〝アリウス〟潰すゾ!!!   作:あば茶

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ボツです


もしもベアおばとクソボケが繰り返していたら

 

 

 

 

 

全ては虚しい、その言葉は何も間違っていなかった

 

今、目の前で命を奪う光が放たれようとしているというのに

 

身体を動かそうにも私達は事前の戦闘で徹底的にマダムに痛め付けられたせいで指一本動かす力すら残っていない

 

 

「さて、これで漸くトドメですね……今回は私が直接出向いて正解でしたね」

 

 

マダムは本当の力を解放した姿───怪物の姿で語りかけながら私達に指先を向ける

 

その指先には赤い光が集まり、マダムはそれを真っ先に私に向けた

 

 

「……っ!待って、マダム!私が生け贄になるから────」

 

「必要ありません、貴女ごときを吸収したところで得られる力は知れてますから」

 

 

姫の言葉が遮られた瞬間に、赤い光が私に放たれた

 

その光は本来なら考え事をする暇もなく私の額を貫く筈だった、だけどこの瞬間だけ光が迫る速度がスローモーションに感じた

 

……いや、分かっている……これが走馬灯というものなのだろう

 

 

「サオリ姉さん!」

 

「サっちゃん!」

 

「駄目……避けて……!」

 

 

私を心配する家族達の声が聞こえる

 

せめてあいつ達だけでも……そう思ったがこの様子だと皆もすぐに殺されてしまいそうだ

 

無事を祈るだけ無駄だろう、それは分かっている

 

それでも

 

 

(……どうか……生きてくれ……)

 

 

何の意味も無い虚しい祈りだとしても、私にはそれしかできなかった

 

スローモーションが解除され、赤い光が目前まで迫る

 

その光は当初の予想通り私の額を貫く────

 

 

「───っぅ゛!?」

 

 

ことはなく、マダムの指先に一発のスナイパーライフルの弾が直撃した事で僅かに軌道が逸れる

 

赤い光が地面を貫き、そこの焦げた跡から煙が上がる

 

自分の中に安堵という感情が残っていた事に驚くと同時に〝もし直撃していたら〟という恐怖心が背筋に這い上がってきた

 

(いや───それよりも今の弾は誰が……)

 

 

そんな私の疑問に答えるかの様に突如マダムの頭上から何者かが飛び掛かる

 

落下しながらアサルトライフルの弾をバラ撒き、マダムの頭部に着地すると今度はスナイパーライフルの引き金を引いた

 

 

 

「チィッ!やはり来ましたか!折川酒泉!」

 

────来るに決まってんだろ!クソババア!お前、よくも……よくも……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────よくも前のループの時裏切ってくれたなぁ!?あれで16回目だぞてめぇ!?

 

「貴方だって9回は私を裏切ってるでしょうにっ!!!」

 

 

 

 

その怒声は、突如現れた少年と今まで一度も見たことがないほどに表情を歪ませたマダムの戦闘開始の合図だった

 

 

 

────俺は前のループで裏切られた時以外は自分から裏切り返したりしねえわ!火種作ってんのはてめぇだろうがよぉ!?

 

「だったら124回目の時のループはなんだと言うのですか!?」

 

────懲りずにまた色彩呼び出そうとしたから先手を打っただけだブァァァカ!!!

 

 

 

恐らくマダムと戦っている男は昔からマダムの知り合いなのだろう

 

最初は殺し合うほど険悪な仲なのかと思ったが、それにしては少々違和感を覚える

 

 

 

────そもそもなんでまた色彩呼び出そうとしてんだよ!?お前確か66回目のループの時に〝あれ?もしかして私がパワーアップするメリットよりキヴォトスに色彩が来るデメリットの方が大きいのでは?〟って自分で気づいただろうがよぉ!?だから儀式も諦めたんだろ!?

 

「勝ち筋を見つけたのですよ!だから裏切ったまでです!」

 

────勝ち筋ぃ!?

 

「ええ!儀式の生け贄の対象をロイヤルブラッドではなくキヴォトス最高の神秘……小鳥遊ホシノに変えれば……!」

 

 

 

小鳥遊ホシノ、確かアビドスの生徒の名前だったか

 

しかしマダムはいつ儀式の対象を変えたのだろうか、少なくとも私達が裏切るより前の話ではない気がするが……

 

 

 

────……で?何で死んでんだよお前。このループは俺達二人が死なないと始まらないはずだけど?

 

「……よ……ぎ……すよ」

 

────……ああ?

 

「小鳥遊ホシノがっ!!!強すぎたんですよ!!!」

 

 

 

再びマダムが声を荒げると、男の方も声を荒げて答えた

 

 

 

────返り討ちにされてんじゃねえか!?俺完全に無駄死かよ!?

 

「仕方ないでしょう!?まさか本気を出した小鳥遊ホシノがあそこまでの実力だとは思っていなかったのですから!」

 

────実力差を感じ取れないほど実力を突き放されてんなら最初から挑むんじゃねえよ雑魚がよぉ!?

