「あけましておめでとうございます!今年もよろしくお願いします!……これで合ってますか?」
────パーフェクトだ、天童さん
「アリス、また一つスキルを覚えてしまいました!」
青色の着物に身を包んだ天童さんが玄関前で嬉しそうに跳び跳ねた
年は変わって一月一日、キヴォトスの歴史も新たにスタートを切った
【………それで?何か言うことは?】
去年は色々あったなーなんて考えていると、突然目の色を切り替えてケイさんが表に出てきた
彼女はチラッ、チラッ、と見つめてきながら何かを待っている
よく見ると身体もソワソワしているような……あっ!
【ようやく気づきましたか】
────俺だけちゃんとした挨拶返してなかったな……あけましておめでとうございます、今年もよろしくお願いします!
【………はあ、期待するだけ無駄でした────】
────それにしても………その着物似合ってんな、二人とも
【……………ありがとうございまs────アリスも直接言われたいです!」
また目の色が切り替わった……いきなりテンション変わるからこっちも驚いてしまった
「アリスも!アリスも直接褒めてください!」
────えっと……似合ってる、ぞ?
「パンパカパーン!アリスの好感度が更に上昇しました!」
同じ褒め言葉を二回言うことに若干の気恥ずかしさを感じるが、天童さんが喜んでくれたのならそれでいい
元気なのは良いことだ………あっ、そうだ
────天童さん、ゲーム開発部の皆は元気か?
「はい!皆元気です!この後は皆で初詣とやらに行く予定です!」
────おお……天童さんにとってもケイさんにとっても初めての初詣……つまり〝初〟初詣か、楽しんでこいよ
「はい!酒泉も一緒に楽しみましょう!」
────……ん
(王女……私達がここに来た理由をまだ伝えていません)
「………はっ!?そうでした!?アリス達は酒泉を誘いにここまで来たんでした!」
────誘うって……流れ的に初詣のことか?
「そうです!酒泉もゲーム開発部と一緒に初詣に行きましょう!」
そうか、俺のこともゲーム開発部と同じくらい大切に思ってくれているのか
それは嬉しい……けど……
────折角誘ってくれたところ悪いんだけどさ………実は今日、仕事があるんだよ
「え?」
────ゲヘナは新年早々から暴れるような奴等ばっかだからな………いつも以上に人員を動員して見回りしないといけないんだ
「そんな────でしたら先にスーパーノヴァで先手を打っておきましょう】
今度はケイさんに切り替わっていきなり物騒な事を言い出した
血のバレンタインならぬ血のお正月になってしまうから止めてほしい
【わたs……王女の楽しみを奪うような輩など生かしておくだけ無駄でしょう、ここは問題を起こされる前に……】
────ステイステイ、気持ちは分かるけど落ち着きなさい。それは俺達風紀委員の仕事だから
【………】
不満そうな顔でムッとされるが、ゲヘナの生徒と他校の生徒が争おうとしているのを見逃す訳にはいかない
ちょっとでも喧嘩の火種は少なく……ね?じゃないと風紀委員が過労死しちゃうから……
「そ、それなら仕事が終わった後とかでしたら……」
────その後もちょっと……やらないといけない事があって……
「ズーン………アリスのやる気が下がりました………」
天童さんはガックシと項垂れ、目に見えて落ち込んでしまう
二人の〝初〟初詣に付き合えなかった事に罪悪感を感じてしまうが、今回はどうしてもやりたい事があるのだ
────てな訳で……はい、代わりと言っちゃなんだけど受け取ってくれ
「封筒……ですか?」
小さな白いポチ袋を手渡すと、天童さんはそれをゆっくり開く
中には一万円札……が二枚程
「こ、これは……先生が言ってました!最強の課金アイテムです!」
少しズレた認識に苦笑するが、咳払いをして話を戻す
────とりあえず……それは俺からのお年玉ってことで
「こ、これをアリスに?いいんですか?」
────正しくは天童さんとケイさんの二人分だけどな………初めての正月だろ?それで好きなゲームを買うなり旨い飯食うなり好きにしなさい
「あ、ありがとうございます!アリス!大切に使います!」
【子供扱いされている気がしますが………私からも……その、ありがとうございます……】
抱きついてきた天童さんに対して親戚のおじさん気分になりながら頭を撫でていると、ケイさんも後からお礼を言ってきた
おっと……ケイさんに対しては馴れ馴れしくしすぎると怒られるんだよな……
【………待ちなさい】
────ん?
