〝アリウス〟潰すゾ!!!   作:あば茶

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???「てまえっ!」酒泉「は?」

 

 

 

「てまえ!てまえてまえ!」

 

「……ふむ」

 

 

先日のみどもちゃんに続いて現れた謎の生物をとりあえず家の中に連れ込んだ

 

頬にガーゼをした少々小生意気そうなこの不思議饅頭を俺は〝てまえちゃん〟と呼ぶことにした

 

 

「てまぇ?……ぷっ!てまえてまえ!」

 

「なんだテメェ人のこと笑いやがって」

 

「てまっ!てまっ!」

 

「……よーし上等だ」

 

「てまっ!?てまままままままっ……」

 

 

よく分からんが人の面見て鼻で笑いやがった上にぽよんぽよんと体当たりまでしてきやがったのでバスケットボールみたいに頭をだむだむだむと軽く叩いてみる(勿論怪我しない程度に)

 

すると面白いくらいにてまえちゃんの顔がぷるぷると振動した、触り心地は結構良いな

 

 

「て、てまぁ!てまえ!」

 

「はっはっは、饅頭が睨んだところで怖くもなんともないぞ」

 

「て、てまぇ……!」

 

「ほーれほれ、どうしたー?睨むだけかー?」

 

「うぅう……こくりこさまああああああああああ!!!」

 

「うおっ!?」

 

 

少し意地悪しすぎたか、てまえちゃんがじわじわと涙目になっていったかと思えば一気に大声で泣き叫び出した

 

〝こくりこさま〟……てまえちゃんの仲間の名前か?

 

 

「うああ゛あぁああん!こくりこさまあああ!こくりこさまああああああああああ!!!」

 

「ああもう分かった分かった!俺が悪かった!仕返しとはいえやりすぎたよ!」

 

「うぅ……こくりこさまぁ……」

 

 

頭を撫でながら慰めるとてまえちゃんはまたもや〝こくりこさま〟とやらの名を呟きながらぐすんと涙を溢した

 

とりあえず落ち着いてくれたみたいでよかったけど……こいつ、小生意気な顔とは正反対に結構泣き虫だな

 

 

「てまえぇ……てまえぇ……!」

 

「そう睨むな、そもそも先に仕掛けてきたのはお前の方からだろ」

 

「てまえっ!」

 

「あーもう……謝っただろうが……」

 

 

此方を睨んでくるてまえちゃんにそう返してみるものの、そもそもてまえちゃんは俺の言葉を理解できているのだろうか

 

 

「……ほら、アイス食わせてやるから許せ」

 

 

こういう時こそ食い物の出番、少なくともみどもちゃんはうんめぇ棒に興味を示してくれたしこいつも何かしら反応してくれるだろう

 

 

「てまっ!?てまえぇ……!」

 

「なんだその目、俺のこと疑ってんのか?」

 

「てまぇ……」

 

「……じゃあいいよ、俺が食うから「てまえっ!!!」うおっ……急に飛び付いてくんじゃねえ!」

 

 

ソーダ味のアイスを引っ込めようとした瞬間にてまえちゃんが大口を開けて飛び付いてきた、危うく俺の手までぱっくんちょされるところだったぜ……

 

しかしアイスを丸飲みなんてしたせいか、てまえちゃんはカタカタと震えながら頭をぶんぶんと左右に降り始めた

 

 

「てまえ!てまえてまえ!てまえええええええええ!!!」

 

「もしかしてあれか?かき氷一気食いした時みたいに頭がキーンってなってるとかか?」

 

「てまえええええええええ!!!」

 

「可哀想に……手が無いばかりに頭を押さえて痛みを誤魔化す事すらできぬとは」

 

 

叫びながら跳ね回るてまえちゃんを憐れみの目で見つめながら近くに置いてあった鞄の中からノートを取り出してみる

 

二日連続でこの不思議生物と出会ったのはただの偶然とは思えない、ここらで詳しく生態を調べてみるとしよう

 

 

「てまえぇ……てまっ!?」

 

 

呻き声をあげながらダウンしているてまえちゃんを持ち上げ、身共ちゃんの時と同じく身体中をチェックする

 

尻の穴や性器等はみどもちゃんと同じく存在しない、だとすればてまえちゃんがさっき食ったアイスもみどもちゃんの時みたいに猿空間送りにされてるのだろうか

 

触り心地はみどもちゃんと同じ、饅頭ボディのサイズはみどもちゃんより一回り小さいくらいか

 

