〝アリウス〟潰すゾ!!!   作:あば茶

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ifアリウス
if世界~アリウスルート~その1


 

 

「……今回の失態、どう責任を取るつもりですか?」

 

「……申し訳ございません、全て私の判断ミスが原因です」

 

「そんな事は聞いていません、私はどう責任を取るかと聞いているのです」

 

「……この身を────」

 

「先に言っておきますが……失態の原因そのものを解決しなければ同じ事を繰り返すだけですよ」

 

「────っ!待ってください!皆はただ……私に従っただけで……!」

 

「いいえ、今回の作戦失敗は警戒を怠り、途中で気を抜いた槌永ヒヨリが原因……そうでしょう?」

 

「ち、違います!全て私の実力不足です!」

 

「サオリ」

 

「っ……」

 

「貴女は私の考えが間違っていると、そう言いたいのですか?」

 

「そ、それは……」

 

「……はぁ、もういいです、貴女では話になりません。ヒヨリを呼んできなさい、私が直接〝指導〟します」

 

「なっ……!待ってください!罰なら全て私が受けます!今後二度とマダムの命令に逆らいません!だから……だからもう一度チャンスを……!」

 

「……彼女の代わりになると?この前はミサキ、それより更に前はまたヒヨリと……貴女も懲りませんね」

 

「…………」

 

「……いいでしょう、彼女の代わりに貴女の身体に痛みを刻めば、今後は貴女も迂闊な行動を取れなくなりますからね」

 

「………」

 

「どうしたのですか?何か言うことがあるのでは?」

 

「………ありがとう……ございます」

 

「よろしい、では此方に─────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドゴオオオオオンッッッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────っ!これは……!」

 

「なっ……今の爆発は一体……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クソババアアアアアアアア!!!今日こそくたばれえええええええ!!!

 

「ぐっ……待て!折川酒泉!」

「大人しくしろ!」

「あいつ……手榴弾を奪って……!」

 

 

 

 

「あの男は……」

 

「………はあ、また彼ですか」

 

 

「くそっ……日に日に強くなっている……!」

「人手が足りないぞ!もっと連れて……」

 

 

「貴女達、これはどういうことですか?私は許可を出した時以外は折川酒泉を絶対に牢から出すなと伝えたはずですが?」

 

 

「マ……マダム!申し訳ありません!」

「すぐに捕らえて────」

 

 

そんなに捕まえたかったら直接こいよ?チキンババア

 

「………相変わらず口を開けば不愉快になるような言葉ばかり喋りますね」

 

テメエの面よりは不愉快じゃねーだろ

 

「……早くその男を捕らえなさい」

 

 

「り、了解です!」

「増援が来たぞ!囲め!」

「数で押しきれ!」

 

 

「全く、ただでさえ素直に言うことを聞けない生徒が居るというのに………一番の問題児が脱走するとは……」

 

「あ、あの……私は……」

 

「……今日はもういいです、貴女は早く戻って明日の作戦に備えてください」

 

「………分かりました」

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

折川酒泉という男は私がマダムと初めて出会った時には既にアリウスに居た

 

毎回マダムに逆らっては罰を与えられ、それでも屈することなくひたすら逆らい続ける

 

身体を痛め付けられようとも、食事を抜きにされようとも、頭を踏みつけられ、傷口を抉られ、痛みで涙を流し、プライドが砕かれるようなことをされても

 

何度も何度も何度も何度も彼はマダムに逆らい続けた

 

……正直なところ、あの男が暴れる分だけ私の家族がマダムに〝指導〟される危険が減る為、奴の存在はありがたい

 

 

 

 

 

「今日からこの男をアリウススクワッドと共に行動させます」

 

 

そんな男が突然私達の仲間になった

 

 

「……待ってください、何故突然彼を?」

 

「別に大した理由ではありません、短い期間で命令違反を起こした問題児達を纏めて監視しようと思っただけです」

 

「しかし……」

 

「サオリ、貴女はいつから私に意見できる立場になったのですか?」

 

「…………」

 

「この命令に変更はありません」

 

それだけ言い残すと、マダムは背を向けて帰っていった

 

ヒヨリやミサキは彼を警戒し、アツコもどことなく距離を置いていた

 

しかし彼はそんな事など全く気にせずに装備の点検を始める

 

 

「……折川酒泉」

 

………

 

「マダムの言っていた通り、私達は今日からチームを組む事になる………だが、リーダーは私だ。これからは私の指示に従ってもらう」

 

……断る、どう動こうと俺の勝手です

 

「お前が勝手に行動して失態を冒せば、その分私達の誰かが責任を取らされる可能性がある。お前一人の行動で全員が無意味に傷つけられるんだ」

 

 

そう、この男はマダムに目をつけられている

 

奴の態度によっては私の家族にまで危害が加わるかもしれない。私が罰を受けるだけなら構わないが、皆が関わってくるなら話は別だ

 

故にこの時は多少強引な手を使ってでも彼に従わせようと思っていた

 