【その……手を離す必要は……ありませんから……】
────………
【……続けなさい】
────……はーい
──────────
────────
──────
「────という訳で酒泉は来れませんでしたけど……代わりにお年玉を頂きました!それと酒泉とは別の日に遊びに行く約束をしてきました!」
「そっか……アリスちゃんもケイちゃんも良かったね」
「大事に使うんだよ?」
「はい!一生の宝物にします!」
「い、一生?普通に使った方が酒泉君も喜ぶんじゃ……」
「そう……でしょうか?」
「……………」
「……そ、そういえばミドリ。さっきから部屋の角で着物を見つめている人って……」
「あれは〝酒泉君が来るかもしれないから去年以上に気合いを入れて着物を選んでいるお姉ちゃん〟だよ」
「こ、これはちょっと大きすぎるかな?でも一番大人びているのってこれだし………でも似合わないの着て笑われるのも嫌だし………いっそ普段と同じで………いやいやいや!それこそつまらないとか思われたり……」
「……その、酒泉君が来れないってこと……伝えたの?」
「………ううん、まだだよ」
「べ、別に特定の誰かに見せる為とかじゃないけどねー?あくまで周囲の人目を気にしてるだけっていうかー」
「………ど、どうする?」
「………どうしよう」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『あけおめわっぴ~☆………新年の挨拶というのはこれで良いのか?』
片目でウィンク、手をピースして開いている目の方に被せる
錠前さんのモモトークからビデオ通話が掛かってきたかと思えば急に他人が出てきた
……え?これ錠前さんじゃないよな?流石に別人だよな?
『……すまない、どこか間違っていたか?』
────その挨拶、誰から?
『姫に教えてもらったが……』
『いえい』
────説教の時間だ、前に出なさい
『どうしよう、酒泉に選ばれちゃった』
綺麗な歯でニカッと微笑む、前世のファンアートで何度も見てきたような笑みを浮かべる秤さん
俺の言葉にも頬を染めてモジモジしているだけだ、この人全く反省してねーな
『ど、どうしたんだ?酒泉……やはり何かおかしかったのか?』
『リーダーは騙されたんだよ、悪いお姫様に』
『その……私も正しい新年の挨拶というのはあまり知りませんが、流石にあれは違うと思います……』
『そ、そんな……』
戒野さんと槌永さんの言葉を聞いてようやく自分が騙されたことに気づいたのか、錠前さんは恥ずかしそうに視線を逸らした
『……酒泉、さっきのは忘れてくれ』
────……………………わっぴ~☆
『忘れろぉ!!!』
うおっ、すげー声
そんな目を見開かなくても……
『何かがおかしいと薄々感じていたんだ……あんな意味不明の言葉が挨拶などと……!』
『アリウス育ちでも流石にあれくらいは気づくでしょ、普通………そもそも〝わっぴー〟なんて変な言葉、日常どころか正月限定でも使う人いないでしょ』
『ですよねぇ……ちょっと空気に合ってないと言いますか……』
────……そ、そうっすかね?俺は良いと思いますよ?〝わっぴ~〟って挨拶も……な、なんか可愛いじゃないですか!
『それはちょっと酒泉のセンスが心配になっちゃうかな……』
やめてやれよ、ここに居ない誰かにナイフを突き刺すなよ可哀想だろ
別にいいだろ〝わっぴ~!〟したって、流行ってのは誰かが作っていくものなんだよ
『……で?そっちはどんな感じなの?』
画面の奥で秤さんと槌永さんがポンコツを晒した錠前さんのことを慰めていると、今度は戒野さんが一番前に来て語りかけてきた
どんな感じ……正月に何があったのかとか、そんな話かな?