 

「てまえええええええええ!!!」

 

「あぶねっ」

 

「てみゃっ!?」

 

「あっ」

 

 

身を捩って俺の両手を抜け出したてまえちゃんが再び俺の顔面に体当たりを仕掛けてきたので当然回避、するとてまえちゃんは顔から床にベチャリと落下してそのままプルプルと震え始めた

 

カーペット越しとはいえ流石に痛かったのか、てまえちゃんほまたもや大声で泣き叫んでしまった

 

 

「こ゛く゛り゛こ゛さまああ゛あ゛ああ!!!うあああああ゛あ゛あぁあん!!!」

 

「悪い悪い、ちゃんと受け止めてやればよかったな」

 

「うぅうううぅうう゛う……!」

 

 

そもそもこの不思議生物達にも恥じらいの感情はあるんだってみどもちゃんと出会った時に判明した筈なんだからもう少し丁重に扱うべきだったか

 

……いや、なんで尻の穴や性器がある訳でもないのに恥ずかしがってるんだ?

 

 

「よしよし、痛くない痛くなーい」

 

「てまぇえええぇ……!」

 

「よーしよしよしよく堪えたなー、てまえちゃんは強い子強い子」

 

「てまえぇ……?てまえ、さいきょう……?」

 

「そうそう、てまえちゃん最強マジ最強」

 

「さいきょう……てまえ、さいきょう!」

 

「はいはい最強最強」

 

「てまえつよい!てまえさいきょう!なぐさちゃあんよわよわ!」

 

 

煽てた瞬間に痛みも何もかも忘れてドヤ顔で跳ね回るてまえちゃん、誰だか知らんが急に罵られたなぐさちゃあんには涙を禁じ得ない

 

てまえちゃんは煽てられるとすぐに調子に乗る性格、メモメモっと……さて、次は何を調べようか、運動性能でも見てみるか?

 

でもてまえちゃん、頬にガーゼ貼ってるし俺が分からないだけで身体のどっかを怪我してる可能性もあるのか。そう考えるとさっき顔をぶつける前にキャッチできなかった事への罪悪感が高まってしまった

 

……つーかこのガーゼ誰が貼ったんだ?手が無いコイツじゃ自分で貼る事はできないだろうし、誰か飼い主が居るとか……いや、だとしたら何で二日連続で俺の家の前にこんな不思議生物が?やっぱりみどもちゃんと同じく野生の生き物なんじゃ────

 

 

「……ん?てかお前、ガーゼ汚れてんじゃん」

 

「てまえ?」

 

「待ってろ、今新しいのに変えてやるから」

 

 

生態観察に夢中になりすぎて気付かなかったがてまえちゃんのガーゼは土汚れ等で汚れていた

 

こういうのはバイ菌とか入らないように清潔に保っておかなければならない、俺も昔はガーゼ交換とか面倒臭がってそのまま使ってたせいでよく火宮さんに叱られてたなぁ……昔と言っても一年も経ってないが

 

 

「あり?こっちには無いな……自室の方か?」

 

 

てまえちゃんにちょっと待ってろと言い残してからガーゼを探しに向かう、理解できたのかは知らん

 

もし飼い主が居たとしたら〝まあ!私のてまえちゃんのガーゼを勝手に交換するなんて許せないざます!〟とかクレーム付けられるかもしらんが……そん時はそん時だ

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────

 

 

 

─────────

 

 

 

──────

 

 

 

 

 

 

「てっまえ~♪てっまえ~♪」

 

「……なにしてんだ、お前」

 

 

医療キットを見つけてリビングに戻ってみれば、てまえちゃんが開けっぱなしにしていたペンケースから取り出したであろう俺の鉛筆を口で加えて置きっぱにしてたノートに何かを描いていた

 

元々使っていたシャーペンは力加減ができず芯を折ってしまったのかそこら辺に放置されていた

 

 

「……なに描いてんだ?」

 

「てまえ?……てまえてまえ!」

 

後ろから覗き込もうとするとてまえちゃんはドヤ!とノートから一歩引いて自信満々に絵を見せつけてきた

 

これは……角が生えた……

 

 

「猫かな?」

 

「てまえっ!てまえええええ!」

 

「うおっ……なんだ、違うのか?」

 

「てまえ!」

 

 

俺の答えが気に入らなかったのか、てまえちゃんはむすっとした表情で俺の脚に体当たりを仕掛けてきた

 

避けるのは簡単だがまた床に顔面をぶつけて泣き叫ばれても困るし適当に食らっておいた

 

 

「んだよ……じゃあ誰だよこいつ」

 

「らいおん!」

 

「……ライオン?」

 

「さいきょういっかくらいおん!」

 

「最強一角ライオン……」

 

 

ライオン……これがライオン……?

