〝アリウス〟潰すゾ!!!   作:あば茶

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サオリ「ドレスを着て酒泉とパーティーに行くことになった錠前サオリだ」

 

 

 

 

 

 

「……くっ……どうすれば……!」

 

 

苦悶の表情で複数のカタログを見比べるサオリ

 

それをアツコ、ヒヨリ、ミサキの3人が見守っていた

 

 

「リ、リーダー……苦しそうですねぇ……」

 

「……何をあんなに悩んでるの?」

 

「サッちゃん、今度酒泉とパーティーに行くことになったんだって」

 

「は?酒泉と?」

 

「任務中に助けた市民の人が偶然有名企業の偉い人の娘さんで、その人からお礼にって招待状を貰ったんだって………しかもドレスもプレゼントするって」

 

「羨ましいですねぇ……わ、私もその日に任務がなければパーティーでお食事を………うぇへへ……」

 

「酒泉とリーダーが……パーティー?………ふーん?」

 

 

一気に雰囲気が冷たくなるミサキを隣に、淡々と説明するアツコ

 

そんな3人の視線に気づくことすらなく、サオリはカタログを読み続ける

 

 

「ドレスコードが存在する場所など一度も行ったことが……こ、こんな時は何を選べば……!」

 

 

条件は〝会場の雰囲気を崩さない服装〟

 

別にドレスでなくとも問題無いのだが、そういった場所に行った経験が無いサオリはドレスコードの〝ドレス〟という部分に気を取られて選択肢を狭めてしまっていた

 

そんな事実にも気づかず、未だに何を着るべきか悩んでいる

 

 

「サッちゃんサッちゃん」

 

「すまない、アツコ。今は…………アツコ!?それにミサキにヒヨリまで……!」

 

「私達の気配に気づかないほど集中してたんだ」

 

「パーティー……一体どんなご飯が出てくるんでしょうかねぇ……」

 

 

背後からの気配に気づけず、突如現れた3人の姿に驚くサオリ

 

アツコの視線がカタログに向かっているのを感じると、サオリは咄嗟にそのカタログを閉じてしまった

 

 

「ち、違うんだ!これは、その……私の好きなドレスが乗っているカタログを読んでいた訳ではなくてだな……あくまで酒泉が喜んでくれそうな服を……」

 

「どちらにせよ乙女みたいな理由でしょ」

 

「ぐ、くぅ……!」

 

 

サオリはミサキからジトっと重力の込められたような瞳を向けられて俯いてしまう

 

そんなミサキに〝素直になれないな〟と感じながらも、アツコは閉じられたカタログを再び開く

 

「……それで?サッちゃんはどのドレスにしようと思ってるの?」

 

「わ、私は……別に……」

 

「そんな無理してクールキャラ演じなくていいんだよ?サッちゃんがポンコツなのは皆にバレてるんだからさ」

 

「ポ、ポンコツ!?私が!?」

 

「ほら、このページの中にサッちゃんが悩むほど気に入ったのがあるんでしょ?どれ?」

 

 

アツコの言葉に反論するより先にカタログを渡され、少々不服そうにページを眺めるサオリ

 

 

 

 

「その……私は……このドレスが────」

 

 

 

 

そして、彼女が選んだのは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

『着替え終えたら会場の入り口付近でまた集合しよう』

 

 

会場内でそんな会話をしたのが数十分前

 

 

 

更衣室から出た俺は入り口の近くの窓から夕暮れを眺め、深呼吸をひたすら繰り返す

 

どうも、ゲヘナ以外のパーティーなんて一度も行ったことがなくて結構緊張している折川酒泉です

 

緊張しすぎて蝶になったわね……(一般男性アルコール)

 

などと言っている場合ではない、割りとマジでガッチガチになっている

 

礼儀とかは当日までみっちり勉強してきたし、ドレスコードにも気をつけてスーツを選んできた………シンプルに黒いのを選んだだけなんだけど

 

はぁ~……どうしよう、先生に直接話を聞きに行った方がよかったかもしれない

 

