたような……

 

 

「お?戒野さんじゃん……こんな所で奇遇っすね、仕事終わりですか?」

 

「今日は休みだよ、ここには偶々立ち寄っただけ」

 

 

ふと振り向いてみると私の後ろに立っていたのは白パーカーを羽織った一人の女の子、先輩が親しげに返事をしたということは先輩の知り合いなのでしょうが……

 

「それよりも誤解させるような言葉吐かないでよ、そのまま通りすぎるつもりだったのについ近付いちゃったじゃん」

 

「誤解?」

 

「さっき〝ミサキにプレゼント買ってきたぞ〟って言ってたでしょ」

 

「あー……それですか」

 

 

先輩は納得した様に頷くと私ともう一人の女性の顔を交互に見つめる

 

なんでしょう、私の顔に何か付いているのでしょうか

 

 

「実はこの子の名前も美咲って言うんすよ」

 

「この子呼ばわりしないでください、まるで子供扱いされてるみたいじゃないですか……新野美咲です」

 

「美咲、か……プレゼントを贈るぐらいには親しい関係なんだ」

 

「まあ、昔馴染みなんで」

 

「ところで先輩、この方は……」

 

「この人は戒野ミサキさん、俺の知り合いだ」

 

「……なるほど」

 

 

私と同じ〝みさき〟で且つ先輩の知り合いと……だから自分が呼ばれてると勘違いしたんですね

 

……それにしても〝みさき〟……ですか

 

 

「……」

 

「……」

 

「えっと……どうしたんすか?二人とも互いの顔をじろじろ見つめて」

 

「なんとなく雰囲気が似てるように感じるこの人が……」

 

「見た目も声のトーンも似てるこの子が……」

 

「……先輩、この人は私より後に知り合った方ですよね?」

 

「え?お、おう……」

 

「酒泉、この子は私より前に知り合った子なの?」

 

「は、はい……その通りですけど……」

 

 

 

……成る程?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだ、古い方のミサキってことか」

 

「つまり二番目の美咲ってことですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「………………は?」」

 

 




ちなみにミサキが偶々立ち寄った店には可愛い熊のぬいぐるみが置いているらしいですけど多分関係ありませんね
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