〝アリウス〟潰すゾ!!!   作:あば茶

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コミケでエ駄死本を大量に買ってきたのが風紀委員にバレた話

 

 

 

 

 

 

『いいか酒泉、漢が土下座する時は大切な者を護る時と本気でキレた女性に謝罪する時だ』

 

 

そう言って父さんはキャバクラの名刺を持ちながら笑顔でキレている母さんに土下座した

 

いつもは広く逞しく感じていた背中が、この時だけは小さく見えた

 

 

〝違うんだ母さん、これは上司の誘いを断れなかっただけで─────〟なんて言い訳(これで五回目)をしながら必死に頭を地に打ち付けている自らの父親の姿を見て俺はこう思った

 

 

〝とりあえず土下座の練習だけはしておこう〟

 

 

父曰く、折川の血が流れる男児は昔から女性に勝てないらしい

 

だから俺は将来に備えてジャパニーズシャザイを鍛え上げることにした

 

勿論、女性を怒らせるつもりなど毛頭ないが、それでも準備しておくに越したことはないだろう

 

備えあればなんとやら…………そして、その努力は異世界に転生したこの瞬間に報われた

 

 

 

 

 

 

 

─────本当にすいませんでしたああああああああああああ!!!

 

「酒泉、私が欲しいのは土下座でも謝罪の言葉でもない…………どうしてこんな物を買ったのか説明して」

 

 

 

 

やっぱ駄目でした、はい

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────

 

────────

 

──────

 

 

 

 

 

 

「す、凄い数だな………」

 

「一冊一冊は薄いですけど、量のせいでかなり分厚くなってますね……」

 

「な、なんて下品な………!」

 

 

今、執務室の机の上には俺がコミケで買ってきた大量の同人誌が並べられている

 

それをまじまじと風紀委員のメンバー達に見つめられている

 

勿論、その中にはエ駄死系もあるので………ていうかそっちの方が多い

 

 

「コミケ?………とやらに行ってたゲヘナ生からのタレコミがあったから直接問い質してみれば………」

 

「貴方は性欲の塊ですか?」

 

 

本のページを一枚ずつ捲りながら天雨さんが蔑んだ目をぶつけてくる、なんの罰ゲームだよこれ………

 

 

「……で?酒泉が珍しく〝大事な用事があるからこの日だけはどうしても休みたい!〟って言ったから休暇を与えたけど…………これがその〝大事な用事〟なの?」

 

 

全員から殺気の籠った眼差しを向けられて背筋が凍りつく、こんな思いをしたのは前世で小学生の時に母さんの体重計のメモリを勝手に弄った時以来だ

 

その日から俺は度の越えたイタズラはやらないようにしようと固く誓った

 

 

「酒泉君……その……元気なのは良いことですが……あまり風紀を乱すような事は………」

 

 

顔を俯かせている火宮さんがチラチラと視線を上げながら注意する

 

こ、これは……ほら、活動外の時間の出来事だからさ……

 

 

「で、ですが………そういうのを目撃されると風紀委員会の評判にも影響が出ますし………こういうのは買わずに身近な人で妄想するべきだと思いますっ!」

 

「チナツもチナツで何言ってるのさ………」

 

 

それはそれでアウトになりそうな事を口走る火宮さんに銀鏡さんがツッコミを入れる

 

むしろ身近な人の方がアウトだろ………だからこうして二次元にぶつけて─────

 

 

「現実逃避の言い訳作りですか?見苦しいですね」

 

 

めっちゃ当たり強いやん、今日の天雨さん

 

 

「自分が女性に迫る勇気が無いからってそれを本で発散ですか、随分と惨めで哀れですね?」

 

 

遺憾である、なぜ同人誌を買っただけでここまでボロクソに言われなければならないのか

 

俺にだって性なる欲望はあるんだぞ、人権侵害だ人権侵害

 

 

「ですから、それと向き合わず本の世界に逃げているのが哀れだと言っているんですよ」

 

ぐっ……こんな横乳丸出しの変態に罵られるなんて……!