 

「貴方だって89回目のループの時は列車砲を破壊しようとする小鳥遊ホシノを止めようとして負けてたじゃないですか!」

 

────俺はちゃんと勝ちましたぁ!小鳥遊さんのことは止められたし先生やアビドスの皆とちゃんと話し合わせることはできたけど最終的に身体がもたずに出血死しただけですぅ!

 

 

 

マダムと男の会話が理解できない

 

既に死んでいるというのならこの場に立っているのは可笑しい事だ、だというのに二人は互いの言葉に疑問を抱かず平然と会話を続けている

 

 

「言っておきますが先に死んだ回数は貴方の方が多いですからね!人を雑魚呼ばわりする前に自分の身体を鍛え直した方がいいのでは!?」

 

────んだとぉ!?

 

「75回目の時は天童アリスの暴走を止める為に身体を貫かれながらも抱きしめて死亡!82回目は御稜ナグサをクロカゲから庇って死亡!102回目はサオリが使用したヘイロー破壊爆弾から白洲アズサを庇って死亡!」

 

────102回目に関してはお前がまた突然裏切って調印式襲撃したからだろうがよぉ!?

 

「その前のループで貴方が先に裏切ったからでしょうが!」

 

────それだってお前が突然カイザーと手を組んだからだろうが!

 

 

 

当然の様に〝自分は死人だ〟と告げる男、マダムもそれを平然と受け入れている

 

……いや、待て。そもそも私はアズサに対してはヘイロー破壊爆弾は使用していないぞ

 

 

 

「裏切った回数よりも助けてあげた回数の方が多いのですからそれぐらい我慢しなさい!」

 

────ああ!?助けた回数に関しては俺の方が上だろうがよぉ!?

 

「……本当にそう思いますか?」

 

────……あ?

 

「あれは156回目のループ……シャーレに所属してゲヘナもトリニティもミレニアムもアリウスもアビドスも百鬼夜行もSRTもその他諸々も何とかした貴方が精神的に色々と面倒になって突然キヴォトスの外へと姿を消した時の話です」

 

────……な、なんだよ

 

「散々依存させるようなムーブを繰り返してきた貴方が突然姿を消した事によってキヴォトスは荒れに荒れました、更には〝折川酒泉は何者かに拉致されたか殺されたのでは?〟という噂まで出回るようになり、その結果……どうなったと思います?」

 

────……さあ?

 

「全生徒からの疑いの目が真っ先に私に集中したんですよ!分かりますか!?各学園の最強を相手にしなければならなかった私の気持ちを!!!二秒で敗北した私の気持ちを!!!〝酒泉を返せ酒泉を返せ酒泉を返せ〟と呟きながらひたすら大人のカードを振りかざし続けたあの男の恐怖を!!!」

 

 

 

怒り、怯え、悲しみ

 

マダムは様々な感情が入り乱れたような表情をしている

 

 

 

「定期的に貴方の心が折れるせいで面倒な事態になるんですよ!84回目のループの時も訳の分からないムーブをしていましたし!」

 

────あ、あれはちょっとキャラ変してただけだろ!?

 

「何ですかあの謎ムーブは!?〝全てに勝つ俺は全て正しい〟だの〝俺に逆らう奴は先生でも殺す〟だの!スオウとかいう女に対しては〝頭が高いぞ〟だの!本来の性格を知っている私からすれば失笑物の台詞ばかりでしたよ!ええ!」

 

────うるせぇ!偶にはラスボスムーブもいいかなって思ってただけなんだよ!

 

「その結果謎のカリスマを発揮してヘルメット団を束ねることになってましたけどねぇ!まさか風紀を守るどころか風紀を乱す側になるとは…………いえ、風紀なら132回目のループで小鳥遊ホシノと空崎ヒナに押し倒された時にとっくに乱してましたねぇ?」

 

────や゛め゛ろ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!゛!゛!゛

 

 

 

男の悲鳴を聞いた途端、マダムの顔がにやついた笑みに変わる

 

まるで愉悦を味わっているかのようにけらけらと笑い続ける

 

 

「あれは傑作でしたねぇ!?〝酒泉ならまた同じ事が起きても私を止めてくれるし絶対に死なない強さも持っているから〟と依存心のようなものを発揮した小鳥遊ホシノが貴方をアビドスに引き抜こうと、それを阻止しようとした空崎ヒナもあんな幼い身体で貴方を引き留めようとし、結果二人の身体で決着をつけることになり最終的に見事に彼女達のお腹を大きく────」

 

────喋るなああああああああああああああああああああ!!!!!

 

「ベッドに縛られながら助けを求める貴方の姿は爽快でしたねぇ!お陰でその間私は自由に動けましたよ!」

 

────最終的に俺もお前も地下生活者ボンバー食らって死んだけどなぁ!?無様な死に様だよなぁ!?

 

「55回目のループの時の貴方の死に様よりはマシでしたけどねぇ!あの時は確か、銀鏡イオリと一夜の間違いを犯した貴方はそれをネタに他の風紀委員に脅されて結果空崎ヒナ以外の全風紀委員の相手をすることに……そして事実を知った空崎ヒナが弱り切っている貴方を限界まで絞り切った結果、腹上死!」

 

────なっ!?それを持ち出すのは卑怯だろうがよ!?それなら80回のループに疲れてトチ狂ったお前が〝儀式の生け贄をアバンギャルド君に変えたらどうなるのでしょうか……〟とか言い出した結果とんでもないポンコツマシンババアが生まれた事だって無様な死に様だろうがよ!?