 

 

 

───………分かったよ、なるべくアンタに従ってやるよ

 

「………そうか」

 

 

しかし、目の前の男は思いの外素直だった

 

ばつの悪い表情で武器の整備に戻った彼は、頭をガシガシと掻きながらどこかやるせなさそうにしていた

 

 

「……リーダー、あいつ……信用できるの?」

 

「か、勝手に暴れたりしないでしょうか……?」

 

「………」

 

「〝ある程度の命令はちゃんと聞いてくれそう〟……か。そうだな、さっきの様子から見るにただの暴れ馬というわけではなさそうだ」

 

「まあ……マダムの命令である以上、私達に拒否権は無いけどね」

 

「その通りだ。私達は与えられた命令をこなす、ただそれだけだ………行くぞ」

 

 

 

 

 

 

 

──────────

 

────────

 

──────

 

 

 

 

 

今回の任務はアリウス自治区外にある廃施設からの物資の奪取だ、時間帯は当然夜間に行われる

 

今までは人目さえ気を付ければ簡単にこなせるような任務だった………が、ここ最近になってアリウス生以外の者を見かけるようになった

 

その廃施設の周りは他の任務の時も私達がよく利用するルートの為、その安全確保も含まれているのだろう

 

 

「………ヒヨリ、聞こえるか。周囲の状況は?」

 

『は、はい……異常ありません、姫ちゃんとミサキちゃんの方も敵らしい影は見当たりません』

 

 

作戦開始から数時間、私達は既に廃施設の内部まで侵入していた

 

外にはヒヨリを残して外部から侵入しようとする者の監視を、アツコとミサキは出入口周辺の安全の確保を

 

そして私と酒泉は……最奥までの索敵だ

 

 

「……こちらには一人も居なかった、お前の方はどうだ」

 

………同じく

 

「……それなら進むぞ」

 

 

必要最低限の会話だけをし、効率的に進んでいく

 

すると途中で機材がそこかしこに散らばっている広い部屋にたどり着く

 

廃された建物内では特段珍しくも何ともない光景だが、所々に人が居座っていたであろう痕跡が見られる………甘い連中だな

 

酒泉もそれに気づいているのか、既に警戒を強めている

 

 

「……ヒヨリ、再び状況を確認したい」

 

 

念の為、いつでも脱出できるように事前に外の状況を確認しようと通信機越しにヒヨリに語りかける

 

「………っ?」

 

 

しかし返ってきたのはザザッというノイズだけだった

 

 

 

(これは……妨害されている?しかしどこから……まさか!)

 

……この部屋のガラクタ達、何個か生きてそうですね

 

「……紛れ込ませていたのか」

 

 

恐らくこの中のどれかに妨害装置が仕込まれていたのだろう、ということは……

 

 

「……っ!来るぞ!」

 

 

突如、機材だらけの部屋の奥から銃弾が飛び込んでくる

 

ギリギリで回避できたものの、完全に先手を許してしまった

 

「……っ!?」

 

 

しかし、回避した先に捨てられていた壊れた機械が薄く光って爆発を起こす

 

それによって脚を負傷してしまうが……別に耐えられない程ではない

 

 

「こんな物まで隠していたのか……酒泉、迂闊に動くなよ」

 

 

隣でスナイパーライフルを構える酒泉に注意を促す

 

 

「……聞いているのか?」

 

 

だが、酒泉は此方の声に返事をする訳でもなく、ただひたすら狙撃手が隠れている部屋の奥をジッ……と見つめていた

 

……かと思えば、突然敵に向かってゆっくりと歩きはじめた

 

 

 

「何をしている!それでは恰好の的にされるだけだ!」

 

アンタは脚怪我したんだから大人しくしててくれ

 

「なっ……」

 

 

遮蔽物に隠れる訳でも敵に撃たれないように走り回る訳でもなく、ひたすら敵が居るであろう位置まで歩き続ける酒泉

 

まるで「撃てるものなら撃ってみろ」と言わんばかりの堂々とした行動に、「お望み通り」と返すかのように再び弾丸が飛んでくる

このままでは弾丸は酒泉の身体を貫通するだろう……が、酒泉は腰に付けたホルダーからナイフを取り出してそれを止める

 

弾丸の位置を視認してそこにナイフを置くなんて……どんな眼をしているんだ、あの男は

 

 

「なっ!?」

 

 

そんな事を考えていると、この無駄に広い部屋の奥から声が聞こえてきた

 

恐らく酒泉の行動に驚いたのだろうが……それでは居場所を教えているようなものだ

 

酒泉は床に散らばっている機械を跳び越えながら全力で声のした方へ走り出す

 

その道中で機械が何個か爆発を起こすが、まるで最初からそれらの位置が分かっているかのように避けていく

 

………まさか、敵に向かって歩いていた時にどれが爆弾か見極めていたのか?

