〝アリウス〟潰すゾ!!!   作:あば茶

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もし酒泉君がもっと早くワカモと出会っていたら

 

 

 

車が爆発され、建物の外壁が吹き飛ばされ、人がぶっ飛ぶ

 

次々と無力化されていく風紀委員達、睨み付ける視線の先には狐面の少女

 

 

「あらあら……これでは壊し甲斐がありませんねぇ……?」

 

「ぐっ……こんなに暴れまわって……一体何が目的なんだ────狐坂ワカモ!」

 

 

ワカモと呼ばれた少女は敵意を向けてくる風紀委員に対し、クスクスと笑いながら答える

 

 

「目的?ああ、何か勘違いしていますわね………そもそも、私にとっては〝破壊〟そのものが目的ですので」

 

「破壊が目的だと……?手段ですらないと言うのか!?」

 

「ただ己の欲望のまま奪いたい物を奪い、衝動に身を任せて破壊したい物を破壊する………とても素敵な人生だとは思いませんか?」

 

 

狐坂ワカモ

 

学園・百鬼夜行連合学院(停学中)

 

部活・無所属

 

趣味─────破壊、略奪

 

今まで多くの者達にもたらしてきた膨大な被害により〝厄災の狐〟の名を与えられた少女

 

彼女の説得は不可能

 

何故なら上記で述べられた通り、彼女にとって破壊とは〝趣味〟でしかない

 

年頃の少女が素敵なお洋服を買ったり美味しいスイーツを食べたりするのと何ら変わらないのだから

 

故に彼女とは会話することすら不可能────と、以前までは思われていた

 

 

 

 

 

 

「援軍っ!到着しましたっ!」

 

「っ!ようやく来ましたか……!」

 

 

 

風紀委員会の車がワカモに向かって接近する

 

〝敵の増援〟という本来なら顔を顰めてもおかしくない事態を前に、ワカモは尚も笑みを浮かべ続ける

 

………むしろ、より一層笑みのギラつきが増す

 

ワカモの視線の先────車の屋根には一人の少年が乗っており、車がかなりの速度で走っているにも関わらず絶妙なバランスを保っている

 

車の屋根から少々高い位置にある近くの飲食店の看板へ向かって大きくジャンプすると、両手で看板を掴んでよじ登る

 

そのまま流れるように近くの建物に飛び移り、パルクールの様により高く高く移動していく

 

やがてワカモより上の位置に辿り着くと────少年はスナイパーライフルとナイフを構えながらワカモに飛び掛かった

 

 

 

「あまり女性を待たせるものではありませんよ?─────折川酒泉さん?」

 

────ああそうかいっ!じゃあお詫びに鉛弾をくれてやるよぉ!

 

 

スナイパーライフルの弾を首を傾げるだけで軽く回避するワカモ

 

振り下ろされるナイフもヒラリと身を後ろに下げて回避し、そのまま酒泉の腕を掴んで自身の胸元まで近づける

 

そして戦闘中にも関わらず、無防備に酒泉の耳元に近づいて何かを呟く

 

 

「出会って早々に迫るような殿方は………女性に嫌われてしまいますよ?」

 

────っ……こ、の……離れろっ!

 

「あら?女性に差し伸べられた手を振りほどくとは………見た目とは裏腹に照れ屋さんなんですねぇ?」

 

 

舌打ちしながら攻撃を続ける酒泉とは反対に余裕そうに笑うワカモ

 

突然酒泉の目前に接近したかと思えば頬に手を当て、懐に潜り込んだかと思えば胸元をツンッと軽く突く

 

敵として見られていない、明らかに異性をからかうだけの動作

 

それを繰り返すワカモに対して酒泉は怒りを募らせるが、決して感情に囚われることはなく冷静に対処しようとする

 

 

 

────またアンタかよっ!何回相手してやれば気が済むんだ!?