『去年は最終的に何人引っ掛けてきたの?』
なんか思ってた質問と違う
『どうせ今年も貴方の被害者が増えるんだろうし、去年の分も今の内に計算しておこうと思ってね』
────ひ、被害者って……風紀委員である俺が風紀を乱すような真似をするはずがないでしょう!?
『……本当に?』
────本当本当!誓って風紀は乱してません!
『じゃあ、ここで宣言してもらおっかな………〝折川酒泉は風紀を乱しません〟』
────折川酒泉は風紀を乱しません!
『〝折川酒泉は女性を引っ掛けません〟』
────折川酒泉は女性を引っ掛けません!
『〝折川酒泉の道具は戒野ミサキだけです〟』
────折川酒泉の道具は戒野ミサキだけです!
『〝折川酒泉は勝手に居なくなりません〟』
────折川酒泉は勝手に居なくなりません!
『……はい、終わり』
────これで信じてくれ……あれ?なんか途中で変なのが入ったような……
『気のせいじゃない?』
気のせい……だろうか
絶対にどっかで何か変なのが『気のせいだって言ってるでしょ』いややっぱり気のせいだわ、うん
『お二人の関係も相変わらずですねぇ……』
『……ヒヨリ、話があるなら今この場で聞くけど?』
『へ、変な意味ではないですよ!?年が変わってもお二人は仲良しだなぁ……と思いましてぇ……』
相変わらず余計なことを言って自分で自分を追い詰める槌永さん
この人はどんな年になってもずっと不幸そうな顔で嘆いている姿が容易に想像できるな……
────で?そんな槌永さんこそどうなんだ?
『わ、私ですか?私の方は皆さんと同じと言いますか……あっ!でも本日の朝食にお餅が出たんですよ!あれは美味しかったですねぇ……!』
────そうか……それは良かったな……一月中はまた餅がメニューに出てくるかもしれないから一応言っておくが、食い急いで喉に詰まらせる……なんてことがないようにな?
『…………………は、はい』
あっ、一敗してるなこれ
アリスクとの会話を楽しんでから暫く、俺は〝本来の作業〟に戻ろうと〝台所〟に向かう
……前世では母さんの手伝いで作ってた程度だけど、上手くいけるか?
まあ、何事も動かないと始まらないしな………レシピを見ながら慎重に────と、なんだ?インターホン?
今日はいつもより来客が多いな……まあ、新年だしそれもそうか
はいはーい、今行きますよーっと
エプロンを外してから家前の客人にも聞こえるようにわざと音を立てて玄関に向かう
〝開けまーす〟と扉にぶつからないように先に声を掛けてからゆっくり開けると────そこには黒をメインとした着物を着こなす、美しい黒髪の女性が立っていた
……って、調月さんじゃん
「…………」
────………
「……その、何か言ってくれるとありがたいのだけれど」
────……あっ、いや……すいません、見惚れてました
「………そう、貴方の好みに合ったみたいで良かったわ」
不覚……大人の女性の色気を感じて身体が固まってしまった
この人って本当に学生なんだよね?俺より数歳上なだけだよね?
ブルアカには時々学生とは思えないような雰囲気のキャラが現れるからなぁ……
「新年おめでとうございます………本当は貴方とは二人きりでゆっくりと語り合いたいところだけど、今日はミレニアムの方で片付けなければいけない仕事があるから手っ取り早く済ませるわね」
そう言って微笑むと、調月さんは手に持っていた封筒を俺に渡してきた
受け取った瞬間、紙を束にした程度の重さを手に感じた
何が入ってるのか気になり、分厚さのせいで閉じきってない封筒を覗いてみる
中には一万円札………の束
………は?
「それは私からのお年玉よ」
────……あの……これって数百万はありますよね?
「ええ、それが?………ああ、そういう事ね。心配しなくてもそれは横領したお金ではなく全て私のポケットマネーよ」
調月さんはそう付け足すとそのまま………いや、帰ろうとしないで!?
「どうかしたの?もしかして金額が足りないの?それなら後で追加のお年玉を持って………」
────逆ですよ逆!金額が大きすぎます!