 

「悔しいんですか?それなら実際に証明してみてくださいよ………〝俺は現実でもこの本と同じような事を出来るんだぞ〟って。ほら、言い出しっぺは私ですしいくらでも付き合いますよ?」

 

あっ、それは遠慮しておきます………

 

「情けない奴!!!」

 

 

やっぱおかしいだろこれ、どう答えてもアウトだったろ今の

 

なんで俺がこんな目に………確かに俺は風紀委員だ、それを考えると風紀を乱すような行動は咎められるべきなのかもしれない

 

でも、人間が逃れられない三大欲求すら否定されるのは流石に悲しむぞ

 

 

「………酒泉、幾つか質問してもいい?」

 

な、なんでしょうか……空崎さん……

 

「酒泉は胸の大きい女性が好きなの?」

 

 

そう言いながら手で持ち上げたのは巨乳キャラのエ駄死本、公開処刑かな?

 

全面的に俺の非を認めるから勘弁してほしい

 

 

「どうなの?」

 

………ノーコメもありや!

 

「駄目、委員長命令」

 

……き、嫌いでは……ないです……

 

「好きか嫌いかの二択で答えて」

 

 

それズルくね?そんなこと言われたら下手に答えられないじゃん

 

 

「………分かった、なら質問を変える」

 

よ、良かった……空崎さんなりに慈悲をくれた───

 

「胸の小さい子は好き?嫌い?」

 

 

駄目だ何も変わってない、相変わらず俺が社会的に終わるような質問だった

 

答えは沈黙………ってやろうとするとめっちゃ強い殺気をぶつけられる、このまま逃がしてはくれなさそうだ

 

 

「この質問ならどう?これ以上、譲歩はできないけど」

 

……き、嫌いじゃ────

 

「さっきと同じ答え方は駄目だから」

 

………す………

 

「す?」

 

好き……です……!

 

「何が好きなのかちゃんと聞こえるように言って」

 

胸の小さい女性が好きです………!

 

「うん、それでいい」

 

 

周囲からのドン引きするような視線、燃え尽きる俺

 

………だが、空崎さんは手加減することなく追撃を仕掛けてくる

 

 

「じゃあ、次の質問」

 

……え?ま、まだあるの!?

 

「酒泉は身長の低い女の子は好き?嫌い?」

 

 

なんだ……これなら普通に答えられる……答えは当然好き!低くても高くてもどっちでも良いからな!

 

 

「……三つ目の質問」

 

バッチコイですよ!

 

「酒泉は身長の低い女の子と高い女の子、どっちが好き?」

 

んー………悩む………けど………低い方?

 

「……じゃあ、これが最後」

 

 

 

 

 

「酒泉は胸の小さい女の子と胸の大きい女の子、どっちが好き?」

 

 

 

 

 

………最初とほぼ同じ聞き方じゃないっすか

 

「そうだね、それで?どっち?」

 

……俺、用事思い出しました

 

「私が断っておくね」

 

……なんか腹減ってきません?

 

「後で私が作ってあげるね」

 

……空崎さん、もう一声

 

「これ以上譲歩はできないって言ったよね?」

 

………胸の……い方……です

 

「もっと大きな声で」

 

胸のっっっ!!!小さい方ですっっっ!!!

 

「ふふっ……なら良かった」

 

 

そう言って満足そうに微笑む空崎さん

 

天雨さんと火宮さんはドン引きするような目からゴミを見るような目に変わっている

 

終わった……俺の風紀委員生活完全に終わった……!

 

 

「その……大変だったね……」

 

 

なんて冷や汗をかいていると銀鏡さんが肩をポンッと叩いて同情するような視線を向けてきた

 

同情するなら助けてほしかったです

 

 

「……と、ところでさ……この褐色肌の子の本だけ……その……普通の恋愛系の内容なんだけど………こういうキャラはタイプじゃなかったの?」

 

 

銀鏡さんが一冊の本を持ち上げると、どこか恐る恐る尋ねてくる

 

ああ、それか……そのキャラは……なんというか……あんまそういう感情を向けにくいっていうか……

 

「………き、嫌い……なのか?」

 

いや、その子ってめっちゃ不憫な目に合うキャラなんですよ

 

だから邪な考えよりも〝支えてあげたいなぁ……〟みたいな感情の方が強いんですよね

 

「ふ、ふーん?そうなんだ?…………でも、そんな遠慮する必要はないんじゃないの?」

 

……はい?

