〝アリウス〟潰すゾ!!!   作:あば茶

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感想欄ネタです


パンデモ酒泉君

 

 

 

「………という訳でだな、風紀委員共にこの書類を全部持っていって………」

 

あーうんうん、それは彼氏が悪いわー

「さては話を聞いてなかったな?」

 

俺なら絶対そんな思いさせへんのやけどなー、てかモモトークやってる?

 

「よし、殺す」

 

 

いきなり殺害予告してきた……この人怖ぁ……

 

あ、どうも、万魔殿所属の折川酒泉です

 

実は今、目の前のクソ上司が風紀委員会に仕事を押し付けさせようとしてきたので適当に聞き流していたところです

 

………え?別に自分が損する訳じゃないだろって?

 

いやぁ……実は俺、風紀委員会に〝推し〟が居るんだよね、だからこうして万魔殿に入って内部から嫌がらせを止めさせようって色々試行錯誤しているとこ

 

 

 

「全く……貴様は上司のことをなんだと思っているんだ」

 

空崎さんにあらゆる面で負けてる人

 

「よーし、今日が貴様の命日だ」

 

ワー、ナツメサンタスケテー

 

「自分で何とかしてくださいよ……」

 

 

 

万魔殿の人達は皆薄情だなー………まっ!上司がこんなんじゃそれも当然か!

 

やっぱり風紀委員会がナンバーワン!

 

 

 

「……貴様、今変なことを考えなかったか?」

 

別に?風紀委員会サイコーって思ってただけですけど?

 

「ほう?よりによって私の前でそんな事をほざくのか」

 

 

うわっ、めっちゃ睨んできた……

 

 

 

「……そうか、やはりあの噂は本当だったのか」

 

……あの噂?

 

「〝折川酒泉はロリコン〟だという噂だ」

 

 

……は?ロリコン?俺が?…………はあっ!?

 

 

「その反応、図星だったようだな!通りで私に対する態度だけ生意気な訳だ!」

 

んな訳ねーだろうが!?何をどうしたらその判断に至るんだよ!?

 

「そうじゃないとこの私の前で〝空崎ヒナにあらゆる面で負けている〟などという的外れな事を言うはずがないだろう!実力も職務遂行能力もカリスマ性も容姿も全ての面で優れているこのマコト様に対して!」

 

実力は絶対に空崎さんの方が上、仕事に関しては風紀委員会に押し付けてるだけ、カリスマは……うん、お察しですね

 

「なっ……なんだとおおおおおお!?」

 

容姿に関してはそもそも比べる方向性が違うでしょ………空崎さんは可愛い系ですけど、羽沼さんは美人系ですし

 

「むっ…………そ、そうか」

 

まあ、それでも控えめに言って性悪スカポンタヌキですけど

 

「ぶっ殺すぞ貴様」

 

 

今にも噴火しそうなほど顔を真っ赤にして怒る羽沼さん

 

むしろこの程度の評価に留めただけ感謝してほしい

 

 

 

「………待てよ?ロリコンだということは………まさか!イブキも狙っているのか!?貴様あああああ!!!」

 

だから違うっつってんだろ!?推しが偶然小さいだけだ!俺はロリコンじゃねえ!そもそも同じ高校生だ!

 

「ロリコン?……ってなに?イロハ先輩」

 

 

 

後ろの方で棗さんに抱えられながらイブキさんが尋ねる

 

棗さん……癒されてないで仕事してくださいよ……

 

 

 

「ロリコンというのはですね、イブキのようにちっちゃな女の子を好んでいる者の事を言うんですよ。近づかないようにしましょうね」

 

おう、折川酒泉に対する風評被害やめろや

 

「それってつまり……酒泉は私のことが好きってこと!?」

 

 

 

目を輝かせて立ち上がるイブキさん………なんだろう、凄い嫌な予感がする

 

 

 

「そういうことだよね!?酒泉!」

 

い、いや……その……

 

「酒泉はロリコン?だから私のことが大好きなんだよね!?」

 

イブキさんのことは好きだけど……その、俺はロリコンではないので……

「……酒泉は私のこと、好きじゃないの?」

 

 

 

ションボリと目に見えて落ち込むイブキさん

 

直後、羽沼さんと棗さんから強烈な殺気が向けられる

 

 

 

「私、酒泉のこと好きだよ………?」

 

うぐっ……お、俺もイブキさんのことは好き……です……!

 

「じゃあ!ロリコンだね!」

 

ロ、ロリコンではありません……!断じてありません……!

 

「……私のこと、嫌い?」

 

お、俺は……俺は……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は────ロリコン……ですっ……!

 

「やったー!これで両思いだね!酒泉!」

 

 

 

 

 

この日から俺は変態として学園生活を送ることになってしまった

 

………俺が〝ロリコンの酒泉〟という異名を他校に轟かせる事になるのはもう少し先の話

 

 

 

 

 

 

 

 

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「……おや?こんな時間までずっと仕事していたんですか、酒泉。それとも………またサツキ先輩の催眠術に付き合ってたんですか?」

 

 

廊下を歩いていると、目元を擦りながら棗さんが話しかけてくる

 

 

────ええ、仕事ですよ………どっかのタヌキが風紀委員に押し付けた仕事を回収してきたんですよ

 

……因みに催眠術は昨日かけられました、相変わらず効果はありませんでした

 

「それはそれは……ご苦労様です」

 

ところで……棗さんはどちらへ?確か……昨日の放課後に温泉開発部がぶっ壊した場所の確認がまだ終わっていないはずですよね?