けど、なんか仕事が忙しそうだったしなぁ……

 

……いや、逆に考えるんだ、大人になる前に礼儀や作法を学べる良い機会だと

 

まあ、いざとなれば俺の〝眼〟で他のお客さんの動きを見ればいいだけだしな、それを真似しよう

 

 

「すまない……待たせたな、酒泉」

 

 

 

思考を無理やりプラスに切り替えようとしていると背後から声が聞こえる

 

錠前さんも着替えが済んだのかと思い後ろを振り向く───直後、動きが止まる

 

 

 

「……?どうした?」

 

 

 

白いドレスに黒いバックリボン

 

唇に微かに見える化粧の跡

 

夕焼け空から窓に差し込まれるオレンジの光を背に、青暗い髪が輝く

 

腕は白いオペラグローブに覆われていたが、代わりに白く美しい脚がドレスの隙間から堂々と大胆に出されていた

 

 

「……すまない、変だっただろうか」

 

────っ!?い、いや!違います!美人すぎて見惚れてただけですから!

 

「び、美人……?私が……?」

 

 

そういえば……錠前さんのこんな格好を見たことは前世でも今世でも一度もないな

 

もしかしたら俺が死んだ後のブルアカのストーリーで登場しているのかもしれないのか……

 

………イベントストーリー〝アリスクの夏休み!〟とか来てたり?流石にないか

 

 

「その……ありがとう、お前にそう言ってもらえると自信が持てる」

 

────いえ、事実を言ったまでですから

 

「事実…………そうか」

 

────……じゃあ、そろそろ行きます?パーティー

 

「あ、ああ………酒泉」

 

────はい?

 

「お前のスーツも……似合っているぞ」

 

 

 

そう呟くと、錠前さんは少々足早に進んでいってしまった

 

……頬が赤かったのは気のせいではないだろうな

 

 

 

 

 

 

 

──────────

 

────────

 

──────

 

 

 

 

 

「サオリ様!お会いしたかったです!」

 

「……お前────いや、貴女は……」

 

「はい!あの日、サオリ様に助けていただいた者です!」

 

 

パーティー会場に入るや否や、頭にヘイローを浮かべた金髪の少女が錠前さんに近づいていった

 

そうか、あの子が錠前さんに招待状を渡した人の娘か……

 

 

「そのドレス、とても素敵です!サオリ様が自分で選んだのですか?」

 

「あ、ああ……」

 

「凄い!サオリ様は強いだけでなくセンスもあるのですね!」

 

 

 

グイグイと押してくる少女に錠前さんがたじろいでいる

 

……あー……これは……アレだ、俺の〝眼〟によれば彼女は錠前さんに〝ほの字〟だ

 

だってめっちゃ瞳をキラキラさせているんだもん、顔もなんか赤いし

 

まあキヴォトスでは時々見る光景だ………と言いたいが、錠前さんにとっては初めての経験だろうな

 

てか、あの少女が惚れるのも無理はないと思う

 

だってよ、アーサーなんだぜ?………じゃねーや、錠前さんなんだぜ?

 

かっこよさと可愛さを合わせ持つ錠前さんがあんな少女の目の前で無双するとか、そりゃお姫様スイッチ入りますわ

 

てか俺と同じ格好で街にナンパしに行ったら10人中9人は錠前さんの方に行きそう

 

ごめんなさい強がりました本当は全員錠前さんについていきます、俺はその百合百合した光景を眺める見物人Aです

 

……ぬぅおぉおおお……前世でナンパに失敗した経験を思い出した……!