 

「ちょっとはそういった感情も向けてあげた方が〝魅力を感じてる〟って思えるし………その方がこの褐色のキャラも喜ぶと思うなぁ!?」

 

 

尻尾をぶんぶんと振り回しながら目をキョロキョロとさせる銀鏡さん

 

なんだ?めっちゃ挙動不審なんだが………

 

 

「と、とにかく!私は別に気にしないからさ!」

 

……気にする?銀鏡さんが?何を?

 

「…………な、何でもない!」

 

 

痛い、尻尾で頬を叩かれた

 

 

「………ところで、何冊か全く同じ本があるのですが」

「そうですね……どれも三冊あります」

 

 

そう言って視線を集めたのは俺が特に好きな絵師さんの作品達だった

 

………あっ、凄く嫌な予感が────

 

 

 

「なんで余計に買ってるの?読むだけなら一冊でよくない?」

 

「……酒泉、これに関しても説明して?」

 

…………ふっ………

 

「ふ?」

 

普通に読む用と………

 

「それと?」

 

保存用と………

 

「あと一冊は?」

 

………

 

「酒泉、隠し事は許さないから」

 

………

 

「委員長命令よ、ちゃんと説明して」

 

 

 

 

 

 

 

 

この日、折川酒泉は人生で一番美しい土下座を見せた

 

あまりの美しさに全員が無意識に拍手していた

 

それはそれとして普通に説明させられた、無情

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして彼は知らなかった、自身を目撃したゲヘナ生によるタレコミが既に取り返しのつかないところまで広がっていたことを

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

折川酒泉の休日はスマホのアラームと共に始まる

 

土曜日であれば適当にダラダラしながらゆっくりと部屋着に着替え、気分が乗ってる日であれば起きたと同時にランニングウェアに着替えて即走り込みを開始する

 

日曜日ならニチアサに備えて朝食の準備をし、目の前のヒーローの活躍を見ながら心も腹も満たす

 

今日は土曜日、天気は最高、気分も最高

 

〝ならばやる事は一つ〟と歯磨きや顔洗いを済ませ、ランニングウェアに着替えて出掛けよう────としたところで、モモトークに通知が入っているのに気づく

 

送信者は正義実現委員会の一般生徒

 

かつてトリニティ生でありながら堂々とゲヘナ生の酒泉に告白し、振られてもなお〝チャンスがきたらまた告白しますから!〟と正面から言い切った、現状で最も折川酒泉を精神的に堕としかけた少女

 

今でも二人で遊びに行くぐらいには関係の続いている少女からの連絡を見てモモトークを開く酒泉

 

 

あの噂、本当ですか!?それなら私にもまだまだチャンスがあるってことですよね!?

 

 

 

そこには〝あの噂〟という、全く心当たりの無いワードが乗っていた

 

何の事だと返信しようとするも、それ以外にも届いていた大量の通知が気になって一旦他の者とのモモトークも開く

 

 

 

ミカ:おっはよー☆早速聞きたいことがあるんだけどさ、酒泉君がロリコンって噂を聞いたんだけど…………それって嘘だよね?酒泉君がちっちゃい身体に興奮する訳ないよね?

 

ミカ:ねえ、早く答えてよ

 

ミカ:おそい

 

ミカ:はやく

 

ミカ:もういいよ、直接聞きに行くから

 

 

 

折川酒泉は困惑した、自分はなぜ聖園ミカの中でロリコンということになっているのか

 

勝手に性癖を決めつけられた彼は怒りに燃えた………が、その前に他のモモトーク画面も続いて開いた

 

 

リオ:酒泉、貴方が小児性愛者だという噂を聞いたのだけど………それが本当だとしたら今すぐ自分の性癖を改善した方がいいわ

 

まず、伴侶となる者が身長体重共に一般成人女性を下回る場合、性行為の際に様々な支障を来すことになるでしょう

 

