〝アリウス〟潰すゾ!!!   作:あば茶

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みさきとみさきとごりら

 

 

 

「お、お待たせしましたー……戒野さんはこのバニラアイスで」

 

「……ありがと」

 

「そんで美咲は確かストロベリーだったよな」

 

「ありがとうございます……よく私の好きな味覚えてましたね」

 

「大事な後輩の好みを忘れるわけないだろ?」

 

「……」

 

「……ふふっ」

 

「……ちっ」

 

「舌打ち!?え、えっと……もしかして戒野さんもストロベリーの方がよかったです?今からまた新しいの買ってきましょうか?」

 

「別にそういう訳じゃないから……ちょっと嫌なこと思い出しただけ」

 

「そ、そうですか……」

 

 

ベンチに座っている二人にアイスを手渡すと戒野さんは不機嫌そうに舌打ちし、美咲は機嫌良さそうに笑いを溢した

 

戒野さんの思い出した嫌なこと……昔のアリウス時代の事かな?だとしたら下手に触れない方が良いだろうな

 

 

「……」

 

「……」

 

「……ア、アイス美味いっすね!」

 

「だね」

 

「ですね」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「……あーいっすねー……なんちゃって!」

 

「急になんですか」

 

「そんなんで笑うのなんてうちのリーダーしかいないけど」

 

「ごめんなさい」

 

いや、だって……何故かは知らんけど空気が重いような気がして……

 

別に誰も喋らない空間で過ごすのなんて一日でも二日でも余裕だけど、そんな俺からしてもこの空気感は流石に異様すぎるというか……

 

 

「そういえばさ、酒泉はその子の事はいつから名前で呼んでるの」

 

「え?美咲の事なら……えっと……」

 

「貴女と出会うよりずっと前からですよ、ねえ?先輩」

 

「……そっちに聞いた訳じゃないんだけど」

 

「別にどっちが答えても同じじゃないですか」

 

「「…………」」

 

 

……もしかしてこの二人仲悪い?いやいや、出会ったばっかで急に喧嘩するなんてあり得ないし多分俺の気のせいだろう

 

なんとなーく似てる二人だし会話を続けてればそのうち勝手に意気投合するだろ、うん

 

 

「……そういえば、先輩は〝私の後に出会った方のミサキさん〟とはどういう関係なんですか?」

 

「えーっと……それは……」

 

「私が酒泉の〝道具〟ってだけで、特に大した関係でもないよ」

 

「別に貴女に聞いたわけでは────は?道具?」

 

 

あかん(あかん)

 

これ以上話を続けると俺の大事な何かが失われる気がする、主に先輩としての尊厳とか

 

いや、確かに道具になれとは言ったよ?ババアの道具になるのも俺の道具になるのも大して変わらんだろうしみたいな感じで我が手中に収めようとしたよ?

 

でもさぁ……ほら……あれはその場限りの関係だと思ってたっていうか……

 

 

「私が生きる事に意味を見出だせなくて死のうと思ってた時に道具としての契約を結ばされて無理矢理生きなきゃいけない理由を付けられただけだけど?」

 

「……先輩?」

 

「ち、違うんだ美咲!聞いてくれ!俺はあの契約は一時的なものとして結んだつもりだったんだ!それが何故か互いの認識の違いで────」

 

「あれだけ私の身体を利用しておきながら今更言い訳?最低だねミスター浮気者」

 

「本当ですよ、ミスター二股」

 

「どうして冤罪って無くならねえんだろうな」

 

 

美少女に囲まれたいとか言ってた前世の友人達馬鹿友へ、それが必ずしも幸せだとは限らないぞ

 

見ろよこの美少女二人が生み出している空間を、どう見ても地獄だろうが

 

ていうかどこぞのアイドルみたいな声とトーンで罵らないでほしい、そうにしか聞こえなくなるから

 

 

「女誑し」

 

「女の敵」

 

「鈍感」

 

「無神経」

 

「唐変木」

 

「朴念仁」

 

「女を道具扱いする鬼畜」

 

「女を同じ部屋に誘う変態」

 

「「クソボケ♡」」

 

「ひぃん……」

 

 

戒野さんと美咲によって交互に両耳から罵声を流し込まれる、なんだこのASMR

 

多分一部どころか多くの男性に需要があると思う、ですが私は罵られて喜ぶ変態ではないので普通にやめていただきたい……てか最後辺り息ぴったりだったしなんならノリノリになってなかった?