 

「私は……ほら、いつものですよ」

 

 

 

そう言って棗さんはブカブカの袖をヒラヒラと振ってくる

 

いつもの………ああ、あそこか

 

 

 

「どうです?酒泉も一緒にサボりますか?」

 

あー……今日は遠慮しておきます、風紀委員から回収してきた仕事以外にもやらないといけない事があるんで

 

「ありゃりゃ……今日は随分と大変そうですねぇ……偶には休んだ方が良いのでは?」

 

少なくとも羽沼さんが風紀委員会に嫌がらせを続ける限りは休めませんね

 

「………そうですか」

 

俺の目的は別に羽沼さんを陥れる事でもその座を奪う事でもない………風紀委員会に手を出すことさえ止めてくれればそれでいいのだ

 

空崎さんを内部から支えるのは風紀委員や先生で十分だろう、俺は外部から羽沼さんを抑えていればいい

 

アリウスとの接触は止めた、調印式当日は空崎さんと先生を下げておけばどうとでもなる

 

ねちっこい嫌がらせは俺がその分の仕事をこなせば良いだけ、これを空崎さんの卒業まで繰り返す

 

………ゴールは見えてきた、後は突っ切るだけだ

 

 

 

 

「……何か考え込んでいるみたいですけど……何か悩み事でも?やっぱり休んでいった方が良いんじゃないですか?」

 

いえ、大丈夫です………お気遣い感謝します

 

「そうですか………まあ、一応サボり部屋の鍵は開けときますね」

 

 

 

棗さんは気だるげに肩を落としながら去っていく

 

……よし、俺もさっさと仕事を終わらせて休むとしますか!今日は何事も起きないといいなー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────

 

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──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んー……ぅ……」

 

 

耳障りなアラームで目が覚め、もそりと起き上がる

 

 

「ふわ……ぁ……もう夕方ですか、時の流れは早いですね……」

 

そのまま目をパチパチと開閉し、視界をハッキリさせると近くには二人分のスナック菓子が置かれていた

 

 

「全く……ちっとも振り向いてくれませんね……」

 

 

彼の為に用意したお菓子をつまみながら、スマホの画面を開く

 

ホーム画面には涎を垂らしながら私のサボり部屋で眠っている酒泉の姿が写っていた

 

 

「はぁ……いつの間にこんな夢中になっていたんだか」

 

 

切っ掛けはマコト先輩からの命令だった

 

〝折川酒泉が裏切らないように手懐けておけ〟と面倒な事を言われ、とりあえず私なりに色々と試してみた

 

一緒にサボらないかに誘ってみたり仕事を放っておいてお菓子でも食べないかと誘ってみたり…………あれ?よく考えたら私、サボりにしか誘ってない……?

 

……まあ、とにかく色々と声をかけてみたんですよ

 

ですが、彼はそれら全てを一蹴しました

 

理由は至って単純………〝自分達が仕事しないと風紀委員会に迷惑が掛かるから〟

 

信じられますか?万魔殿の彼が風紀委員会の為を想って働いているんですよ?更に正確に言うと風紀委員長の為に………ですけど

 

普通、もっと身近な人の為に………いえ、これ以上はただの嫉妬になってしまいますので止めておきましょう

 

話を戻します、私は彼を手懐ける為には彼のことを知る必要があると判断し、まずはじっくりと観察することから始めてみました

 

 

折川酒泉の生態その一・身内や親しい者には全力で尽くす

 

割り振られた仕事をこなす場合は無理のない速度で進めますが、他の人の手伝いをする場合は事前に資料を集めたり最後まで付き合ったりと全力で尽くしてくれます

 

折川酒泉の生態その二・結構融通が利く

 

万魔殿内でのやり取りを見ると彼は堅苦しい人間に見えますが、実は他者に関しては結構融通の利く人間です

 

私がコッソリ仕事をサボっている時も呆れたような視線は向けてくるものの、無理矢理引っ張り出して無理矢理働かせるような真似はしませんでした

 

………それどころか、ある程度私の仕事を進めてから〝残りは自分で出来ますよね?〟と、まるで嫌いな食べ物を前にして愚図る子供をあやすかの様に話しかけてきました

 

正直、罪悪感を感じてしまいました……はい

 

 

折川酒泉の生態その三・面倒見が良い

 

 

これは先程述べた事にも繋がりますが、彼はとにかく面倒見が良いです

 

マコト先輩が何かやらかす度に事件に関わった者達に謝罪を入れ、最初から準備していたかの様に事後処理を行う

 