 

 

「猫でしょ」

 

「らーいーおーんー!」

 

「いやでも────」

 

「うぅう゛う……うううぅうううう……!」

 

「────あーやっぱ俺の眼がおかしかったわ、どっからどう見てもライオンだなこりゃ」

 

「て、てまえ……ライオン……?」

 

「ライオンライオン、ラタラタラトラーター」

 

 

またまたまたてまえちゃんが泣き出しそうになったので咄嗟に訂正してご機嫌取りを行う、するとてまえちゃんはぱああっ!と満面の笑みで跳び跳ね出した

 

こんな事の為に自慢の視力を蔑む事になろうとは……悲しいなぁ……

 

「らいおん!らいおん!」

 

「そうだなライオンだな、こんな立派なライオンを描けるなんててまえちゃんは凄いなー」

 

「てまえ、さいきょう!らいおん、さいきょう!」

 

「お、そうだな」

 

「さいきょういっかくらいおん!さいきょう!いっかく!らいおん!てまえ!てまえ!……てまっ!?」

 

 

ちょっと煽てすぎたかというレベルで調子に乗るてまえちゃん、みどもちゃんの時もそうだったがそんなに跳ね回ってよく疲れないな

 

なんて思ってたら狙い済ましたかの様にてまえちゃんから〝ぐぅ~〟という腹の音が、そんなとこまでみどもちゃんの真似しなくていいから……

 

 

「そういや俺もまだ何も食ってなかったな……そろそろ飯でも作るか」

 

「てまぁ……」

 

「……お前も食うか?」

 

「てまっ!?てまぇ……!」

 

「そんな警戒するなら別に食わなくても「てまええええ!!!」───たくっ、最初から素直にしとけっての」

 

 

此方の言葉を遮る様に大声を出しながら突進してくるてまえちゃんをキャッチする、そこのソファーで大人しくしてなさい

 

さて、メニューはどうしようか……シンプルにベーコンエッグとトーストにするか?……いや、確か昨日スーパーで買った焼き鳥が余ってたな

 

 

「焼き鳥丼でも作るとするか、確かねぎまが二本あったはず……」

 

「てまえ!?てまっ!てまっ!てまええええええ!」

 

「あん?どした?」

 

 

冷蔵庫に向かおうとすると急にてまえちゃんが俺のズボンを咥えて足止めしようとしてきた

 

 

「てまえ!てまえ!てまえぇ!」

 

「まるで意味がわからんぞ!……いやマジでわかんねえ」

 

「てまええええ……!」

 

 

うーん……

 

 

「とりあえずよく分からんから続きは飯食ってからな」

 

「てまええええええええええっ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

「……なるほど、こういう事だったのか」

 

「てまえ!てまえ!」

 

「そう急かすな……はい、あーん」

 

「てまー……てまえぇ……」

 

 

焼き鳥丼を食った瞬間、幸せそうに満腹顔を浮かべるてまえちゃん。一方俺はてまえちゃんが食べなかったネギを食らっていた

 

てまえちゃん、どうにもネギが嫌いならしく、ネギが混ざってる部分を口元に近付けられた時だけ激しく抵抗の意を示していた

 

 

「あーあ、こんな美味いのに……見ろよこの器、お前がネギだけ残すせいで俺の焼き鳥丼がネギ丼になっちまってるじゃねーか」

 

「てまえ?……けぷっ」

 

「こ、このクソガキ……!」

 

 

ムカつくフェイスでげっぷを食らわせてきたてまえちゃんに思わず青筋が浮かんできそうになるがなんとか堪える

 

……まあ、もしかしたらネギが嫌いってよりアレルギーとかそういう方向性で食えない可能性もあるしな、犬にとっての玉ねぎみたいなパターンもあるだろうし

 

そう考えると本人が嫌がっているのを無理に食べさせるのもリスクがあるし止めておいたのは正解だろう、ただの好き嫌いだった場合は許さん

 

 

「口元拭くぞー」

 

「てま?……てまままままままっ」

 

 

てまえちゃんの口元を拭いてから空になった皿を台所まで運び、レバー式の水栓をお湯に切り替える

 

