もしも酒泉君がどの学園にも属さずに自分で組織を立ち上げたら
「あの馬鹿はどこに行った!?」
ここはブラックマーケットのどこかの建物、その中から男の怒声が聞こえる
「また無償で働いたな!?私達は慈善団体じゃないのだぞ!?」
紙をぐしゃぐしゃに握りしめながら愚痴を溢している彼は元カイザーPMC理事にして元オクトパス・バンクの営業職員……にして現・何でも屋アルコーラーの経理担当である
何故彼がこんな所に居るのかというと………まあ、待遇の問題だろう
いつまで経っても一向に成り上がれる気配の無い組織に居座るよりも、新たな組織でそれなりの地位から再出発した方が良いのでは?というのが彼の考えだ
ここでは〝おっちゃん〟と呼ばれている、本人はキレた
「落ち着け、社長のお人好しは今に始まったことではないだろう………それに猫探しなど大して金にはならないだろ」
隣で銃の整備をしながら宥めるのは元・アリウススクワッドのリーダーにして現・何でも屋アルコーラーの戦闘員、錠前サオリ
調印式襲撃の計画実行前に逆に自分達が襲撃され、その時に〝ある男〟に出会い、そこで拾われた
格安アパートで自分を待つ家族の為に、今日も頑張っている
ちなみに他のスクワッドメンバーもあまり目立ちすぎないバイトをしている
「……先程、彼から連絡があったわ。そろそろ帰ってくるみたい」
〝ある男〟の居場所を答えるのはセミナーの元会長にして現・何でも屋アルコーラーの技術面担当の調月リオ
彼女はとある少女を犠牲にしそうになったところ、生徒達を率いるシャーレに敗北してミレニアムを去った
……そしてこれから先の行動について悩んでいたところを〝ある男〟に見られ、そのまま組織に誘われた
「やはり彼は人の上に立つ器ではなかったようですね……ここは私が貴女達の上司になってさしあげましょう」
不知火カヤ、清掃員、以上
「はあ!?」
というのは冗談で、色々とやらかして牢にぶちこまれたところをシャーレに条件付きで仮釈放してもらった
………のはいいが、プライドだけはサンクトゥムタワーより高い彼女はその様々な条件に耐えることができず、必要最低限の物だけ持って逃げ出した
………更にその結果、空腹で倒れているところを〝ある男〟に拾われた
「毎度毎度彼は寄り道しすぎですよ!この私を待たせるなんて……!」
「全くだ……!少しは社長だということを自覚して───」
このまま愚痴大会が開かれるかと思われたが、カランッという扉が開く音が聞こえると同時に全員がそちらに視線を向ける
「遅いですよ!どれほど待ったと────」
「すいません、ここで依頼を受けてもらえると……ヒッ!?」
自分達の上司が来たと勘違いしたカヤがその人物を睨み付けるが、そこにいたのは気弱そうな少女だった
「……あら、これは失礼しました」
「今更取り繕っても遅いと思うけど……ごめんなさい、彼女が早とちりしてしまって。さっきのは別に貴女に対して怒っていた訳ではないの」
「い、いえ……」
「チッ……流石は元会長さんですね、咄嗟の対応もお手の物ですか」
「貴女の対応次第では彼の評判に悪影響が出てしまうことを自覚してくれると助かるのだけど……」
「随分と彼に尽くしているんですね?その無駄に育った胸の使い道ができて良かったですね!?」
「今の会話に胸は全く関係ないと思うのだけど………個人的な嫉妬は止めてちょうだい、持たざる者の嫉妬は見苦しいわ」
「二人とも止めろ、依頼人が困惑している」
「貴女は余裕があるからそんな事が言えるんですよ!貴女に私の何が分かるんですか!」
「…………カヤ」
「……何ですか」
「こんな物があっても戦闘の邪魔になるだけだぞ」
「お前を殺す」
依頼人を置いて騒ぎ始める三人(殆どカヤが一方的に突っかかってるだけ)を置いて話を進めようとする元理事……おっちゃん
「……それで?依頼というのは?」
「その……実は私のお母さん、飲食系の会社を経営してまして……今度ある食材を入手しようとしてるんです」
「ある食材?」
「はい、一部ではあのゴールドマグロより希少と言われている幻の食材……プラチナマグロを」