「そうかしら?私が巻き込んでしまった事件の治療費や迷惑料を考えたら妥当だと思うのだけれど………」
そうはならんやろ(そうはならんやろ)
折川酒泉君何人分の治療費だよこれ、むしろこっちが恐縮してしまうわ
────とにかく!これは返します!こんなの受け取れませんよ!
「……っ!?そ、そんな……!」
やめろよ!そんな悲しそうな顔するなよ!こっちが悪者みたいになるだろ!
……え?俺悪くないよね?それともキヴォトスではお年玉で数百万渡すのは普通の事なのか?
確かに前世より圧倒的に稼ぎやすい世界ではあるけどさぁ………それでもやっぱおかしいって!
「ご、ごめんなさい……どうやら私は貴方を怒らせるようなことをしてしまったみたいね……」
────い、いや、別に怒ってはいませんよ!?ただ俺にはちょっと重いっていうか……
「貴方の理解者だなんて名乗っておきながら、私はまだまだ貴方のことを理解できていなかったみたいね………」
やばい、心が凄い痛む
どうしよう……受け取った方がいいのかな……でも受け取ったら受け取ったで罪悪感が……うごごごごごご
「どうやらお困りのようですね」
調月さんの後ろから声が聞こえ、視線をそちらの方に向ける
そこには青い着物を纏った金髪の女性が立っていた
あ、あんたは……飛鳥馬さん!
「…………」
────もしかして……助けてくれるのか!?
「…………」
────……その無言、肯定と見なしていいんだな?
「…………」
────……あの?
「…………」
────……着物、似合ってますね
「ぴーす」
あ、反応した……褒められ待ちだったのか
「ここからは私にお任せを」
そう言うと飛鳥馬さんは調月さんに近づいて耳元で何かを囁いた
「……ですから……して…………よろしいかと……」
「…そう……のね………酒泉、ちょっと失礼するわね」
話し終えた調月さんは俺の手から封筒を回収すると、咳払いをして姿勢を整える
そのまま両手で封筒を持ち、再び俺の方を向いて……
「はい、酒泉。今日のパチンコ代よ」
「その調子です、リオ様」
────違う、渡し方の問題じゃない
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《ハッピーニューイヤーです酒泉さん!!!今年の宇沢レイサは一味も二味も違いますよ!!!》
《あけおめだ、酒泉!去年は色々助けられてしまったけど、今年は私が酒泉の力になるから!………ところで〝あけおめモモトーク〟っていうはこんな感じで合ってる?》
宇沢さんと白洲さんからそれぞれ写真が送られていた
宇沢さんの方は二人の友達と一緒に神社の前でポージングしている写真………に〝チャリで来た〟と加工されている
白洲さんの方はガスマスクをつけてお賽銭箱で両手を合わせている写真………え?参拝に来ただけだよね?
若干疑問を感じる部分もあるが、あの二人らしいなーって思いながらモモトークを返す
どうも、現在ゲヘナ学園の校庭で装備点検しながら待機しています
周りには既に集合していた他の風紀委員達が雑談している
………え?あの後どうなったのかって?
なんとか調月さんを説得して封筒を返却させてもらいました………それでも最後まで抵抗されたけど
ちなみに変な知識を植え付けやがった飛鳥馬さんにはたっぷり説教した、あんな光景誰かに見られたら社会的に死んじまうだろ
「あけましておめでとうございます……酒泉君」
────火宮さん……はい、あけましておめでとうございます、今年もよろしく………めでたい?めでたいんですかね?