 

「あら?私からのアプローチ、気に入りませんでしたか?」

 

────ただのデートの誘いなら暇な時いくらでも相手してやるよ!けどこれはちょっと過激すぎだ!

 

「燃え上がるような恋というのも悪くないでしょう?」

 

────物理的に燃えてんじゃねえか!?

 

 

 

ワカモの足元にアサルトライフルの弾を放ち、無理やり移動させる酒泉

 

建物の屋根の端まで回避されたところでそのまま地面に落とそうと酒泉が蹴りを入れようとし────正面から片手で受け止められた

 

 

「青く、未熟で、若々しい………故に、どのような殿方に成長するのか楽しみですね……」

 

 

ワカモは酒泉の唇にピトッと人差し指をくっつけると、そのまま酒泉の頬に顔を近づけ────直後、酒泉の背後で爆発が起き、屋根が崩れ落ちる

 

それはワカモが酒泉の攻撃を回避しながら仕掛けた罠、酒泉と距離を縮める度に小型の起動式爆弾を酒泉の視覚外に落としていた

 

「では、またいつかお会いしましょう?貴方様……いえ、折川酒泉さん?」

 

 

地面に着地した酒泉が見上げると、その目に映ったのは狐面を外して酒泉に頭を下げてから何処かへ跳んでいくワカモの姿だった

 

戦績・0勝n敗

 

今日も折川酒泉は敗北した

 

 

 

 

 

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──────

 

 

 

 

 

すいません空崎さん……手も足も出ませんでした……

 

「ううん、気にしないで。それよりも………酒泉こそ大丈夫?怪我はない?」

 

はい、無傷です

 

「……まあ、それもそっか。あの女の狙いはきっと………」

 

俺を挑発して楽しんでるだけですもんね………くそっ、腹が立ってきた……!

 

「……ねえ、酒泉はどうしてあの女に狙われてると思う?」

 

あー……これは本人が直接言ってたことなんですけど〝折川酒泉という男を知る為〟……らしいです

 

多分、キヴォトスでは珍しい人間の男子生徒だからじゃないっすか?もしくはそんな珍しい存在をぶっ壊したいとか、趣味的な理由で……

 

「………違うと思う」

 

え?空崎さんは俺が狙われる理由に心当たりあるんですか?

 

「……多分だけど、彼女は酒泉のこと─────やっぱりなんでもない」

 

えぇ……途中で切られるとすっごい気になるんですけど……

 

「………大丈夫、酒泉は絶対に渡さないから」

 

あ、ありがとうございます……?

 

 

 

 

 

 

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あの日は月が綺麗………でもなんでもない、曇り空の夜でした

 

狐面を被り、愛銃を手に、破壊と略奪の限りを尽くす

 

私の活動範囲は決まっていません、この日は偶々ゲヘナ自治区に滞在していただけでした

 

それでもやる事は何も変わらない

 

いつもの様に追っ手を散らし、いつもの様に破壊を振り撒く

 

そんな私の前に再び追っ手が現れて─────彼を見た瞬間、時間が止まった

 

私を魅了する力強い瞳、高鳴る胸の鼓動、身体に帯びていく熱

 

初対面のような懐かしいような、一目惚れのようなもっと前から惚れていたような

 

運命の人だけど運命の人とは言い切れない、そんな不思議な感覚に襲われました

 

………その日から、私の頭の片隅には常に彼の影が浮かぶようになりました

 

あの時込み上げてきた感情はなんだったのか、あれは本当に恋なのか、だとしたら何故?一目惚れとは言い切れないのにどうして?