 

忘れもしませぬ、あれは拙僧が中3だった頃の話……

 

海に遊びにいった俺達は何をトチ狂ったのか、友人のナンパ計画に参加した俺は美人なお姉さんを見つけて声を掛けに行こうとし……

 

 

 

『先輩みたいな地味面がナンパしたところで相手側に気を遣われるだけですので今すぐ止めてください………不愉快です』

 

 

 

後輩ちゃんにめっちゃ見下されました、ちくしょう

 

因みにその後は後輩ちゃん監視の下、ずっと焼きそば焼く係やってた

 

あとナンパに失敗して全滅した野郎共と煽り合って最終的に全員で泣いた、チェリーです対戦よろしくお願いします

 

 

「あの……と、ところで……サオリ様はお付き合いしている方とかは……いらっしゃるのですか……?」

 

 

 

そんな悲しい記憶を掘り起こして勝手にダメージを受けてたらいつの間にかキマシな展開に進んでいた

 

これを見て癒されるか……

 

 

 

「(付き合う……パーティーのことか?)いるぞ、酒泉だ」

 

────~~~♪…………え?

 

「え!?そ、そんな……」

 

錠前さんが俺の方に指を差してくる

 

今、とんでもない事を言ってたような気がするけど……気のせいだよな?

 

 

「じゃ、じゃあ………キス、とかは……?」

 

「(……傷?傷と言ったのか?)………ああ、沢山つけた。数え切れないほど……な」

 

「っ!」

 

────!?

 

「……ひっく……ぐすっ……じゃあ、サオリ様はあの方と……結婚を……?」

 

「(更に声が小さく……血痕?)……ああ、そうだ」

 

 

 

ちょい待ち!?いくら子供からの求婚を誤魔化したいからといっても、その方法は流石にマズイだろ!?

 

 

「大好き……なの……?」

 

「ああ、私にとって────自分の命より大切な存在だ」

 

「そう……んっ……分かったわ、サオリ様………変なことを聞いてしまってごめんなさい……お幸せにっ!」

 

────ちょっ……待って!?あのね?この人は君の為を想って……

 

「名前も知らないお兄さん……どうか、サオリ様をよろしくお願いします」

 

 

 

涙を拭い、明らかな作り笑顔で走り去る少女

 

俺はその場で立ち尽くし、錠前さんは後ろで首を傾げている

 

 

「………なんだったんだ?」

────いやいやいや!?断り方考えましょうよ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────

 

────────

 

──────

 

 

 

 

その後も色々あった

 

まずはさっきの少女を追いかけて慰めたり、そのままお話したり、会場内を案内してもらったり、少女のお父様に出会った時にお礼を言ったりもした

 

会場の料理を口にした錠前さんがすっっっごい笑顔を浮かべていたり、それに釣られて今度は性別上男の機械人や獣人が口説きにきたりしていた

 

だが、適当に一言答えた後すぐに俺の方を向くのは止めてあげてほしい、男ってのは興味無さそうにされるのが一番辛いんや………

 

あ、因みに俺も食事中に女性の方に声を掛けられました

 

ボディタッチが多い方でした、俺の腕に絡みつく2つのマシュマロがとても柔らかかったです、まる

 

でも大型犬みたいに威嚇し始めた錠前さんにビビって帰ってしまった、あの人敵じゃないからね?…………別にもっと堪能したかったなんて思ってませんよ?

 

………離れなかった理由?恥ずかしくて動けなかっただけですが?気持ちいいのと恥ずかしいのは両立します

 

その後はまたさっきの少女と3人で行動し、食事を楽しんだり互いの趣味を話し合ってたりした

 

そしてパーティーが終わって帰る時、何故か今度は俺が少女に告白された

 

違うんです、早く立ち直ってほしくて〝君は自分が振られても相手の幸せを願える優しい子だ〟とか〝君ほど素敵な女性は他に知らない〟とかとにかく褒めまくってただけなんです決してロリコンではないんです

 

だから此方を睨まないでくださいお父様

 

 

「今、お義父様って言った?言ったよね?ねえ?」

 

 

ちょっ……近い近い近い近い近い

 

 

「酒泉様をいじめるお父様なんてだいっきらい!!!」

 

「」

 

「……息が……止まってる……?」

 

 

 

────お父様あああああああ!!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────錠前さん、今日は誘ってくれてありがとうございました

 

「いや……私の方こそ来てくれてありがとう」

 

 

 

パーティーも終わり、俺達は招待状を渡してくれた人にお礼を言ってから会場を出た

 