「あはは……確かに今から行う仕事を考えるとめでたくはないかもしれませんね……」
曖昧になってしまった俺の挨拶に苦笑しながらも答えてくれる火宮さん
そう、俺達が今から行うのはいつも通りのパトロール……などではない
正月でも自重しないアホ共……むしろ正月だからこそと暴れまわる大アホ共を捕らえに行くのだ
「去年はだいぶ酷かったけど………今年はどうなるんだろうな」
────あ、銀鏡さん………あけおめっす
「うん、あけおめ……それで?体調はどう?」
────バッチリっす、今日の為に睡眠も食事も調整してきたんで
「それがいいよ、今日は嫌というほど動きまわるだろうからさ」
そっか、銀鏡さんは一年の時に同じこと体験してるのか……つまり当時の辛さも知ってるって訳だ
正月の交通整理とか治安維持が大変なのは前世でも同じだけど、キヴォトスだとその比じゃないんだろうなぁ………
「────皆さん、集合してください」
そんな会話をしていると校庭の中心辺りから拡声器越しに声が聞こえてくる
中央の朝礼台には空崎さんが立っており、下には拡声器を持っている天雨さんが風紀委員達の集合を待っていた
とはいえ、天雨さんの声が聞こえた瞬間に俺含めて既に全員移動済みなのだが
「よろしい、常日頃からその迅速な行動を心掛けておくように………では委員長、お願いします」
「………」
「………委員長?」
拡声器を手渡そうとする天雨さんだが、空崎さんはどこかボーっとしている
(酒泉と初詣……行きたかったな……)
「委員長?いかがなさいましたか?」
(着物だって見せたかったし……もしかしたらそれで褒めてもらえたりも……)
「……まさか、体調が優れないので?」
(……でも、それも全部叶わない)
「………い、委員長?どうして無視するんですか?私、何か失礼なことを……」
(それもこれも全部問題を起こす生徒達のせい………待って、もし速攻で全ての暴動を鎮圧する事ができたら………ギリギリで今日中に初詣できる?)
「な、なんだか身体が熱くなってきました……偶には放置プレイというのも────」
「アコ、拡声器」
「あっはい」
途中まで様子がおかしかったのが気になるが、とりあえず天雨さんが変な趣味に目覚める前に反応してくれて良かった
……いや、変な趣味ってのは元からだったわ
〝後 で 覚 え て い な さ い〟
天雨さんが睨みながら口パクで伝えてくる
こわっ……ニュータイプかよ俺の心に土足で入り込むなよ
「あー、あー」
空崎さんが声の調子を整え始めると、周囲の空気が更に静まる
我等が主が今から戦争前の一言を発しようとしているのだ、それも当然だろう
「まずは………今日、作戦に参加してくれた皆に感謝を」
「この時期になると一部の羽目を外しすぎた人達が暴れ始めるけど、私達風紀委員は毎年それを鎮圧してきた」
「けど、それを何度繰り返そうとも彼女達は決して諦めることはない」
「次の日には何事も無かったかのように暴れてるし、もしかしたらその日の内にまた事件を起こすかもしれない」
「────それでも私達は戦わなければならない」
「全ては治安維持の為に………火種とは無関係の生活を望む、ゲヘナでは珍しいそんな少数派の人達が安心して笑顔で外を出歩けるように」
「……気にするのは一般市民や周囲の建物の被害だけ、敵の状態は一切問わない」
「どれだけボロボロの状態だったとしても構わない」
「戦え」
「焼き払え」
「滅ぼせ」
「火を点けて完全に燃やしきってしまおう、ずっと好き放題できると勘違いしてきたゲヘナの火種全てに」
終わりの宣言もなく拡声器を下ろす空崎さん
だが、俺達風紀委員は全員無意識の内に敬礼をしていた
今、この場に居る全ての生徒の胸に〝熱〟がこもっているだろう
………全ては空崎さんの期待に応える為に、そして己の使命を果たす為に───!
(速攻で終わらせて酒泉とデート速攻で終わらせて酒泉とデート速攻で終わらせて酒泉とデート速攻で終わらせて酒泉とデート速攻で終わらせて酒泉とデート)
──────────
────────
──────
────そこまでだ!温泉開発部!
『ぶ、部長~!助けて~!』
『出たな折川酒泉!風紀委員の手先め!』
────器物損壊罪……以外にも色々やらかしてるけど!とにかくジャッジメント!
『ぬわああああああ!!!』
そして今日も風紀委員会の仕事が始まった
────見つけたぞ便利屋68の陸八魔アル!あけましておめでとうございます!
『えっ?あ、あけましておめでとう……?』
────よくも正月から暴れまわりやがったな!ジャッジメント!
『いきなりいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!?』
『アル様ああああああ!!?』
いつも通り問題児を追いかけ回し
────給食部の二人を解放しろ!美食研!