 

 

「……待って、今途中で〝同じ部屋に誘われた〟とか言わなかった?どういうこと?」

 

「私はこのせか……キヴォトスに来たばかりでまだ泊まる所を決めてなかったので先輩からお誘いを受けたんですよ、俺と同じ部屋で暮らさないかって」

 

「…………へぇ、酒泉も所詮は男なんだね」

 

「折川所詮……なんちゃって……」

 

「は?」

 

「ごめんなさい」

 

 

また錠前さんくらいしか笑わなそうなダジャレを言ってしまった、でもこれは場の空気を和ませる為の作戦なのでそう責めないでほしい

 

え?結果的に空気が悪化してるって?あーうんそれは陸八魔が悪いわ

 

 

「……住む場所くらい自分で見つけさせればいいでしょ」

 

「勿論私だって自分で探しましたよ、でも先輩がどうしてもと言うので……」

 

「…………」

 

「頼む美咲、一回でいいから口を閉じてくれ。このままだと戒野さんからの視線だけで凍らされそうになるから」

 

 

恐る恐る様子を伺えば戒野さんの目はジト目から犯罪者を見るような目に変わっていた、最近よく冤罪ふっ掛けられるなぁ……

 

 

「なに?また別の女連れ込んだの?流石は風紀委員様、風紀の乱し方も心得てるね」

 

「風紀委員会が風紀を乱すわけないだろ!いい加減にしろ!」

 

「そういえば風紀委員の癖に胸の横部分が丸出しな人居たよね」

 

「あれはほら……そういう生き物なんで……」

 

 

天雨さんは生物学上天雨アコ以外のカテゴリに属さないし〝そういう生き物だ〟と割り切るしかない

 

多分天雨さんは横乳を常に晒してないといけない代わりに優秀な仕事能力を得るとかいう縛りでも結んでいるのだろう

 

 

「え……先輩の通ってる学校ってそんなヤバい人がいるんですか?聞いた話によると治安もあまり……ていうかかなり良くなさそうですし転校でも考えた方が良いのでは────」

 

「うんうん!私もそれにさんせーい☆」

 

「────……は?」

 

 

ドン引きする美咲の目を直視できず視線を逸らしていると、俺達の座ってるベンチの後ろから明るくて元気でムカつく声が聞こえてきた

 

更に感じる、何かを近付けられる気配。これは────俺の糖分を奪おうとしてるな!?

 

 

「させるかぁ!!!」

 

「あ」

 

 

アイスを庇うように咄嗟に手を振り下ろすと、そこに紫色のシュシュを着けた左手がスカッと空振る

 

残念だったな、俺の糖分センサーの感度を舐めるなよ……いや、それよりも────

 

 

「二度目は無いぞ小娘……!」

 

「こわっ、めっちゃ本気じゃん」

 

 

人のアイスをパクろうとしやがったトリニティピンクゴリラをジロッと睨み付けると、ゴリラはきゃははと笑いながら軽く謝罪を入れてきた

 

 

「ごめんごめん!まさかアイス一つにそこまで必死になっちゃうほどケチなゲヘナ生がいるとは思わなくてさ☆」

 

「ほーん?アイス一つも自分で買えないなんてトリニティのお嬢様は随分と金使いが荒いようで」

 

「はぁ?」

 

「あん?」

 

 

相も変わらずゲヘナ嫌いを発揮しているヘイトスピーチ姫ことミソノ・ミソノ・ミソノ

 

この人はゲヘナ嫌いの癖に何故かゲヘナ生の俺に絡んでくるという面倒な生態を持つ、そんな嫌いなら無視しとけばいいものを……つーか飼育係は何してんだよこんなゴリラ野放しにしてんじゃねえよ

 

 

「うわ……」

 

「ん?どうしたの?私の顔を見て溜め息なんか吐いちゃって」

 

「別に?ただ最悪なのに会っちゃったなって思っただけ」

 

「んー?その最悪って誰のことかな?」

 

 

なんて思ってたら戒野さんが聖園さんに対して盛大に溜め息を吐き、今度はそっちの二人がバッチバチに睨み合う

 

なんか今日ギスギスする事多くない?ギスギスしてるのが三人でトールギスⅢなんてな!……いやほんますいませんしたもう二度とダジャレは言いません、私は敗者です

 

そんな風に勝手に自分の中で落ち込んで勝手に反省していると美咲が服をちょいちょいと引っ張りながら〝先輩〟と呼んできた

 

 

「この人も先輩のご友人ですか?」

 

「コイツはトリニティピンクゴリラ、伝説上の生き物さ」

 

「はぁ……伝説とは?」

 

「ああ!」

 