人の多さで籠っていた会場内の熱が良い感じに冷め、そこに夜風が顔に吹いてくる……心地好い

 

 

「……正直、こんな機会は私達には一生訪れないと思っていたんだ」

 

 

歩きながら錠前さんが語り出す

 

 

「ベアトリーチェに支配されていた頃の私達は何かを求めることも何かを得ることも許されないと………ずっとそんな考えに縛られていた」

 

「……だが、本来の私は自分で思っていたより相当強欲だったらしい」

 

「自分で好きなドレスを選び、会場内の食事を堪能し、そして………お前とこうして並んで歩いている時間がもっと続けばいいと、そう願ってしまっている」

 

「………寂しいんだ、この時間がもうすぐ終わってしまうことが」

 

 

……強欲、か

 

 

────別にいいと思いますよ、強欲で。今まで得られなかった分の幸せを全部味わっちゃいましょうよ………勿論、アリウス皆で

 

「……これ以上幸せになってもいいのだろうか」

 

────いいんですよ……むしろ錠前さん達の場合はその機会が遅れてやってきただけですから

 

「……ふっ……そうか、ならお前の言葉に甘えてもっと欲するとしよう」

 

 

錠前さんは軽く俯いてから顔を上げ、右手を俺に差し伸べてくる

 

そした真っ直ぐに瞳を見つめ、微笑みながら口を開いた

 

 

「まだまだこの時間を堪能させてもらうぞ、酒泉」

 

 

此方も釣られて笑みを浮かべ、錠前さんの手を握った

 

そのまま2人で手を繋ぎながら帰宅……と、いきたいところだけど……

 

 

 

────ところで……錠前さん

 

「なんだ」

────………なんか、歩けば歩くほど騒がしくなってきてません?

 

「………確かに、銃声も微かに聞こえてくるな……」

 

────所々罵声も混ざってるような……

 

 

 

 

銃声自体はキヴォトスじゃ珍しくもなんともないが、大勢の人の声もセットだと大喧嘩か抗争のどっちかな気がする

 

今日は風紀委員として来たわけじゃないし特に仲裁するつもりはないが……

 

 

 

 

────すいません、軽く様子だけ見てきます

 

「あ、手が………行くのか?」

 

────一般市民が巻き込まれなさそうだったらすぐ帰りますんで……

「……なら私も行こう」

 

────別に付き合わなくてもいいんですよ?

 

「いや、お前に怪我させるわけにはいかないからな……断ってもついていくぞ」

 

 

 

気を遣わせてしまったかと申し訳なさを感じながら騒音のする方へ進んでいく

 

近づけば近づくほど音が大きくなり……煙の臭いもしてきたな

 

そうして辿り着いたのは大きな建物、看板とか名前が分かりそうな物は……

 

 

 

「……ここは?」

 

────んー…………どうやらオペラハウスらしいっすね

 

「オペラか……言葉を聞いたことはあるが、実際に見たことはないな」

 

────簡単に説明すると、音楽と演劇の合体みたいな感じですね

 

「なるほど……つまりこの騒音は音楽が原因だったのか」

 

 

 

納得したように手を叩く錠前さんに俺は首を横に振って否定しておく

 

 

「……ん?屋根が爆発したぞ?」

 

 

なんでや

 

 

 

 

 

「くっ……味方の到着はまだなのか……!?」

 

 

 

 

 

 

………オペラハウスってこんな応援上映みたいな騒がしいことするっけ

 

いや、応援上映だとしても爆発はしないだろ……

 

 

 

 

「大体、会場の全員が敵とはどういうことだ!?警備はどうなって────くそっ!そもそも警備も敵だった!」

 

 

 

 

 

なんかオペラハウスってよりはライブハウスみたいな騒ぎ方だな……

 

今日だけジャンルチェンジでもしたのか?それか他の団体に会場貸してるとか?