『しゅ、酒泉君……お正月なのに助けに来てくれたんだ……』
『これで助かりましたね!』
『出ましたわね、我々の〝食〟をより高位の次元へと高めてくれる最高の強敵………折川酒泉!』
────ただでさえゲヘナの台所事情は大変だってのに毎回毎回迷惑掛けやがって………覚悟しやがれ!
『来ますわよ……!』
────の前に……赤司さんは団子食ってからでいいぞ、いつも不幸な目に合って可哀想だし……
『え?いいの?……あ、ありがと…………んぐ』
────食い終わったな?………監禁罪でジャッジメント!!!
『ちょっ、はや──────』
ゲヘナの風紀を守る為に走りまわり
『げぇー!?折川酒泉!?』
────陸八魔の馬鹿はどこだあああああ!脱走しやがってえええええ!
『もう追いつかれてる……』
────……ん?鬼方さん……それ、着物?さっきと服が変わってるような……
『そっ、この後神社にお参りに行くって社長がさ………一応〝脱獄なんてしたら更に風紀委員の怒りを買うよ〟って忠告しても聞かなくてね』
────そうですか、いつもお疲れ様です………
『……くふふ♪それでそれで?酒泉君はカヨコちゃんを見て何も感想はないのかな~?』
『はぁ……ムツキ、馬鹿なこと言ってないで今は逃げる手段を────』
────えっと……すげー綺麗だと思いますよ
『………………ありがと』
『………お、折川酒泉!私の着物にも何か一言感想を────』
────陸八魔アル!単純逃走罪でジャッジメント!
『なんですってえええええええええ!!?』
『アル様あああああ!!?』
今年も風紀委員会の〝強さ〟を問題児達に見せつける
『お、折川酒泉!?な、何故ここに?………はっ!?焦ってなどいないが!?べべべべ別に空崎ヒナに対する嫌がらせなんて考えていないが!?』
────羽沼マコト!とりあえずジャッジメント!
『はっ!?ま、待て────グォォ!?』
────ジャッジメント!
『ぬおっ!?更にもう一発!?』
────ジャッジメント!ジャッジメント!ジャッジメント!
『いたっ!?や、やめ……やめんか!?いったぁ!?』
────ジャッジメントジャッジメントジャッジメントジャッジメントジャッジメントジャッジメント!!!
『な、なぜ私だけこんな大量に……うげぇ!?』
────引き金は二度引かねえ!あと百回ぐらい引く!ジャッジメント!ジャッジメント!ジャッジメントですの!
『ひえっ……』
『イブキはあっちで遊んでましょうねー』
『はーい!』
災い晴れるまで戦う、それが俺達風紀委員である!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
日が暮れました、いやマジで事件起こりすぎだろ
風紀はどうなってんだ風紀は!お前ら禁じられたルールを平気で破ってんじゃねえか!
正月だから浮かれてしまうのも分かるけど、にしたって限度があるだろ………こういう奴等がハロウィンでトラックを横転させたりするんだよな
…………はぁ、本当に疲れた。事件現場各地で対応に当たっていた天雨さん達も今頃は現地解散しているころだろう
執務室に集合し直す時間も体力も残っていないからな……
「お、お疲れ……様……でした……」
「おつかれでーす………」
「うん、また明日も同じ時間に集合だからね」
「は、はい………」
クタクタで帰っていく風紀委員に手を振りながらそう伝える空崎さん
この人は疲れを全く感じさせない……だけであって、普通に疲労とか溜まってるんだろうな
この程度すぐに見抜けてしまう、こういう時にこの〝眼〟があって良かったって思う
「……酒泉は大丈夫?今日一日疲れなかった………訳ないよね」
────全然余裕ですが何か?あと百件くらいは事件解決できますが?
「……強がってるの丸分かりだから」
おおう……バレテーラ……
いくら空崎さんも一緒に前線に出てたとはいえ、ずっと戦いっぱなしは流石にキツかった
脚もパンパンになってしまった、このまま寝たら深夜辺りにこむら返りが起きそうだ
…………あれ滅茶苦茶痛いよね、普通に叫んだわ
巡航ミサイルの余波食らった状態で戦ってた時だって痛みには耐えられたはずなのになぁ………
「………初詣に誘うのは今度の方が良さそうだね」
────ん?なんですか?