 

迫りくる弾丸を異常に頑丈なナイフで止め、爆弾を避け、やがて部屋の奥に進んだ酒泉は物陰に手を伸ばし、そして────

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────

 

────────

 

──────

 

 

 

 

 

 

 

「ぐっ……!放せ……!」

 

目の前の機械の身体を持つ男が必死に私の手から逃れようと暴れ出す

 

「……放せばまた攻撃してくるだろう」

 

「くそっ!何でこんな所に俺以外の奴等が居るんだよ……まさか、同業者か!?なら見逃してくれよ!」

 

「同業者?」

 

「ああ!アンタらだって俺と同じでジャンク売っぱらって生計を立ててるんだろ?ここのガラクタは質の良いガラクタばっかりだからな!」

 

 

そういうことか……恐らくこの男はこの辺り一帯の機材を全て独占するつもりで罠を仕掛けていたのだろう

 

しかしここは私達のルート、そう簡単に見逃す訳にはいかない

 

 

「……私達はお前の同業者じゃなければ見逃すつもりもない。私達の存在を知ってしまった以上、ここで消えてもらうしかない」

 

 

そう言って奴の額に銃口を突き付け────

 

 

 

「……おい」

 

………

 

「何をしている、酒泉……手を放せ」

 

「ア、アンタ……俺のことを助けてくれるのか!?」

 

……俺達の存在を誰にも教えないと約束するなら、な

 

「ああ!勿論誰にも言うつもりはねえ!神様に誓ってな!」

 

「勝手に決めるな、そんな事をマダムが許すと───」

 

俺は許される

 

「───何?」

 

あの女は俺のことを痛め付けはするが、殺すことはできないからな……必要以上に罰することはできないだろうよ

 

「……作戦前にも伝えたが、お前の行動によっては私達が罰せられることだってありえる」

 

なら〝俺以外に手を出したらその瞬間に自分の頭をぶち抜いてやる〟って伝えれば良いだけの話だ

 

………とにかく、俺は好きなようにやらせてもらうからな

 

ほら、アンタもさっさと行きな……この建物の裏口は分かるか?表には他の奴等がいるから気を付けな

 

「あ、ああ!ありがとう!アンタは命の恩人だ!」

 

 

走り去っていく奴の背中に銃口を向けようとするが、それを邪魔するかの様に酒泉が立ち塞がる

 

 

「……何故邪魔をする」

 

……責任は全部俺が取る、〝指導〟だって俺が受ける

 

「奴は赤の他人だぞ」

 

………俺はお前達のような人を殺すことに疑問を持たない人間になりたくないだけだ

 

「……何だと?」

 

この際ハッキリと言わせてもらうがな、俺はお前らアリウスが大っ嫌いだ

 

そんな奴等と同類になりたくないなんて当然の事だろ?

 

「………」

 

あのババアの許可がなければこの趣味の悪い〝腕輪〟が起動しちまうから、こうしてアリウス自治区の外に出ても逃げ出さないでやってるがな………本当なら今すぐにでもお前らを全員ぶっ潰してアリウスなんて抜け出したいんだよ

 

「……無駄だ、アリウスを抜け出してもお前に……私達に居場所などない」

 

………なら一生そうやって大事な家族を地獄に引きずり込んでろ

 

 

 

 

そう言い残すと、酒泉は背を向けて来た道を戻りはじめた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

目の前の扉から男の叫び声が聞こえる

 

マダムの指示によって数人の生徒達に拷問部屋に連れていかれる際に抵抗しなかったのは無駄だと分かっていたからなのか、それとも………

 

「……馬鹿な男だ」

 

苦痛や怒りが入り交じったその声は、愚かな男の悲鳴にも聞こえ………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この虚しい世界に反逆するための雄叫びにも聞こえた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…い……おい……」

 

っ……ぅ……

 

「……りしろ……さませ……」

 

誰……だ………

 

 

 

 

 

 

「起きろっ!酒泉っ!」

 

顔近っ!?

 

 

「あっ……す、すまない……」

 

……で?何で錠前さんがここに居るんですか?

 

「……家の中に酒泉の気配があるのにも関わらず、中々出てこなかったからまた魘されていたのかと思ってな」

 

いや、そもそも玄関に鍵掛けてたはずですけど

 

「……………すまない」

 

………まあ、いいや

 

「それで、その………大丈夫だったか?」

 

ああー……それは……

 

「……また拷問されていた時の夢か?」

 

……別に大したもんじゃないっすよ

 

「……酒泉、今からでも私達の所に……トリニティに来ないか?皆、お前のことを待っているぞ」

 

……遠慮しておきます、今は仕事が忙しいんで

 

「………ジャンク屋か」

 

あの人にはよくお世話になってるんで……

 

「………なあ、頼む。少しでもいいから私に何か恩返しをさせてくれないか?」

 

はぁ……またその話ですか?

 

「お前が認めてくれるまで何度でも言うぞ。私はベアトリーチェの支配から解放してもらった恩をお前に返せていないし、それに────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………お前の右目を奪った罰もまだ受けていない」

 

………もう戻らないんでいいですよ、別に

 

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