「〝ああ!〟じゃないですよ真面目に答えてください」

 

「ごめんなさい」

 

「そもそも人をゴリラ扱いしないでくれる?私には聖園ミカって名前があるんだけど?」

 

「別にゴリラでも大して変わらないでしょ」

 

「そういう貴女はただのメンヘラだけどね☆」

 

「はいはいそこまで、互いに問題起こしちゃいけない身なんだから仲良くしなさいな」

 

 

三つ巴なのか四つ巴なのか分からない状況に陥り、一旦場の空気をリセットする為に両手を叩いて注目を集める

 

え?お前だって場の空気に乗ってただろって?本当にすまないと思っている

 

 

「んで?聖園さんはなんで今更出てきたんです?本当はもっと早くからスタンバってたでしょ?」

 

「わーお、やっぱ気付いてたんだ。相変わらず気配に敏感だねー」

 

「どうせ酒泉に話しかけるタイミングを窺ってただけでしょ」

 

「は?なにそれ?なんで私が酒泉君ごときと話すだけでそこまで気を遣う必要があるの?」

 

「自分の胸に手を当てて考えてみれば?」

 

「ごめーん!自分の胸に手を当てても貴女より大きい胸の感触しか感じないや☆」

 

「大きいのは胸じゃなくて腹周りの間違いじゃないの?」

 

「……そういう貴女も太ったように見えるけど?そんなにトリニティの食事は美味しい?」

 

「……魔女が」

 

「……地雷女」

 

「先輩、この人達なんでこんなバッチバチなんですか」

 

「さ、さあ……?」

 

 

ギスギストリニティ怖いなー怖いなーって思ったんですよね

 

なんでか知らんけど戒野さんも聖園さんもずっと仲悪いままなんよね、一体何が原因なのかしら……って思ったけど俺だって羽沼さんは生理的に受け付けないし特に理由なんかないのかもしれない

 

いや、でも喧嘩するほど仲が良いって言うし案外この二人は相性ピッタリなのでは……?いややっぱねーわその理屈でいくと俺まで羽沼さんと仲が良いって事になってしまう

 

 

「まあいいや、今はこの子の相手をしてる場合じゃないし。それより私、酒泉君に……ってよりその子にちょっと聞きたい事があるんだ」

 

「……私ですか?」

 

「うん!えっと……お名前は……」

 

「新野美咲です」

 

「そうそう!そこの男の趣味が悪い子と同じ名前だったよね!」

 

「男の趣味に関してはそっちだって人のこと言えないと思うけど?」

 

 

マジか、二人とも男の趣味悪いのか……なんだろう、意外とぱつきんオラオラヤンキーが好きだったり?

 

しかし互いに趣味が悪いってところは認めてるあたり相当厄介な男が好みらしいな、まあ人様の恋愛観に口を出すつもりはないけど

 

 

「……あの、私に話を振っておきながらそちらで勝手に喧嘩を始めないでくれます?質問があるなら早くしてください」

 

「ああ、ごめんごめん!それじゃあ早速……美咲ちゃんさ、私の聞き間違いじゃなければさっき〝酒泉君の家に泊まる〟って話してたよね?」

 

「はい、してましたけど」

 

「やっぱりそうなんだ……実はさ、もうちょっとだけ詳しくそのお話聞かせてほしいなーって」

 

「……ああ、そういう事ですか。薄々感じていましたけど……(この人も〝敵〟か)」

 

 

なんか皆やけにその話に食い付くな……まあ、付き合ってもいない女性が男性の家に泊まるというのは危険な行為なので皆そのあたりの事を心配してくれてるのかもしれない

 

空崎さんだって美咲のプライベートを気にしてたし、なんだかんだキヴォトスの外から来た人間には皆親切にしてくれるな

 

 

「詳しくも何も先程話した内容が全てですが?」

 

「正気?恋人でもない男女が一つ同じ屋根の下で……ってそれは今更か……と、とにかく!私が言いたいのはそう無闇に男の子のお家にお邪魔するのは良くないってこと!」

 

「私は構いませんけど、先輩の事は好きですし」

 

「そういう問題じゃ────ほえ?好き?」

 

「はい、好きです、ラブの方で」

 

「……???」

 

「……は?」

 

 

美咲が俺の腕にぎゅっとしがみつくと聖園さんは混乱したように首を傾げ、戒野さんは何故か声のトーンを低くして圧のある声を放った

 

そうか、一応一目惚れ設定の方は続けるつもりなんだな……ん?だとしたらちょっと不味くね?