「ううん、なんでもない」
そんな下らないことを考えていると、空崎さんが小声でボソッと呟いた言葉を聞き逃してしまった
……いや、痛みに関しては下らないどころかむしろシャレにならないんだけどさ
「酒泉も明日に備えてゆっくり休んでね………じゃあ、お休みなさい────」
────はい、また明日………あっ、じゃなくて!空崎さん!
「……うん?なに?」
────あー……その……空崎さんが疲れてるのは理解してる上で言うんですけど……
────もし良かったら……このあとウチ来ません?
「………えっ?」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
────はい、お皿置きますねー
「……酒泉、何かするなら私も手伝うから───」
────駄目ですよー、空崎さんはお客さんなんですから
「あっ……」
手伝おうとする肩に手を置かれてそのまま座らされてしまう
……彼はいつもそうだ、自分が疲れていても私のことを優先してしまう
それが嬉しくもあるし、悲しくもある
もっと自分を大切にしてほしい、もっと私を頼ってほしい………なんて、私も前までは人のことを言えなかったけど
でも、風紀委員の皆のお陰でそれは少しだけ改善できた
今の酒泉だって自分だけで抱え込まず、周りにもちゃんと頼ってくれる………その上で無茶することもあるけど
あと……私以外に頼られるのもちょっと複雑だけど
────すいません、お待たせしましたー
「……重箱?」
酒泉が台所から戻ってくると、手には重箱があった
それを慎重にテーブルの上におくと、今度は重箱を一段ずつ外して広げていった
中には沢山の料理……〝お正月といえばこれ〟というものばかりだ
「これって………御節?これを私に?」
────はい、空崎さん前に〝仕事が忙しすぎて買いに行く余裕も作る時間も無い〟みたいなこと言ってたでしょ?
────だから俺が代わりに豪華な御節買いに行こうとしたんですけど……その、とっくに予約とかで売り切れてたみたいなんで……
「えっ?じゃあ……もしかして……」
────はい、作ってみました………といっても愛清さんに修行つけてもらったんですけどね、完全オリジナルじゃなくて申し訳ないです
「─────っ」
これは正直………耐えられるか分からない
酒泉が疲労状態だという事を認識していなければ今すぐにでも全力で抱きついていただろう
それで酒泉を突き飛ばしてしまったら嫌われてしまうかもしれない、だからここは………
「……酒泉」
────はい、なんでしょう……かぁ!?
「大好き」
仕方無いから両羽と両腕で抱きしめるだけで我慢しておこう
あ、いい匂い、すき
────お、おおおおお父さんね、こういうのはいけないと思うなー?女の子が簡単に男の子に触れるのはちょっとねー?
「ねえ、両手塞がっちゃったから食べさせてくれる?」
────は、はははは離れたらいいんじゃないですかね?
「食べさせてくれる?」
────あっはい
多少強引に詰めれば酒泉は頼みを聞いてくれる、これは今までずっと一緒に過ごしてきて学んだこと
この情報を利用しない手はない、今日ここで今までの奥手で弱々しい〝空崎ヒナ〟とはお別れをする………絶対に
「あーん……んっ」
────どう……ですか?
「ふふっ……美味しいよ、酒泉」
────よ、よかったぁ………いや密着してるこの状況は非常によろしくないですけど
「じゃあ、次は………あの伊達巻きを────」
昔では考えられなかった、こんな幸せな時間が私に訪れるなんて
今でも考えられなかった、それ以上の更なる幸せを彼が与えてくれるなんて
これ以上求めるのは高望みだと理解している……けど、それでも、酒泉ともっと先に………
『あれ?おかしいなぁ……風紀委員の活動は終わったって聞いたんだけど……酒泉くーん?いないのー?』
人間の幸せを邪魔する野生動物の鳴き声が聞こえた
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「どうして貴女が酒泉の家の前にいるの?門限はどうしたの?ねえ………トリニティの魔女」
「今日だけ特別に全寮門限が遅くなるからだよ☆………逆に質問するけど、どうして酒泉君の家の中から貴女が出てきたのかな?ゲヘナのおチビちゃん?」
「……私が酒泉と二人きりで年を越したから、私が酒泉と〝そういう関係〟だから、好きな方を選んでいいよ」
「じゃあ……〝一人で過ごすつもりだった酒泉君の家に無理やり押し掛けたから〟って理由を選ぶね☆」
「へぇ……貴女、自虐ネタが上手なのね」
「………」
「………」
────空崎さーん、一体誰……が……ゲェ!?聖園ミカ!?何故ここに!?自力で脱出を!?