 

 

 

「なるほど……オペラとは爆発なんだな」

 

────そんな〝芸術は爆発だ〟みたいな……

 

「違うのか?だが実際に爆発しているだろう?」

 

 

 

うーん……錠前さんにはもっと表の世界のことを教えてあげないといけない気がする

 

このままだととんでもない価値観のまま大人になってしまう、そして詐欺師に幸運の壺とかお金が勝手に貯まる貯金箱とか買わされて………

 

いや、その辺はトリニティで過ごしてく内に勝手に修正されて────

 

 

 

「はぁ…はぁ……ぬおっ!?」

 

────おん?

 

「むっ?」

 

 

なんて事を考えていると、突然曲がり角から何者かが飛び出してくる

 

俺も錠前さんも当然気配を感じ取っていたので数歩下がってぶつからないようにする

 

……が、相手側は此方に気を取られたのか、足元の地面の僅かな亀裂に足を引っ掛けて盛大に転んでしまう

 

 

 

「ぬぅおぉおおお……!」

 

────えっと……大丈夫ですか……?

 

「すまない、受け止めるべきだったか」

 

「ぐ、くぅう……!邪魔者め……!」

 

 

 

悪態を吐いてくる謎の人物に手を差し伸べて立ち上がらせようとする

 

……が、その直前でピタリと止まってしまう

 

 

 

「……待て、貴様らは本当にただの一般人か?」

 

────は?

 

「こうして手を取った瞬間、私の命を……!」

 

 

 

なんか勝手に勘違いして勝手にパニクってそうだな……

 

まあ、別に自分で立ち上がれるってんならそれでいいけど、変な誤解されたままってのはちょっと「私は一般人ではないな」錠前さん?

 

 

 

「今でこそ様々な人達の計らいでETOとして活動することが許されているが、以前は人をころs」

 

────喋るなあああああああああああ!!!

 

「ど……どうしたんだ、酒泉!?そんなに首を上下左右に動かして!」

 

「人を……殺そうと……!?やはり私を狙って……!?」

 

 

 

ほら!誤解された!こうなると思ったよチクショウ!

 

薄々と嫌な予感がしていたんだ!このパターンはヤバいって!

 

 

「こんな所でくたばる訳にはいかん!死ぬのはお前達だ!」

 

 

 

懐から銃を取り出して銃口を向けてきやがった目の前のロボット野郎の腕を掴んで押さえつける

 

危ないなコイツ……突然人を撃とうとするなんてどういう────いや、キヴォトスではよくある事だな

 

 

 

「ええい!離せ!私をこのまま殺すつもりか!」

 

────あの!なんか勘違いしてると思うんで一旦落ち着いて話を……

 

「黙れ!奴等の手先の言葉など聞くつもりない!」

 

 

 

どうしよう……錯乱は既に少しアスランしている……

 

とりあえず銃を没収して、少し時間が経って落ち着いてからもう一度声を「ぐあっ!?」かけて、それから事、情……を…………?

 

 

 

「……よし、眠ったか」

 

 

〝よし〟じゃないが?

 

視線をずらせば、拳を構えている錠前さんの姿

 

地面には気絶して横たわっているロボット野郎

 

 

 

────あの……錠前さん……殴った?

 

「ああ、殴った………それよりも酒泉、怪我はないか?」

 

────いや、俺は大丈夫ですけど……でも……

 

「そうか……酒泉が傷つけられる前に護ることができてよかった」

 

 

 

微笑みながら俺の身体を触って怪我のチェックをしてくる錠前さん

 

これ俺の為じゃん、すっごい怒りづらいんだけど

 

 

 

「さて……コイツはどうする?ヴァルキューレに突き出すか?」

 

────……あ、そういえばこの人の身元もなんも知らないな、どうしようか……

 

「起きるまで待っておくか?」

 

 

 

うーん……でもいきなり襲ってくるような奴だしなぁ……キヴォトスのチンピラ生徒とそんな変わらん民度レベルだし、問答無用でヴァルキューレに突き出してもいいのでは

 

 

 

「もう少し話を聞いてから殴るべきだったか……」

 

────殴るのは前提なんです………ん?