 

そんな事を考えている内に私は一つの決意をしました

 

それは、あの少年………折川酒泉を〝知る〟という決意

 

そして─────自分の感情を確かめるという決意を

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

「くそっ!今日も出てきたのか!」

 

「駄目だ!我々だけでは止められない!」

 

 

爆煙と瓦礫が広がる

 

視線の先には狐面

 

この日も〝厄災〟は己の力を振り撒いていた

 

全ては自身の目的の為に、全ては折川酒泉を引きずり出す為に

 

 

「委員長は!?」

 

「現在此方に向かっていますが、もう少し時間が掛かるかと……」

 

「……っ!私達に出来るのは時間稼ぎ程度か……!」

 

 

 

(………やはり退屈ですね)

 

 

目的の人物が来るまで延々と雑兵の処理をするだけ

 

風紀委員長が到着すれば少しは戦闘に刺激がもたらされるだろうが────今回の目的は別に戦闘を楽しむことではない

 

彼女はただ折川酒泉に会いたいだけ、折川酒泉という人間を見定める為に様々な状況で彼を観察したいだけ

 

(さあ……早く、早く貴方の顔を────)

 

 

 

 

 

 

 

「くそっ……酒泉は入院中だってのに、どうしてこんな時に……!」

 

「─────はい?」

 

 

風紀委員の一人の言葉にワカモの動きが止まる

 

……直後、脚に力を込めて走り出し、一瞬でその風紀委員の元へ接近する

 

 

「なっ……はや────」

 

「どういう事ですか?」

 

「─────は?」

 

 

完全に隙を突かれ、攻撃を食らうことを覚悟した風紀委員

 

だが、ワカモは銃口を向けることすらせず風紀委員を面越しに見つめるのみ

 

 

「〝折川酒泉が入院中〟だという話……それは本当ですか?」

 

「そ、それは……」

 

「もし本当の事を教えて頂ければ、今日は大人しく引き返すことを約束しましょう」

 

 

もしワカモの言葉が嘘なら結局この後も暴れ続ける、断ったとしても当然暴れ続ける

 

どちらにせよと考えた風紀委員の少女は暫く考え込んだ後、小さく口を開いた

 

 

「実は────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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──────

 

 

 

 

 

 

 

 

痛みに耐えながら何とか身体を起こし、病院の外を窓から眺める

 

どうも調印式で大怪我した折川酒泉です

 

ああ……今頃風紀委員の皆は何をしているんだろうなぁ……

 

己のよわよわボディを恨めしく思いながらも退院後の事を考える

 

まずは身体の慣らしだろ?次に溜まった書類を片付けて、それで………

 

 

「狐坂ワカモの相手もしなければなりませんね」

 

 

そうだなぁ………俺が入院してる間も暴れ回ってるだろうし、早く復帰しないとな

 

 

「ええ、でしたら尚のこと身体に無理をさせるのは良くありませんよ?」

 

まあ、それもそうか……大人しくベッドで横になってるか

 

「ええ、そうしてください…………それはそうと林檎を剥き終えましたので、おやつの時間にしませんか?」

 

おっ?じゃあ、頂いちゃいましょうかね

 

「では……あーん」

 

あーん──────おい待てや、なんでアンタが居るんだよ狐坂さん

 

「あら?食べないのですか?」

 

 

 

然り気無く流すところだったが、目の前の女性の声が明らかに聞き覚えのあるものだった

 

顔を上げるとナース服を着た狐坂さんの姿が………それどこで買ったの?まさか奪ったやつじゃないよね?

 

………てか、なんでここに居るんですか。まさかただお見舞いに来たって訳じゃないでしょう?

 

 

「……?いえ、お見舞いに来ただけですよ?」

 

……はい?

 

「ゲヘナ自治区で風紀委員との戦闘中に〝折川酒泉が入院している〟という情報を入手しまして………こうして態々足を運んで来たのですよ?」

 

 

ああ、そういうこと………

 

数時間前、お見舞いに来ていた空崎さんが急いで帰る準備をしてたけど………直前まで狐坂さんが暴れていたせいか

 

「そんな……貴方の為に私の〝趣味〟を我慢してまでこうして急いでお見舞いに来たというのに……」

 

 

目元を隠して泣き声を出す狐坂さん………明らかに嘘泣きですね、はい

 

全く……こうして何も警戒せずに近づいてくるとは、舐められているのかそもそも敵としてすら見られていないのか

 

それとも何か企んでいるのか?