さて……この後はどうしようか

 

先日現れたみどもちゃん、やきとりちゃん、せいしゅんちゃん、へどちゃん、そしてこのてまえちゃん

 

この子達はキヴォトスの歴史上一度も観測された事のない存在だ、ネットで調べてみても一切情報が出てこなかったし間違いないだろう

 

そんな不思議生物達を飼い主探しの為に警察やヴァルキューレに届け出た場合、どの様なパターンが考えられるか

 

1・普通に飼い主が見つかってハッピーエンド

 

2・最初から飼い主など存在しない新発見生物でした!じゃけん野生に帰しましょうねー

 

3・最初から飼い主など存在しない新発見生物でした!ぐへへ……人間の手で管理して繁殖させたり身体を使って実験したりしてやるぜ……

 

 

「……うーん」

 

 

いやまあ、普通に考えて3のパターンの方が多そうだよなぁ……それが良い事なのか悪い事なのか子供の俺には分からないけど、少なくとも賢い大人ならそっちを選ぶだろう

 

だけど俺は自分の感情を制御できない馬鹿なガキなので〝今までずっと自然界で暮らしてきたのならこのまま人間が関わらない世界に帰してあげたい〟という情を抱いてしまっている

 

 

「てまえちゃーん、お前はどうしたいー?」

 

「てまー……てまー……」

 

「って、寝てるし……」

 

 

なんとなーく声を掛けてみる……が、満腹状態になった事で眠気が一気に襲ってきたのか、てまえちゃんはすーすー寝息を立てながら目を閉じていた

 

しかもいつの間にやら俺のノートと鉛筆が置いてあった場所に戻って……ん?

 

 

「……なんだこれ?」

 

 

よく見ると最強一角ライオンとやらが描かれていたページに新たな絵が二つ追加されている

 

一つは四角い何かが頬っぺたに貼られている顔の絵、その上に〝てまえ〟と書かれているのでこれは恐らく自分の顔だろう、四角いのは多分ガーゼか

 

そしてもう一つの絵は……ちょっと目付きが鋭い、なんとなーく男っぽさを感じる絵、その上に書かれている名前は……

 

 

「……〝おまえ〟?これ、もしかして俺のことか?」

 

 

てまえとおまえが二人でさいきょういっかくらいおんの上に立っている、そんな絵が完成されていた

 

この子なりに焼き鳥丼のお礼でもしようとしてくれたのか、それとも微かにでも俺という存在をこの子の中に残せたのか

 

よく分からんが少なくともただのムカつくガキではなかったようだ、だが……

 

 

「ふっ……もう少しイケメンに描いてくれよな」

 

「てみゃあ?てまえぇ……」

 

 

てまえちゃんの頬っぺをつんつんしながらそう呟く、しかしてまえちゃんは起きる気配を全く見せないどころかより心地良さそうに頬を緩めた

 

そんなてまえちゃんをソファーの上に乗せ、口元が覆われないように上から毛布をそっと掛ける

 

 

「……なんか、コイツの顔見てると小難しいこと考えてるのが馬鹿らしくなってくるな」

 

 

この不思議生物をどうするか、それを考えるのはもう少し後でもいいだろう

 

その前に先生に相談してみるのも……あ、なんだったらまたみどもちゃん達を探しててまえちゃんも会わせてみるのもいいかもしれないな

 

 

「……うしっ、ちょっとひとっ走りしてくるか」

 

 

さっきまでのモヤモヤを晴らす為にランニングしに行こうとジャージに着替え、てまえちゃんを起こさないようにそっと玄関を開ける

 

……今思えばみどもちゃんもてまえちゃんもこの玄関前で出会ったんだよなー、なんだ?折川家の玄関には不思議生物を引き寄せる効果でもあるのか?

 

それか俺自身が不思議生物を惹き付けるようなフェロモンを出してるとか

 

 

「なーんてな────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あんた」

 

「……ほえ?」

 

 

そうして玄関を開けた先

 

そこには金髪エルフ耳生首饅頭が待ってました

 

 

「え……いや……え……?」

 

「あんた」

 

「…………あの、てまえちゃんのお友達ですか?」

 

「あんた」

 

「そ、それかみどもちゃんの?」

 

「あんた」

 

「じゃ、じゃあ……やきとりちゃんの────」

 

「ちがう、きらい」

 

「あ、はい」

 

 

よくわからんがやきとりちゃんカワイソス

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