 

「……また人の気配が………」

 

 

 

ロボット野郎が走ってきた路地裏と同じ方向から何者かの気配が足音と共に近づいてくる

 

錠前さんと2人で警戒していると、暗闇の中から少しずつその人物の姿が見えてきた

 

 

 

「……アイツは……どこかで……」

 

────……あー……あの人か、錠前さんは多分調印式の時にチラッと見かけた程度じゃないですかね?敵としてですけど

 

「……そうか、あの時か」

 

 

軽く会話を続けながらその場で待っていると相手側も此方の姿が見えたのか、走っていた足を止めて途中から歩き始める

 

 

 

「……あれ?酒泉?それにそっちの人って……」

 

────どうも、こんばんは………鬼方さん

 

「あ、はい……こんばんは」

 

そうして俺達の前で止まったのは便利屋の1人、鬼方カヨコだった

 

だが、着ている服がいつもと違う

 

 

 

「………って、そうじゃなくて。なんで酒泉がこんな所に居るの?しかもスーツだし……」

 

────そんなこと言ったら鬼方さんだってドレスじゃないっすか

 

「まあ、それはちょっとした事情があって……」

 

 

 

鬼方さんは口を濁して目を剃らす

 

……他人に言えないって事はまた何かやらかしてるんだろうな

 

 

 

「……それよりも、私の記憶が正しければ隣の人ってアリウススクワッドの錠前サオリだよね?」

 

「……ああ、それがどうかしたか?」

 

「いや、酒泉の隣に珍しい人がいると思ってなんとなく聞いてみただけだから……気を悪くさせたなら謝るよ」

 

「……いや、私も別に気にしてはいない。出会いが出会いだけに疑問に思うのも無理はないだろう」

 

 

 

一瞬〝危ないか……?〟とも思ったが、喧嘩にまで発展する事は無さそうでよかった

 

まあ、敵対したのはエデン条約の一件だけだし、アレだって俺が便利屋に依頼したから戦ってただけだしな

 

殆ど他人の2人が争う理由はないし心配しすぎたか

 

 

 

「……でも、結局なんでドレスとスーツなの?まあ、どっちも似合ってるけど」

 

「あ、ああ……ありがとう」

 

────ありがとうございます……鬼方さんも似合ってますよ、黒いドレスが綺麗な肌をより一層目立たせてます

 

「……そ、そこまで具体的に言わなくていいから」

 

 

 

以前、天雨さんに褒め言葉のボキャ貧っぷりを呆れられたことがあったけど、俺だって日々成長しているのだ

 

見よ!頬を赤らめている鬼方さんを!

 

照れてるのか~?ん~?このこの~!くぉの~!

 

 

 

「何故かムカついたから耳元で発砲してもいい?」

 

 

おみみこわれる

 

鬼方さんの銃は発砲音がうるさすぎて近くで撃つだけでキヴォトス人だろうがなんだろうが問答無用で鼓膜にダメージを与えてくるから止めてほしい

 

ん?対策?そもそも撃たせなきゃいいじゃん、つよつよ酒泉君で申し訳ない

 

嘘です実は数戦に1回はおみみいたいいたいされてます、でも全部勝ってるから許して

 

 

 

「……はぁ……相変わらずの鈍感っぷりで逆に安心するよ。あの委員長も……というよりこれから付き合うかもしれない人が大変そうだね」

 

────そんな……俺がダメ男みたいな……!

 

「そういう意味で言った訳じゃないんだけど………このままだと未来の彼女さんに捨てられるかもしれないよ?」

 

 

 

天雨さんのドレスを見た時もそうだけど、もしかしたら俺は人を褒めるのに向いていないのかもしれない

 

色んな人にクソボケクソボケ言われてるのも俺が自覚できていないだけで本当の事なのかもしれない

 

………ん?つまり正実のあの人はそれを知っても尚、俺にアタックすることを選んだと?聖人かな?聖女かな?シスターフッドに入った方がいいのでは?

 

 

(なんだ……?鬼方カヨコからミサキが酒泉と会話してる時と同じ雰囲気を感じたぞ……?)