 

 

 

「そんな疑いの目を向けられるとは心外な………私だって傷つくんですよ?」

 

……まあいいや、とりあえず今は〝お見舞いに来た〟ってのを信じておきますよ

 

俺だって狐坂さんのことは本気で敵とまでは思ってませんからね

 

「おや?風紀委員がそのようなことを仰ってもよろしいのですか?」

 

………まあ……アンタが暴れてくれたお陰でその日の仕事がかなり楽になることだってありますからね

 

それを考えると恨み以外にも感謝だってしますよ

 

「………私のお陰で?」

 

だってさ────アンタが暴れ回った所を調べると、所々他の問題児と戦闘した跡が残ってるんだよ

 

便利屋の一人がよく使用している爆弾に美食研のリーダーの弾丸、温泉開発部の機材が戦闘の跡地に残っている日だってあった

 

「…………」

 

 

 

 

俺の言葉に黙り込む狐坂さん

 

そう……毎回毎回ではないが、俺が出動した日に限って風紀委員会以外の組織と戦闘した痕跡が残されていることが多々あるのだ

 

 

 

 

「………ええ、それが何か?」

 

いや、これはあくまでも予想に過ぎないんですけど………もしかして、なるべく俺に負担が掛からないようにしてました?

 

上手く説明できませんけど、風紀委員と戦う前に他の厄介事を片付けてから俺を呼び寄せようとした………とか

 

「…………他の者達に時間を奪われて私の元に駆けつける事が出来なかった………などといった事が起こると暴れ損ですからね」

 

 

………〝暴れ損〟というのが気になるが、彼女は彼女なりに気を遣ってくれていたのだろう

 

正直なところ、それはちょっと助かる

 

言うことを聞かない他の組織と最後までドンパチやるよりも、俺がある程度戦ったらその内勝手に帰ってくれる狐坂さんの相手をしていた方が被害も疲労も少なく済むからな

 

なんならそのお陰で空崎さんの負担が減っていることもある

 

ただ、まあ─────俺を呼び寄せる為だけに暴れるのは止めてほしいっていうか………

 

「そうでもしないと貴方は会いに来てくれないでしょう?」

 

頭に?を浮かべられるが、困惑しているのは俺の方だ

 

そんなことしなくても連絡さえしてくれれば時間の空いてる時に会いに─────ああ、そもそも連絡先知らないのか

 

じゃあ………はい、これ俺の電話番号ね、モモトークは後で登録しときますんで

 

 

「………はい?」

 

 

番号の書かれた紙を渡すと、再び困惑する狐坂さん

 

いや、何を驚いているんだ?本当かは分からんが〝俺に会う為〟って言ってたから番号教えたのに………

 

 

「……貴方は自分が何をしているのか分かっているのですか?」

 

連絡先を教えた

 

「誰に?」

 

狐坂さんに

 

「指名手配犯の大罪人に………ですよ」

 

そりゃそうですけど………でも、会う為だけに毎回暴れられるのも困りますし、それに─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────俺に会う為だけに……俺のせいで他の問題児と戦って狐坂さんが怪我するのも嫌ですし……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………」

 

まあ、そういう訳で………これからは普通に連絡くれたら会いに行きますよ

 

………悔しいですけど、俺の実力じゃどうせ捕まえられませんしね

 

「…………」

 

その代わり、これからはゲヘナで暴れないでくださいね?他の学園のことは知ったこっちゃないですけど……

 

あっ……あと便利屋とか美食研とかの相手ももうしなくていいですからね?それは風紀委員の……俺の仕事ですので

 

「………」

 

……狐坂さん?聞いてます?