 

先生には〝別世界から来た人間〟って説明して空崎さんにも〝出会って間もない〟って説明したのに、この二人に……ってより戒野さんにだけ〝昔からの知り合い〟って説明すると矛盾が生じるのでは?

 

美咲の奴、なんで戒野さんにだけそんな嘘を……

 

 

「……酒泉、どういう事?そっちの〝古い方のミサキ〟と何があったの?」

 

「貴女には関係ありませんよ……〝二番目の美咲〟」

 

「……ねえ、それ本気?貴女酒泉君がどんな男の子か知ってるの?すぐに女の子を泣かせるような酷い男の子なんだよ?それを知った上で好きになったの?」

 

「半分は当たっている、耳が痛い」

 

 

正直聖園さんの言葉は否定できん、だって色んな人を心配させて泣かせてきた事あるし

 

ていうか聖園さんもそれ分かってて言ってるんだろうな、だってニヤニヤしながらこっち見てきてるし、こっち見んなバナナぶつけんぞ

 

 

「そんなこと貴女に言われるまでもなく一年以上前から気付いてましたよ……私も沢山泣かされましたから」

 

「……わ、悪い」

 

「いいですよもう……今は幸せですから」

 

「ちょっ……ちょっとー?いくら好きな人が相手だからって無闇にくっつきすぎじゃないかなー?離れた方がいいと思うよー?」

「嫌です、どうして初対面の貴女に従わないといけないんですか?」

 

「わ、私は貴女の身を案じてるだけだけど?ほら、酒泉君だって一応は男の子なんだし?変な気を持たれちゃ貴女だって困るでしょ?」

 

「一応とはなんだ一応とは、俺はれっきとした男だぞ」

 

「別に変な気を持たれたって構いませんよ、むしろ大歓迎です」

 

「……そ、そうは言ってもさぁ?そういうのはやっぱりお付き合いしてからの方がいいと思うなー?」

 

 

聖園さんは苦笑を浮かべながら美咲の腕に手を伸ばす……が、美咲は俺の腕を掴んだまま俺の背中に隠れる

 

 

「な……なんで隠れるのかなー?私、何もしようとしてないよー?」

 

「おいおい……アンタのゴリラじみた握力で俺の可愛い後輩を引っ張ろうとすんなよ、怪我しちゃうだろ?もっとガラスに触れるかのように優しく扱わんかい」

 

「は、はあ!?そんなつもりはなかったんだけど!?」

 

「キャーセンパイタスケテー」

 

「ほら、美咲だって怯えてるんだからさ」

 

「どう聞いても棒読みだったじゃん!」

 

「……ふっ」

 

「ねえその子今笑ったよ!?酒泉君の後ろから思いっきり鼻で笑ってきたんだけど!?」

 

「はあ?美咲がそんなことする訳ないだろ?」

 

 

勿論俺だってそれには気付いてる、しかし合法的に聖園さんを煽り返すチャンスなので敢えて気付かないフリをする……まあ、若干の贔屓は混じってる事は否定しないが

 

前世で一番仲の良かった後輩と再会できたんだ、ちょっとぐらい舞い上がっても許してほしい

 

 

「ふーん、中々良い性格してるね……〝みさき〟は」

 

「〝みさき〟さんには敵いませんよ」

 

 

そして再び始まる〝みさき〟と〝みさき〟によるミラーマッチ、同キャラ対決は個人の力量差が明確に現れる完全実力勝負だ

 

さて、一体どちらの〝みさき〟の方が上なのか見物だな……なんて言ってる場合じゃねえ頼むからこれ以上ギスギス空間を広げないでくれ

 

 

「まあ、貴女が何時先輩と出会った〝みさき〟だろうと私より後の〝みさき〟であるという事実は変わりませんから」

 

「それを言うならそっちが昔の女って事実も変わらないけどね、古い〝みさき〟」

 

「ただの都合の良い道具に成り下がれたのがそんなに嬉しいんですか?」

 

「そんなに羨ましいんだったら貴女も道具に……ああ、新品の道具があるのに今更〝中古品〟を買う理由もないか」

 

「結構です、私は道具になるつもりはないので……私が求めてるのはそれ以上の関係ですから、貴女は精々道具らしく時間と共に経年劣化して錆び付いててください」

 

「…………」

 

「…………」

 

「ねえ酒泉君、私が言うのもなんだけど私が絡んでる時以上にギスギスしてない?」

 

「さっきは意地悪しちゃってすんませんした、まさか聖園さんが緩衝材になってるとは思ってもなかったんです」

 




セイア実装!!!リオ実装!!!うおおおおおおおおっ!!!
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