 

────……錠前さん?なんかボーっとしてますけど……

 

「いや……何でもない………それよりも少しジメジメしてこないか……?」

 

「そう?私は何も感じないけど………っと、雑談してる場合じゃなかった、これ以上待ってると他の刺客も来そうだしそろそろ本題に入ろっかな」

 

────本題?

 

「あー……その、さ……非常に言いにくいんだけど、酒泉達の近くで気絶してるその人、私達のターゲット────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「流石に多すぎるわよおおおおおおおおお!!?」

 

 

今度はオペラハウスがある方角から声が聞こえてきた

 

 

 

 

「アル様に迷惑を掛けるなんて……!また全員吹き飛ばして……!」

 

「やっちゃえ~!ハルカちゃ~ん!」

 

「あの人数は無理よ!ムツキも煽らないで!?」

「はぁ……はぁ……待って………ブェホッ!ゲホッ!オエェ……!」

 

 

 

 

白目を向きながら走る陸八魔さん

 

相変わらずボンバーガールな伊草さん

 

ピンチなのに楽しそうな浅黄さん

 

本気の運動が身体に堪えたのかガチで吐きそうな先生

 

……いや、鬼方さんが居るならあの人達も当然いるだろうな……とは思ってたよ?

 

先生は意外だったけど、色んな生徒と関わりがあるし一緒に居ても別におかしくはない

 

けど………

 

 

 

 

 

「「「「「「「「「くたばれええええええええ!!!陸八魔あああああああ!!!」」」」」」」」」

 

 

 

後ろから凄い形相で追いかけてきてる黒服の姉さん達は誰?

 

 

「……なんだアレは」

 

「……はぁ……また案の定やらかしたんだね、社長達」

 

────鬼方さん、便利屋っていつから大企業になったんです?

 

「あんな人数を雇うお金なんてウチにはないよ……てか、1人ですらキツい」

 

 

 

悲しいことを言う鬼方さんにちょっと同情していると、陸八魔さん達が此方まで走ってくる

 

……は?ちょ……このまま合流すると……!

 

 

 

「よ、よかった……!カヨコ、無事だったのね!……ん?貴方は……」

 

「あれ?酒泉と……どっかで見た人もいるね~?」

 

「……酒泉?それにサオリも……どうしてこんな所に……」

 

────先生、それさっき鬼方さんに言われましたしなんならそれはこっちの台詞なんですけど……

 

「ア、アアアアアル様!敵が反対側からも来ました!」

 

そんなことを話していると大量の黒服達に一気に囲まれてしまう

 

 

 

 

「なあ、酒泉」

 

────はい?

 

「私達は2人でパーティーに来ただけのはずだ」

 

────そうっすね

 

「それなら……どうして私達は大量の敵に銃口を向けられている?」

 

────………さあ?

 

「……まさか………私は騙されたのか……!?」

 

────……ん?

 

「全てはパーティーを餌にして私達を誘き寄せ、まとめて始末する為に……!」

 

────んん?

 

「ドレスコードというのも私達の動きを鈍くする為に作り上げた偽りのルール────待て、そもそも私達がパーティーに招待された切っ掛けは私が少女を助けたこと………あんな子供がこれ程までに複雑に入り組んだ計画を立てられるのか……?」

 

────んんん?

 

「………そういうことか!敵はあんな幼気な子供まで利用していたのか!クソッ!これ以上私達アリウスのような存在を増やしてたまるか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この後めちゃくちゃ巻き込まれた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

「……ミサキ?なに読んでるの?」

 

「っ!?……なんでもな────」

 

「それ、サッちゃんが読んでたドレスのカタログだよね?」

 

「………なんとなく読んでただけだから」

 

「……ミサキもドレス姿見せに行ってみたら?喜んでくれると思うよ?」

 

「は?なんで私が酒泉を喜ばせる為だけにこんな面倒なのを着ないといけないの?」

 

「私、酒泉なんて一言も言ってないよ?」

 

「………」

 

「なんで酒泉の名前出したの?」

 

「………寝る」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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