〝アリウス〟潰すゾ!!!   作:あば茶

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決戦当日

 

 

 

 

 

食事を摂り、歯磨きを済ませ、寝間着から制服に着替える

 

だが、制服に着替えても学校に行く訳ではない

 

教科書やノートは鞄には入れず、最終調整を済ませた己の愛銃やまだ壊れていない残りの超硬質ナイフ、そして手榴弾を持って玄関へ向かう

 

目的地はアビドス────から少し離れた場所にある元カイザーの基地

 

ウトナピシュティムの防衛をしているであろうFOX小隊への連絡は既に先生か連邦生徒会の誰かしらが取っているだろう

 

あとは空崎さんや天雨さんと合流して、三人でその場所に向かうだけ────と、その前に先程からピコンと音を鳴らすスマホを手に取り、モモトークを開く

 

誰からだろうかと思いながら画面を見ていると、思わず顔がニヤけてしまった

 

送り主は昨日同じ火を囲んだ風紀委員達………だけじゃない

 

昨日会うことができなかった宇沢さんや白洲さん、ちょっと前に知り合いになった正実の生徒も…………あと何故か電話番号を教えていないはずの狐坂さんからも

 

内容はどれも応援のメッセージ、その一つ一つに目を通す度に己の身体が熱くなるのを感じる………我ながら単純すぎて思わず笑ってしまう

 

………よし、行くか!

 

 

 

 

 

 

 

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風紀委員の仲間が用意してくれた車のドアを開けると助手席には天雨さんが、後部座席には空崎さんが既に座っていた

 

〝おはようございます〟と挨拶をしながら、空崎さんの隣に腰を下ろす

 

 

 

「……酒泉、身体の調子は?」

 

────バッチリっす、皆のモモトーク読んだら一瞬で回復しましたよ

 

「そっか、酒泉の方にもきてたんだ」

 

────お?空崎さんの方にも?

 

「うん、アコも同じだよ」

 

「〝委員長と一緒だからって興奮して我を忘れないでね〟ってイオリから来てたので〝貴女こそ簡単に敵の罠にかからないでくださいね、次期風紀委員長〟って送っときました」

 

────まあ、何かあれば火宮さんが止めてくれますよ

 

「あの二人になら……ううん、風紀委員の皆になら地上を任せられるね」

 

 

 

安心したかのように肩の力を抜き、クスッと笑う空崎さん

 

………次期委員長、か。まあ、学年的にも実力的にも銀鏡さん以上の適任はいないだろう

 

銀鏡委員長……銀鏡委員長……うん、なんか慣れないな、今度このネタでからかってやろっと!

 

……だから絶対に地上に帰らないとな

 

それにしても………銀鏡さんが委員長になるって事は俺も二年生になってるのか

 

つまり折川先輩……新たに風紀委員に入ってくる新入生達のお手本となる立場に……

 

『折川先輩ってカッコいいよねー!』

 

『わかるぅ~!それに強いし~』

 

『頼りになるよねー!』

 

 

………みたいな事もあり得ちゃったり!? いやぁ……つよつよ酒泉ですまない

おや?そう考えたら未来の事を考えるのがほんのちょっとだけ楽しくなってきたぞ?

 

前までは原作知識の活かせなくなったこの世界でどうやって生きていけばいいのかとか、そんな事を考えていたりしたが………物は捉えようだな!

 

……まあ、それでもまだちょっと不安だけど

 

「……酒泉が変なことを考えている気がする」

 

 

隣で突然ポツリと呟く空崎さん、正直普通にビビった

 

………いや、特に変わったことは考えてませんよ?ただ、銀鏡さんが委員長になったら俺も先輩になるんだなーって

 

「何を当たり前のことを………まさか、後輩に粉でもかけるおつもりですか?」

 

そんなチャラくないっすよ!?………ほら、高校で後輩が出来るのは初めてだなーって思っただけですよ

 

「それはそうでしょう、貴方は一年生なんですから」

 

 

 

怪訝な表情で後部座席の俺を見てくる天雨さん

 

いや、そうなんだけどね………でも俺、前世では後輩が出来る前に高校生活終えちゃったからさ

 

ほら……中学生って精神的に成長し始めるぐらいの時期だろ?だから自分の事で精一杯で先輩後輩とかそういう関係っぽさがあんま無いじゃん?

 

だから、まあ……先輩らしさってのを出すとしたら高校生からかなって……前世の話なんてしたら混乱するだろうし言うつもりはないけどな

 

 

 

「………酒泉、私達は来年で卒業だけど………私やアコが居なくなっても大丈夫?」

 

はい、何も問題ありませんよ

 

「そっか……酒泉には私達は必要無いんだ……」

 

────えっ!?いや、そういうつもりで言った訳じゃなくてですね!?安心して卒業してくれ的な意味で言っただけであって……

 

「ふふっ……冗談」

 

 

少しだけ微笑みながらからかってくる空崎さん

 

びっくりしたぁ……急にらしくない事してきたせいでガチで落ち込ませてしまったのかと思った

 

でも……笑顔でこんな冗談を言えるぐらい心に余裕があるのならそれはとても良い事だ

 

 

「………でも、実際に風紀委員長に成り立ての頃は多くの仕事に追われると思う」

 

「書類仕事も問題児の相手をする機会も今までの比ではないくらい増えますからね」

 

「だから、その時は酒泉がイオリ……を……」

 

 

何かを言いかけた空崎さんがピタリと止まる

 

なんだ……?銀鏡さんを……?