その後、額に青筋を浮かべながらマコト先輩にキレるものの、なんだかんだで次の日にはいつも通り仕事のサポートをしている………口と態度では思いっきり嫌っていても、結局彼はマコト先輩を見捨てることが出来ないのだ

 

そしてその面倒見の良さのおかげか、イブキも彼に懐いています。この前なんか構ってほしさに口元にわざとご飯粒をつけて拭き取ってもらってましたからね、なんて羨ましい…………私はどちらに対して〝羨ましい〟なんて思ってしまってるんでしょうかね

 

折川酒泉の生態その四・風紀委員と仲が良い

 

 

その人柄故か、万魔殿の所属でありながら彼は風紀委員の者達からも一定以上の信頼を得ています

 

特に風紀委員長さんとはプライベートで一緒に遊びに行くぐらいには仲が良いらしく、先週もどっかで食事してきたとかなんとか………

 

 

まあ、そうして観察の為に一緒に過ごしていく内に────見事に呑まれてしまいました、はい

 

何て言うんでしょうか……居心地が良い?気が抜ける?こう……じわじわと心の中に入り込んでくる感じで……気づいたら目で追ってしまうというか……

 

そして何より……あの子、上記で述べた通り他者の為に必死になってくれるんですよね

 

それが、こう………尽くしてくれてる感があって………

 

………まあ、肝心の本人は風紀委員長さんにお熱なんですけどね

 

「はぁ……私らしくもない……」

 

 

まさか自分がたった一人の異性に夢中になるなんて………過去の私に教えても絶対に信じないでしょうね

 

普段からだらけているせいで、その分一つの事に固執してしまっているのでしょうかね………

 

 

「………面倒事はあまり考えたくありませんね、久しぶりに仕事にでも集中しましょうかねぇ」

 

 

背を伸ばしながら期日の迫っている書類を取り出し、そのまま仕事に取り掛かろうとする

 

 

「………ん?電話?」

 

 

そんな時、万魔殿の固定式の電話機から音が鳴る

 

 

「……マコト先輩もいませんし、このまま放置でもしちゃいましょうかね」

 

 

先程の意気込みなどすっかり忘れてしまったかのように面倒臭さが溢れだしてくる

 

人間というのはそう簡単に切り替えられるほど器用な生き物じゃないんですよ

 

 

「……………しつこいですね」

 

 

しかし、電話は一向に鳴り止まない

 

何度もタイムアウトで切れては、何度もかけ直してくる

 

そんなことを繰り返される内に少しずつ嫌な予感が背筋を伝わってくる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……仕方無い、か………もしもーし万魔殿でーす」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「……で?なんだイロハ、帰って来て早々に重要な話というのは……」

 

「えっと……実は少し前にゲヘナ自治区内でゲヘナ生達が騒動を起こしたのですが………その噂を聞いた酒泉が制圧に向かったそうで……」

 

「またか……そんな仕事、風紀委員に任せてしまえば良いものを……」

 

「まあ、それだけならいつも通り何事もなく制圧してくるんでしょうけど………」

 

「……なんだ、何を言い淀んでいる?」

 

「その………騒動が起きた場所がトリニティ生の追試テストの試験会場になっていたみたいで……」

 

「……は?おい待て、何故ゲヘナの一部がトリニティの試験会場にされている?」

 

「あー……その、なんかティーパーティーの一人が関わってるっぽくて……」

 

「……キキキッ!これは良いネタを手に入れたな……これを利用すればトリニティを揺さぶることが────」

 

「で、問題はここからでして………戦闘中に酒泉がトリニティ生の一人を庇ったっぽくて……結果的に言うと右足を負傷しました」

 

「─────っ」

 

「えっと、確か……う、うら……うら何とかさんを弾丸から護ったみたいですよ」

 

「…………」

 

「ていうか、何故かそのトリニティ生達全員のテスト用紙も護りながら戦ってたみたいで………何やってんだか……」

 

「…………」

 

「結果だけ見れば〝ゲヘナ生がゲヘナ生を傷つけただけ〟って見方にもなるんですけど………それだとちょっと……いえ、めちゃくちゃムカつきますね」

 

「…………」

 

「………どうします?今すぐトリニティにでも────」

 

「……キッ……」

 

「……?マコト先輩、どうかしました────」

 

「キキキッ!キキキクキッ!ケハハハ!」

 

「……っ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キハハハハハッ!ケハハハハハッ!ハーッハハハハハ!キき聞効危きキキッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ま、マコト……先輩……?」

 

「キキキキッ……キキキッ……………ふぅ……イロハ」

 

「は、はい……」

 

「車を出せ、トリニティに向かうぞ」

 

「えっと……戦車じゃなくていいんですか?」

 

「要らん、ティーパーティーから直接話を聞いてくるだけだ。それとイブキも寝かしつけておけ………ここから先はあまり関わらせたくないからな」

 

「……本当に話をするだけなんで────」

 

「イロハ」

 

「───っ……何ですか?」

 

「準備を頼む…………………………後悔させてやる」

 

「………了解です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こっわ……先輩ってあんな顔できたんだ……私よりぶちギレてるじゃないですか」

 

 

 

 

 

 

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