 

「……き、今日のところはこれで失礼します」

 

 

黙り込んだかと思えば、突然足早に去っていった

 

……なんだったんだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………貴方が退院して落ち着いた頃」

 

 

かと思いきや顔をヒョコッと覗かせてきた

 

なんだ?忘れ物か?

 

 

「予定が空いた日に一度、私に連絡を入れてください………荷物を持ってお伺いしますので」

 

 

そう言い残して今度こそ帰っていった

 

……荷物?何の?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん、そろそろ静かになったかな?」

 

 

 

 

なーんて、そんな約束もあったなー…………なんだ、走馬灯じゃなかったのか

 

まあ、その約束もこのまま秤アツコが生け贄にされて聖園ミカが誰かを殺めて前世で見たバッドエンドスチルに繋がったら全部無意味になるんだけどな

 

………なんでこうなったんだっけ

 

確か錠前サオリに助けを求められて、電話で先生や空崎さんに助けを求めて、途中で秤アツコ以外のスクワッドメンバーと合流して、それで…………ああ、トリニティの動物園からゴリラが脱走したんだった

 

そんで、俺がゴリラの足止め役を買って出て………〝自分達で責任取ってこい〟ってスクワッドを進ませたんだったな

 

くそっ、身体いてーな………俺は確かに聖園ミカの拳が当たる直前で後ろに下がった、聖園ミカ自身も不安定なバランスで拳を振りかざしていたから威力は十分に出せていなかったはずだ

 

なのにこのダメージかよ………胃液も血も思いっきり吐いちまったじゃねーか

 

口ん中がめちゃくちゃ酸っぱい、身体が軋む、今すぐぶっ倒れたい………けど、そういう訳にもいかねーよなぁ……

 

 

「あれ?まだ意識あったんだ?これ以上ゲヘナ生の顔なんて見たくないんだけどなー」

 

 

向こうも傷は付いてるものの、ダメージを受けている気配は全くない

 

どうなってんだよ、その身体………

 

 

「いい加減もう諦めたら?貴方が私に勝てるはずないじゃんね☆」

 

 

……駄目だ、煽り返す気力すら湧いてこない

 

恐らくここからは一方的な戦いになるだろう………主に俺がボコられる方向で

 

でも、ゲヘナを嫌っているコイツがゲヘナ生である俺のことをサンドバッグのように扱ってくれるのなら─────それは好都合だ

 

好きなだけ殴れ、俺をぶん殴るのに夢中になってそのままアリウスへの怒りを俺に向けてしまえ

 

その間に錠前サオリ達が秤アツコを救出してしまえばこっちのもんだ………なーんて、いくら聖園ミカが暴走してるとはいえ、そう都合良く行くとは思えないけどな

 

………よし、とりあえずちょっとでも敵意を向けさせる為にいつも通り強がるか、まずは─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────自業自得の分際で被害者ぶってんじゃねえよ、メンヘラアホゴリラ

 

「………ふーん?まだそんな口叩けるんだ?」

 

 

 

拳を構えて駆け出す聖園ミカ

 

さて………どうやってやり過ごそうか

 

カウンターを狙う?大してダメージにはならんだろ

 

こっから撃つ?爆弾食らっても構わず突っ込んでくる女相手に?

 

じゃあ、またどっかに飛び退く?失敗したら今度こそ終わりだぞ?

 

拳が迫る、思考を巡らせる、拳が迫る、答えは決まった

 

このまま懐に潜り込んで、今度こそ零距離で─────直後、横から蹴り飛ばされる聖園ミカ

 

…………は?

 

 

 

「あら……私以外の女性に随分と釘付けでしたね?ワカモ、妬いてしまいますわ……」

 

……あれは女性じゃなくてメスゴリラですよ────狐坂さん

 

「いっ……たいなぁ……今度は誰?またゲヘナ?」

 

突然現れた狐坂さんが俺の隣に立つと、彼女はクスクスと笑いながら自己紹介を始める────事なく、聖園ミカを無視して俺に話しかけ続ける

 

 

「さて………後は私にお任せを、貴方は安全な場所に避難を」

 

いや……なんでここに居るのかの説明は?