更には日常生活に置いても貴方の手を借りなければ届かない場所があったり出掛ける際も人の目を気にしなければいけなかったりと、とにかくデメリットが────

 

セイア:やあ、君の噂を耳にしたよ………どうやら背丈の小さい者を好んでいるそうだね?私は良いと思うよ、性癖は人それぞれだからね。

 

もしかしたらミカ……というよりも一部の者達は君の性癖をねじ曲げようとしてくるかもしれないが、君は自分の気持ちに嘘を吐かなくて良いんだ

 

仮に周りの人間全員が君のことを否定したとしても、私だけは君のことを受け入れると約束しよう

 

サオリ:突然連絡してしまってすまない、今日はどうしても酒泉に聞きたいことがあってな

 

その……〝折川酒泉は胸の大きい女が嫌いだ〟という噂は本当なのか?もしそうなら、私はお前の気持ちなど何も考えずに付きまとっていたことに………いや、今更すぎるか

 

例えお前に嫌われていようとも絶対に恩を返すと誓っていたはずなのに………いざ、その状況に直面するとどうしてこんなに胸が痛むのだろうか………すまない、よけいなことをかいねしまっなな

 

サオリ:まちがえた、ごめんなさい、ごめんなさい

 

ミサキ:〝酒泉は胸の大きい女が嫌い〟だとか〝胸の小さい女が好き〟だとか色んな噂が流れてるけど………それってどっちでもない中途半端な女には興味無いってこと?

 

ミサキ:ごめん、気にしないで

 

ミサキ:やっぱ気にして、持ち主なんだから

 

 

 

折川酒泉は更に困惑した、己の性癖がどんどん増えていることに

 

しかし、彼の絶望はまだまだ続く

 

 

 

アリス:アリス、ようやく気づきました!ロリコン酒泉はアリスのことが大好きだったんですね!

 

両思いです!今すぐ会いに行きますから待っててくださいね!

 

モモイ:ちっちゃいけどお姉ちゃん属性の女の子ってどう思う?今度作るゲームのヒロイン設定の為に意見を聞きたいんだけど………特に変な意味はないよ?

 

…………本当に変な意味はないからね!!?

 

ヒヨリ:あの~……酒泉さんは胸の大きい女性を嫌っているという噂を耳にしたのですが………それって多分、実際に触ったことがないから毛嫌いしてるだけだと思うんですよね

 

そ、それでですね………今までお世話になってきたお礼に酒泉さんの好き嫌いを改善して差し上げたいな~……なんて……思ってたり………

 

……そ、その……トリニティ総合学園近くの公園で……待ってますね……?

 

アリス:酒泉、貴方は王女に対してやけに甘いと思っていましたが………そういう事だったのですね、汚らわしい……!

 

王女に手出しはさせませんよ、そんな事をするぐらいなら私の意識が表に出ている時で我慢しなさい

 

アツコ:酒泉、私は酒泉的にはどんな感じなのかな?身体は凄く小さいって訳じゃないけど、胸が結構あるって訳でもないし………

 

………こういうのは直接見てもらった方が早いよね、今日はいつ空いてるかな?

 

アズサ:酒泉、聞いてくれ。あの噂を聞いて今までのお礼をする方法を思いついたんだ

 

大丈夫………私がスカルマンを抱きしめると心が満たされるように、きっと酒泉にも効果があるはずだから………小さい身体が好きだっていう噂が本当なら

 

レイサ:見てください!!!友達とゲームセンターに行って来ました!!!

 

〔写真〕

 

 

 

 

数多のメッセージが酒泉の胃を苦しめる

 

最後の純粋な内容で多少心が和らいだが、それでも己が変態扱いされているのは変わらない

 

今すぐ汚名挽回………ではなく汚名返上しなければとモモトークを返そうとし─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────次の瞬間、外から複数の女性の声が近づいてくると同時にインターホンが鳴らされた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

このあとロリコンの噂が更に広まったり〝実はホモなのでは?〟と余計に噂が悪化したり滅茶苦茶落ち込んでいるところを何故か満面の笑みの給食部部長に慰められたりした

 

 

 

 




今年の冬コミのブルアカスペース、めっちゃ広いっすね………勿論今回も行ってきます
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