 

「死因の幾つかは痴情のもつれである貴方よりはマシですぅ!まあ、一番酷かったのは76回目のループの時ですけどね!」

 

────……なんかあったっけ?

 

「おや?忘れてしまったのですか?貴方がそこらのトリニティ生に殺された事件ですよ」

 

 

 

その言葉を聞いた瞬間、男はどこか苦虫を噛み潰したような顔をした

 

 

 

「ゲヘナが嫌いな一般トリニティ生が貴方を脅そうと弾丸を一発放った結果、仕事疲れと発熱と足の怪我が重なって運悪く身体がふらついて見事に弾丸が頭部を貫通したあの事件ですよ」

 

────あ、あれは本当に運が悪かっただけだし……つーかそれを言うなら巡航ミサイルの進路をうっかり間違えて自爆したお前の方が酷い死に方だろうが!

 

「なっ……!」

 

 

 

巡航ミサイルはまだ放っていない、つまり失敗も何もない

 

だというのにマダムは悔しそうに顔を歪める

 

 

 

「カッコつけてナイフをくるくる回してたら自分の喉を引き裂いて死んだ貴方よりはマシですよ!」

 

────風呂で呼吸止めチャレンジして死んだ奴に言われたかねえなぁ!?

 

「うっかりアトラハシースから足を滑らせたくせに!」

 

────ウトナピシュティム着地時の衝撃で外に放り出されたくせに!

 

「自分で捌いたフグを食して死んだくせに!」

 

────餅食ってたら喉詰まらせて死んだくせに!

 

「尻にブラ○ガスとかいう玩具を突っ込んで死んだくせに!」

 

────びっくりするほどユートピアをして暇潰ししてる隙に錠前さんにケツに爆弾突っ込まれて殺されたくせに!

 

「……ループの謎を解き明かす為に貴方と手を組んだこと自体が間違いでした、貴方は今日ここで始末します……!」

 

────上等だゴルァ!逆に俺が殺して……あれ?

 

「……どうしました?まさか今更怯えているのですか?」

 

────……いや、確かこの会話112回目のループの時もしてたよな?

 

「そういえば……確かあの時は喧嘩中に漁夫の利を狙った地下生活者にまとめて殺された時のループでしたね」

 

────……くそっ!なんか思い出したら腹立ってきたな……なあ、今からゲマトリア襲いにいかね?これもうアイツらの連帯責任だろ

 

「……いいでしょう、貴方との決着はその後という事で」

 

 

 

そういうとマダムは指先に集めていたエネルギーを収めて人間の姿に戻り、男も呼吸を整えてから銃を下ろした

 

そのまま二人同時に近づき、互いの手を差し出して握手を────

 

 

 

「────なんて言うとでも思いましたか!?死ねえええええええええ!!!」

 

────そうくるのは分かってんだよぉ!!テメェが死ねやああああああああああああ!!!

 

 

 

する事はなく、マダムは赤い光を、男はスナイパーライフルの弾をゼロ距離で一瞬で放った

 

男は首を逸らして光を回避し、マダムはもう片方の手の指でスナイパーの弾を弾いた

 

 

 

────どうせ裏切ることは分かってんだよぉ!もう二度と信頼するかボケェ!

 

「それは此方の台詞ですよ!これからは貴方の力無しでこのループを抜け出してみせましょう!」

 

 

 

その言葉と同時に再び戦闘が再開された

 

マダムは怪物の姿に変わり男に無数の攻撃を仕掛けるが、男はその攻撃を全て回避している

 

最初は男の身体スペックがマダムと同等なのかと思ったが、どうにもあれはそういう問題ではない気がする

 

マダムと同等というよりかは……元々マダムの動きや手の内を理解しているかのような……

 

 

「ねえねえサッちゃん、そろそろ動ける?」

 

「っ!?ひ、姫!?いつの間に……!」

 

「いや、あの男が現れてからずっと隙だらけだったよ……」

 

「い、今のうちに逃げちゃいます……?」

 

 

 

私達の視線の先には未だに罵り合いながら殺し合ってる二人の姿

 

正直、マダムが突然私達を切り捨てた理由は分からない

 

なぜ私達に怒りを抱いているのかも、なぜ私達を追う際に〝恩知らずの裏切り者〟と呼んできたのかも

 

……恐らくあの二人は私達の知らない何かを抱えているのだろうが、それを予想してみても絶対に正解には辿り着けないだろう

 

何故なら二人の会話はそれほどまでに支離滅裂だったのだから

 

……だが、一つだけ確かなのは────

 

 

 

「よし、逃げよう」

 

 

 

尻に爆弾を突っ込まれて死んだり風呂で自ら呼吸を止めてうっかり死んでしまうようなマヌケな女に支配されるのだけは嫌だ、それだけだった

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