「……そこまでいくと不味そうな名前だな」
「私もそう思います……それで、その食材の入手方なんですけど、その……今度〝バトルオークション〟で出品されるんです」
「バトルオークション?何だそれは?」
「各社で戦闘チームを用意して乱戦させて、そこで勝ち残った順に購入権を与えるというオークションです……過去にはあのゲヘナの美食研究会や便利屋68も参加したことがあるみたいでして……」
「……便利屋だと?」
「はい……それで、ここの人達はとっても強いと聞いたことがあるので……」
「それで私達を選んだ……と」
「はい……」
「ふむ……しかし残念だったな、決定権のある社長は今────」
───引き受けますよ、その依頼
「……遅いぞ、社長出勤か?」
社長ですから
「えっと……貴方が社長……ですか?」
「……こんなのが、な」
扉を開け、中に入ってきたのは依頼人の少女とあまり歳の差が無さそうな若い少年だった
先程まで口論していた三人もすぐにその男の方を向く
「お帰りなさい……早速だけど貴方の言っていた自動防御装置、完成したわ」
おお……小型化できたんですね……!
「これを懐に入れておけば、いざとなった時に貴方の身を護ってくれるわ」
「……酒泉、お前のことは私が護ると言ったはずだろう」
あの、それは……
「私が自分から進言したのよ、貴女だって四六時中彼と一緒に居る訳にはいかないでしょう?」
「……私は平気だ」
「彼が平気じゃないの」
「何故それをお前が決める」
「私が一番彼のことを理解しているからよ」
「………」
「………」
「こうなったら酒泉に直接聞こう」
「そうね……酒泉、貴方はどっちの────」
「全く……相変わらず貴方は鈍臭いですね、それでは私の上司は勤まりませんよ?」
いやぁ……面目ない……
「大人しく私に社長の椅子を譲った方がいいのでは?その方が貴方も安心して仕え────」
まあ、超人の不知火さんが会社を護ってくれているからこそ、こうして安心しながらゆっくり帰ってこれるんで……
「……っ、ま……まあ?部下の失態を広い心で許してあげるのも上司の務めですし?今回ぐらいは特別に見逃してあげますけど?」
この場合、一応俺が上司なんですけどね……
「細かい事はいいんですよ……そ、それよりも帰って来たばかりで疲れていませんか?もしよろしければ超人であるこの私が特別にコーヒーを───」
「……カヤ、まだ窓拭きが終わっていないだろう」
「酒泉、貴方も雑談していないでちゃんと依頼人の話を聞きなさい」
あっ……すいません
「わ、分かってますよ!」
酒泉とカヤの会話を途切れさせ、話を戻す二人
依頼人の少女は気まずそうにしながらも話を再開させる
「そ、それで……先程依頼を受けてくれると仰ってましたけど……本当によろしいのですか?」
ええ、勿論ですよ
「バトルオークションにはかなりの強者達が集まりますけど………それでも?」
はい、問題無いです
「……ありがとうございます!ああ、本当によかったぁ……ここも断られたらどうしようかと……」
ここも?
「実は他の人達にも声をかけていたんですけど……便利屋や美食研が参戦するかもとお伝えしたら皆、断ってしまいまして……」
それは大変でしたね……
「はい、ですから貴方達に会うことができて本当によかったです……えっと……」
……あっ、そういえばまだ自己紹介してませんでしたね
えー……ゴホンッ、初めまして、俺────じゃなくてっ、私は何でも屋・アルコーラーの社長を務めております
折川酒泉と申します
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ここは何でも屋・アルコーラー
ここで働く者達には様々な事情がある……が、酒泉にとってはどうでもいいことだ
彼が欲しているのは人手、働いてさえくれればそれでいい
善も悪も、子供も大人も関係ない
仕事は千差万別、対価は給料と………
居場所だ
バトルオークションについては便利屋68業務日誌をチェックだ!(ダイマ)
ちなみに続きません