 

 

「……酒泉がイオリを……支える……?………大丈夫だよね?変なことは起きないよね……?でも、万が一って事も────」

 

……あの?空崎さん?

 

「……酒泉、やっぱり卒業してからも暫くは私も顔を出しに行くから」

 

……え?

 

「ちゃんと仕事できてるかこの目で確かめたいし、それに…………何でもない、それだけ」

 

 

そこまで言ってそっぽを向かれてしまう

 

何だろう……やっぱ心配してくれてるのか?だとしたらこの戦いで俺がどれだけ成長したのか見せつけないとな!

 

 

 

「……なんて、見当違いな事を考えているんでしょうねぇ」

 

ん?なんか言いましたか?天雨さん

 

「いえ?別に?…………それよりも、そろそろ着きますよ?」

 

 

窓から顔を覗かせると、見えてきたのはカイザーの基地の前で待機していたFOX小隊のリーダー────七度さん

 

運転手を務めてくれた風紀委員の一人にお礼を言ってから三人とも降りる

 

 

「……待っていたぞ、ゲヘナ学園の風紀委員で間違いないな?」

 

 

此方が頷くと、七度さんは〝ついてきてくれ〟と言って背を向けて歩き出す

 

 

「……他の人達は?」

 

「既にウトナピシュティム内で待機している、貴女達で最後だ」

 

会話しながらも辺りの警戒を怠らずに進む中、七度さんが突然歩みを止める

 

後ろを振り向くと、七度さんは俺に視線を向けてきた

 

 

「……そうだ、君に一つ聞きたいことがある」

 

……ん?俺に?

 

「昨日、不知火防衛室長から突然〝貴女達は用済みです〟という伝言が届いた。それだけなら〝切り捨てられたか〟と思うだけだが………どうやら今まで私達が使用していた基地をこれからも無償で提供してくれるらしい」

 

へー、良かったっすね

 

「……君は何か知っているか?」

 

────いや?何も?

 

「……そうか、なら私達も〝運が良かった〟と思っておくことにしよう」

 

 

 

そう言ってから七度さんは再び前を向いて歩き始めた

 

……わざわざそんな事を俺に聞いてくるって、とっくにバレてんじゃねえか

 

 

「……ありがとう」

 

……それ、独り言として聞き流しておきますね

 

「ああ、そうしてくれ」

 

 

なんというか、まあ……カルバノグ二章そのものが消えてしまったが……これで良かったん……だよな?

 

原作改変なんて今に始まったことじゃないし、昨日フランシスに啖呵を切ったばっかだしな

 

俺は俺の好きなように未来を変えて────

 

 

 

 

「……酒泉?今度は何をやらかしたの?」

 

────違うんです空崎さん、全部あのアホ毛超人が悪いんです

 

「……どうせまた誰か引っかけたんでしょ?」

 

 

空崎さんにジッと睨まれて冷や汗が垂れてくる、こんなところはいつまで経っても成長しない自分が情けない

 

キレた女性に弱いのは父親譲りなのかもしれない……というよりも折川の血特有なのかもしれない、なんだこのクソザコ遺伝子

 

 

「今は置いておくけど………帰ってきたら何をしたのかじっくりと聞かせてもらうからね?」

 

ひえっ

 

「何ですかその反応は………ヒナ委員長と二人でお話できるんですよ?」

 

「楽しそうに話しているところ悪いが……到着したぞ」

 

 

 

〝それで喜ぶのは天雨さんだけだ〟という言葉を胸に秘めながら苦笑して誤魔化していると、前を歩いていた七度さんが数歩横にずれる

 

その奥には巨大な船が停まっており、船の前で先生が普段とは違う服を着て待っていた

 

白をメインとした船長のような服装、胸にあるのはシャーレのマーク

あれは………ウトナピシュティム用の衣装か!?カッケェ!!!

 

 

 

「酒泉………今〝カッコいい〟って思ったでしょ」

 

……バレちゃいました?

 

「こんな時まで遊び感覚ですか………もう少し警戒心を持ってくださいよ?」

 

男心を刺激する先生が悪いんです

 

「さっきから責任転嫁してばかりじゃないですか」

 

 

そんなこと言われたってしょうごのいじょのいこ!(えなり並感)

 

男の子は決戦用衣装とか使い捨て装備とか急ごしらえフォームとか大好きなんだからよ!

 

 

「……じゃあ、いつまでも立ち止まってないで私達も行こっか」

 

 

そう言って先頭を歩く空崎さん、天雨さんもその後に続く

 

……もしここがゲームの世界なら〝このダンジョンに入ったらクリアするまで戻ることができません!〟とか〝恐らくこれが最後の戦いになるだろう、準備はいいか?〟みたいなウィンドウメッセージが出ているだろう

 

だが、ここは間違いなく現実………俺が生きている世界だ

 

失敗すれば死ぬ、やり直しは不可能、セーブ機能なんて存在しない…………いや、やり直しに関しては連邦生徒会長がそれっぽいことをやってる可能性もあるが……

 

それでも俺にとっては完全一発勝負だ、ここでしくじったら全てが終わる………今更怯えても仕方無いか

 

さて、それじゃあ─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────色彩に日和ってる奴いる?いねえよなぁ!!?

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、ということで前編終了です

このまま後編……の前に女先生ifを書きつつ他の小ネタ番外編も投稿しようと思います

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