〝アリウス〟潰すゾ!!!   作:あば茶

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たまにはシンプルなのもいいよねって話です


酒泉君がヒナちゃを押し倒して胸を揉む話

 

 

 

 

 

「あー……疲れたぁ……」

 

「……お疲れ、酒泉」

 

 

 

酒泉が肩を落として項垂れていると、ヒナが労いの言葉を掛けながらその背中を優しく撫でる

 

この日、酒泉はいつも通り〝ゲヘナの生徒が暴れている〟と通報を受け、いつも通りそれを鎮圧する為に出動し、いつも通り不良達をしばいていつも通り執務室に戻ろうとした

 

ただその際、執務室に戻るついでに資料室からとある資料を持っていこうとしたヒナの手伝いをしようと酒泉も付き添う事にした

 

……のだが……どうやらお目当ての資料を探すのにそこそこ苦労したらしく、時間が掛かりすぎるあまり途中から立ちながら探すのが面倒になって座り込んで資料を漁っていた

 

 

「んで?空崎さんが欲しかった資料は見つかりました?」

 

「ええ、酒泉のお陰で大体集まったわ」

 

 

礼を言いながら資料を纏めるヒナ

 

酒泉が何となくその資料の一部を見ると文章の中に〝雷帝〟や〝列車砲〟といった文字が書かれているのを発見した……が、特にそれについて言及する事はなく立ち上がった

 

 

「んじゃ……そろそろ戻ります?」

 

「そうね、まだ仕事の時間ではないけど……先に戻ってある程度進め────てっ!?」

 

 

酒泉とヒナが同時に立ち上がる────が、次の瞬間、ヒナだけが前のめりに倒れそうになった

 

理由は単純、酒泉が胡座をかいていたのに対してヒナだけお行儀良く正座状態で座っていたせいで足の痺れを感じたからだ

 

気になる男の子の前でお行儀の悪いことはしたくない、たったそれだけの乙女の気持ちがこの状況を────そしてこの後に繋がる大惨事を引き起こしてしまった

 

 

「────っとお……大丈夫ですか?空崎さん」

 

「あっ……う、うん。ありがと────」

 

 

ヒナが床に倒れる前にその身体を抱き止める酒泉

 

しかし酒泉も立ち上がったばかりで油断していたのか、ヒナを受け止めた時の勢いを殺し切れずにそのまま後ろの棚に頭を打ち付ける

 

すると……なんてことでしょう、棚の上に積み上げられていた分厚い問題児リストや事件名簿等が一気に二人の上に降りかかってきたではありませんか

 

 

「───っ!空崎さん!」

 

分厚い本が大量に頭に降りかかってきたところでキヴォトス人にとっては大したダメージにはならない、況してやそれがキヴォトス最強格の少女であれば尚更だ

 

しかし酒泉にはヒナを助けないという選択肢は存在していなかった、何故ならダメージ有り無し関係なく彼女に害が加わるような事態は見過ごせないからだ

 

ヒナを庇おうと小さな身体を押し倒し、更に頭を打ち付けないようにヒナの後頭部に咄嗟に右手を回す酒泉

 

残された左手を使って身体を支えるが、そんな酒泉の頭にドサドサドサッ!と本の山が襲い掛かる

 

 

「しゅ、酒泉!?大丈夫!?」

 

「いつつ……ええ、大丈夫です……空崎さんの方こそ怪我は?」

 

「私は大丈夫────」

 

 

そこまで言いかけてヒナは言葉を止めた、それは自分の今の状況を少しずつ理解してしまったからだ

 

仰向けで倒れているヒナ、そんなヒナに覆い被さっている酒泉、まるで押し倒された後のような光景

 

それを意識すれば顔が熱くなるのも赤くなるのもあっという間だった。ヒナの頬は熱を帯び、鼓動は早まり、口はあわあわと微かに動く

 

 

「ぇ……あ……う……」

 

「あの……空崎さん?」

 

「……しゅ、酒泉!」

 

 

そんな自分を一旦落ち着かせ、一呼吸してからヒナは酒泉の名を呼ぶ

 

そして────

 

 

「…………い、いいよ」

 

「……はい?」

 

「酒泉なら……いい、から……」

 

 

目を閉じ、両手をきゅっと小さく握り、身体を小刻みに震わせる

 

何かを待っているかのようにひたすら目を閉じているヒナを見た酒泉は首を傾げると、突如ハッ!と絶望した様な表情に変わった

 