 

「………女性の秘密を探ってはいけませんよ?」

 

 

こえーって、何だよその含みを込めた笑いは

 

さっきまで聖園ミカとの実力差に若干の恐れを抱いていたのに、今ではすっかり別の事に恐怖を感じている

 

 

「さあ、貴方はこのまま御自宅に戻って待機を………私も後で向かいますので」

 

なんで俺の自宅知ってるんですか……

 

「それと自宅前に荷物が届いていても勝手に触らないでくださいね?全て私の私物ですので」

 

なんでアンタの私物が俺の家に届くんだよ全部説明しろ

 

「この状況で………ですか?」

 

 

俺の言ってることの方がおかしい……とでも言うかの様に困惑した目を向けられる

 

いや、間違ってるの明らかにそっちだよね?なんで勝手に俺の家を荷物の受け取り場所に設定するの?

 

 

「以前、私が話したことを覚えていますか?私が貴方に拘る理由を………」

 

確か……俺を知る為、でしたっけ?

 

「ええ………私はあの日以降、どうすれば貴方の事をより深く知ることができるのか考えてきました」

 

ほんほん、それで?

 

「結果、一緒に暮らして少しずつ貴方のことを知れば良いという結論に至りました」

 

そうはならんやろ

 

「なってます」

 

そうは!!!ならん!!!やろがい!!!

 

「生活に必要な物は全て届く予定ですので………よろしくお願いしますね?」

 

何を勝手に───待て!病院で言ってた〝荷物を持って伺う〟ってそういうことだったのか!?

 

こんなこと風紀委員の誰かに知られたら一発で裏切り者認定だよ……!

 

いいですか!?帰ったら今すぐ荷物を送り返して─────っとお!?

 

「あら?」

 

 

突然聖園ミカが突っ込んでくる………と同時に、狐坂さんが俺を抱えて飛び退く

 

拳が地面に直撃するとそのまま地面にヒビが入り、改めてその威力に背筋を凍らせる

 

 

「あのさ……貴女、誰?突然現れたのに私のことを無視するなんて酷くない?」

 

「あら?確か彼女はメスゴリラだったのでは?人間の言葉を喋っているようですが……」

 

────もしかしたらゴリラと人間のハーフだったのかもしれません、それかキメラ

 

「………二人纏めて折るね☆」

 

 

屈託のない笑顔と共に飛びっきりの殺気をぶつけてくる聖園ミカ

 

俺は思わず冷や汗を流してしまうが、一方で狐坂さんはいつもと同じ様に余裕そうにクスクスと笑いながら俺を下ろす

 

 

「さて……では、そろそろ貴方も────」

 

────退きませんよ、俺もここで戦うんで

 

「………その身体では動けないでしょう?」

 

ええ、ですから俺はサポートです

 

悔しいですけどメインは─────アンタに任せます

 

「……そう簡単に信用して良いのですか?」

 

何度戦ってきたと思ってんですか、アンタの強さは俺が一番よく知ってますよ

 

俺とアンタが組めば誰にも負けない……それだけは断言できます

 

「………成る程、これが貴方流の女性の口説き方ですか」

 

こんな口説き方したのはアンタが初めてですよ

 

「あはは!そんな大怪我でお喋りする余裕があるなんて意外と頑丈なんだね?それとも………私のことを舐めてるのかな?」

 

 

 

口の端を吊り上げながら駆け出す聖園ミカ

 

俺と狐坂さんもスナイパーライフルを構え、銃口を同時に向ける

 

「では………手取り足取り、優しくお願い致しますね?貴方様?」

 

ただ戦闘のサポートするだけなのにその言い方は含みが─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────待って?今、貴方様って言った?

 

「………うふふっ♡どうでしょう♡」

 

 

 

 

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