「着物姿の女の子を見てその反応は酷くなーい?年齢=彼女いない歴の酒泉君の為にわざわざ見せにきてあげたんだよー?」
────くっそ……無駄に可愛いのが腹立つ……!
「……そ、そう?〝無駄に〟っていうのが気になるけど……でも、ありがと」
────性格はドブカス以下だけどなぁ!
「今なら祈るだけでこの家に隕石降らせられる気がするなー」
────すいません本当に勘弁してください
「えー?どうしよっかなー?そうだなー……酒泉君が家の中で私を接待してくれたら許してあげよっかなー?」
「酒泉、その必要は無いわ。私がここでこの女を始末するから」
────それってどのみち戦闘の余波で俺の家が………待って待って待って!?デストロイヤー構えないで!?
「でも……」
────はぁ、しゃーない………聖園さん、暴れないって約束してくれるなら家の中に入れてやるよ
「当たり前でしょ?私がそんなことするように見える?」
────まあ、気に入らない意見が出たら相手が幼馴染みだろうと力ずくで黙らせようとしてる奴に見えるぐらいには………
「う゛っ………」
────図星じゃねーか……たくっ、とりあえず先に行ってお茶菓子用意してくるんで
「おいしーのお願いねー!」
────はいよー
「ふぅ……それじゃ、お邪魔しまーす☆」
「……先に言っておくけど、御節料理は食べさせないから」
「なにそれ?貴女って意外と食い意地張るんだね?小さいのにオデブちゃんとか………ちょっと女の子としてどうかなー?」
「……じゃあ、貴女は御節を食べなくていいのね?」
「別にー?そもそも私、ご飯食べてきたしー?」
「それなら良かった、あれは酒泉が〝私の為に作った〟御節だったから」
「…………はぁ?それ、どういうこと?」
「言葉通りだけど?」
────あの二人仲悪いからな、喧嘩にならないように俺が間に入らないと………ん?なんだ?
────……百合園さんからモモトーク?
《やあ酒泉、ハッピーニューイヤーだな》
《本当は君に直接会って挨拶しようとしたのだが、私の勘が〝今日会いに行くと危険な戦いに巻き込まれるぞ〟と告げていてね………申し訳ないけどモモトークから失礼するよ》
《さて、正月と言えば初詣、初詣と言えば着物………という訳で君に会えない代わりにせめて私の姿だけでも見せておこうと思ってね》
《なあに……近況報告的なアレだ、細かいことは気にしないでくれ》
────………相変わらずスゲー勘してんなー……ん?
《〝写真〟》
《PS・セクシーセイアですまない》
────おお……和洋合わさったみたいなデザインの着物だな……ちょっとブカブカな気もするけど結構良いなコレ
「良いって……」
「何が?」
────うおっ……二人ともいつの間に後ろに……!?
「これは……百合園セイア?」
「……ふーん?酒泉君ってこういうのが好きなんだー?」
────いや、好きっていうか……
「浮気者」
「ロリコン」
「女誑し」
「変態」
────はー待て待て、完全に新年早々いきなり冤罪じゃん。頼むぜ俺の今年の運
お久しぶりです、あば茶です
皆さんのお正月はどうでしたか?
私はコミケで買った本で過酷してたり普通にブルアカしてたりルビコン神拳で遊んでたりカラミティ禁止でセンチュリオンとお別れ会したり下方されても未だに強いダブルオースカイにぶちギレてたりしてました
たっぷり休みましたので、また今まで通りの投稿ペースに戻ります