 

「ま、ままままさか……どこか怪我したんですか!?」

 

「…………」

 

 

そうだった、この程度のムーブで私の想いに気づいてくれるほど簡単な相手じゃなかった

 

ヒナは未だ自身に覆い被さっている酒泉を退かすと、どこか不貞腐れた様に口を尖らせながら立ち上がる

 

 

「あの……空崎さん……?立ち上がって大丈夫ですか……?」

 

「……別に、誰も怪我したなんて言ってないから」

 

「そ、そうですか?でも一応火宮さんに診てもらった方が……」

 

「……酒泉も頭を診てもらった方がいいと思う、クソボケを治す為に」

 

「!?」

 

 

突然の暴言にショックを受ける酒泉を置いて資料室を出ようとするヒナ、足の痺れが残っているのか動きはまだぎこちない

 

ふらふらと歩くヒナを心配そうに見守る酒泉、すると案の定その足が先程床に落ちた本に引っ掛かった

 

 

「……あっ!?危な────ぬぅお!?」

 

 

そんなヒナを後ろから支えようとした酒泉まで本に足を引っかけて転びそうになる

 

……ここでこの後の大惨事に繋がる不幸が二つ発生した

 

まず、転び掛けたヒナは咄嗟に近くの壁に手をついてバランスを立て直し、その身体を正面に向かせたこと

 

そしてもう一つは酒泉の方はヒナを助けることに夢中になりすぎてつい自分の体勢を立て直すのを忘れてしまっていたこと

 

結果────酒泉は再びヒナを押し倒す形になってしまった、しかも今度は自分自身の身体が原因で

 

 

「きゃっ……!」

 

「うおっ……す、すいません!俺はなんて事を……!」

 

「……大丈夫、わざとじゃないのは分かってるから」

 

 

自身を助ける為の行動だと理解していたヒナは酒泉を責めることなく、むしろ優しく微笑みかけた

 

その表情は先程までのような不機嫌な表情ではなく、それを見た酒泉は安心しながら手を離そうと────

 

 

 

「ひゃっ」

 

 

ふよ

 

 

 

「……ん?」

 

 

手を動かした時、何か柔らかい物に触れた時のような感覚を味わう酒泉

 

自らの右手に視線を向ければ、その手が置かれていたのはヒナの制服……の、左胸の部分

 

 

(……待て、だとしたら今の空崎さんの声は────)

 

 

ギギギと鈍く顔を動かす酒泉、ヒナの顔を凝視してみればその表情は過去一番真っ赤に染まっていた

 

……逆に酒泉の顔は過去一番真っ青になっていたが

 

 

「……そ、その……そんなに触りたかったの?私、そこまで大きくないけど……」

 

 

これで怒鳴られたりぶん殴られたりされたらむしろ楽だった、しかし目の前の尊敬する上司は恥ずかしそうに顔を逸らしながらも視線は酒泉の方に向けるという理性破壊ムーブをかましていた

 

 

「……わ、わたし……その……覚悟はできてるから……!」

 

「……」

 

「だ、だから……遠慮とか……そ、そういうのはしなくても……」

 

「……」

 

「……しゅ、しゅせん?」

 

 

 

しかし相手はクソボケである、そんな理性破壊ムーブを食らったとしても折川酒泉というクソボケが感じるのは罪悪感のみ

 

彼はガタガタと震えながら口を開いた

 

 

 

「すみません……何本指を詰めれば許してくれますか……?」

 

「えっ」

 

「小指を潰して労災降ろした方がいいですか……?ちょっと聖園さんに頼んできますね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これが今日一日ヒナがゲヘナで過ごした中で一番印象に残った出来事だろう

 

パジャマに着替え、ベッドに寝っ転がり、毛布の中でモゾモゾと動くヒナ

 

 

(……まだ……残ってる……)

 

 

それは少年の手の感触、直に触れられた訳ではないのに

 

自分を支える為に鍛えてくれた手の感触が

 

自分を抱きしめてくれた優しい手の感触が

 

自分の頭を撫でてくれた温かい手の感触が、未だに少女の胸に残っていた

 

 

「……少し、だけ……」

 

 

何を思ったのかヒナはパジャマの内側に手を入れる

 

その手は少しずつ少年の手の感触が残っている箇所……ヒナの左胸まで伸ばされる

 

そして、ヒナは少年の顔と体温を思い浮かべながら────

 

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